みずけん戦記

せめてもう少しだけ、走らせてくれ。

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記9「ツールの黄昏、モンヴァントゥの頂」

2009-08-16 23:16:37 | 自転車
180人の総勢でスタートしたツールも、リタイヤによりその数を減らし、残り156人。
考えたら2回の休息日がある他は、ここまで18日ぶっ通しで毎日200km近い距離を自転車で走るというのは、もはや旅というより冒険そのものだ。

その冒険のクライマックスに、「魔の山」もしくは「死の山」と呼ばれる山、MONT VENTOUX「モンヴァントゥ」は聳えていた。

標高は1,912m、頂上付近は厳しい気候のためほとんど草木も生えず、岩がむき出しになった風景も由来となっているんかも知れない。

だがここが「魔の山」と呼ばれるようになったゆえんの一つは、1967年のツール。

当時の名選手だった、トム・シンプソンという人が山頂付近で意識を失い転倒。そのまま帰らぬ人となるという悲劇が起こった。
(余談だが、資料(サイスポ7月号付録)によると、彼の最後の言葉は「Put me back on my bike」だったらしい…)

他にも何度か選手のトラブルがあったそうで、まさに「魔の山」と呼ぶべきモンヴァントゥ。
しかし、ここを上りきらねばシャンゼリゼへの道は開けない。

ここまで見事走り抜いてきた新城、別府両選手ももちろん、トップ選手達の挑戦を、この日俺はまずHUB横浜西口店で観戦。

このHUBという店、言ってみればスポーツバー的な場所で、自転車の主要レースのテレビ中継を店内で放送し、ツール・ド・フランスについてはコラボカクテルなども出したりしていてなかなか熱を入れている。
近い所では、8月末からブエルタ・ア・エスパーニャというのがまた長丁場なので行って見ると面白いと思う。

この日俺は自転車だったため、ノンアルコールカクテルを飲みつつ最初のほうだけ観戦。あとは実家にて観戦とした。


レースは、序盤から十数人の逃げ集団が形成され、集団は来るべきモンヴァントゥに向けて力を温存するためか、一時10分以上の時間差を容認。

総合優勝争いという面では事実上の最終ステージであり、総合上位の選手達は当然本気を出してくる。そういうことを考えれば正直勝ち目の薄い逃げではあるが、それでも彼らは逃げ続けた。


最大勾配10.6%、平均勾配7.6%。

この数字を見るだけでキビチイ、モンヴァントゥの上りが始まり、いつの間にか先頭は3人。
ラボバンクのファン・マヌエル・ガラーテ、コロンビア・ハイロードのトニー・マルティン、AG2R(アージェードゥゼル)のクリストフ・リブロン
しかし、この3人も協力体勢というよりは、お互い仕掛けあいながら半ばバラバラに行くような塩梅ではあった。


一方、その3,4分程度後ろを走るメイン集団は、やはり総合優勝争いの上位は全て面子に入っており、いつ誰が仕掛けるかという状態。

まずはサクソバンクのシュレック兄弟の兄、フランク・シュレックがアタック。
だが、この時点で総合3位のアームストロングや他の主要メンバーはこれにシッカリついてくる。

続いて、総合2位のアンディが先行。これにはコンタドールが(元々彼を重点マークしていたんだろう)後ろにつける。

その後、さらにアンディがアタック、兄ちゃんを含め他の選手を引き離すが、コンタドールは振り切ることができない…

そんな中、残り10km、8km、5kmと過ぎ、いつの間にか時速20km台という強烈な向かい風を受けつつ、いつの間にか兄ちゃん達のグループも再び二人に合流、総合上位達の熱い戦いが続く。


が、忘れてはいけない。
その先に前述した逃げ選手がまだ先行して走っているのだ。
リブロンは既に脱落し、ガラーテとマルティンの二人が、1分半程度先を頑張っている。
このモンヴァントゥで、まさかの逃げが決まるのか…?

先頭の二人、後ろの二人の戦いが、同時進行で繰り広げられる魔の山。

さらに、山岳賞ジャージのペッリツォッティが一人、先頭に追いつこうというペースでその中間地点を走るという、マルチな展開。


残り4km、3km、2km。

頂上が近づき、マイヨジョーヌに差をつけたいアンディは、さらにアタックを繰り返すが、黄色いジャージのコンタドールをどーしても引き離せない。

俺も自宅のPCで、沿道で応援する観客のコスプレ全力疾走大会(笑)を眺めつつ(本当、「人はなぜコスプレをするのか?」って論文を一遍書いてみたいくらいだ…俺もやるけど)、ステージ優勝、そして総合の行方をドキドキしつつ見守っていた。


最後の最後、先頭ではガラーテが、後ろではアンディがアタック。

ガラーテは、ゴール間際の急坂でマルティンを突き放し、何とこのステージを逃げ切り勝利。

一方アンディは最後までコンタドールを引き離せず、アンディ、コンタドール、そして粘りの走りでランス・アームストロングとフランク・シュレック。

終わってみれば、まず追いつかれると思っていた逃げ集団の面子が勝利したり、総合上位の人らは仲良く近いタイムでゴールという、逆に想像だにしない結果となったのである。


また、日本人選手2人も時間内に無事ゴールし、いよいよ残るは第21ステージ。

…は来週まで引っ張る結果になりそうな悪寒だが、21ステージもまた大事なのでちゃんと書かせてくれい。

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