Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

COVID-19パンデミック時の米国医師における過剰死亡率

2023年02月12日 | COVID-19
この話題は久しぶり。

Kiang MV, Carlasare LE, Thadaney Israni S, et al.et al.
Excess Mortality Among US Physicians During the COVID-19 Pandemic.
JAMA Intern Med. 2023 Feb 6. Epub ahead of print. PMID: 36745424.


64歳以下では、医者の超過死亡率はほぼゼロ。

医療者はちゃんと防御すれば大丈夫シリーズ:
手術室とICUスタッフのCOVID感染リスク
医療者と家族のCOVIDによる入院リスク
NYだって、ちゃんとやっていれば感染しない。
PPEをちゃんとすれば医療者は感染しない。
ちゃんとやっていれば医療者は感染しない。

2020年頃は、「ICUに自分の患者を入れたくない」、「ICUスタッフと関わりたくない」と言う医者がいた。
僕は2020年の4月に、「毎日ICUでCOVIDの診療をしている」とバイト先に伝えたら、「当分来るな」と言われ、辞めざるをえなくなった。
緊急時にこそ人間の本性が良くわかると言うが、同じような経験をしたみなさん、そいつらが言ったこと、忘れないようにしましょう。
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ICUにおける好酸球増多症の疫学

2023年02月11日 | 消化器・血液
あれ、この患者さん、好酸球が増えてるぞって思うこと、たまにあるよね。

Gaillet A, Bay P, Péju E, et al.
Epidemiology, clinical presentation, and outcomes of 620 patients with eosinophilia in the intensive care unit.
Intensive Care Med. 2023 Feb 1. Epub ahead of print. PMID: 36723637.


ICU入室24時間以降に発生する好酸球増多症(1000以上が2回)の疫学:
・発生頻度は全ICU患者の約0.5%
・原因の半分は薬剤性、残りはほぼ原因不明
・ICU死亡率は18.7%
・高齢、昇圧剤の使用、人工呼吸器の使用が死亡のリスク因子

そうか!というほどの情報はないが、14のICUで過去6年分を調べて620例集めただけで、偉い。
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重症患者における高蛋白質投与の効果

2023年02月10日 | 消化器・血液
Heyland DK, Patel J, Compher C, et al.; EFFORT Protein Trial team.
The effect of higher protein dosing in critically ill patients with high nutritional risk (EFFORT Protein): an international, multicentre, pragmatic, registry-based randomised trial.
Lancet. 2023 Jan 25:S0140-6736(22)02469-2. Epub ahead of print. PMID: 36708732.


栄養の全てが分かったわけではないけれど、カロリーも、タイミングも、投与方法も、そして蛋白も、同じ結果。

ICUでは、極端なことをしない、つまり中庸が大事。
補液もそうだし、早期リハもそうだし、栄養もそうだし。

「なんだ、集中治療って簡単じゃん」と思ったあなたへ。
自分が中庸をしているって、簡単に分かるの?
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イドルシアが2022年度の本決算を発表、REACTの結果も。

2023年02月09日 | 神経
イドルシアをご存知ない方はこちら。
ピヴラッツっていう薬、知ってますか?

まず本決算。
Idorsia announces financial results for 2022 – building momentum to become a leading mid-sized biopharmaceutical company
"Approximately 25% of aSAH patients were treated with PIVLAZ in December 2022, based on the estimated incidence of aSAH in Japan. Since the launch in April, net sales in 2022 reached CHF 44 million."
おお。約60億円。8ヶ月ちょっとで。このまま行けば、毎年この薬のために100億円が使われることになる。

そしてREACTの結果。
Idorsia announces the results of REACT a Phase 3 study of clazosentan in patients following aneurysmal subarachnoid hemorrhage
"The study did not meet the primary endpoint."
"The company will publish the data and interpretation in scientific literature in due course."
書いてあるのはこれだけ。

さあ、面白くなってまいりました。
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AKI患者における造影剤投与後の腎臓予後

2023年02月08日 | 腎臓
Ehmann MR, Mitchell J, Levin S, et al.
Renal outcomes following intravenous contrast administration in patients with acute kidney injury: a multi-site retrospective propensity-adjusted analysis.
Intensive Care Med. 2023 Jan 30. Epub ahead of print. PMID: 36715705.


CT撮影時に造影剤を使用するかどうか、というRCTはまず行われないでしょう。
であれば、もうこれでとりあえずの結論でいいのでは?

造影剤腎症についての過去ログ:
Dr. Bellomoが質問に答えます。
造影剤は本当に問題か?
ICU患者に造影剤腎症は起こるか?
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時間帯と大腸内視鏡検査の質の関連性におけるAIの役割

2023年02月07日 | AI・機械学習
集中治療とは無関係だけど。

Lu Z, Zhang L, Yao L, Gong D, Wu L, et al.
Assessment of the Role of Artificial Intelligence in the Association Between Time of Day and Colonoscopy Quality.
JAMA Netw Open. 2023 Jan 3;6(1):e2253840. PMID: 36719680.


午後になるとCFで腺種を見つける頻度が減るけど、AIがサポートすると減らない、と。

これ、ICUでも使えないだろうか。
例えば、夜になると見逃しやすくなることをAIが教えてくれる、みたいな。
でも、どんな情報を教えてくれると患者予後改善に繋がりうるか、そこまで行かなくても、どんな情報なら利用者が便利だなと感じるか。考えてみると、結構難しい。何か域値を設定する必要があるけど、その域値は患者さんによって違いそうだし、有益だと感じる情報って医療者によって違いそうだし。

コンピューターはもっと便利に使えるはずだけど、なかなかねー。
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Tele-ICUの有効性

2023年02月06日 | ICU・システム
おお。Tele-ICUのRCTだ。

Spies CD, Paul N, Adrion C, et al.; ERIC Study Group.
Effectiveness of an intensive care telehealth programme to improve process quality (ERIC): a multicentre stepped wedge cluster randomised controlled trial.
Intensive Care Med. 2023 Jan 16:1–14. PMID: 36645446
.

12のICUで、毎日tele回診(一人20分)をして、かつ24/7でコンサルテーションを受け付けたら、鎮痛鎮静、ウィーニング、感染管理、経管栄養、患者家族とのコミュニケーション、早期離床の質が向上した。

日本でも徐々にTele-ICUが行われつつあるけど、毎日tele回診しているところはないのでは。
今後の普及の可能性にしても、効果検証にしても、まだちょっと「未来の話」感が拭えない。
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院外心停止に対するECPR

2023年02月05日 | 循環
NEJMからもう一つ。
N=160でNEJMとは、ちょっと驚き。

Suverein MM, Delnoij TSR, Lorusso R, et al..
Early Extracorporeal CPR for Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2023 Jan 26;388(4):299-309. PMID: 36720132.


年齢制限、目撃者、by-standaer CPR、心電図がVf、という厳密なcriteriaを満たしてもprimary outcomeに有意差は出なかった。ただし20% vs. 16%で、Nが大きくなったらわからない。実際、「普通のCPRでは蘇生しなかったのにECPRしたら歩いて帰れた患者さん」を見たことのある人は少なくないはず。

ECPRはRRSと似たところがある。それは単なる薬じゃないところ。薬だったら処方したら効果を得られるけど、RRSもECPRも、導入したら誰でもどこの施設でも効果が得られる、とは言えない。ECPRの場合、技術を獲得してかつ維持するのが難しいし、適応を厳密に守るのも難しく、かつその二つが両立しにくい。技術を維持するにはNが必要、でも適応を厳密に守ったらNは少なくなる。

RRSとECPRが違うところ。RRSは導入して効果が得られなくても時間の無駄だったで終わるけど、ECPRの場合、技術が不十分だと救えるかもしれない命が救えなくなるかもしれないし、適応を間違えるとfutileな治療を受ける患者さんが増える。僕の知ってる病院では、院内心停止に対してECPRがなんでもかんでも行われていて、futilityのオンパレードになっている。

VRやARで今とはレベチのシミュレーションが広く行われるようにでもならない限り、技術と適応の矛盾は(一部の施設を除いて)解決しないのでは。
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敗血症性ショックに対する早期の輸液制限または自由輸液管理

2023年02月04日 | 循環
National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network.
Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension.
N Engl J Med. 2023 Jan 21. Epub ahead of print. PMID: 36688507.


いろいろあったけど、「補液は中庸が大事」という結論でもうよいのではないか、という気がする。
入れすぎず、入れなすぎずで。
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急性脳損傷における頭蓋内圧亢進の治療法

2023年02月03日 | 神経
Robba C, Graziano F, Guglielmi A, et al.; SYNAPSE-ICU Investigators.
Treatments for intracranial hypertension in acute brain-injured patients: grading, timing, and association with outcome. Data from the SYNAPSE-ICU study.
Intensive Care Med. 2023 Jan;49(1):50-61. PMID: 36622462.


重症急性脳損傷(脳出血、SAH、頭部外傷)についての多施設観察研究、N=2320。最初の1週間で行われた治療強度をTherapy Intensity Level (TIL)を使って分類した。Extreme TIL群は全体の12.7%で、国・施設によってその施行頻度は大きく異なり、eTIL群に比べno-basic TIL群では死亡率が高かったが神経予後は変わらなかった。

TILって知らなかった。この文献のアブストラクトだけでなく本文のにもTILの説明は書いてないので、こちらをご参照ください。この表で言うところのTIL4とTIL0-1の比較をしている。

こういう研究では「この患者さんは頑張るぞ」、「この患者さんは難しいだろうから積極的治療は控えよう」というバイアスが必ず働くので、eTIL群で死亡率が低い理由は説明されてしまう。にも関わらず神経予後は同じ(実際はOR 0.94でp=0.088なのでeTILの方が悪い傾向)というのは、神経集中治療の難しさを示していそう。
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