水の門

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一首鑑賞(53):斎藤寛「呪文だつたぜ〈シュワキマセリ〉は」

2018年01月11日 15時00分47秒 | 一首鑑賞
めぐみ幼稚園ばら組のおいらには呪文だつたぜ〈シュワキマセリ〉は
斎藤寛『アルゴン』


 昨年の12月初旬、わが教会で【0才からのおやこコンサート〜えほんでクリスマス音楽会】を開催した。大型絵本の読み聞かせと音楽を取り合わせたクリスマスの催しで、実は企画を持ちかけたのは私だった。N教会では初めての試みであり、絵本の読み手や演奏者の招聘から、近隣の保育園などでのチラシ配り、クリスマスらしいお菓子のお土産の用意まで、今までのコンサートとはかなり勝手が違い、それなりに苦労もあった。演奏したのは二組で、一つは教会とゆかりの深いDこども園のお母さん方のグループ。もう一つは私がネットで探してきたフルートとピアノのデュオだった。
 何しろ場はクリスマスコンサートだから、曲目の重複が起きないよう密に連絡を取った。最後に一曲、会場のみんなで歌える歌があるといいよね、と委員会で決まって、私からデュオのピアノ担当の方にその旨伝えたが、曲の選定は難航したようだ。キリスト教主義のこども園に通っているお子さん達は普段からクリスマス讃美歌にも親しみがあるが、それ以外のところからお越しの方には全くピンと来ないだろう。周りが皆歌えているのに自分だけ歌えなくて、疎外感を味わわせてしまっては申し訳ない。デュオの方から(となりのトトロの)「さんぽ」はどうですか、と提案もあったが、委員会で「やはりクリスマス曲がいいよね」という意見でまとまった。クリスマスソングの有名どころはデュオの演るメドレーに既に含まれている。初めこども園のお母さん方で演目に数えていた「もろびとこぞりて」が、調整の上トリの曲に決まったのはコンサートの四ヶ月前だった。
 メロディは聴いたことがあっても歌詞を覚えている人はまず殆どいないだろうから、と全てひらがなで表記した「もろびとこぞりて」の歌詞原稿を準備した。当日、牧師先生より「もろびとこぞりて」の4番まで歌いきった後に「メリークリスマス!」と皆さんで言いましょうと発案があった。そして「もろびとこぞりて」を歌う直前、フルートの方の音頭で何度か掛け声の練習をしている間に、歌詞プリントを配付。大きな声で「もろびとこぞりて」が歌われ、「メリークリスマス!」もバッチリ決まった。その瞬間、ある男の子が「Thank you!」と発声。大笑いで幕切れとなった。
 首掲の斎藤の歌を読んだ時、全くそうだよなぁ、と思わず吹き出してしまった。私自身、公立小学校の2年生の頃、クラスで「もろびとこぞりて」を歌う機会があったが、意味も分からず〈シュワキマセリ、シュワキマセリ…♪〉と歌っていたのを思い出す。そう言えば、何だかウルトラマンの決め台詞「シュワッチ!」に似ていなくもない。くだんの男の子にも〈シュワキマセリ〉は呪文めいていたことだろう。でも、「そう、主はいらっしゃったのです!」と讃美した後、「Thank you!」と言い放った男の子に、イエス様もニッコリ笑って一緒に喜んでくださったのではないかと思うと、私も微笑まずにはいられない。

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