プロメテウスの政治経済コラム

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検察庁法改正案の今国会成立見送り  ブラック黒川氏の検事総長就任はどうなるのか?

2020-05-18 19:06:38 | 政治経済

 幹部ポストを退く「役職定年」の年齢を過ぎても政府の判断で検察幹部にとどめられるようにする検察庁法改正案について、安倍自民党は18日、今国会での成立を断念した。法改正案を巡る国会の攻防は秋の臨時国会に先送りされる。

 次の関心は、本法案とは直接関係ないが、問題の発端となった黒川弘務・東京高検検事長が「予定通り」検事総長に就任できるかどうかである

 

 そもそも安倍政権が描いていた「黒川検事総長」就任の筋書きとは何か。

現在の検事総長、稲田伸夫氏は司法修習33期。既に34期はおらず、次に35期に黒川氏と林真琴・名古屋高検検事長の2人が続く。何としてでも“政権の守護神”の異名をとる黒川氏の方を「検事総長」の座に就かせたい首相と官房長官。そのためには、彼らは検察官の定年問題を解決しなければならなかった。

 現行の検察官の定年は、検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する(検察庁法第22条)。検事総長の定年は65歳であるため、稲田氏は2021年8月の65歳の誕生日まで総長を続けられる。片や黒川氏は2020年2月8日の誕生日で63歳になり、林氏は7月30日の誕生日で63歳になる。

 黒川氏が検事総長になるためには、稲田氏が黒川氏の誕生日の2020年2月8日前に退官しなければならない。官邸はその方向で進めていたが、稲田氏は、検事総長約2年間という慣例の在任期間を盾に官邸の意向に従わず、「黒川氏の63歳の定年日より前にやめるつもりはない、7月に林氏を後任にする」腹を固めた。そこで、本年1月31日、安倍内閣は、黒川氏の定年を半年間延長する閣議決定をし、逆襲に出た。

 ところが、この閣議決定は、安倍政権“得意”の脱法・違法なものであった。検察庁法には、定年延長の規定がなく、これまで誰も特例はなかったからである。そこで苦し紛れに持ち出したのが、国家公務員の勤務延長規定(同法第81条の3)の拡張解釈という無理筋であった。

 今回の検察庁法改正案を巡るゴタゴタのなかで、黒川氏は「元凶」としてSNSやメディアにも取り上げられ、悪印象が定着してしまった感はあるが、国民が「脱法・違法のブラック黒川氏の検事総長就任反対!」の声を一層大きくしない限り、黒川氏は「予定通り」総長に就任するだろう。稲田氏が、官邸に逆らい来年まで検事総長を続ける胆力があるかどうか。政府高官は18日朝、「今国会で成立しなくても困るものではない」と嘯いていたそうだ(「朝日」https://www.asahi.com/articles/ASN5L523ZN5LUTFK015.html)。


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