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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

SAHの血圧管理とか、AFの電解質管理とか。

2022年12月12日 | EBM関連
Gathier CS, Zijlstra IAJ, Rinkel GJE, et al.
Blood pressure and the risk of rebleeding and delayed cerebral ischemia after aneurysmal subarachnoid hemorrhage.
J Crit Care. 2022 Dec;72:154124. PMID: 36208555.

100mmHg以下のMAPは再出血のリスク低下と関連し、60mmHg以下のMAPはDCIのリスク上昇と関連する。

Cacioppo F, Reisenbauer D, Herkner H, et al.
Association of Intravenous Potassium and Magnesium Administration With Spontaneous Conversion of Atrial Fibrillation and Atrial Flutter in the Emergency Department.
JAMA Netw Open. 2022 Oct 3;5(10):e2237234. PMID: 36260333.

AFではKとMgの投与と洞調律復帰に関連があったが、AFLではなかった。

SAHの患者さんでは血圧の話は必ずするし、AFになると必ず電解質が話題になる。でも、いまだに観察研究が行われているレベル。
まだまだ世の中には研究ネタがたくさん。ただしRCTのネタであって、これ以上観察研究を積み重ねても情報は増えない。
エネルギーのある方、お待ちしております。
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”Nが足りない問題”には陥らないようにしよう。

2022年11月27日 | EBM関連
Rein L, Calero K, Shah R, et al.
Randomized Phase 3 Trial of Ruxolitinib for COVID-19-Associated Acute Respiratory Distress Syndrome.
Crit Care Med. 2022 Dec 1;50(12):1701-1713. PMID: 36226977.


Ruxolitinib(JAK阻害剤)をステロイドと併用(90%)すると、28日死亡率は、コントロール 70%に対し、Ruxolitinib 15mg投与群で51%(片側p=0.029)、Ruxolitinib 5mg投与群で53%(片側p=0.028)と有意差なし。
コントロール群の死亡率が高すぎるのでは?という疑問はあるものの。
オッズ比は0.46と0.42ですよ。あれまー。

全ての問題は、Nが211しかないこと。
Editorialにも、"Underpowered clinical trials leave us with a sour taste."と書いてある。ほんと、サワー。

若いICU医の皆様へ、隠居した年寄りからお願いです。
多施設RCT、やってください。
ただし、”Nが足りない問題”には陥らないようにしてください。
そのためには、仲間が必要です。
「こんな研究やろうと思うんだけど、一緒にやらない?」だと、あまり数は集まりません。
そうではなくて、まず、多施設RCTをやりたい人たちで集まってください。
すでに日本でもCTGという名前のついた活動が行われているし、国際的なCTGに参加するのもいいでしょう。ただ、継続的に1つのグループが研究を行なっていくという活動ではなかったり、「これをやれ」と言われるだけだったりしてしまうかもしれない。
それよりも、仲間で集まって、「何やる?」って話をする方が楽しいかもよ。

昔やった、足掻き。
僕にはエネルギーが足りなかった。
多施設ランダム化比較試験の施行のための臨床研究グループ設立への提言. 日集中医誌.2005;12:156~158.
JSEPTIC-CTG の進むべき道
CRRT多施設後ろ向き観察研究の総括 (の一歩手前)

エネルギーがあって性格の良い人、いない?
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ESICM2022

2022年10月28日 | EBM関連
花の都で行われた今年のESICM
JAMAとNEJMから送られてきたon-line pubのリストをまとめておきます。

Bernard SA, Bray JE, Smith K, et al.; EXACT Investigators.
Effect of Lower vs Higher Oxygen Saturation Targets on Survival to Hospital Discharge Among Patients Resuscitated After Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The EXACT Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286192.


Fernando SM, Scott M, Talarico R, et al.
Association of Extracorporeal Membrane Oxygenation With New Mental Health Diagnoses in Adult Survivors of Critical Illness.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286084.


SuDDICU Investigators for the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group, Myburgh JA, Seppelt IM, Goodman F, et al.
Effect of Selective Decontamination of the Digestive Tract on Hospital Mortality in Critically Ill Patients Receiving Mechanical Ventilation: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286097.


Semler MW, Casey JD, Lloyd BD, et al.; Pragmatic Critical Care Research Group.
Oxygen-Saturation Targets for Critically Ill Adults Receiving Mechanical Ventilation.
N Engl J Med. 2022 Oct 24. Epub ahead of print. PMID: 36278971.


Thille AW, Gacouin A, Coudroy R, et al.; REVA Research Network.
Spontaneous-Breathing Trials with Pressure-Support Ventilation or a T-Piece.
N Engl J Med. 2022 Oct 26 Epub ahead of print. PMID: 36286317.


TEAM Study Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group, Hodgson CL, Bailey M, Bellomo R, et al.
Early Active Mobilization during Mechanical Ventilation in the ICU.
N Engl J Med. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286256.


Andersen-Ranberg NC, Poulsen LM, Perner A, et al.; AID-ICU Trial Group.
Haloperidol for the Treatment of Delirium in ICU Patients.
N Engl J Med. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286254.


ふー。
コピペするだけで疲れたよ。

沢山あって読めないので、とりあえずconclusionだけ見たら、ECMOの観察研究以外全部に"did not"って書いてあった。でも、「だからICUでRCTやっても無駄なんだよ」なんて思っちゃダメですよ。
・対象を変えたら有効が示されるかもしれない
・Nを増やしたら有効性が示されるかもしれない
・一つ一つ調べていくことが医療の進歩につながる
・無駄な医療を提供する必要がなくなって、患者さんも医療者もメリットがある
と考えましょう。

さて、週末にでもじっくり読みましょうかね。
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機械による補助は早期に導入するべきか?

2022年10月19日 | EBM関連
Tran A, Fernando SM, Rochwerg B, et al.
Prognostic factors associated with mortality among patients receiving venovenous extracorporeal membrane oxygenation for COVID-19: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Respir Med. 2022 Oct 10 Epub ahead of print. PMID: 36228638.

COVIDに対するECMOについてのメタ解析。42の観察研究(N=17449)。予後と関連のある因子は、高齢、男性、長いMV期間、高いPCO2、高いdriving pressure、そしてECMO症例が少ない施設。結論の一つは、"The prognostic factors identified highlight ... the effect of injurious lung ventilation"。

Castro I, Relvas M, Gameiro J, et al.
The impact of early versus late initiation of renal replacement therapy in critically ill patients with acute kidney injury on mortality and clinical outcomes: a meta-analysis.
Clin Kidney J. 2022 May 12;15(10):1932-1945. PMID: 36158157.

AKIに対するRRTの開始タイミングについての13のRCTのメタ解析。早期のRRT導入は28日死亡率には効果がなく(RR=1.00)、低血圧と感染が増えた。

メッセージは伝わっただろうか。
どちらもメタ解析だけど、片方は観察研究、もう片方はRCTのメタ解析。当然、RCTがたくさん行われる前には観察研究がたくさん行われ(僕もこんな研究してた)、早期のRRT導入は有効である可能性が示唆され、RCTが複数行われて、否定されている。
つまりは言いたいことはいつも同じで、こういうこととかこういうことです。
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PCI/CAGに関しての文献2つ、でも循環器系の話ではありません。

2022年09月24日 | EBM関連
JAMA系の雑誌に、PCI/CAGに関しての文献が2つ発表された。

Jolly SS, AlRashidi S, d'Entremont MA, et al.
Routine Ultrasonography Guidance for Femoral Vascular Access for Cardiac Procedures: The UNIVERSAL Randomized Clinical Trial.
JAMA Cardiol. 2022 Sep 18. PMID: 36116089.

鼠径の動脈穿刺時にエコーを使うかどうかでRCT、N=621。エコーを使うと誤穿刺が減って試行回数が減る。

James MT, Har BJ, Tyrrell BD, et al.
Effect of Clinical Decision Support With Audit and Feedback on Prevention of Acute Kidney Injury in Patients Undergoing Coronary Angiography: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Sep 6;328(9):839-849. PMID: 36066520.

34人の循環器内科医に対するCAG/PCI後のAKI発生減少を目的とした教育、造影剤投与量計算、フィードバックの導入前後で比較。患者はAKIの発生リスクが高い約4000例。その結果、造影剤の過量投与が減り、補液の少ない患者の割合が減り、AKIの発生頻度が減った(オッズ比0.72)。

「当たり前のことをしたら当たり前の結果が出ただけ。循環器内科医さん、大丈夫?」
と言いたくなるのをグッと抑えて、一般化してみる。

当たり前のことを知らない人もいるし、
つい間違ったことをしてしまうこともあるし、
自分の能力はだれでも過信するし。
だからプロトコルとかルールとかが必要なんでしょう。教育だけでは防げない。

あ、「プロトコルとかルールを作っても守られない」と思った方は、こちらを。
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昨日の追記

2022年08月28日 | EBM関連
ピヴラッツっていう薬、知ってますか?
の続き。

SAHという、比較的頻度が高い疾患で、かつ他の脳卒中よりも年齢の若い人に発症する疾患に対して有益な治療法が証明されたら、それはNEJMクラスの研究になる。
ではどうして日本の保険適応を獲得する理由となった研究がJournal of Neurosurgery(impact factor: 5.115)レベルなのか。この薬を使うべきか悩んでいる人は考えた方がいい。

ちなみに、同じ目的で以前から日本で使われているfasudil。これも日本の保険適応を獲得する理由となった研究はちょうど30年前に同じ雑誌に掲載されている。そして、これは常識だと思うけど、fasudilはガイドラインに記載すらされていない。さらにちなみに、このガイドラインはもう10年も前だけど、CONSCIOUS studiesについては記載がある。もちろん、ネガティブだったで終了。

日本の外にいれば、どうするべきかは明白にわかるはず。普通にエビデンスレビューして、副作用と費用を考えればいいのだから。でも日本の中にいるとそうは行かない。きっと、この薬のために1年で100億円の税金が使われることでしょう。

すごい話だと思わない?
僕は思う。
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"Salami-slicing"=1つのデータを複数の文献に分割すること

2022年07月30日 | EBM関連
最近、身近なところでこのサラミについてのトラブルが発生。
データベースを運営し、そのデータを使って複数の研究もしている身として、十分な知識がないことに気がつき、改めて勉強することにした。どんな時がアウトで、どんな時は許容されるのか。

まず手元にある文献で記載のあるものを探したところ、これがあった。
Klein AA, Pozniak A, Pandit JJ.
Salami slicing or living off the fat? Justifying multiple publications from a single HIV dataset.
Anaesthesia. 2014 Mar;69(3):195-8. PMID: 24548349.

これによると、サラミにはならないのは、
・異なる質問がなされたりアウトカムが非常に異なる時に、同じデータセットがこれらの質問に対する答えを提供することができる場合で、
・文献にそれぞれの仮説を明確に定義し、データが他の文献で発表されたことを認め、同じデータベースから他の研究があればそれを参照し、なぜ今回の分析が正当化されるのかを説明した場合
であると。なるほど。

この文献はある研究についてのeditorialなので、もっとちゃんとした定義はないかとPubMedを探してみた。するとこれが見つかった。
Ding D, Nguyen B, Gebel K, et al.
Duplicate and salami publication: a prevalence study of journal policies.
Int J Epidemiol. 2020 Feb 1;49(1):281-288. PMID: 32244256.

つまり、明確な定義はなく、雑誌の対応もバラバラであることが分かった。

なので研究者としては常識的かつ誠実に行動することが求められる、ということかな。

この文献にあった推奨をコピペして今日は終了。
i. 真の科学的貢献と実社会への影響を考慮し、同一研究からの論文数を最小限に抑え、品質と包括性を最大化する。
ii. 複数の論文を発表する必要がある場合は、論文間の重複を最小限に抑え、カバーレターで既に発表または投稿された同じデータからの他の論文に言及するようにする。

ーーーーーーーーーー
追記。
文献を書いていて、ついやってしまう悪いことのもう一つの代表例が剽窃。
過去ログを紹介しておきます。
Plagiarismとは盗用/剽窃という意味
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集中治療系雑誌のimpact factor 2021

2022年07月03日 | EBM関連
今年はインフレがすごい。

特にICMの上がり方は異常、なんと去年の2.4倍、全医学雑誌の52位(去年は176位)になった。
他の雑誌も、CCRが2.6倍、CCが2.1倍、JICが1.9倍と、すごい上がり方。

きっと計算方法が変わったに違いないと思い、調べてみたところ、なんと変わったのは今年じゃなくて去年だった。
例年、IFが増えている雑誌の方が多いけど、去年はほとんどの雑誌が増えていた。
こちらから引用)

理由はここに書いてある通りで、以前は紙の雑誌の発行日で数えていたけど、去年からオンラインの発行日で数えるようになったので、一過性に文献数が増えた、ということだそうだ。

じゃあどうして集中治療系の雑誌のIFがこんなに上がったのだろう?
Clarivate(IFを発表している会社)の公式ブログに記載があった。
簡単に言えば、COVIDの文献がたくさん発表され、たくさん引用されたのが原因だそうだ。特に general medicine, critical care, public health, infectious diseases, immunology, basic biomedical sciencesでその影響が大きかったと。
なるほど〜。

で、これを読んで初めて知ったのだけど、過去45年間ずっと総合雑誌のトップだったNEJMを抜いて、今年初めてLancetがトップになったのだそうだ。
理由は、2021年に発表された全ての文献でもっとも引用された10文献のうち3つがLancetだったから。もちろん3つ全部がCOVID関連。

最後にインフレの進行速度について。
全ての雑誌のimpact factorの平均値と中央値を計算してみた。

わあ。ずっと徐々に上がっていたけど、ここ2年は計算方法の変更とCOVIDのせいで上昇速度が加速している。

6、7年で倍になってしまう数字って、どうなんだろう?
Impact factorが何点の雑誌という表現自体が、ちょっとどうなんだろうかという気になってしまう。
それとも、(日本以外の)お金と同じで、インフレが当たり前なのかな。
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集中治療系雑誌で撤回された文献のシステマティックレビュー

2022年04月22日 | EBM関連
ちょっと変わってる。

Audisio K, Soletti GJ, Cancelli G, et al.
Systematic review of retracted articles in critical care medicine.
Br J Anaesth. 2022 Apr;128(4):e292-e294. PMID: 35181059.


麻酔科系雑誌は文献の撤回が多くて有名。有名な人が数人いるからね(名前を知りたい人は読んでください。日本人もいるよ)。で、集中治療はどうかな?という疑問を持って、調べてみたのがこの”研究”。

なんと、The Retraction Watch Databaseというウェブサイトがあって、撤回された文献を調べることができるのだそうだ。で、1990〜2020年で42の文献が撤回されていて、そのうち59%は麻酔科の有名人によるものだった、と。

集中治療医には正直者が多いらしい。よかった、よかった。
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脳外科雑誌に掲載される文献の著者の数が年々増えているそうだ。では集中治療系雑誌は?

2022年02月15日 | EBM関連
Cole TS, Pacult MA, Lawton MT.
Increasing author counts in neurosurgical journals from 1980 to 2020.
J Neurosurg. 2021 Aug 6:1-5. PMID: 34359040.


1980-2020年に脳外科系のメジャー雑誌4つ(Neurosurgery, Journal of Neurosurgery, JNS: Pediatrics, and JNS: Spine)に掲載された研究論文の著者数を調べたら、1980-85年では平均2.81人だったのに、2016-2020年は7.97人になっていた。
多施設研究が増えた、研究が複雑になっていろいろな人が参加するようになった、academic careerとしての研究の義務が増えた、などなど複数の理由が考えられる、と。

確かに昔の文献をPubMedで見かけると、著者の数って少ない。そーか、平均って3人くらいだったんだね。

さて、では集中治療系雑誌ではどうなんだろう?
PubMedで検索結果がダウンロードできるのだから、結構簡単に作れそう。
と思い、やってみた。
雑誌は、Intensive Care Medicine、Critical Care Medicine、Critical Careの3つ(ただしCCは1997年に発刊)。


脳外科系雑誌とまったく同じ感じで増えていた。1980年が平均3人、2020年が8人。

ちょっと面白いのは、ICMのポリシーが変わってimpact factorが急速に伸びだした2013年頃から、ICMでは著者数が増えなくなった(投稿規定には著者数の制限は記載がない)。
そして時を同じくして、CCMの著者数が一過性に減少している。
理由はよく分からないけど、1つの雑誌のポリシー変更がいろいろな方面に影響を与えていそうな感じはする。

だから何?的な話だけど、なんか面白い。
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