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水の門

体内をながれるもの。ことば。音楽。飲みもの。スピリット。

歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
詳細は、こちらの記事をご覧ください。

Amazon等で購入できます。 また、HonyaClub で注文すれば、ご指定の書店で受け取ることもできます。
また、読書にご不自由のある方には【サピエ図書館】より音声データ(デイジーデータ)をご利用いただけます。詳細は、こちらの記事をご覧ください。

#通読 2017年7月分まとめ

2017年07月31日 05時38分04秒 | 黙想・聖書通読・礼拝聖句
◆7月5日
サムエル上3章。少年サムエルは、彼の導き手の祭司エリの家に下される裁きを主に示される。その黙示についてエリは「私に隠さないでくれ」と(新改訳17節)、痛ましいばかりだ。裁きの日までしばらく月日があった。サムエルはどんな気持ちでエリに仕えたのか想像を絶する

◆7月11日
コリント⑴4:7「あなたの持っているもので、いただかなかったものがあるでしょうか」滑り止めのミッション高校へ行き、キリスト教の下地を養われた認識はあった。が、担任だった新聞部顧問と出会ったのも主の導きと、けさ解った。その出会いが今トラクト作成に活きている

◆7月16日
サムエル上17章。ゴリアテの横暴に憤るダビデが兵と話していると、長兄エリアブが怒る。「荒れ野にいるあの少しばかりの羊を、誰に任せてきたのか。お前の思い上がりと野心はわたしが知っている」(17:28)ダビデは羊の一匹もこのように軽んじない。真の羊飼いの資質

◆7月18日
非信者には、私が無償で教会のHP管理やチラシ&トラクト作成を行うことが信じられないようだ。まずイエスが自分のために命を投げ出されたという前提を持たない人には無理ないが、新改訳1コリント9:17「私がこれを自発的にしているのなら、報いがありましょう」は実感

◆7月24日
サムエル上28章。サウルが敵に怯え霊媒の許へ。王が霊媒を追放したからと拒む彼女に、危害は無いと神かけて誓うサウル。傍目には滑稽だが私も同類。数年前に干支は中国の占いと気づいても賀状に干支の自作短歌を載せ続けた。説教の使徒19:18で目が覚めた。足を洗う。

◆7月26日
復活のイエスとの邂逅を、コリント⑴15:8で「最後に、月足らずで生まれたようなわたしにも現れました」と書いたパウロ。〈月足らずで生まれた〉のNIV訳abnormally bornは、必ずしも正確ではないかもしれない。だが、この文言に支えられた人もいる筈。
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気さくな先生らしい。

2017年07月26日 03時56分03秒 | ライヴに寄せて
良い席の確保を嬉々と話す吾に「頼んでおけば」と羨しむ主治医
(とど)

2013年7月26日 作歌、2017年7月26日 改作。
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時間潰しに。

2017年07月25日 07時30分22秒 | ライヴに寄せて
列に並み『百万人の福音』を開いていても漫ろに落とす
(とど)

2013年6月17日 作歌、2017年7月25日 改訂。
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用意周到。

2017年07月24日 16時18分40秒 | ライヴに寄せて
チケットの販売開始の半時間前に文化ホールに着いた
(とど)

2013年6月17日 作歌、2017年7月24日 改訂。
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思い過ごしじゃないよ。

2017年07月23日 13時50分38秒 | 気分・体調にあわせて
左右ちがう臭いの汗をかく右の腋のリンパを切除してから
(とど)

2013年9月19日 作歌、2017年5月下旬 改訂。
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#inutanka(打ち止め)

2017年07月15日 09時37分11秒 | 言葉に寄せて
来年の年賀状作りの参考にするためにTwitterにメモしている「犬」にまつわる短歌が既にかなり溜まってきたため、気が早いようですがここら辺で #inutanka としてとりあえず公開します。また折々に追加もしていきます。
(考えるところあって、干支短歌の蓄積を中止します。2017年7月23日)

しろじろと毛深き犬が十字路を這うまたの世の日暮れのごとく/大森静佳
わが犬のドヂな次郎が溝に落ちわれはころびて下駄を落せり/河野裕子
豆腐屋の前の溝から吹いている湯気の匂いを犬もかいでる/竹内亮
自動車の鍵はかけない壱岐という島の空港犬が見送る/竹内亮
店先の自転車のそば飼い主を待つ灰色の犬の落ち着き/竹内亮
夏休みの最初の朝に眠ってる犬を起こして霧を吸い込む/竹内亮
眠る犬のしづかな夢を横切りて世界を覆ふ翼の話/石川美南
二十代遠のくことを対岸の犬の散歩のごとくかなしむ/永田紅
耳垂れし犬ゆっくりと石段を上まで嗅ぎて道にもどりつ/永田紅
色うすき柴犬あわく過ぎゆくをパンのようだと言えば頷く/永田紅
春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる/服部真里子
大きな犬のやうに眠つてゐるだらう月に真白く耀(て)りつつ家は/澤村斉美
犬は地に鼻さしよせて歩めりき光り天よりひたさしにけり/尾山篤二郎
銃の音木魂はしばし谷伝ふあとにうつろにさびし犬の鳴きて/土屋文明
いつも君は犬に好かれき見知らざる犬さへ千切れんばかり尾振りき/尾崎左永子
冬山の遠き木靈にのどそらせ臟腑枯らして吠ゆる犬あり/多田智滿子
雪解けを待ちつつブラシかけやれば盲導犬の背に春陽あり/吉村保
喫茶店の床にごろりと寝転んだ犬のかたちに呼吸(いき)はふくらむ/飯田彩乃
右肩上がりの雲の段々あれはギザの夢を見ている狛犬のせい/井辻朱美
人界に親しみたれば飼犬は素裸なるを恥ぢ入りて吠ゆ/斎藤寛
飼主と飼犬なれど指揮命令系統ぐじやぐじやしてゐる愉快/斎藤寛
人のをらぬ住戸と住戸の壁へだてべうべうと呼びかはす犬たち/真中朋久
黒い犬を見た記憶あらず低きより幼児を見上げてゐたのは かすか/真中朋久
くさむらに鼻さし入れてゐる犬を思へばただにものぐるほしき/真中朋久
砂粒がわずかに混じるハンバーガーくわえて犬は微笑みかえす/佐藤りえ
少年と大きな犬がわあわあとわれを追い抜き波蹴りあげる/佐藤りえ
雨上り 回転木馬 昇る月 黒い風船 つながれた犬/筒井富栄
凍死した犬のかたわら降誕祭 真紅のイエスの空にむいた瞳/筒井富栄
保護色をもつ者だけが住む街に今朝猟犬は放たれてゆく/筒井富栄
まひる 泣き出す前の沈黙の領域をよぎる黄金(きん)の山犬(ジャツカル)/筒井富栄
ムチならし犬連れた人がゆきすぎるその背の高さほどの日没/筒井富栄
野犬狩りの夢のつづきは野の彼方月光の中を影がとびかう/筒井富栄
犬はチエホフのきれぎれの鎖ひきずって春のはじめを遠のくばかり/筒井富栄
遠吠えの犬に凍った赤い月ダイスあそびに落ちてきた恋/筒井富栄
わが泣くを少女等(をとめら)きかば/病犬(やまいぬ)の/月に吠ゆるに似たりといふらむ〔石川啄木〕
愛犬の耳斬りてみむ/あはれこれも/物に倦みたる心にかあらむ〔石川啄木〕
路傍(みちばた)に犬ながながと呿呻(あくび)しぬ/われも真似しぬ/うらやましさに〔石川啄木〕
真剣になりて竹もて犬を撃つ/小児の顔を/よしと思へり〔石川啄木〕
われ饑(う)ゑてある日に/細き尾を掉(ふ)りて/饑ゑて我を見る犬の面(つら)よし〔石川啄木〕
庭のそとを白き犬ゆけり。/ ふりむきて、/ 犬を飼はむと妻にはかれる。〔石川啄木〕
従きて来し犬は日本の犬なればひそと車座の傍らに座す/稲葉京子
犬は花を見ずとも花を見し人の心の機微を味はひてゐむ/稲葉京子
あのやうな人になりたかつた私を人間になりたかつた犬が見てをり/稲葉京子
信号に吾は停まれども余念なき老犬が来て渡りはじめき/三枝昂之
ならぬことはならぬものです霜月の犬しやんとして死んでゐたるよ/吉田隼人
激震に飛び出して来し人の抱く小犬の瞳濡れてふるへる/山口明子
父が逝きし日のゆふぐれの屋上に黒き犬ゐて吾を見おろす/松平修文
十年を人の目となり働きて老いたる犬は我が家に遊ぶ/野田孝夫
麻薬犬災害救助犬警察犬帰りに一杯やることもなし/香川ヒサ
死の自由われにもありて翳のごと初夏(はつなつ)の町ゆく犬殺し/塚本邦雄
心きほふ日は犬鋸(のこ)の目を立てて吸はるるごとく山蔭に入る/葛原妙子
犬を呼ぶ男(を)の子の低音(バス)のこもりつつ雨あがる庭にこもれる溫氣(うんき)/葛原妙子
人の耳にきこえざる音聽きてゐる犬を繫げる鎖地に曳く/葛原妙子
坂の町犬を曳きゆく一人(いちにん)とあゆめる犬の間の默契/葛原妙子
骨折せし犬がギプスを嵌めてゐる後脚を上げてあゆめり/葛原妙子
薄やみに犬繫がれてゐる夕べ猫はほしいままに食卓に飛ぶ/葛原妙子
甕作る古代の筵に耳立ちし大いなる犬うづくまりゐざりしや/葛原妙子
頭蓋低く差しのべたる野の犬は人間の手に愛撫されけむ/葛原妙子
通行のあらざる夜明石道に犬出でて遊ぶ一尾二尾ならず/葛原妙子
犬の尾の渦巻きしあり垂れしあり巴となりて朝辻にゐる/葛原妙子
遠く立ちてわれを眺むる犬をりきあさあけの犬人を襲はず/葛原妙子
あけがたの路面濡れつつさわさわと浮浪の犬はわれにしたがふ/葛原妙子
曉星(あけぼし)はふたたびいづることなきや犬ゆく石の朝街暗む/葛原妙子
 (アルブレヒト・デューラーに)
放心の天使をりつつ足元に犬うづくまる「メランコリア」/葛原妙子
膝の上にあごを乘せくるわが犬をしづかにはらひわれは立ちたり/葛原妙子
犬猫の目あまたひそむ路地をゆくべつちんの足袋あたたかからむ/葛原妙子
ここあいろの乳房を垂れし犬步み既知にいそげるもののごとしも/葛原妙子
夜のあけぬをちかたにして犬吠ゆるそこのみ寒き空氣搖れゐき/葛原妙子
赤き犬群れゐる過ぎにしがわがめぐりなる雪の圓周/葛原妙子
雪踏みて耳ほてりゐる束の間のわが聲透る犬を呼びつつ/葛原妙子
蛾のごとくもの憂き斑(はん)犬セッター種立ちあがるとき薄陽差したり/葛原妙子
犬吠ゆる闇の近きに洋菓子のごとき聖壇ともりてゐたり/葛原妙子
犬の毛皮つけたる農夫ありありと夜の教會の椅子にねむりぬ/葛原妙子
散らばりしぎんなんを見し かちかちとわれは犬歯の鳴るをしづめし/葛原妙子
月の夜は球となりつつ犬の尾のゆたかなる總(ふさ)過ぎむとすなり/葛原妙子
炎天に砂あれば砂によこたはる黑犬は漆黑乳房もろとも/葛原妙子
さわさわと野犬の遊步つらなりあかつきに石の街角はありし/葛原妙子
高層に人のめさめのたゆたへるときあらはるる野の犬の群/葛原妙子
犬の耳雫垂りつつゆききせりさびしくもあるかしづく垂るること/葛原妙子
くひちがひて嚙みし犬齒をおそれたりわが飼猫を埋めむとして/葛原妙子
雪の道のへ消毒藥の匂ひして犬屋の白き犬は放たる/葛原妙子
われをよぎる豫感のしづか猛犬を飼ひて山家に老ゆる日あらん/葛原妙子
病む少女臥床(ふしど)にふかく目醒めつつあまたの犬の怒れる時間/葛原妙子
霧はひくく道を這ひをり黑き犬步める短き足ともろとも/葛原妙子
草の上にゆるやかに犬を引き廻し與へむとする堅きビスケット/葛原妙子
ゆるき坂そこにありつつめぐすりを差してもらひし仔犬を連れゆく/葛原妙子
白き靄充つる街ゆきわが連れし犬も鎖もふとうしなはる/葛原妙子
草枯れの見知らぬとほき町のはづれわがうしなひし犬が走るなり/葛原妙子
わが手より葡萄を食へる犬をりてガラスの扉とほく透きとほる/葛原妙子
マルタ島原産の犬が葡萄を啖(く)ふ灰色の毛を深く垂れながら/葛原妙子
光源の眞下に毛長き犬あそぶときふと犬のうしなはれたり/葛原妙子
走りても走りても汗の出づるなき犬をかなしみ暑(しよ)をかなしめり/葛原妙子
ひかりなき家竝の彼方たまたま犬はひとりに步道をわたる/葛原妙子
山上の耳にしきこゆわが家の暗きに小さき犬は吠えむか/葛原妙子
ゆくりなく振り向きしときわがみたり飼犬が階段をのぼりつつあるを/葛原妙子
犬などがことことと階段をのぼりゆくひたすらなるにわれは微笑す/葛原妙子
長き毛を垂りて敷物の上を步く飼犬は室内を薄明となす/葛原妙子
降雪のやみたる雪原をかへりくる犬の腹毛の暗きゆふぐれ/葛原妙子
ワイパーの拭へる雨の小微明よぎりし黑き犬の尾みえず/葛原妙子
山屋(さんをく)の土間によこたはりゐる犬はをりをりにして端坐をせり/葛原妙子
おろかなる犬といへどもわが投げし青草を咥へ走ることあり/葛原妙子
下半身影なる犬よ窓の邊にひとみを張りてしばしゐる犬/葛原妙子
水番の飼へる一尾の銀ぎつね犬よりもやや嗄れて鳴く/葛原妙子
ひとりゐるわが良夜(あたらよ)飼猫はすでに死にたれ犬失踪す/葛原妙子
まさめにしつぶさにみれば犬の目の奥をしみれば鈍き知惠の火/葛原妙子
坂下に暗い夕燒の立つ時間繫ぎし犬を先立ててゆく/葛原妙子
天空より暗き地上をまさぐるに白き塊なんぢは犬/葛原妙子
薄ら陽の差しそめにける雪の上犬先づ走り人次に走る/葛原妙子
もらひたる仔犬育ちてけふみるに馬のやうなる顏となりゆく/葛原妙子
赤き林に赤き木ありてさむき朝嬉しき犬は走りゆきたり/葛原妙子
幻のおほ犬なればグレート・デーン影なる一家婦を衞りゐき/葛原妙子
犬店に大犬をりき 懶(ものう)げに坐りゐしセント・バーナード犬/葛原妙子
憂犬眺むるものにさはなれや舗道(いしみち)をゆく人の半身/葛原妙子
犬憂へ曳かれたりけりアルプスの斑おほいぬ市街を曳かる/葛原妙子
犬の足渡る二、三步雪積める橋はみじかきときに悲しも/葛原妙子
すわりゐる老犬をりきしろ睫毛白犬なれば瞬かんとす/葛原妙子
犬ちひさくちひさくなりゆき おもむろに犬の原型失せにき/葛原妙子
石疊たひらなりせば思ひいで小さき犬の遊ぶことある/葛原妙子
わがみたる風景にしてうらかなし極月の空白犬に晴る/葛原妙子
漆黑のくちびるをもつ幼獸西藏犬に椀より食はす/葛原妙子
十二時半遠耳に啼く犬をりてガラス室のまだら木の影/葛原妙子
猫と犬ちひさき池のほとりにて出あへる星の夜をあやしまず/葛原妙子
腹熱き仔犬を抱きし少年はまどろむわれを迂回しゆくも/葛原妙子
愛なんて、と言いかけてごわごわの服を着ている犬と目があう/虫武一俊
ただ独り留守居してあればさ庭ゆくまぐれ犬さえなつかしきかな/武田寅雄
つれづれのかかる寂しさ冬日(ふゆひ)さす道のとほくに犬がねて居る/佐藤佐太郎
血に染(そ)みて伏しゐし犬がまだ生きて水すする音暫(しばし)ののちに/宮柊二
夜に呼べば懈(たゆ)げに立ちて寄りて來(き)ぬ人の愛撫に狎れざる犬か/宮柊二
梅雨の夜の居間の片隅ねそべれる犬は起たずて目を上ぐるのみ/宮柊二
われに來よと言ふにやあらん吠えやまぬ犬を撫づべくペン置きて立つ/宮柊二
ポンペイの廃墟の昼を寝そべりて吠ゆることなき犬ら病みおり/小川玲
花びらの転がってゆく朝の道犬との距離を保つ正しく/吉野裕之
悲しげな声で鳴いてる犬がいた塀の向こうの昨日の夜に/工藤吉生
透明に一瞬見える紐なので一瞬自由な犬の散歩だ/工藤吉生
鳴き声が省略形のこの犬を ゥ ゥ 真似したくなる ゥ ゥ/工藤吉生
犬吠える・自動車がくる・自動車はそのまま走り去る・犬吠える/工藤吉生
こそこそと家を回って人の目と犬を怖がる初ポスティング/工藤吉生
写メでしか見てないけれどきみの犬はきみを残して死なないでほしい /岡野大嗣
飼い犬にパン齧らせる夕方のこれ以上ないなめらかなこころ /岡野大嗣
犬が風かんじてるのを盗み見てたらこっちにも来てくれた風/岡野大嗣
写ってる犬はとっくに居なくって抱いてる僕はほんとうに僕? /岡野大嗣
とけかけのバニラアイスと思ったら夢中でへばってる犬だった/岡野大嗣
みぞれ、みぞれ、みぞれはぼくの犬の名で祖父が好んだ氷の味だ /岡野大嗣
待ち合わせに遅れてやってきたような勢いで犬が来てなつかれた/岡野大嗣
偉くなくすごくなくとも夏風に犬は笑ったような顔する /小川佳世子
巨(おほ)いなる白毛の犬 顎の下に幼児は神のごとくに笑ふ/山本かね子
ピアノ消え明るき部屋のティータイム隣りの犬の遠吠え聞こゆ/徳高博子
悲しみて二月の海に來て見れば浪うち際を犬の歩ける/萩原朔太郎
座りいる大型犬の美しき骨格透けるような六月/小島なお
菜の花はこちらを向いていなくても私に気がつく子犬のようだ/正岡豊
停電の夜に着せたる赤い服あらたな犬に着せて歩めり/斎藤雅也
守護天使喪ひたりしわがかたへふさふさと白き仔犬寄りくる/雨宮雅子
里親といえば犬猫の飼い主を指す世となりぬ何かが違う/松村由利子
犬を洗ひ枇杷を洗ひて一日(ひとひ)過ぎゆふぐれに子の指を拭へり/木下こう
衣着けし犬がひかれてゆく土手に野良犬が首をあげて見てゐる/志垣澄幸
犬に寄りてなにかもの言ふ男あり犬も人間のやうに聞きゐる/志垣澄幸
星に名を/犬に眠りを/コーカサス地方に雨を/ワインに栓を〔佐藤りえ〕
魚の香の乏しくなりし港町犬ゐてどこ迄も吾に従きくる/雁部貞夫
たましいの堕落などなき犬を連れ野牡丹の咲く庭にたたずむ/藤村学
さびしくてわがかひ撫づるけだものの犬のあたまはほのあたたかし/岡本かの子
わが胸の恐怖(おそれ)の声の我を出て響くとばかり犬の長鳴く/高村光太郎
獅子の仔も犬の仔のごと母親にふざけかゝるところがされけり/中島敦
フーセー犬ヤング犬ミンコウスキー犬みな実験糖尿病に寄与せりき/上田三四二
犬の目に涙のごときひかるもの低丘のうへに来しときみたり/上田三四二
病舎裏の原に赤土の堆積あり実験済みし犬を葬る/上田三四二
雨まじり吹雪となりてあす屠る実験犬は濡れつつありや/上田三四二
梅雨のあめこめたる闇に犬の仔がくぐもり啼けり倦みて淋しき/上田三四二
夕ごとにとほるよ庭ひろき農家の犬もいつよりか吠えず/上田三四二
となり家に犬のこほしく鳴くきこゆきさらぎ寒く雪つもる夜を/上田三四二
わが寄るは動物店なれば狭くゐて檻なる犬は値をつけてあり/上田三四二
放たれて道にのどけき犬にあふ奥之院にても金剛峯寺にても/上田三四二
放たれていづくの犬か信号まで随き来てともに信号を待つ/上田三四二
犬の夢いるかの夢のいかならん木洩日の斑(ふ)のうごく鋪(しき)みち/上田三四二
小屋にゐて吠ゆるなかりし老犬は雪の日すぎて身と屋(をく)と亡し/上田三四二
用もたぬ歩みはいづくゆくとなく犬吠えぬこの小路のやすし/上田三四二
曳かれつつ人に先立つ犬にして空みることもなくて歩める/上田三四二
犬を牽く人はのどけし若葉道ゆきてうれひの雲もとどめず/上田三四二
道にみて犬曳く人はおしなべて人よりも切にもの言ひて行く/上田三四二
背丈おなじき幼きものに尾を振りて保育所の犬はたのしからんか/上田三四二
うらさぶる夕べの道に耳ひらけ地にたえまなく犬の鳴くこゑ/上田三四二
さつきからついてくる犬 ちひさな犬 吠えるくせについてくる犬/目黒哲朗
真夜中の散歩のたびに教えても犬には星は見えないらしい/入谷いずみ
雨に濡れし褐色の犬のあとを行けりこのごろ寂かなる一日だにあらず/安立スハル
初めて来し姫路を茫と歩み居てさきほど逢ひし犬にまた逢ふ/安立スハル
犬ならぬひとをわらひて手はたきぬ三遍廻つてわんといふゆゑ/前川佐美雄
またしてもわが痩せ胸の骨あさる老犬の如きこころ叱りぬ/前川佐美雄
野良犬を追ひ返すべく棒投げぬ棒かんと藪の竹に鳴りたり/前川佐美雄
小半日われに従き来し野良犬がいま野良犬の伴(とも)を見つけぬ/前川佐美雄
あとになり前(さき)になりしてわが犬のある時は外(そ)れて萩むらに入る/前川佐美雄
萩むらに外(そ)れゆきし犬に道くさをすなと叱るもあとに従きゆく/前川佐美雄
わが犬の何思へるかふとふいに曼珠沙華道ひたかへり行く/前川佐美雄
どろんどろんと朝太鼓鳴る犬の皮たるみたる如き天にあらずや/前川佐美雄
飼犬の口あけさせてその荒くながき舌見けり人に呉るる前/前川佐美雄
捕られたる犬を探ねて三里ほど隔たれる荒き村に入りゆく/前川佐美雄
みづからの分を知れるは快し野良犬野良猫の類とてよし/前川佐美雄
犬猫にあらぬ親子がしやぶりをる鰤の頭なり涙もよほす/前川佐美雄
幾万の星は夜空にかがやけど落ちて来ざれば犬ら安けし/前川佐美雄
どの家の犬でもありどの家の犬でもない小泉八雲の犬が来てゐる/前川佐美雄
春先のあらし吹きしく日に見つるわれの赭犬も大きくなりぬ/前川佐美雄
花すぎてほこり風立つ街のなか汚れゐるあか犬を見つつ唇(くち)拭く/前川佐美雄
貰はれてゆきし仔犬を気づかふや折折吾子はその家訪ふらし/前川佐美雄
わが家のくらしの中もさびしけれ赭犬急にゐずなりしかば/前川佐美雄
犬に吠えられ草原駈けり跳びこえて鹿はいづれもしんけんに逃ぐ/前川佐美雄
恥多き日にありぬらしわが犬のわが家の門に向きて吠えしは/前川佐美雄
腹すりて地(つち)にしぢかに臥す犬をひた憎む彼がざまに似つれば/前川佐美雄
街中の犬ことごとく鳴きたちて夜半に没りゆく月を恐れず/前川佐美雄
争ひをやめたる犬は樹液にほふ木の間ゆきつつ見返ることなし/木俣修
冬濤にむきて吠えつぐ犬の声臨港の駅は大戸を鎖して/木俣修
朝(あした)より絶望のさまに犬臥して一塗りの緑竹群を行く/前登志夫
庭にある仔犬の皿はかがやけり皿拭ふ舌も夜は不在のひとつ/前登志夫
朝の陽を身ぶるひてはじく尨犬(むくいぬ)つれ霜柱踏む娶りしのちも/前登志夫
犬一つわれにまつはる君が恐れし蛇の時にはまだ早くして/柴生田稔
なにか焼く匂いに過去へはこばれて人立ちどまり犬それを待つ/宮脇由美子
静臥時の戸外あかるし赤犬がおと健やかに水を飲みゐる/滝沢亘
その妻の死に超然とゐし犬も終へき十餘年の病中のこと/滝沢亘
安堵せし眸(め)をして小さく尾を振りぬ魘(うな)されてゐし犬を起せば/滝沢亘
菓子のごと団花(たまばな)咲けり従へし犬は長じて係累もたず/滝沢亘
永遠のなかのことにて人も犬もうつむきあゆむ霧の栅外/滝沢亘
犬を曳き来りし闇に焰あり燃えつつ若き胃の高さまで/小野茂樹
くもり垂れて嵐の移る海峡に吾と埠頭のはてに佇つ犬/近藤芳美
飯場の灯護岸に低くともり合いあされる犬は嵐に走る/近藤芳美
芥埋むる岸をはるかに犬走り嵐はめぐる沖のきらめき/近藤芳美
雪染むる地平の火事に吠ゆる犬埋れしものの影ら凍りて/近藤芳美
嗅ぎあてし一片の神さはやかな地に臥して開く犬の耳/浜田到
天と海のあいだ細き糸らちぎれちぎれ犬の中に雨降つている/浜田到
目を赤く凍らせて立つ犬 冬の夜のながき審(さば)きにわが耐えらるる/浜田到
こんや早く炭屑の中に犬眠れば夜のやつれたる眼鏡を拭く/浜田到
垂直に電柱は土に突刺さりひそひそ夜の犬群れはじむ/浜田到
犬死にの犬の轢死のくれないに濡れいつ登校の吾も濡れつつ/佐佐木幸綱
振袖に真白き犬をかいつつみ冬の光にゆくをとめあり/岡野直七郎
花なんか買わない人が花を買う駄目犬だったあいつのために/松瀬詩子
ばらばらになったおとこへ文庫本カバーのような犬が寄り添う/笹井宏之
夭き日はつゆ思はねど詰襟はつくづく犬の首輪のごとし/水島和夫
差し入れは切手封筒 犬の絵のある便箋は不許可とされたり/酒井久美子
愛犬のやうな掃除機つれあるくだれにも会へぬ日の夕ぐれは/春野りりん
六歳で壮年となる柴犬の温き項(うなじ)は野焼きの匂い/沼尻つた子
犬には犬の愛ありと聞けそを抱く君は森なり身をひらきつつ/黒瀬珂瀾
愛犬の痙攣のたびに摩ってた医学書引けば摩るなとあり/黒木淳子
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ずくなし。

2017年07月08日 15時23分20秒 | 持病に寄せて
ひと月ごと指折り数えた勤続と同じだけ過ぐ無為なるままに
(とど)

2010年1月30日 作歌。
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