プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

日本の軍事大国化 「ポスト小泉」政権に残された課題

2006-09-01 16:51:54 | 政治経済
日本は明治以来、欧米先進国家をモデルにした脱亜入欧の道を歩んできました。封建制を克服して近代化を推し進め、富国強兵をスローガンに、遅れた帝国主義国として欧米先進国に挑みましたが惨めな敗北となりました。そしてまた再び欧米先進国に追いつけ追い越せが、敗戦後の日本の目標となりました。戦前も戦後も脱亜入欧そのものでした。同じ価値意識で、ヨーロッパモデルの近代を追求していったというのが、日本の近現代史の一貫した基調でした。そして少なくとも経済面においては高度成長の過程で、よく言われるような意味で資本主義を高度化し経済大国の有力な一員となりました。しかし、戦後日本の平和憲法とそれを支持する国民の平和意識、アジア諸国民の警戒感、アメリカ軍の占領継続という事情がかさなって軍事的復活とりわけ自衛隊の海外派兵体制の確立は遅れたままとなりました。富国強兵の富国は脱亜入欧を達成したが、強兵は未完成だというわけです。

現代における日本の軍事大国化は、戦前のような列強帝国主義の時代とちがって日本一国で排他的に形成できるものではありません。アメリカを盟主とする軍事的秩序の配下のもとでの復活とならざるを得ません。とりわけ日本は日米安保条約で米軍の占領を認めたままなので、日本の軍事大国化は、必然的にアメリカの軍事行動を支援するかたちで実現する以外にありません。ナショナリズムを声高に叫んでも対米従属という重石から抜け出せない宿命です。

小泉政権は、アメリカの軍事行動を支援するかたちを憲法の制約をなし崩し的に、ときに詭弁を使って次々と突破しながら、新しい段階へ引き上げてきました。しかし、憲法の制約、軍事大国化を警戒する内外の反対のなかでの作業であったため、大きな限界をもっていました。
この限界を突破することが「ポスト小泉」政権に残された課題となります。
第一は、日本の「周辺」だけでなく、国際テロや紛争にたいしアメリカが世界で行う介入戦争に参戦できるように国際支援法とか多国籍軍支援法といった新法を制定し、自衛隊の参戦を一般化することです。アフガンやイラク戦争で特別法を必要とした限界の突破をはかるものです。この課題に関して、自民党防衛政策検討小委員会は30日、「国際平和協力法」の名称の原案を了承、年内の法案化を目指しています。これに伴い海外派兵を自衛隊の「本来任務」に格上げする自衛隊法「改正」法案はすでに国会で継続審議となっています。
第二は、政府が憲法9条のもとで集団的自衛権の行使は認められないという解釈を採っていることです。安倍氏は、政府の解釈変更で集団的自衛権を認めることを言い出しています。谷垣氏は、いまのところ憲法改正ですっきりさせるべきだとしています。米軍の望む後方支援、とりわけ海外での武力行使のためにはどうしても突破しなければならない課題です。
第三は、自衛隊の海外参戦に伴い処理しなければならないいくつかの制度、たとえば戦死者に対する慰霊の施設、勲章、恩給などの整備の課題。進んで自衛軍に応募する若者の育成。国家が戦争することをあたりまえと考える国民精神の涵養。周知のように教育基本法「改正」案がすでに国会で継続審議となっています。

米軍支援内容の水準をあげることが国家として一人前になることだと考え、軍事大国化の課題解決に執念をみせる「ポスト小泉」最有力候補の安倍官房長官と平和を求める国民との矛盾はまもなく新しい段階を迎えることになるでしょう。

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