Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

TEGを指標に心外術中の輸血をする。

2019年05月27日 | 循環
Redfern RE, Fleming K, March RL, et al.
Thrombelastography-Directed Transfusion in Cardiac Surgery: Impact on Postoperative Outcomes.
Ann Thorac Surg. 2019 May;107(5):1313-1318. PMID: 30768933.


TEG導入前後のbefore-afterの1施設研究。輸血が減り、再手術が減り、入院日数が短くなった。

これを読んでいて、何年か前のことを思い出した。
術中のGDTについての研究会的なものに呼ばれた時のこと。色々な施設が自分たちのGDTの導入結果を発表していて、
「補液が減って、術後の合併症が減った」
「特に変わらなかった」
「補液が増えて、術後の起立性低血圧が減った」
と、みんなバラバラな内容だった。
それって、つまりは普段の補液が多すぎたり少なすぎたりしているからじゃないのか、ってことはGDTしなくても自分たちの問題を把握したら正常化できるんじゃないか、という疑問を持った。

このTEGの話、それと似てるよね。
この施設、確かにTEG導入後に輸血は減っているけど、例えば血小板なんか78%に使用されていて、それが56%に減ったという結果で、なんかそれって単純に輸血しすぎだったんじゃないの?

自分のやっていることを他の施設とか疫学情報とかと比べて、どうも〇〇しすぎのようだぞと話し合ってプラクティスを変更できれば、道具を使う必要はないのかも。
ただ、話し合おうとしても聞く耳を持たない人も、道具や数字を見せられたら言うことを聞くかもしれないけど。

ということで、こういう研究は信じられない。
TEGやGDTが、全体の平均値は変えずに、患者さん一人一人にとって望ましい対応がされた結果、予後が良くなった、という結果じゃないと。
コメント
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