LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:ビッグベアーレイクまで飛行機で家族旅行 第二話

2010-09-17 | Flight Log (機長)
Big Bear Lakeでの1泊旅行を楽しみ、いよいよ帰途につくことに。7000ftの高地にあるBig Bear Lakeは晴れだが、この時のロサンゼルス全域は2000ftくらいの高さでOvercastという天気。つまり、我々は完全に雲の上に居ることになる。

天気予報などでも、この日は午後から少し雲が晴れてくると思っていたのだが、生憎Overcastのままで、これはIFRでないと帰れないと判断。VFRで高めの高度を飛び、最後の最後でアプローチだけクリアランスを取るというのも可能だが、こんな天気ではIFRの機体が多く、そういう飛び方をするとかなり待たされたりする可能性がある。雲を避けながらLAX Class B Airspaceを避けるのも面倒だ。潔くIFR Flight Planを入れることにした。

トーランス空港のMETARを取ると1500ft Overcastとのこと。ILSがあるRwy29Rを使えば、straight inでもcircle to landでも楽勝で降りれる天気だ。Flight Service Stationに電話し、IFR flight planをファイルした。とりあえずL35-V8-PDZ-V8-SLI directというルートを入れてみた。離陸は15時、2200Zとした。

さっそく両タンクに7.5galづつ燃料を入れ、Fuel Reserveを増やす。エンジン始動、Big Bear Airport Rwy26にタクシー。機体の調子は悪くないし、燃料は60%くらい入っている。この日のDensity Altitudeは9400ft!!!!、強烈だった。なんせ高度7000ft近い高地ながら気温が24度だったから当然だ。ランナップの後、Rwy26から離陸となったが、流石に双発のダッチェス / BE76でもなかなか上昇しない。荷物満載、この高度と気温では仕方ない。できればセネカなどの過給器が欲しいところだ。基本に忠実にピッチアップを控え、湖の上を飛び、Airseedを稼ぎ、500fpmの上昇力を維持する。これが3人乗りのシングルエンジンなら200ー300fpmの上昇が限界だろう。特にO-320/360などの4気筒エンジンの機体なら上昇は困難だろうし、4人乗りなら湖に落ちるだろう。

主翼に風を当てるように意識し、順調に高度を稼ぐ。しかし、湖の西端のダムの所まで来ても、まだ周辺の山を越えられる高度じゃない。これがシングルエンジンなら谷を下るしかない。しかし、そこは双発の利点を活かし、緊急着陸場所が少ない山林部で高度を稼いで上昇した。

8500ftでレベルオフし、Socal Approach 127.25を呼んだ。しばらく待ってくれとのことで、サンバラディーノ空港の上空通過。ここでやっとIFR flight planをopenしたいと伝えると、まだプランが来ていないようだった。結局headingを指示され、そのままV442を飛べとのこと。ここはV442からParadise VOR / PDZと南西向きに飛ぶ思っていたが、これが勘違い、というか間違い。Socal Approachからもらった変更されたクリアランスは:

V442, APLES, V386, SOGGI, Direct L35

まったく持って謎なクリアランス。これはL35から再スタートさせられるのだと思った。Cajon passを越えて砂漠へ逆戻り、9000ftで延々と北を目指す。Socal ApproachからJosua Approachにつながり、10000ftへ上昇させられる。そして再び11000ftへと上昇指示。もらったクリアランスに従い、PMD 287 radialを捕まえ、東へと飛ぶ(本来の帰路は西向き飛行!)。

ここでLA Centerへと管制圏が変わり、ここで管制官が ”Big Berar / L35に降りるのか?”と聞いて来た。当然ながら、”まったく降りる気はない!、こっちに回された!”と伝えた。そうするとheading 210との指示で、やっと遠回りから解放、PDZ VORに戻ることになった。助かった。

ところが、遠回りから解放されたと安堵したのもつかの間、KAYOH 4 Arrival!との指示がLA Centerからやってきた。ラスベガスなどから帰ってくるなら分るが、Big Bear Lakeからの近場のIFRでKAYOH 4 Arrivalは予想していなかった。にわかに忙しくなる機内。Approach Chartを取り出し、"KAYOH"のスペリングを聞き直し、やっとチャートを見つけた。LA Centerから再びSocal Approach Controlの管制圏に戻り、ここから9000-6000-5000ftとどんどん降下させられる。ここで速度を稼ぐことができた。とは言っても双発では低速機のダッチェスなので、GSで170kt程度だったと思う。

ここで再びクリアランス変更:

Direct to PDZ VOR, Depart PDZ at 270 radial, join V394, SLI VOR, Direct to TOA

これがクネクネ飛びになる面倒なルート。この時はNav2の調子があまりよくなかったので、Nav1のHSI1個を主に使ってのIFRとなった。ただ、普段からNavが1個しかない軽装備のグラマンでIFRを飛んでいるお陰で、あまり不自由なく淡々とクネクネ曲がったルートを飛んだ。

こうやって急がしいシングルパイロットIFRを飛んでいて確信したのだが、やはりシングルパイロットではNight IFRは有り得ないということ。Glass cockpitなら別だし、飛び慣れた近場のルートなら良いのかもしれないが、これだけクリアランスに変更があると、機内照明の乏しいレシプロ機のコクピットでは管制指示やクリアランスをチャートに対比することは困難だ。あと、どんなに近場からのIFR Flightであっても、Tower Enroute Controlではない限り、STAR(standard terminal arrival)などはある程度頭に入れておくべきだということ。もしくは、No STARと最初から言ってIFR Planを入れるべきだ。

途中でPDZ VORをスキップし、PDZ 270をインターセプトするように言われた。軽い近道だ。またしばらくして、左旋回でV394をインターセプトするように言われた。これもまたちょっと近道。本来はDirect SLI!という気前の良い近道を指示されたいのだが、なかなか声がかからない。

しばらく雲の絨毯の上を飛ぶ。乗客には綺麗な雲海の上を飛ぶフライトだったのだろうが、こちらは本当に忙しいフライトだ。ここに来て、嬉しいDirect SLI VORの指示が来た。4000ftで雲の直近を飛び、SLIを直線で目指す楽チンナビゲーション。SLIを過ぎてからは2000ftまで降下、ここで雲の中に突入した。

雲の中でトーランス空港のローカライザーをインターセプトした。しばらくして、雲から出て地上のモヤの中に入り、眼下にはロングビーチの海面が見える。前方にはトーランス空港のApproach Lighting Systemの光りがうっすらと見える。この日のトーランス空港は ILS Approach Rwy29R, Circle to land Rwy11Lだった。すぐにAirport Insight!とトーランス管制塔に伝え、ここからはVisual ApproachでRwy11Lへ着陸となった。

トラフィックパターンを回って着陸。ばっちり決った。この機体にも完全に乗れているなと思った。無事に駐機スポットに機体を入れ、エンジン停止。疲労度が高いが、満足度も高いフライトだった。Hobbsで1.6時間もかかってしまった。DirectでVFR Flightすれば半分の時間で済んだのに。

自分としても満足のフライトだったが、乗客として乗っていた家族にも楽しんでもらえるフライトだったと思う。旅客機で雲に入るのと、小型機で雲に入るのは赴きも違う。思い出に残るフライトになった。



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