プロメテウスの政治経済コラム

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ロシア・ラブロフ外相「第2次大戦の結果を唯一、認めていない国だ」の真意 

2019-01-17 18:36:15 | 政治経済

16日の会見で、ラブロフ外相は「国連憲章は第2次大戦の結果は覆せないと定めている」と主張し、北方領土の主権はロシアにあるとして返還を求める日本を批判。そのうえで、日本について「第2次大戦の結果を唯一、認めていない国だ」と述べた。まさに、白井聡さんの「永続敗戦論」を地で行く発言だ。日本の戦後レジームの核心を突く発言だけに日本にとって最も痛いところを突かれたことになる。

「永続敗戦」とは、第二次世界大戦の敗戦の事実を誤魔化し、敗戦をきちっと総括しなかったために、敗戦をもたらした戦犯体制が延々と続いていることを言う。

「敗戦の事実の誤魔化し」がなされなければならなかった最大の理由は、敗戦の責任を有耶無耶にし、敗北必至とあらかじめ分かっていた戦争へと国民を追い込んで行った戦犯支配層が、戦後も引き続き支配を続けることを正当化しなければならなかったからである。この策動は、玉音放送において「降伏」や「敗北」といった表現が慎重に避けられたことから早くも開始され、東久邇宮内閣の「一億総懺悔」という標語の提示に見られるように、明確な意図を持って推進されたと言えよう。こうした流れの果てに、敗戦したことそのものが曖昧化され、「敗戦ではなく終戦」というイメージに、日本人の歴史意識は固着してゆく。そもそも敗戦していないのであれば、誰も責任を問われる道理がなくなるのだから、実に見事な(!)論理である(http://www.alter-magazine.jp/index.php?)。

こうしたからくりは、言うまでもなく、日米合作によって成立した。戦後日本の権力中枢がアメリカ主導のもとで再編成されたことを鑑みれば、その体制が対米従属を基幹とする、半ば傀儡的なものとなったのは当然の帰結である。日本の右翼が日の丸だけではなく星条旗を振るのはこのためである。いわゆる嫌中・嫌韓派、「在特会」などの排外主義が跋扈するのも戦前の価値観を引きずる「敗戦の否認」の裏表である。こうして天皇の上にアメリカを戴く、「戦後レジューム」が延々と続くことになる。

「永続敗戦レジューム」を引きずったままでは、いわゆる領土問題は解決の目途が全く立たない。なぜなら、日本の抱える領土問題とは、第二次世界大戦の敗戦処理の問題であるという事実である。ところが、その本質が国民にも、否、外務当局者においてすら理解されていない。ロシア外相に「第2次大戦の結果を唯一、認めていない国だ」とまで言われてもわかっていないのではないか。

領土問題の処理は、カイロ宣言、ヤルタ協定、ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約といった日本が受け入れた(敗戦により受け入れざるを得なかった)諸外交文書の文言によって原則的に規定されている。敗戦を素直に受け入れたならば、日本政府が掲げる「固有の領土」論は何を寝言を言っているか!となる。ロシアが、日本に対し、おこがましくも「北方領土」と言うなと批判するのはこのことをいっているのだ。

このことは敗戦を意識の外に追い遣った国民には、ほとんど理解されていない。こうした現状は、敗戦を否認し、「あの戦争は負け戦ではない、単に終わったのだ」という歴史意識を国民に刷り込んできたことの結果にほかならない。



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