LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ(動画): 冬の低気圧の雲を越えサンディエゴまで気合いのフライト第一話

2008-12-20 | Flight Log (機長)

本来なら週末前から前線通過によるストームで天気は下り坂なはずだったが、予報よりも天気が崩れるのが遅れているようだった。この日は寒空に2500ftから7000ftくらいまで雲は点々としているものの、特に問題なく飛べそうな感じだった。北カリフォルニアはSFC(地上)からIcing AIRMETが出ており、known-icing certifiedの機体じゃないかぎり雲の中に入るようなフライトはできない。ただ、南カリフォルニアではBig Bear Mountainなどで雪が降っているものの、Icing ARIMETは出ておらず、早朝のPilot reportでも1万ft以下の高度でIcingは無く、known icingの天候とまで言えないのではないかと判断。

かと言って、確かにVFRで気軽に高い高度に上がれる感じではないので、もし飛ぶならIFRになる。あまりCeilingが低いようなら危険なフライトになるが、San Diego周辺の空域に5000-8000ft程度のFewからBrokenといった程度の雲が散らばっているなら大丈夫だと考えた。目的地は今まで降りたことがないSan DiegoのRamona Airport (RNM)に決めた。Ramonaの雲の高さは3500ft Broken、5000ft Brokenという感じ。上空の気温や風速を調べると、冬のストームが訪れている南カリフォルニアの本日の空は、5000ftより上で確実に摂氏零度以下の世界。雲の中に入ればIcingを起こす。

朝のTorrance Airportに到着、MooneyのPreflightを入念に行い、気合いを入れて機体に乗り込みエンジン始動。Ramona AirportまでのTower Enroute IFR Clearanceをリクエストした。もらったClearanceは:

Cleared to RNM; fly Runway heading, intercept LAX 170, LIMBO, V64, V363, DANAH, V23, Oceanside VOR, V208, Julian VOR, Direct; 3000ft expect 7000ft 10min after departure, 134.9 for Socal Dep, Squawk 47XX。

Torrance Airport Rwy29Rからストレートアウト、Socal Dapartureにハンドオフされていつものように左旋回でレーダーベクター開始。最終的にHeading 090でV23をインタセプトするように言われた。IFR Chartを見れば分るが、これでSeal Beach VORを越えて東に飛び、V363-DANAH-V23という面倒なルートを飛ぶ必要がなくなった。最初は5000ftで飛行、途中6000ft、7000ft、と徐々に高度を上げ、順調に飛ぶ続けた。氷点下で7000ftを飛行していると機体はすこぶる調子よい。回転数2370rpmという設定でIASがこの高度でありながら135kt、Ground Speedは160ktと快適飛行。

V23を半分くらい残したことろで、Socal ApproachからRamona Airportのアプローチは何がいい?と聞かれ、即座にVOR/DMEと答えた。雲の状態を考えるとVisual Approachも可能だったが、ここはHolding Patternを回るFull Approachが打ちたい!と思うのは当然。そうするとDirect Oceanside VOR, Direct Julian VORとのうれしいDirect指示。Oceanside VORの手前で8000ftへ上昇させられ、そしてJulian VORに向かっていくと辺りは雲の中。完全なOvercast。丁度自分が飛行する高い位置に雲が点々としている。雲を避けられず雲に入ることが何度もあったが、ウインドシールドは凍ってしまい、雲から出て20秒くらいでウィンドシールドの氷が溶ける。持続的なStructural Icingではなかったが、Icingは気持ちよいものではない。機体だけではなくキャブアイシングにも備え、キャブレター温度計に目をやりながらキャブヒートを調整して適温を維持した。低気圧の雲の上や雲の中は流石に揺れる。シングルエンジンで山岳部の雲の上を飛ぶのはあまり賢明ではないのを承知しているが、Ceilingが高いのと8000ftの高度があれば平地までグライドできるという大凡の計算あってのこと。

Julian VORに向かって低気圧の雲の上を飛ぶ動画
http://www.youtube.com/watch?v=rou_sjq2yxQ


Julian VORが近くなった所でSocal Approachから呼ばれ、"Julian VOR at or above 8000feet, cleared for VOR/DME Approach RNM"とのこと。いよいよ低気圧の雲の合間を縫ってFull Approachを打つ事になった。貴重な経験だと思う。Tear drop entryでJulian VOR 060 radialのnon-standard holding patternを1周することになった。Atidude indicatorを始めとする6packsの基本計器を随時スキャンし、Vacuum Pump Pressureやエンジン計器、そしてキャブ温度計なども適時スキャン。Julian VOR上空の雲に覆われた世界の中で、小型機Mooneyの機内に自分ただ一人、緊張した孤独な時間が流れる。本当に雲の中でのHoldingはかなり気流が不安定で上下したが、それでもまあまあのHoldingができたと思う。light icingと言えるほどでもないが、Holdingを終えると機体には氷がついているのが見える。これは良くない。

雲の中でのHoldingから出て、いよいよApproachの降下開始。大きな雲の間を抜けて、雨の中を突き抜けてのInstrument Approach。Single Pilot IFR Flightとしては気合いの入るステージに突入。この続きは第二話で。







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3 コメント

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RNM (DAIJA)
2008-12-20 22:53:59
RNMにアプローチされたのですね。
冬季運航は(特に装備の完璧でない単発機では)本当に気をつかいますよね。
文章からその様子がとても伝わってきて私の手まで汗でじっとりしてしまいそうです。
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Unknown (koba)
2008-12-21 11:14:32
すごいですねー。
やはりIFRがあるとGAの世界が広がりますね。

第二話、期待しております。
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Unknown (C2)
2008-12-21 15:29:28
>DAIJAさん
単発機だとMalibuなどの与圧機能まで装備した機体は別にして、Known-icingの天候に合法的に入っていける機体が少ないですよね。Cirrusなどもde-icingの装備がオプションでありますが、known-icing condition certifiedではないので、あくまでも非常事態の時に使うだけです。MooneyではKnown-icingに入っていける機体を時々目にしますが、やはりそういう機体が欲しいなと思ってしまいます。もちろん強烈なicingの天候に入っていく気はしませんが、冬場はちょっとした高度のちょっとした雲に入っただけで氷が着くので、”合法”にIFRを楽しむにはKnown-icing certifiedの機体が欲しいなと思います。

>kobaさん
IFRは死に一番近い免許ですので、どこに線を引くかが重要だと思っています。単発で軽装備の4人乗り機では、どこまで世界を広げるかということに慎重にならないといけないなと、自分をいつも戒めるようにしています。今回のフライトはもう一捻り思考を巡らせて天候状態を読めばよかったかなと思ったりもしています。
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