LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

Student Solo Flightとは危険な行為なのか?

2011-05-08 | 航空関連エッセイ

自分のFirst Solo Flightは苦い思い出と感動が入り交じったものになっている。ちょっと横風が強めの中、教官がギリギリの判断でSoloを許してくれた。もちろん危険極まりなければ許可されなかったであろうが、もしかしたらSoloは次回!と言われてもしかたなかったかもしれないと思っている。それくらい、Solo当日の私の着陸の出来は良いものじゃなかった。今思えばどこがまずい着陸だったか明確に理解できるが、ソフトな接地はできていると思っていた当時の自分には、教官が伝えたかった安全な着陸という部分が見えていなかった気がする。上空で粘り切れず、ソフトな接地にこだわり過ぎて接地速度が速く、横風などではふらついてしまう可能性のあるまずい着陸だった。

そんな当時の失敗談、勘違いも、1000時間近く飛んできた今だからこそ見えるようになっている。そこでふと疑問に思い調べてみたのが、First Student Solo Flightとはどれくらい危険な行為、冒険なのだろうか?ということ。色々なデータがあるが、Aviation,Space, and Environmental MedicineというJournalに面白い論文(Shrot Communication)が掲載されていた。

その論文では、2001年から2005年までの間の飛行機事故をNTSBのデータベースから調べ上げ、その中でStudent Soloに関わる390例の事故について分析をしている。このSolo FlightにはFirst Local Soloだけではなく、Second Local Solo, Local Solo Flight for TGL, Local Solo Flight Airport-to-Airport, Cross Country Soloなども含まれる。1年間平均で5万枚以上の操縦訓練許可書(FAA Student Pilot Certificate)が発行されるアメリカの現状を考えると、Student Solo Flightは何十万件と行われているはずで、1年当たり80件弱というSolo Flight事故件数は予想に反して低いと言える。更にその死亡事故について分析すると、390例中わずか14例(4%)であった。もっとも多かったのは390例中323例に見られたパイロットが全く負傷しなかったというもの。この理由は何故かというと、ほんどの事故がラウンドアウトからフレア時の操縦ミスや横風判断などのミスであり、低空低速度での事故が多いという分析結果になっている。どんなStundentが事故を起こし易いかと分析した結果、First Solo Flightまで100時間以上の飛行訓練を有した集団に有意差が出た。ただ、Soloまで100時間以上かかったらパイロット免許は諦めろという結論には至らない。そのような学習曲線が緩慢な100時間越えのStudent Pilotに対しては、First Soloを許可する時の気象条件、本人の体調、その日の着陸の調子など、担当フライトインストラクターがさらに慎重な判断さえすればいいのだ。

ちなみに、この390例の事故例の当事者となる390人のStudent Pilotの平均年齢は37.2歳、最低15歳で、最高は81歳!!とのこと。アメリカらしいデータだなと思う。

ということで、その論文を読む限り、きちんとしたインストラクターがSoloに出ても大丈夫と判断したなら、その判断に大きな間違いはないと信じて良さそうだ。Student Soloが他のフライトに比べて特段に危険ということはない。

 

 

 

 

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2 コメント

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student solo (socal choppers)
2011-05-09 14:48:01
ちょっと名前を変えてみました。捻りが無いのにはご勘弁を。
固定翼と回転翼とでsutudent soloの技術も内容も異なるとは思いますが、我々ヘリでのFirst soloはいわゆるホバリングをします。ただ1~2メーターほど宙に浮くだけですが、みんな汗だくで必死にトライします。技術的に“飛べる”というのではなく知識も精神的にも”機長”になれるレベルにならなければさすがにStudent pilot のendorseは出せません。ちまたの世界では大人の生徒さんたちも初めての経験の重圧でおなかが痛くなったり、歯が痛くなったりと色々ですが、我々,CFIがお墨付きで出す訳ですから飛べるのは当然です。しかも本人たちも初めての経験に緊張し、慎重に取り組むという結果が事故件数を少なくする結果だと思います。PPLを取ったあとの事故件数が多くなるのは注意深くなくなってしまったり、更なる技術を教えてくれるインストラクターとの同乗をしなくなるという事が、悪い結果につながる原因と思います。エビエーションは日々何か学ぶ事があります。First soloの緊張感を忘れずにSafety 1stで大空を楽しみましょう!
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Unknown (C2)
2011-05-18 09:17:18
>socal chopperさん
精神的にも機長に慣れるというのが基準というのは含蓄のある言葉ですね。慎重に取り組み限界を設定しているのがソロフライトで、むしろ気が揺るんで自身の限界を越えてしまうような無理をする可能性があるのがPPL取得後の完全自己判断の世界。統計学的な事実と合致していると思います。
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