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2012年11月に読んだ本

2012年12月01日 01時54分31秒 | 本と雑誌
2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3702ページ
ナイス数:94ナイス

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編感想
1巻に比べてずいぶんと読みやすくなった。ほぼファンタジー世界内で展開している点も良かった。構成など甘いところも多く、ドラゴン退治が余技に感じたが、それでも1巻に比べれば(笑)。ダークエルフの扱いの酷さもねえ・・・。(☆☆☆☆)
読了日:11月7日 著者:柳内 たくみ
アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者4 (講談社ラノベ文庫)アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者4 (講談社ラノベ文庫)感想
相変わらずよくできているとは思う。ただ全体に真面目すぎるかなあと。3巻が展開的にはじけていたというのはあるだろうが、ちょっと堅苦しさを感じた。それが今風なのかもしれないけどね。(☆☆☆☆☆)
読了日:11月8日 著者:榊 一郎
麒麟の翼 (特別書き下ろし)麒麟の翼 (特別書き下ろし)感想
文句のつけようのない良質のエンターテイメント。『真夏の方程式』に続けてややテーマ性が濃い気がするけれども、それに引きずり込まれることなく高い完成度を誇っている。ただ最後のページをめくった直後の自炊に関する文章は無粋な感じが。もう少し掲載する場所を考えて欲しかった。(☆☆☆☆☆☆☆)
読了日:11月13日 著者:東野 圭吾
ビアンカ・オーバースタディ (星海社FICTIONS)ビアンカ・オーバースタディ (星海社FICTIONS)感想
なにこのエロ小説(笑)。ライトノベルじゃないことは確かだけど、メタフィクションとしては読めるって感じかな。読み終わった直後は筒井も歳取ったかと思ったが、しばらく経つと、最近のラノベにはない面もあって、これはこれでありかなあとも。でも、これをラノベと言うのはラノベに失礼すぎ。(☆☆☆)
読了日:11月14日 著者:筒井 康隆
白銀ジャック (実業之日本社文庫)白銀ジャック (実業之日本社文庫)感想
著者が楽しんで書いているのが伝わってくる。いっその事ミステリではなく、純粋なスポーツものでもいいのに。東野作品にしてはキャラクターの立て方が良くなかったのは残念。(☆☆☆☆)
読了日:11月15日 著者:東野 圭吾
本当は謎がない「幕末維新史」 幕府再生はなぜ失敗したのか? (ソフトバンク新書)本当は謎がない「幕末維新史」 幕府再生はなぜ失敗したのか? (ソフトバンク新書)感想
読みやすいのは長所だが、読むに足るかは相当に疑問。歴史上の人物を評するのは、限られた史料という制約があるゆえにどうしても傲慢な見方に陥りやすい。それを避ける様子も乏しく、著者の放言を垂れ流されているようにも感じる。あくまでもひとつの説として読み飛ばすにはいいけど。(☆☆☆)
読了日:11月16日 著者:八幡 和郎
光圀伝光圀伝感想
これだけの厚さを一気に読ませる力量、特にキャラクターの立て方は美事(笑)。ただ同世代や上の世代との関係の描き方に比べ、下の世代との関係がもうひとつだった感はある。これは冲方に限らず、他の作家でもよく見られる傾向だけれど。紋大夫がもう少し魅力的だったら、傑作になり得たかもしれない。(☆☆☆☆☆☆☆)
読了日:11月21日 著者:冲方 丁
魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?感想
「謎解きは~」に比べてもミステリ色は薄め。ユーモアミステリはキャラクター小説でもあるわけだけど、キャラクターの立て方がもうひとつという印象。ユーモアに関してはさすが手慣れた感じだけに、惜しい作品かなあ。(☆☆☆☆)
読了日:11月23日 著者:東川 篤哉
下町ロケット下町ロケット感想
直木賞受賞作は大当たりか大外れするって印象があるけど、これは前者。テンポも良く、キャラの配置も見事。テーマ的にもう少し理系寄りの方が好みに感じたが、それだと読者が絞られてしまうかもしれないので、これはこれで良かったのだろう。(☆☆☆☆☆☆)
読了日:11月27日 著者:池井戸 潤
クローバー・レイン (一般書)クローバー・レイン (一般書)感想
著者の書店・出版社系の作品はあらかた読んでいるが、エピソード描写の巧みさに比べて、ストーリー面では物足りなさを感じていた。それだけに本書を読んで驚いた。一本調子なところは残るものの、キャラの配置などは素晴らしく、構成もしっかりしている。『舟を編む』よりもはるかに楽しめた(笑)。(☆☆☆☆☆☆☆)
読了日:11月28日 著者:大崎梢

読書メーター




久しぶりに月間10冊に到達。とはいえ、このペースでも年間120冊だから、当初の目標であった150冊にも届かない計算となる。まあそれでも読めるときに1冊ずつ読んでいくしかないわけで。

今月は採点が甘いかなあと思いつつ、☆7つが3作品。
『新参者』に☆8をつけたが、『麒麟の翼』もそれに劣らぬ作品。構成の巧さ、バランスの良さが際立っているように感じる。

『光圀伝』は後輩問題の記事でも触れたが、少々の難点があってもぐいぐいと読み手を引き込む力は素晴らしい。『天地明察』も細部には欠陥があったが、それをものともしない魅力があった。次はどんな歴史ものを書いてくれるのか期待したい。

『クローバー・レイン』の☆7つはかなり甘いかなあと思ったが、『舟を編む』にがっかりした反動ということで(笑)。大崎作品はこれまでも書店を舞台とした連作ミステリの成風堂シリーズや本書と同じ出版社を舞台にした『プリティが多すぎる』など、出版関連の作品を読んできた。短編に比べて長編に難を感じていたが、そんな思いを払拭する出来だった。

『下町ロケット』も評判に違わぬ出来ではあったが、お仕事ものの場合、有川浩の作品が基準となってしまうのでどうしても評価が辛くなる傾向があるかもしれない。後輩問題で書いた上下関係の部分で言えば、本書は恐ろしいほど何もしていない。状況が危機を解決してくれただけで、具体的に上の人間が下の人間をフォローする場面はほとんどなかった。本筋とは関係ないとはいえ、ここまで潔いとそれはそれでいいのかもしれないが(笑)。

年内に読んでおきたい本がいくつかあるが読めるかどうか。図書館の返却期限のような締切がないと、手を付けるきっかけをつかめなかったりする。なんとかしないとなあ……。

2012年10月に読んだ本
2012年9月に読んだ本
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2012年6月に読んだ本
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2012年3月に読んだ本
2012年2月に読んだ本
2012年1月に読んだ本
2011年に読んだ本




2012年11月に読んだコミック

『GIANT KILLING』24-25巻(ツジトモ)
『僕らはみんな河合荘』3巻(宮原 るり)
『ヨコハマ買い出し紀行』1-14巻(芦奈野 ひとし)
『けいおん! College』(かきふらい)
『けいおん! Highschool』(かきふらい)
『高杉さん家のおべんとう』6巻(柳原 望)
『ラストイニング』35巻(中原 裕 神尾 龍)
『森田さんは無口』4巻(佐野 妙)
『GA -芸術科アートデザインクラス-』5巻(きゆづき さとこ)
『ゆるゆり』9巻(なもり)
『咲日和』2巻(木吉 紗 小林 立)
『第七女子会彷徨』5巻(つばな)

計26冊。全体的に質が高く、読みたい作品が読めたという印象。

これまで読む機会がなかった『ヨコハマ買い出し紀行』。もっと早く読んでおくべきだったと改めて痛感した。
絵や構成の力によって、言葉に頼らずとも様々なものが伝わってくる。マンガとして一級品。
描かれた世界観は、滅びゆく文明を従容と人々が受け入れようとしている時代。80年代まではこうした世界観はほとんど提示されていなかったと思うので、先駆けのような作品だろう。
アフタヌーン繋がりということもあり、『ああっ女神さまっ』や『神戸在住』を思い浮かべることもしばしば。バイク乗りの感性ってマンガにちゃんと表れるしね。
明確なストーリーがなく、エピソードの集積で時間の経過を描くという意味では「空気系」の元祖のような作品でもある。作中に登場しなかった「先生」の不在という点でも空気系的だろう。

『第七女子会彷徨』は人それぞれの認識の差異を扱ったものが多い。本来、様々なレベルで世界の見え方は個人個人によって異なるし、そのときの状況次第でも異なる。
同じ映画を見て、感想が異なるのは思考の差異と言えるが、見えたものも人それぞれ異なるだろう。例えば、役者の表情に目が行く人もいれば、風景ばかり見ている人もいる。何を優先的に見て、何を見ないのかこそが個性とも言える。
『GA -芸術科アートデザインクラス-』にもそうした視点が描かれることがあるが、それこそが芸術の基礎だろう。ものの見方、認識の差異こそが芸術の存在する基盤とも言える。
そうした違いを前提に、それをどう埋めていくのかがフィクションにおいても大切だと思う。『光圀伝』以来書いてきた後輩問題における上の世代から下の世代へのアプローチの試行錯誤もまたそうした差異を埋めるためにあると言えるだろう。(同時に、昔は良かったといったノスタルジーに浸ってばかりいることは、下の世代に対するアプローチの拒否とも見なすことができるだろう。)