政府が普天間「移設」最終案を大筋で固めたという。鳩山首相は3月31日の党首討論で「腹案を持ち合わせている」と胸を張った。「県外移設」を唱えながら、首相は具体的な移設案を説明してこなかった。ふたを開けてみれば、政府最終案は結局、キャンプ・シュワブ沿岸部・辺野古に移設する自民党政権時代の案を修正するとともに、徳之島に一部を移転する組み合わせになるという。人をバカにするのも、いい加減にしてほしい。この7ヶ月間の迷走劇はなんだったのか。名護市民・沖縄県民をなめきっていないか。
政府案の概要は次のようなことらしい。
(1)辺野古沿岸部を埋め立てる現行案に代わり、海底にくいを打つ桟橋方式(QIP方式)で1800メートルの滑走路を建設する(2)徳之島空港(鹿児島県天城町)の2千メートルの滑走路を利用。周辺を一部埋め立てて、ヘリコプターの格納庫や兵舎などを建設。普天間のヘリ部隊約2500人のうち最大1千人を移すか、訓練を移転する(3)米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)で行われている外来機の発着訓練を鹿児島県内の無人島や、本土の自衛隊基地に分散移転させる――という内容(「朝日」2010年4月29日)。
鳩山政権はキャンプ・シュワブ沿岸部・辺野古に移設する自公案を否定し、約7カ月にわたって代替案を探ってきた。さまざまな構想が浮かんでは消え、最終的にたどりついたのが自公案の修正だった。鳩山首相はこの間、沖縄県民が超党派で、基地の県内たらい回し拒否の意思を固めてきたことを一番良く自覚していたはずである。なのに、この体たらくである。名護市民・沖縄県民をなめきっているとしか言いようがない。
「朝日」同上より
日米のもともとの合意に基づく現行計画に「回帰」したのだから、米側に文句はない。嘉手納の訓練の一部を沖縄外に移すことなどは、運用のバリエーションでどうにでもなる。徳之島は地元が一致して反対しているので実現するかどうかも不確かである。沖縄での「県内移設」である現行計画が基本なのだから、米側は痛くも痒くもない。7ヶ月迷走したが、もともと何の成算もないまま選挙対策として、期待をあおったとすれば、首相の罪は重い。
しかし一方で、これまで溜まりに溜まった沖縄県民の米軍基地押し付けに対する怒りが後戻りできない勢いで広がったのは、米紙に「愚か者」と言われた鳩山首相の貢献かもしれない。これからの日米同盟は、住民意識の変化を前提に、住民が受け入れられるようなものでなければならない。冷戦時代の古い発想で、アメとムチの政策によって、沖縄に、そして離島や辺地に米軍基地を押しつけるやり方は、明らかに限界にきている。
鳩山首相は28日、徳之島出身の有力者である徳田虎雄元衆院議員を訪ね、徳之島の3町長との会談の仲介を頼んだ。 徳田氏は、仲介の頼みには応じたが、普天間へり部隊の一部受け入れは断わった。地元有力者の力を借りて何とか移設しようというのは、アメリカの大学の出身者とも思えない、民意を無視した愚かな行為である。
鳩山首相は、5月4日に沖縄入り、仲井真知事と面談するということらしい。仲井真知事は「県内移設」に含みを持たせる対応をしているが、4・25県民大会に出席しておきながら政府案を受け入れば、県民の猛反発を受けるのは必至であり、11月の県知事選挙を待たずにリコール運動が起きても不思議でないという(目取真俊「政府案と鳩山首相来沖」2010年4月28日)。
名護市の稲嶺進市長は、海にも陸にも新しい基地は造らせない、と繰り返し主張しており、4・25県民大会でも「県内移設」反対を明言している。
自公政権が進めた計画から少し場所をずらして工法を変えれば、辺野古で「移設」=新基地建設が可能だと考えること自体が、住民意識の変化を見ない「愚か者」である。共産党の志位和夫委員長が言うとおり、沖縄の怒りは限界点をこえている。
鳩山首相が沖縄入して政府案への理解や協力を求めても、沖縄県民がそれに応じることはあり得ない。逆に「最低でも県外」といった公約の実現を強く迫られるだけのことだ。自公政権下で沖縄県知事、名護市長が辺野古「移設」容認であったときでさえ、それが不可能だったことを知るべきだ。自公政権以上の強硬姿勢で着工するというなら、沖縄の島ぐるみ闘争が量・質ともに拡大し、むしろ追いつめられるのは政府の方だ(目取真俊 同上)。
「日米安保=基地提供=沖縄」の公式がいま明らかに、揺らぎ始めようとしている。
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普天間問題での対米交渉でも自民党政権での対米従属と利権絡みで米軍再編計画に関与して来た官僚に頼っていては政権交代に伴う新たな日米関係を構築する事は不可能であり米国側の意向に阿る結論に至る事も必然です。