MASTER PIECE

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方舟さくら丸

2013年06月12日 03時23分28秒 | 書籍



安部公房の作品4冊目。

2ヶ月かけて読みました・・・久々に長編読破したって感じです(笑)

地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた<ぼく>。
生きのびるための切符を手に入れた三人の男女と<ぼく>との奇妙な共同生活が始まった。

読んだ感想ですが・・・

今まで読んだ安部公房で絶賛できるのは【砂の女】でしたが、まぁこの作品もかなりの力作です。
核への不安と人間のエゴや社会的メッセージが込められているブラックユーモアな作品。

まず、登場人物が滑稽過ぎて・・・誰にも感情移入出来ません(笑)
ここで描かれているのは人間のエゴとエゴとのぶつかり合いなのです・・・

それでもこの作品を好意的に評価できるのは、シナリオっていうか限られた空間での状況が面白い。
地下シェルターが未来へ人間を生存させるノアの方舟であるって、とっても現実的であり得る話ですね。
では核戦争でこの方舟に乗せる人物の選別っていう命題は本来難しい話なのですが
主人公の<ぼく>は、あまりにも自分本位で打算的な考えの人物。
この辺は皮肉が効いているというか・・・流石に安部公房の小説らしいです。

まぁ、この地下シェルター内で色々な問題が発生するんですけど
作品の終わり方が、とっても清々しいというか、希望に満ちた終わり方なので
【砂の女】に通じるものが感じられるかな・・・。

後味悪い作品かと思いましたが、違いました。
私自身、これからもっと希望が感じられる小説を読んでいこうと思う。