唐辛子

曇り癖つきし空なり唐辛子

ナス科の一年草。熱帯アメリカ原産。唐辛子は初めは緑色で、次第に紅熟し、辛みを増す。辛い品種は香辛料や料理の付け合わせなどに用いられる。唐辛子には変種が多く、様々な色や形がる。最近の空はいつも曇っていて、はっきりした青空が見られないが、地上では真っ赤に熟した唐辛子が印象的であった。

　




赤ければ哀しきものや唐辛子


　

釣船草

釣船草川音近くしてきたり

ツリフネソウ科の一年草。山間の湿地や谷川のほとりなどに自生。初秋、上部の葉の腋から花柄を伸ばし、紅紫色の花をつける。花は船を吊り下げたような形をしており、この名がついた。花が黄色い黄つりふねもある。川へと下る道に黄つりふねが咲いていた。次第に川音が近づいてきた。

　





湿りたる山路なりけり黄つりふね


　

秋の蝶

秋蝶の止まりて翼息したる

秋に見られる全ての蝶。夏の蝶とさほど種類は変わらないが、蜆蝶などの小型で地味な蝶が多くなる。次第に涼しくなる林間などでひらひらと舞っている秋の蝶は、少しはかなげで美しい。止まっているところも、羽根が息をしているように動くのが哀れである。

　




秋蝶の黄や恋文のきたる如


　

黄蓮華升麻

雑木なる道の黄蓮華升麻かな

ユキノシタ科の多年草。石灰岩地帯に見られ、深山の湿った木陰などに自生。キンポウゲ科の蓮華升麻とは別種。季語とはなっていないが、黄色い美しい花なので、詠んでみたくなった。まだ咲き始めたばかりで、蕾が多かった。

　




一筆啓上黄蓮華升麻咲きました


　

釣鐘人参

気まぐれな風や釣鐘人参に

キキョウ科の多年草。日当たりのよい山野に自生。春先の若芽は「ととき」と呼ばれ、山菜として天ぷらやおひたしなどに用いられる。花が釣鐘に、根が朝鮮人参に似るので、釣鐘人参の名がある。気まぐれな風が吹くと、釣鐘が鳴るように花が揺れた。

　




釣鐘人参少女らのきて佇みぬ