LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

Business Jetの風雲児達が次々と倒産するなかで、、

2008-12-02 | 航空関連エッセイ
ここ数年、VLJ(Very Light Jet)と呼ばれる新しいカテゴリーに属する小型のビジネスジェットが次々と発表されてきた。ユニークなデザインのAdam A700や、一時は大成功するように見えたEclipse500など、3百万ドル以下の価格設定でシングルパイロットで飛ばせるジェット達が誌上をに賑わせてきた。ただ、ここに来て、かなりの数のVLJの会社が傾き、そして倒産している。Adamは今年始めに倒産(Chapter7 Bankruptcy)、そして何とVLJの代表格で多くのバックオーダーを抱えているEclipseまでが11月末にChapter11 Bankruptcyとなってしまった。

Adam 700という機体を初めて見た時、その斬新なデザインに驚いたものだが、内装などは取って付けた感じの貧相なものだった。何か計画に括弧たるものがない、不確定要素が多いことを感じさせる出来であった。Eclipse 500については外見こそ斬新さはないが、価格に不釣り合いなほどの性能と格好よいデザインには驚かされた。ただ、実際に駐機しているEclipse500を間近で見た時、その作りの雑さには少々がっかりさせられたのを覚えている。Eclipse500の機体そのもの(胴体や翼)の構造はしっかりしているのだろうが、塗装や内装などの最後の仕上げの甘さを感じざるを得なかった。私が将来を予想した!などと偉そうな事は言わないが、いくつかの新興低価格のVLJには計画の危うさ、そして突貫性を感じ、そういう機体を作る会社は倒れていってしまった。私が感じたような事を、実際にVLJを購入できるような裕福な顧客達も感じていたのだろうか。

それに引き換え、老舗の作るVLJ、Cessna Citation Mustangなどは順調な滑り出しを見せている。先日Torrance AirportのTransient Parkingに駐機するMustangの実機を初めて見たが、その作りは兄貴分のCitation Seriesと同じ素晴らしい出来。Eclipse500とは細部に渡る仕上げにおいて比べ物にならない、十分に価格差に見合うだけの美しい仕上がりの機体だった。流石ビジネスジェットの老舗、セスナ社のVLJは格が違うと思った。

未だ実機を見た事がないが、Hondajetも相当すばらしい仕上がりなんだろうと思う。他のVLJはプログラムの立ち上げから実機の作成まで極々短時間で済ませているが、HONDAは異例なほど長い時間をかけている。未経験の分野ゆえに時間がかかるのだろうが、何よりも今まで積み上げてきたHONDAブランドの信頼性をVLJプログラムの失敗で失いことを避けたいという理由もあるのだろう。写真で見るだけでは何とも言えないが、少なくてもHONDAという企業の性格、そして十分な時間をかけた計画の両方を考慮しても、中途半端な "もの作り" はしてこないと思う。とてつもない信頼性の機体、細部までチリのあった素晴らしい仕上げの機体になるのではないかと期待している。地球上でこういう仕事は日本人だけにしかできないという結果を世界に見せつけて欲しいものだ。

最近になり、小型飛行機の老舗Piper社のVLJ、Piper Jetの全貌が見えてきた。Piper社はHONDAと提携して Hondajetのディーラーやメンテナンスをすることになっているが、Hondajetとぶつからない市場、Single EngineのVLJという分野を開拓してきた。DC10を彷彿させる垂直尾翼にマウントされたジェットエンジンに、パイパーの伝統的な胴体デザインを組み合わせ、多少目立ち気味なウイングレットを持つ主翼、一目でそれとわかる特徴的な外観だ。最近のPiperの機体の品質管理には疑問を感じる事が多く、中国に下請けに出している部品の品質低下などはひどいものがある。Piper JetもPiperの悪いところを受け継ぐようになるのかなと心配していたが、誌上で確認する限りはなかなかの出来に見える。やはり既に歴史もあり、他の機体販売でキャッシュフローもある企業ゆえに、新興ベンチャー企業のような突貫性は低いということなのだろうか。Piper Jetの内装レイアウトはMeridianやMirageなどのような4人乗りの座席配置で、操縦席は2座席。360ktの巡航速度を誇り、標準的着陸距離は2500ftくらいになるという。Piper特有の雑さを排除し、しっかりした作りでPiper Jetを送りだせば、彼らのプログラムは成功するのではないかなというのが私の印象。

他にもCirrus JetやDiamond Jetなど、シングルエンジンのVLJが続々登場してくる。どんどん不景気になる今日この頃だが、是非ともこれ以上倒産が続いてVLJの機種が経るのだけは避けて欲しいものだ。



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2 コメント

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Unknown (くらげ)
2008-12-02 22:36:19
航空機関係の業務は本当に大変だと思います。
トラブルが出尽くしてから本格的に販売するのが良いと思いますね。しかし、他社との競争があるのでいち早く販売したい気持ちも理解できますが、影も形もない段階で販売を急ぎ、完成、納入の遅れで軽く2年は遅れて、マイナートラブル続出がパターン化しているような気がします。

一つの機種を大量に保有するよりも、様々なメーカーの航空機を運用する方が、リスクも分散できてよいのではないでしょうか。本当は色々な航空機を見たいだけですが。
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Unknown (C2)
2008-12-03 05:34:27
"影も形もない段階で販売を急ぎ、完成、納入の遅れで軽く2年は遅れて、マイナートラブル続出がパターン化しているような気がします"というのはおっしゃる通り!という感じです。同感です。陰も形もない段階でお金が集まりプロジェクトが動き始めるのがアメリカの凄いところです。完全にギャンブル感覚の投資だと思います。

多くの種類の航空機を保有するのも一つの戦略だと思いますが、ただ整備も含めた機体維持を考えた場合には機種が少ない方がコストを下げられます。South Westが好例です。そうは言っても、Eclipse500の1機種のみでエアタクシーをやる!と旗揚げしたDay Jetが潰れ、そのあおりでEclipse AviationもChapter 11 Bankruptcy。出入りが激しいというか、動きが激しいですね、アメリカの航空業界は。
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