自分のアンテナでは探しあてられなかったものに、人を介して巡り合えた時の喜びは本当に大きい。
最近読み終えたばかりの池澤夏樹さんの『南の島のティオ』もそんな本の一つ。南の小さい島で少年ティオが平穏な日常から少しはみ出した不思議な体験をしていく様を描いた10篇の短編集である。
ティオは、父が営むホテルを訪ねる個性豊かな客との出会いによって、行ったことのない外国の様子を垣間見る。
また、島には少しずつ近代化の波も押し寄せる。モーターボートの水路の標識が作られたり、舗装道路ができたり、飛行機が飛んだり…。その過程をティオは少年ならではの好奇心に満ちた視点で楽しみながらも、はからずも精霊と遭遇して異世界の不思議な力を感じもする。
10篇の物語を通じて伝わってくるのは、島を昔ながらのものとして頑なに守っておきたいという懐古的なノスタルジーとは違う、島の“今”の生活をいとおしむ著者の温かい眼差しである。
受け取る人が写真に写った場所を必ず訪れたくなるという絵葉書を作る、冒頭の「絵はがき屋さん」とは池澤さん自身ではないか?と読んだ後に思った。くどい風景描写などは皆無なのに、海と島の緑と太陽のキラキラした光景がまぶたにくっきりと焼き付けられてしまうのである。
こんな素敵な本にピッタリのすがすがしい音楽を見つけた。アブドゥル・ティー・ジェイの『Palm Wine a Go-Go』である。音楽そのものは、西アフリカはシエラレオネのものだが、力の抜け具合が絶妙な耳あたりの良いアコースティック・サウンドは、南洋の島へと思いをいざなってくれる。
最近読み終えたばかりの池澤夏樹さんの『南の島のティオ』もそんな本の一つ。南の小さい島で少年ティオが平穏な日常から少しはみ出した不思議な体験をしていく様を描いた10篇の短編集である。
ティオは、父が営むホテルを訪ねる個性豊かな客との出会いによって、行ったことのない外国の様子を垣間見る。
また、島には少しずつ近代化の波も押し寄せる。モーターボートの水路の標識が作られたり、舗装道路ができたり、飛行機が飛んだり…。その過程をティオは少年ならではの好奇心に満ちた視点で楽しみながらも、はからずも精霊と遭遇して異世界の不思議な力を感じもする。
10篇の物語を通じて伝わってくるのは、島を昔ながらのものとして頑なに守っておきたいという懐古的なノスタルジーとは違う、島の“今”の生活をいとおしむ著者の温かい眼差しである。
受け取る人が写真に写った場所を必ず訪れたくなるという絵葉書を作る、冒頭の「絵はがき屋さん」とは池澤さん自身ではないか?と読んだ後に思った。くどい風景描写などは皆無なのに、海と島の緑と太陽のキラキラした光景がまぶたにくっきりと焼き付けられてしまうのである。
こんな素敵な本にピッタリのすがすがしい音楽を見つけた。アブドゥル・ティー・ジェイの『Palm Wine a Go-Go』である。音楽そのものは、西アフリカはシエラレオネのものだが、力の抜け具合が絶妙な耳あたりの良いアコースティック・サウンドは、南洋の島へと思いをいざなってくれる。