プロメテウスの政治経済コラム

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アフガン新戦略  「対テロ戦争」は自らやめる以外に終わりのない戦争

2009-12-03 16:14:48 | 政治経済
オバマ米大統領が、アフガニスタン新戦略を発表した。出口戦略を求めて来年上半期までに3万人を追加増派するというのだ。ベトナムでも、イラクでもアメリカが負けるときのいつものやり方である。敗残の兵のようにおめおめと撤退することができずに、一時的に軍事力を増強した上で、出口戦略を求めるわけである
しかし、いくら軍事力を増強しても「対テロ戦争」には、講和条約を結ぶ相手がいない。終わりのない戦争を終わらせようとすれば、自ら撤退時期を決めて退くほかない。
「対テロ戦争」とは、もともと目標を達成して撤退するというような戦争ではないのだ。

 米国民の間で反戦・厭戦気分が強まる中で、オバマ大統領が結局選んだのは、米軍3万人の追加増派であった。アフガン駐留米軍は今年3月に3万3000人の増派を決定し、現在6万8000人。2回目の増派となる今回の決定で、駐留規模は約10万人と、オバマ政権下で3倍に膨らむ。しかし、今回も3月に発表した「戦略」と同様、焦点であるアフガン問題解決の道筋を見通せないままである。
そもそも、この戦争でどんな目標を達成しようとしているのか
オバマ大統領は、イスラム過激派に核兵器が渡る懸念を強調して「アルカイダが核保有をめざしていることは明らかだ。それを使用することをためらわないことも私たちは知っている」とし、アフガン戦争の目的を「アルカイダの破壊、解体、敗北」だという。そのために、新たに三万人の兵力を増派し、NATO(北大西洋条約機構)諸国にも1万人近い増派を求めるという。これで、武装勢力タリバンの攻勢を抑え込み、拠点を確保し、アフガン人を訓練して戦争の「アフガン化」を進めることで、戦争を「成功」させるというわけだ。

 軍事力で「アルカイダの破壊、解体、敗北」や「武装勢力タリバンを抑え込む」ことが、目標の達成だとするなら、いつまでたっても目標を達成することは不可能だろう。
アルカイダもタリバンも今やなにか具体的な実体のある組織ではない。米国侵攻後のアフガニスタンでは、アルカイダもタリバンも「自由と独立のために米国と戦う者」というある種のブランドのように記号化され、絶えず「複製」可能な存在なのだ。一つの組織の統率の元に動いているわけではなく、個々の小集団が自立的に攻撃を仕掛けているのだ。
もともと「対テロ戦争」とは、具体的な「terrorist」ではなく、「terror」という抽象的なものに対して軍事攻撃をかけるというのだから、終わりがない。「ガン撲滅」とか「犯罪撲滅」とかいう言葉と同じように、それを生み出す原因が除去されない限り、終わることはない。今のグローバル資本主義体制は、世界中で見捨てられた人々を構造的に生み出している。「対テロ戦争」とは、軍産複合体にとって、永久に利益が保障される仕掛けなのだ

 米軍やNATO軍の作戦は、アフガンの一般市民に多大な犠牲をもたらしている。生活も一段と悪化し、アフガン国民は外国軍駐留に反発を強めている。これは、アルカイダやタリバンを一生懸命再生産していることを意味する。
組織的なテロは、貧困や抑圧などの社会的不公正を生み出す土壌によって再生産される。市民のあいだに身を潜めるテロリストと、一般市民との区別するのは不可能である。オバマの戦争の敗北は確実である
問題の解決のためには、貧困をはじめアフガン国民が直面する問題を少しずつでも解決していくほかない。そのためにも、国連の枠組みのもとに国際社会が協力する必要がある。これらを実現するためにも、米軍は速やかに撤退に踏み出すべきだ

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