コキュートスの記憶

日々の出来事とか戦果(買い物)とか。
主にガンダムを中心にしています。

宿敵の幻影

2010年03月23日 | 短編
本日は、SDクラブ第12号から
モビルスーツコレクション・ノベルズAct.5「宿敵の幻影」

モニターでは、ドム系に似た機体が
連邦軍のハイザックと戦う映像が映し出されていた。
新型の機体は、出力と装甲でハイザックを上回るが、
小回りが利かず、戦況は五分だった。

ケンは新型機のミーティングに参加していた。
赤い軍服の男は、クワトロ大尉、ひげ面の軍人はブレックス准将、
どうやら開発スタッフを集めた緊急ミーティングの主役らしい。
にしても、ケンはシミュレーターを任されている立場とは言え、
参加者の中では最年少で、場違いという気分が強かった。

新型機は、高性能な量産機という要求を満たすには至っていない。
時間、コストの両面での節約を計るため、アナハイムで製造してる
連邦軍の機体と共通のムーバブルフレームを基本構造としており、
使用できるジェネレーターが限られていた。
それが足枷となり、出力不足が生じているらしい。

そこで、クワトロが話し始めた。
戦後、ジオン系の技術者がガンダリウムを改良を行った。
結果、この金属の量産化の技術が確立し、新型機にも採用される。
技術者たちは、不可能が可能になるとざわついた。

ガンマガンダム計画-。
最初から数えて、三番目の改良型であることからガンダリウムγ。
新材料の名を取り、プロジェクト名は、改称された。

クワトロはガンマガンダムのシミュレーションに参加していた。
サラミス級の攻撃をかわし、死角に取り付いた。
その段になって、ようやく敵機が集まりつつあった。
手早くブリッジを破壊し、離脱する。
息を抜いた途端、ハイザックが太陽光を背に突進して来た。
ブランクがあったとは言え、先手を許した甘さを恥じた。
マニュアルの回避運動をするハイザックを撃破し、
続いて接近したガルバルディβをクレイバズーカで墜とした。

爆発するガルバルディβを回避した瞬間、
正確なビームがガンマガンダムの装甲を焼いた。
レンジ外からの正確な攻撃を可能とする敵は一人しか思い付かない。
「まさか?」
二撃目を辛うじて回避し、射撃点に向かって最大加速する。
忘れもしない白い機体の姿がそこにはあった。
プログラム担当者が何の意図もなく、最強の敵を設定したのだろう。
「笑えん冗談だな…」

弾切れとなったクレイバズーカを捨て、間合いを縮める。
ガンダムはバルカンで誘うが、ガンマガンダムに致命傷を与えることは
出来ないと判断したクワトロは、敢えてそれを避けなかった。
被弾したメインカメラがサブに切り替わる僅かな間にガンダムは接近。
しかし、クワトロも冷静にハイパービームサーベルを抜いていた。
互いのサーベルが交差するが、出力の勝るガンマガンダムのサーベルは
相手の刃を寸断し、ガンダムの腰の辺りを一閃した。
クワトロは、鈍い動きで宙域から離脱しようとするガンダムに向かって
ビームピストルを連射した。ガンダムはやがて光球となった。
「しょせんは、シミュレーションか…」
クワトロは、呆気ない幕切れに落胆した。

ケンは興奮していた。
「スゴいですね、アムロ・レイを倒したのは大尉が初めてです!」
クワトロはシニカルな調子で答えた。
「こいつだったら、赤い彗星ですらアムロ・レイに勝てるさ」

クワトロは、眼下に見えるロールアウトしたばかりの試作機に目を留め、
「とてもガンダムには見えんな」と呟いた。
一ヶ月後、正式に「リック・ディアス」と決定した。
クワトロの命名である。

アナハイムのギリシャ文字を関した計画名は、ここから始まります。
ガンダリウムγを使用した機体なので、γガンダム計画。
ので、αガンダム計画や、βガンダム計画は存在しません。
だって、あったら初めからγガンダム計画のハズですもん。

■人物
・クワトロ・バジーナ大尉
サングラスを掛けた赤い軍服の男。
・ブレックス・フォーラ准将
エゥーゴの代表。
・メラニー・ヒュー・カーバイン
アナハイムの代表。
・ケン
RX-098のシミュレーターを担当する若者。

■機体
・プロトタイプリック・ディアス
エゥーゴの高性能量産機の試作機。通称、ガンマガンダム。
・リック・ディアス
ガンマガンダムをベースにした高性能量産機。
コメント
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