さてさて。
無事?ツールバブルが弾け、アクセス数が通常に戻った(IP数で5,60/日という感じ…)当ブログだが、週一ペースは変わらず、つうか最近はこれをキープするので精一杯ではあるが…昨日も仕事してきたし…
泣き言はさておき。
ツール・ド・フランスに限らず、ロードレース(とりわけ平地ステージ)で選手が勝つ方法は大きく分けて二つ。
一つは集団でのゴール前スプリント勝負を競り勝つこと。
もう一つは、集団からひたすら逃げて逃げて誰よりも先にゴールすること。
書いてしまえば簡単なのだが、やっぱり逃げて勝つというのもまた一筋縄ではいかない。
やっとの思いで集団を抜け出しても、前回書いたように基本的にはロードレースは数が多いほうが走行の面では有利なので、最後に追いつかれてしまう場合も多々ある。
しかし、それでも選手たちは逃げ続ける。
第12ステージ、集団に3分以上先行して7人の逃げ集団が、森を一文字に切るような一本道や、本当に普段はなんでもないような小さい街を、しかしその美しい風景を見るでもなくひたすらに逃げる。
逃げ集団も「集団」なので、「勝つ」ためにはその中でさらに先頭にならなければならない。
そのため、残り数キロを切ってくると彼らの中でもアタック合戦が始まる…訳だが。
12ステージは、残り20km以上あるところで突如動いた。
サクソバンクの
ニキ・セレンセンがマターリしていた他の6人に不意打ちを食らわすように勢いよくすっ飛んで行き、反応できたのはアグリチュベルの
シルヴァン・カルザッティのみ。
だが、残りはまだ20km。
Jsportsの解説者も、この距離を二人で逃げるとあっては、後ろの5人の方が形勢有利と見る。
それでもセレンセンは走る、走る。
しかも、残り5km前にしてさらにカルザッティも置いてけぼりにし、集団との差はむしろ広がっていく。
そのまま最後まで根性の走りを見せたセレンセン、見事な逃げ勝ちを収めた。個人的には彼がゴールしたときの目を見開いた表情が忘れられんなあ…
ちなみに、第12ステージのゴールにして、第13ステージのスタート地点はヴィッテルというところ。
そう、言わずと知れたアノミネラルウォーターの産地である。
だからという訳ではなかったんだろうが。
第13ステージはなんと雨。
見るからに寒そうな山の中を、今度はサーヴェロテストチームの
ハインリッヒ・ハウッスラーが逃げた。
途中までクイックステップの
シルヴァン・シャヴァネルと一緒だったが、残り50kmあたりの下り坂で彼も置き去りにし(下るのもただ乗ってるだけじゃなくて技術があるんだろうね)、降りしきる雨の中を一人走った。
しかし、こうしてテレビで見ている我々と違い、一人で逃げている選手は後ろの様子が見える訳ではないし、心境としては孤独と不安が入り混じったものがあるんだろう。まあ無線なんかもあるし、情報入手の手段がまったくない訳ではないんだけどね。
それにしても、このステージはひたすら雨。気温も10度台と相当寒かったらしいが、そんな苦境の中を一人ハウッスラーはひた走り、涙のゴールを迎えたのである。
ここまで2レース逃げの選手が勝って、ところでメイン集団はなんで追いつかない?と訝しがる向きもあるかと思う。
しかし、全21ステージの長丁場であるツール、アスタナのようにひたすら総合優勝を目指すチームなどは、ひたすら力を温存して来るべき終盤のクライマックスに備えるという思惑もあり、無闇に追いかけようとはしない。
さらに、当然だが逃げ集団に選手を送り込んでいるチームだったら、むしろメイン集団に追いついてもらいたくはない(勝つために逃げているのだからね)というわけで、あまりスピードが上がらない要素もあるにはあるのだ。
ところが第14ステージ。
やはり逃げを決めたそこそこ多人数の14人の集団の中に、コロンビアハイロードの
ジョージ・ヒンカピーという選手が入っていた。
彼はかつてあのランス・アームストロングと同チームで名アシストとして知られた身、即ちベテランなのだが。
この時総合タイムで、マイヨジョーヌの選手と5分25秒遅れ。
普通に考えたら差は大きいと考えるところだが、今回はちと状況が違う。
何しろ、メインと逃げ集団のタイム差は悠々
6分を超えているため、このまま行けばヒンカピーがマイヨジョーヌを奪取することになる訳だ。
この時マイヨジョーヌを着ていたのは
リナルド・ノチェンティーニ。彼が所属するチーム「AG2R」(フランス語で「アージェードゥゼル」と読む)は気が気ではなく、先頭を引くアスタナの後ろで様子を伺う。
逃げ集団は順当に6分以上の差をつけつつ進み、やがて集団内でのアタック合戦が始まる。
それは次第にヒートアップし、そう簡単に逃がしてたまるかいという追っかけ、さらにはカウンター(追いつきつつそのまま逃げる)が連発。
しばらくそんな状態が続き、青春漫画で言うところの「お前強いな…」「なにお前こそ…」と
ケンカが終わって川原に寝転ぶガキ大将達のような構図に(笑)。
4車線以上あろうかというコース全体に、選手達がバラけて飽和状態になったその時。
テレビ画面ですら右端の枠ギリギリ位の隙から、一人スルッと抜け出した。
もう「逃げってのはこうやるんだ」とイワンばかりの見事なスルーっぷりを見せたのは、そう、ロシアのチーム「カチューシャ」のエース級、
セルゲイ・イワノフ。
あまりの見事っぷりにガキ大将…じゃねえ(まだ引っ張るか)他の選手達はお見合い状態、追いかけるのをためらい(全員が誰かが行くんじゃないかと思うと、瞬間の判断が遅れるんだろうね)結局一人しかイワノフについて行けなかった。
例のヒンカピーですら、そのまま集団に残る羽目に…
このまま、イワノフは14ステージを制することになった訳だが、問題はヒンカピー。
後ろの集団は、やはりアージェードゥゼルが先頭につき、ガンガン引っ張りヒンカピーにマイヨを奪われまいと必死に走る。
5分25秒という、目に見えない「タイム差」を巡り、二つの地点で意地と意地のぶつかり合いを見せ、結果。
何と、ヒンカピーとメイン集団との差は
5分20秒…
結局マイヨジョーヌはこのステージもノチェンティーニが守り抜き、ヒンカピーのマイヨジョーヌのラストチャンスは雲散霧消という結末に終わったのであった。
しかし、3ステージ見事に逃げが決まったが、逃げというのは辛い上に確実に勝つ手段というには程遠い走りではある。
それでも、セレンセンのような実況ブースの玄人予想すらひっくり返す大逃げを見せられると、今某ミニバンのCMでジョージ・ウィリアムズが言ってる
「できっこないよ、やらなくちゃ!!」という言葉がピッタリくるなあと…
そんな
一発逆転ごはんですよ状態の?3ステージが終わり、第15ステージ。
いよいよあの男が動き出す。