プロメテウスの政治経済コラム

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徳島の光洋 JMIU組合員44人全員の直接雇用実現  「自己責任」の呪縛からの解放

2010-01-01 19:00:54 | 政治経済
「しんぶん赤旗」元旦の第一面トップ記事は、徳島の光洋「全組合員を直接雇用」の大見出しである。偽装請負を告発し、直接雇用を求めて立ち上がってから5年。06年10月の第一陣から、徐々に直接雇用を実現させ、昨年10月末の団体交渉で組合員13人を今年1月1日付で直接雇用の契約社員にする回答を得て、5年がかりで組合員44人全員の直接雇用を勝ち取った。
感動的なのは、「先に正社員になった組合員も一緒にたたかってくれ、うれしかった。みんなの力です」という労働者の団結だ。現在、日本社会には新自由主義的「自己責任」論が跋扈するなか、人間本来の理性、知性、そして感性を失って、自分さえ良ければ他人を踏み台にして何の痛みも感じない風潮が蔓延っている。労働者は「団結」以外のたたかう武器をもたない。頭でわかっていてもなぜ彼が先に正社員になり、「なぜオレはなれないのか」となるものだ。「最後の1人まで正社員にする。そのためなら、僕ら正社員は足踏みして待てばいい」―この団結こそ新年の私たちの気持ちを清々しくさせてくれる。さすが「しんぶん赤旗」だ

 光洋はトヨタ系の部品メーカー「ジェイテクト」(旧光洋精工、大阪市)の子会社で、油漏れを防ぐオイルシールなど、自動車部品を手がけ業績を伸ばしてきた。工場には、正社員より賃金が低い約200人の請負労働者が働いている。しかし、その労働実態は、正社員と請負労働者が混在し、正社員が請負労働者に直接指示を出す典型的な偽装請負状態である。請負労働者の一部が2004年に労働組合(JMIU<全日本金属情報機器労組>徳島地域支部)を結成。違法状態の解消のため直接雇用を求めて立ち上がった。光洋で偽装請負として働かされていた青年たちは、正社員と同じ仕事をこなす技術を持ちながら、年収は二百万円前後と半分以下。一定の技能水準をもち、ロイヤルティーの高い日本人労働者をアジア諸国労働者並みの低賃金で働かせる。製造企業にとって偽装請負ほどありがたいものはない。製造現場の派遣労働者の8割は、偽装請負状態にあると言われている。派遣法の抜本的改正が必要な所以である

 JMIU光洋シーリングテクノ関連支部(44人)は、偽装請負の告発など、非正規雇用労働者の労働条件改善の先頭に立ってきた。テクノ関連支部の組合員が、偽装請負を厚労省徳島労働局に申告。たたかった結果、第一陣が請負労働者からテクノの直接雇用(契約社員)になったのは、06年10月のことだった。さらに07年12月には組合員をふくめて14人が、08年12月には21人が、ことし8月には17人が、正社員になり昨年の10月までにテクノ関連支部組合員の半数、22人が正社員になっていた。そして今回44人全員が正社員となったのだ。労組の結成を呼びかけ、関連支部の代表でもある矢部浩史さんも、非正規雇用である。JMIU徳島地本の森口英昭委員長(徳島労連事務局長)が、矢部さんらをたたえてこう言う。「みんな、取っ組み合いのけんかをするくらい激しく意見をぶつけあいます。それでいて団結し、組合の民主的な運営をつづけている。労組の力で正社員化を実現するなんて、素晴らしいことではないですか」(「しんぶん赤旗 日曜版」2009年10月4日号)。

 日本社会は、戦後の企業社会のなかで、個人の競争意識が強い社会である。会社で長期雇用が保障されているといっても、給与や企業福祉でしかるべき処遇を得ようとすれば、同期との厳しい競争に勝ち抜き、会社にロイヤルティーを示さなければならない。だから日本の場合、「自己責任」ということが前々から強いのだが、「小泉・竹中改革」のときにそれがいっそうひどくなり、正社員になれないのも「自己責任」、貧しい家に生まれたのも「自己責任」だということになった。これでは、つらいことがあっても声を出せなし、社会的連帯も育たない。私たちは、これからの日本社会を展望するとき、社会的連帯が強い社会が、一歩すすんだ社会であるということをみんなの共通認識にしなければならない。ロンドンを拠点に活躍するピアニストの小川典子さんは、日本共産党志位委員長との対談で「イギリスは本当に住みやすい国とはいえない場合も多いのですが、私が一番感心するのは、恵まれない人たちとか何かきつい場面にぶつかっている人に対しての慈しみの気持ちが本当に強い国だと思うんです。仕事を失ったのも、『あなただけのせいじゃない』んだという言葉で、みんなが接します。日本ではどうしても『自己責任』という言葉が強い。派遣労働だといっても、あなたのせいだろうとか、体の不自由な点があっても何かがあったからではないかとか、そういう妙な点があります。イギリスではその点は意識的に変えていったみたいですね」と語っている(「しんぶん赤旗」2010年1月1日)。

 「自己責任」論の呪縛から解放されて、たたかいに立ち上がり仲間と激論を交わしながら団結し、成長する労働者は美しい。それこそが、人間本来の理性、知性、そして感性に適うものであるからだ。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-01-19 09:32:50
元気つく元旦記事です。
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