録画したまま放置していた『School Days』。その8話から最終話までを一気に観賞した。ネタバレ込みでこの作品について感想を書き記しておきたい。
この作品について語るとき、作品自体の評価、主人公への評価、最終話自粛に関する見方、そして地上波で放送したことへの見方を述べる必要があるだろう。
この作品の原作は18禁PCアドベンチャーゲームだ。間もなくPS2にも移植される。ゲームは未プレイ。偏見かもしれないが、基本的に18禁PCゲーム(及びそのアニメ化作品)への私の評価は非常に低い。よって、当初このアニメへの関心は低く、とりあえず1話だけ見て終わりにするくらいの気持ちだった。
それが結果的に最後まで見ることとなったのは、簡単に言えば作り手がお約束を見事に外してくれたからだ。ハーレム系アニメは主人公の男が多数の女性からモテまくるというものだ。それが不快を感じさせないのは、その主人公が誠実だからというものが多い。女性から慕われるだけの魅力があったり、少なくとも視聴者が投影できる何かを持っていたりするものだ。或いは全く逆に、巧みに女性を口説き落としていくような主人公像も成り立っている。
今作の主人公はそれに当てはまらない。ゲームでも批判されていたようだが、アニメの放送が始まるとネット上で彼への非難の声が吹き上がった。それはもちろん作り手の狙い通りである。
主人公同様にヒロインたちもまたお約束通りの存在ではない。見掛けはいかにもなキャラクターたちだが、その愚かさが前面に出ている。端々に描かれている女たちのズルさやイタさは、かえって不思議なリアリティを形成している。
最終話の段階で、不誠実な主人公の誠と、彼と寝た女たちという構図が出来上がっていた。その中でも弱さの目立つ二人のヒロイン世界と言葉は、破滅に向けてあと一歩といったところだった。
結果的に世界が誠を殺し、言葉が世界を殺した。通常女性は恋愛対象よりその浮気相手に殺意を向けやすいことを考えると、現実なら世界と言葉のどちらかが相手を殺すという展開が、或いは更に起こりやすいのは世界の自殺だろう。ただそうした終焉は誠にとってはグッドエンドでも視聴者にとってはバッドエンドなのでさすがに選択できなかった。
細部のギスギス感など見ていて鬱に感じるアニメという評価はそう間違いではない。最終話でその開放が必要だったという意味では妥当なエンディングだ。ストーリー展開は予測の範囲内だったし、個々のシーンの描き方にはどうかと思うものも少なくなかったが、それでも演出を積み上げて物語を構成した点は非常に高く評価する。物語と呼べるレベルのアニメは非常に少ない。その中でとても健闘したと思う。
主人公の誠の造型がこの作品を作り上げている。ハーレム系アニメや18禁ゲームを堪能しているオタクたちへ不快感を与えるために生み出された存在とも言える。
彼の基本的な属性は無知だ。彼は二股を続け、その後はどんどん手を出していくがその全てがきっかけは女性からの誘いによるものだ。そして、その場の雰囲気だけで行動する。彼には悪意は全く無い。そこを徹底して描いている。究極の自己中で、他人の心は全く分からない。彼の優しさはその場のノリに過ぎない。
そんな彼に惹かれるヒロインたちは、必然的にどうしようもなく薄っぺらくなってしまう。世界や言葉が好きになった理由は作品内で描かれていない。唯一刹那に理由らしい理由が存在するが、それすら人間性が発露するような出来事ではない。外見や上辺の優しさで好きになり、その内面の幼稚さを知っても頑なに求め続ける愚かさがこの作品の女性たちの共通の属性だと言える。
誠の醜さは恋愛という場で描かれているが故に特殊だ。だが、恋愛以外の場で人は、特にオタクは、誠のような側面を持っている(もちろん恋愛の場だけ除くものではないが)。それを突きつけられた痛さが意図的になり無意識的になり誠への強い苛立ちへと繋がっている。その意味では11話までにそれは十分に描き切れた。誠をのうのうと生き続けさせる終わり方もあっただろうが、作品としてのけじめをつけるという観点からはこうした結末が妥当だった。
最終話は殺人によって結末を迎える。表現として特に過激だったとは思わないが、この内容であれば放送自粛も肯える。あの展開で誰も死なずに終わることは不可能だろう。ただ現実の事件は作品のような明快さはない。この作品が現実に与える影響力を鑑みた場合、格別に放送中止するという事態が必要だったかどうかは非常に疑問だ。
この作品が地上波で、深夜とはいえ誰もが目に出来る形での放映で良かったのかどうか。これは非常に難しい判断だと思う。少なくとも現在放映中の凡百のアニメより優れている作品だ。しかし、誰もが見るべき作品ではない。例えばCS放送であれば、作品ごとに年齢視聴制限を儲けることができる。地上波ではそれができない。一方で、善悪のあり方や人の心の動きなどキチンと描いていることを考えれば、特に勧めるわけではないが中高生が見ても構わないと思う。アニメに限らずオブラートに包まれた形でもっと酷い作品がいくらでも放送されている。猟奇的な部分を捉えて非難するのは簡単だが、もっと見えにくい形で質が悪いのみならず俗悪なものがあちこちで散見できる現状がある。
この作品とは直接関係無いが、某所で、女性差別について日本はアメリカよりマシと言った意見や更に日本には女性差別は現在ほとんど存在しないといった意見が書き込まれていた。そうした意見はごく一部の声に過ぎないとは思うのだが、ネット上ではこうした無知が拡大再生産されている印象を受ける。
誠は悪ではない。どれほど不快に感じようと彼に女性たちを騙そうという悪意はない。一方で彼の無知は多くの悲劇を生んだ。もちろんそれは彼だけの責任ではない。だが、無知であることの罪もまたそこに存在している。無邪気なら許されるというわけではないことに気付こう。
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この作品について語るとき、作品自体の評価、主人公への評価、最終話自粛に関する見方、そして地上波で放送したことへの見方を述べる必要があるだろう。
この作品の原作は18禁PCアドベンチャーゲームだ。間もなくPS2にも移植される。ゲームは未プレイ。偏見かもしれないが、基本的に18禁PCゲーム(及びそのアニメ化作品)への私の評価は非常に低い。よって、当初このアニメへの関心は低く、とりあえず1話だけ見て終わりにするくらいの気持ちだった。
それが結果的に最後まで見ることとなったのは、簡単に言えば作り手がお約束を見事に外してくれたからだ。ハーレム系アニメは主人公の男が多数の女性からモテまくるというものだ。それが不快を感じさせないのは、その主人公が誠実だからというものが多い。女性から慕われるだけの魅力があったり、少なくとも視聴者が投影できる何かを持っていたりするものだ。或いは全く逆に、巧みに女性を口説き落としていくような主人公像も成り立っている。
今作の主人公はそれに当てはまらない。ゲームでも批判されていたようだが、アニメの放送が始まるとネット上で彼への非難の声が吹き上がった。それはもちろん作り手の狙い通りである。
主人公同様にヒロインたちもまたお約束通りの存在ではない。見掛けはいかにもなキャラクターたちだが、その愚かさが前面に出ている。端々に描かれている女たちのズルさやイタさは、かえって不思議なリアリティを形成している。
最終話の段階で、不誠実な主人公の誠と、彼と寝た女たちという構図が出来上がっていた。その中でも弱さの目立つ二人のヒロイン世界と言葉は、破滅に向けてあと一歩といったところだった。
結果的に世界が誠を殺し、言葉が世界を殺した。通常女性は恋愛対象よりその浮気相手に殺意を向けやすいことを考えると、現実なら世界と言葉のどちらかが相手を殺すという展開が、或いは更に起こりやすいのは世界の自殺だろう。ただそうした終焉は誠にとってはグッドエンドでも視聴者にとってはバッドエンドなのでさすがに選択できなかった。
細部のギスギス感など見ていて鬱に感じるアニメという評価はそう間違いではない。最終話でその開放が必要だったという意味では妥当なエンディングだ。ストーリー展開は予測の範囲内だったし、個々のシーンの描き方にはどうかと思うものも少なくなかったが、それでも演出を積み上げて物語を構成した点は非常に高く評価する。物語と呼べるレベルのアニメは非常に少ない。その中でとても健闘したと思う。
主人公の誠の造型がこの作品を作り上げている。ハーレム系アニメや18禁ゲームを堪能しているオタクたちへ不快感を与えるために生み出された存在とも言える。
彼の基本的な属性は無知だ。彼は二股を続け、その後はどんどん手を出していくがその全てがきっかけは女性からの誘いによるものだ。そして、その場の雰囲気だけで行動する。彼には悪意は全く無い。そこを徹底して描いている。究極の自己中で、他人の心は全く分からない。彼の優しさはその場のノリに過ぎない。
そんな彼に惹かれるヒロインたちは、必然的にどうしようもなく薄っぺらくなってしまう。世界や言葉が好きになった理由は作品内で描かれていない。唯一刹那に理由らしい理由が存在するが、それすら人間性が発露するような出来事ではない。外見や上辺の優しさで好きになり、その内面の幼稚さを知っても頑なに求め続ける愚かさがこの作品の女性たちの共通の属性だと言える。
誠の醜さは恋愛という場で描かれているが故に特殊だ。だが、恋愛以外の場で人は、特にオタクは、誠のような側面を持っている(もちろん恋愛の場だけ除くものではないが)。それを突きつけられた痛さが意図的になり無意識的になり誠への強い苛立ちへと繋がっている。その意味では11話までにそれは十分に描き切れた。誠をのうのうと生き続けさせる終わり方もあっただろうが、作品としてのけじめをつけるという観点からはこうした結末が妥当だった。
最終話は殺人によって結末を迎える。表現として特に過激だったとは思わないが、この内容であれば放送自粛も肯える。あの展開で誰も死なずに終わることは不可能だろう。ただ現実の事件は作品のような明快さはない。この作品が現実に与える影響力を鑑みた場合、格別に放送中止するという事態が必要だったかどうかは非常に疑問だ。
この作品が地上波で、深夜とはいえ誰もが目に出来る形での放映で良かったのかどうか。これは非常に難しい判断だと思う。少なくとも現在放映中の凡百のアニメより優れている作品だ。しかし、誰もが見るべき作品ではない。例えばCS放送であれば、作品ごとに年齢視聴制限を儲けることができる。地上波ではそれができない。一方で、善悪のあり方や人の心の動きなどキチンと描いていることを考えれば、特に勧めるわけではないが中高生が見ても構わないと思う。アニメに限らずオブラートに包まれた形でもっと酷い作品がいくらでも放送されている。猟奇的な部分を捉えて非難するのは簡単だが、もっと見えにくい形で質が悪いのみならず俗悪なものがあちこちで散見できる現状がある。
この作品とは直接関係無いが、某所で、女性差別について日本はアメリカよりマシと言った意見や更に日本には女性差別は現在ほとんど存在しないといった意見が書き込まれていた。そうした意見はごく一部の声に過ぎないとは思うのだが、ネット上ではこうした無知が拡大再生産されている印象を受ける。
誠は悪ではない。どれほど不快に感じようと彼に女性たちを騙そうという悪意はない。一方で彼の無知は多くの悲劇を生んだ。もちろんそれは彼だけの責任ではない。だが、無知であることの罪もまたそこに存在している。無邪気なら許されるというわけではないことに気付こう。
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