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ゲームファンが求める「引き込まれるストーリー」とは何か?

2007年07月04日 20時50分31秒 | アニメ・コミック・ゲーム
ITmedia +D Gamesに「+D QUICK POLL」という投票があり、「これからのゲームに求めるものは?」という質問が設定されている。
現在、8種類ある回答の中で「引き込まれるストーリー」が37%と飛び抜けてトップを占めている。2位以下は、「斬新なシステム」23%、「美麗なグラフィック」16%、「短時間でプレイできる手軽さ」9%で、「魅力的なキャラクター」「求めやすい価格」「目新しい操作性」「安心するシリーズもの」は5%以下と支持を得られていない(7月4日19:50現在)。

以前、「ゲームでは優れたストーリーは足かせになるか?――グリムグリモア最終インプレッションPART 1」でゲームシステムとストーリーの関係性について語ったが、今回のPOLLの結果を見て改めて語ってみたくなった。

最も単純でかつ根本的な問題、それはなぜ「引き込まれるストーリー」をゲームというメディアを通して体験したいのかだ。逆に言えば、マンガやアニメ、小説、ドラマ、映画などストーリーを語るためのメディアはたくさん存在している。また、これらのメディアの方がゲームよりストーリーを構築するのに適しているのは明らかだ。ゲームでストーリーを構築する場合最も容易いやり方は一本道のアドベンチャーゲーム化だろう。分岐の乏しいビジュアルノベル系がまさしくそれだ。
しかし、これも以前に述べたが、こうした分岐の乏しいビジュアルノベルをゲームと呼べるのか疑問の余地がある。またこれらの表現方法の基本は小説であり、絵や音によるサポートを有効に利用できるとはいえ、小説の一形態とみなすことも可能だろう。

実際にはこの問いへの答えとしてこういったビジュアルノベルを想定したとは考えにくく、おそらくRPG系のゲームに対してより魅力的なストーリーを期待していると想定できる。確かにドラクエシリーズやFF7、FF10といったストーリー重視のゲームが高い評価を受けている現実がある。これらのゲームのストーリーは、それだけを抜き出して他のメディアのものと比べると著しくレベルが低い。それでも評価されるのはゲームの特性が理由だろう。プレイヤーキャラクターを操作し、ストーリーに参加している実感を得られやすい特性が大きく影響している。だが、一方でゲームはストーリーを語るのに適したメディアでなく、複雑で高度な内容になるとついていけなくなってしまう。これは進行速度の問題で、戦闘などストーリー以外にもやらねばならないことが多く、それが足かせとしてついて回るためだ。

ヴァニラウェア製作の「グリムグリモア」「オーディンスフィア」を例に取ってみる。ストーリーやキャラクターは他のゲームにない魅力を持った作品だ。しかし、そのストーリーとゲーム性との連動が希薄で、しかも、プレイヤーが主人公と一体にならず、あくまで演劇を見ているように観衆の立場に置かれてしまっている。素晴らしいストーリーを持ちながら、それは求められる「引き込まれるストーリー」ではないということになる。

作り手側にとってはどうだろうか。宣伝文句に「壮大なストーリー」などの美辞麗句が飛ぶのはよくあるが、ゲームの作り手がプレイヤーの求める「引き込まれるストーリー」を作りたいと思っているのか。もちろん、作り手と言っても千差万別で、その意欲の方向性は人それぞれだろう。ただ多くのゲームクリエイターのコメントを読んで感じるのは、彼らはゲームを作りたいと思っているということだ。ここで言うゲームは、ゲーム性と言い換えてもいいだろう。本当にストーリーを描きたいのであれば、ゲームというメディアは不向きなことくらいすぐに分かる。その制約下で新しいものを生み出そうという努力をしているクリエイターも少なからず存在してはいるが。

ゲームにとってストーリーはおまけのようなものだ。しかし、プレイヤーの多くがそのおまけを求めてゲームに期待をしている。それはゲームにストーリー性を持ち込みすぎた日本のゲーム界の抱える課題となっている。FFシリーズのように映画的な方向へ進むことで海外市場へのアピールに成功した例もあるが、この手の作品の多くが国内でしか売ることが出来ず、同じようなものが縮小再生産されているような状況に落ち込んでいるように思われる。
ゲームファンがここまでストーリーを求めていることも意外だったが、その声に応じることがゲーム界の停滞に繋がっている皮相な現状をどう打破するか。残念ながらその答えは見えてこない。


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