プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

枝野行政刷新相 政権浮揚の“カンフル剤”? 構造改革派の「仕分け人」は矛盾を深めるだけ!

2010-02-11 19:12:28 | 政治経済
鳩山由紀夫首相は事業仕分けの統括役を務めた枝野幸男元民主党政調会長を昨日、行政刷新担当相に任命した。昨年11月、人気を博した事業仕分けの「仕分け人」を起用することによって、首相自身や小沢一郎・幹事長の「政治とカネ」をめぐる一連の事件で傷ついた政権の浮揚を図りたいということだろう。しかし、行政刷新会議の「事業仕分け」はマニフェストの「福祉」を実現するために福祉を切るという倒錯したものだった。構造改革派の「仕分け人」が大臣になっても、国民との矛盾を深めるだけである。民主党指導部には、「新しい政治」をつくっていく際の「敵」を見誤っているという根本的な弱点があるからだ

 小沢幹事長の資金管理団体による政治資金規正法違反に絡む国民の不満や批判がくすぶっている。起訴された元秘書の石川知裕衆院議員は11日午後、党本部に離党届を提出する予定である。首相や小沢氏周辺は、石川議員の離党をもって、「政治とカネ」をめぐる一連の事件に幕を引き、反転攻勢に出たいということだろう。しかし、「政治とカネ」問題について、これで「一件落着」とさせるわけにはいかない。小沢氏も「嫌疑不十分」ということであって、“嫌疑がない”ということではない。政治的・道義的責任と真相を解明することは、国会の当然の責務である
こんなとき、昨年「事業仕分け」で人気を集めた枝野氏は、格好の“カンフル剤”(「読売」2月11日10時4分配信)だと思ったのだろう。これまで行政刷新担当は、仙谷由人国家戦略担当相が兼務していた。

 強まる逆風をかわしたい鳩山政権にとって、枝野行政刷新相は、タイミングを見計らったような人事だった。昨年10月に急落していた内閣支持率が、事業仕分け直後の11月に持ち直した。公開の場で各界代表が役人を厳しく追及し、行政の無駄を省く仕分け作業が国民から喝采を浴びたことが最大の要因とみられる。人気を集めた枝野氏の入閣が、今また低下している支持率の回復につながるのだろうか(「中国新聞」2010年2月11日)。
枝野氏は、小泉内閣と「構造改革」を競い合った当時(2001年)、「社会保障改革で痛みをともなってもやむを得ない」と言った人物である。特殊法人労連の岩井孝議長は1月30日のシンポジウムであいさつし、「事業仕分けには、国民の命、くらしを守る観点からの議論はなかった」と指摘し、国民の立場からの検証を呼び掛けた

 事業仕分けには、大きく三つの問題点があった。
第一は、「本当に削られるべきムダ遣いが温存されている」という問題である。大型公共事業では「スーパー中枢港湾」や東京外郭環状道路などが温存され、軍事費についても"自衛"とは無関係のヘリ空母や米軍への「思いやり予算」などにメスが入らなかった。
第二は、逆に「削ってはならない暮らしにかかわる大事なものが乱暴な形で切られた」ことである。医療や保育などとともに、科学・技術の基礎研究にかかわるものが最たるものだった。
第三は、仕分け人のなかに小泉「構造改革」を推進してきた人物が含まれていることである。やり方も事前のシナリオどおりの時間を区切った、乱暴なものであった。

 何故こんなことになるのか。
鳩山政権の中心を担っている民主党指導部は、自公政権を倒し、「新しい政治」をつくるというが、打倒すべき「敵」は自民党の旧来の利益誘導型政治、官僚主導の開発型政治だという。「敵」は「コンクリートの政治」であり、「官僚主導の政治」だというのだ。たしかに官僚主導の政治は政官業の癒着による既得権益という多くの困難とムダを持ち込んだ。しかし、今日、国民の苦難を生み出しているのは、そのような「コンクリートの政治」、「官僚主導の政治」ではない。小泉首相がいみじくも言ったように「(旧い)自民党をぶっ壊し」た「構造改革政治」こそが「母子家庭で、修学旅行にも高校に行けない子どもたちがいる、病気になっても、病院に行けないお年寄りがいる。全国で毎日、自らの命を絶つ方が100人以上もいる」(民主党マニフェスト)事態を生み出したのだ。むしろ、田中角栄型の「コンクリートの政治」、土建国家は、地方の格差を是正し、地方をある程度平等化する機能を持っていた。それを大企業の世界的な大競争、儲けの体制にとって非効率だと容赦なく切り捨てたのが小泉「構造改革」であった官僚は、土建国家時代も小泉「構造改革」時代も財界と自民党の手足として働いてきただけであるつまり、敵は「コンクリートの政治」でもなければ、「官僚主導の政治」でもない。「敵」は多国籍大企業とその儲けを保障する自民党「構造改革政治」なのだ。

鳩山マニフェストのなかには、驚くべきことに、一言も「大企業」という言葉も、「構造改革」という言葉もない。構造改革派の「仕分け人」が閣僚の一員に加わっても、国民との矛盾を深めるだけであり、低下している支持率の回復につながることはないだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。