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塩狩峠

2016年09月20日 04時17分47秒 | 書籍



三浦綾子さんの「塩狩峠」を読んでみました。
440ページある長編ですが、女流作家らしい優しく読みやすい文章の作品でした。
泣ける作品だということで読みましたけど泣きはしませんでしたが、非常に考えさせられる作品でした。

北海道の「塩狩峠」で起きた鉄道事故、自分の身を犠牲にして連結から外れた客車を止めた永野信夫の人生とは・・・

物語は主人公、永野信夫の小学生時代からはじまり鉄道員として働いて事故に会うまでの30年間の物語。
その間には祖母と父親の死、母親と妹との愛情と信仰の違いによる葛藤、親友との友情、親友の妹への愛情など
主人公の人生が淡々と描かれている。

もしかしたらこの作品のテーマは自己犠牲の精神だけじゃないのかもしれません。
たしかに自己犠牲で多くの命を救ったというのはこの作品の重要な部分だと思うんだけど・・・
それは結構、理解できる部分だと思うんですよ、そんな事が自分に出来るのかって言えば間違いなく出来ない!!。
理解する事と出来ることはまったくの別問題だと思うし、信仰が人間を高めるっていうのは素晴らしい事だと思うけど。。。

何がこの小説の基盤なのかと私が思ったのは、永野信夫の生き方が描いてあって、それに共感できたんじゃないのかと思う。
最初はキリスト教を嫌っていた主人公が、父親の影響でも母親の影響でもなく、まして信仰を強制する環境でもなく
最終的にはキリスト教に目覚めて自分から信仰を始めますが、それまでの自分自身への自問自答や葛藤する姿。
そして人間的に成長する主人公にも共感できます。その人間的に成長する主人公がどうやってキリスト教を信仰し
自己犠牲をも厭わない精神になったかという過程を丹念に綿密に描いてあるのがこの小説の基盤なのでしょう。

貴重で有意義な読書体験。
素晴らしい作品でした。

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