水の門

体内をながれるもの。ことば。音楽。飲みもの。スピリット。

歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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病中の思い出(1)…弾き語りフォーユー

2006年04月30日 22時10分40秒 | 持病に寄せて
このエントリーで触れた私の持病。今では寛解にあるとはいえ、ここまでの道のりは平坦ではなく、二度再燃し、最初の再燃時には再入院を余儀なくされました。
何とか自宅療養で乗り切ったものの、二度目の再燃時もかなり危うい状態でした。しかし、病状が重くなって神経が張り詰めていたせいか、普段なら何気なくやり過ごしていたかもしれない音楽への感度が研ぎ澄まされていたのも事実。この時期に初めて耳にした音楽は、まるで飢え乾いた心に沁みわたっていった水のようで、今に残る鮮烈な印象を与えてくれました。
今でこそ寝坊介な私ですが、その頃は今の何倍も重い睡眠導入剤を服用して、バタッと眠りにつき6時間もすればガバッと目覚める日々が続いていました。
起きてからはかぶりつくようにラジオを聴きました。その頃はNHK-FMが心の拠り所に。
小原孝の【弾き語りフォーユー】を初めて聴いたのも、その頃でした。まだ寒いとある日の昼前、ラジオから流れてきたのは、よくよく耳馴染みのあったユーミンの「ノーサイド」。ピアノだけで淡々と紡がれるメロディに合わせて、ふと歌詞が口の端に上ってきました。

   何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの
   誰も知らず

   歓声よりも長く 興奮よりも速く
   走ろうとしていたあなたを少しでも
   わかりたいから

   人々がみんなあなたを忘れても ここにいるわ

ついと涙が流れました。
山梨に連れて来られる前は仕事に明け暮れていた私。「何をゴールに決めて」いたかは、口幅ったくてここでは書けませんが、かなり多くのものを犠牲にしてきました。孤独に思える疾走を陰ながら見守ってくれていた人もいないわけではありませんでしたが、その人とも遠く引き離されてしまった……。
色々な感情が入り混じった涙でしたが、乾いた後には浄化されたような涼しい気持ちが残りました。

今日、ブックオフでたまたま見つけたのが、小原孝の『ピアノよ歌え:第7集~あれも青春、これも青春~』。思い出に没入したい気分の時に良さそうな一枚です。
本当に長いこと聴いていなかったけれど、明日は仕事も休みだし、久々に【弾き語りフォーユー】を聴こうかなぁ、と思います。
コメント (8)
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