環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」

2008-03-27 18:43:09 | 巨大構造物/都市/住環境
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企業にとって先行投資は、競争力を確保するために経営上最も重要な意思決定です。目先の判断で誤った方向に先行投資すると、企業経営上致命的なダメージを招くことになるでしょう。

1993年7月に開業し、2002年9月に閉鎖された屋内スキー場「ザウス」(千葉県船橋市)、94年に全面開業し、2001年2月に倒産した「シーガイア」 (宮崎県宮崎市)、92年3月開園し、2003年2月に事実上倒産した「ハウステンボス」 (長崎県西海市)に代表されるようなテーマパークは、マスメディアでは、通常、経済的な視点(金の流れ)からしか論じられません。


しかし、巨大構造物は事業者にとっては先行投資による莫大な借金を、金融機関にとっては不良債権を、そして、環境にとっては多大な負荷を生じていることは疑問の余地がありません。全国の大都市につくられたドーム型の多目的施設都庁をはじめとする自治体の高層庁舎関空本州四国連絡橋東京湾アクアラインなどもその例外ではありません。 




多くの場合、事業の決定者は後年、その責任を問われることはありません。構造物の経済的寿命は長く、事業決定の最高責任者は通常、高齢者であることが多いので、問題が生じたときには他界していることが少なくないからです。

昨年3月30日に、六本木の旧防衛庁跡地に「東京ミッドタウン」がオープンしました。そして、今年3月20には赤坂に「赤坂サカス」がグランドオープンしました。


そして、次の図が示しますように、同じような巨大構造物の建設がさらに続きます


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こうした建造物の経済的寿命は40~50年あるいはそれ以上ですから、事故が起こったり、エネルギー(とくに電力)不足になったり、あるいは意図的に廃止されないかぎりは、2050年あるいはそれ以降も稼働しつづけます。巨大な構造物はその一生(建設時、使用時、廃棄時)を通じて大量のエネルギー(とくに電力)や大量の水を要求し、大量の排熱(下の記事を参照)と廃棄物を生み出し、最終的には構造物自体が大量の廃棄物と化します。 

 

上の記事の最後のところで、建築研究所の足永上席研究員は「緑化など熱を逃がす方法は対症療法にすぎない。都市に化石燃料を持ち込むのを減らすこと。太陽光など自前のエネルギーで都市を維持する仕組みを作らないと、大変なのとになる」と警告しておられます。わたしも同感です。そのような意識をもって次の記事(広告)を御覧ください。広告記事とはいえ、日本の識者や専門家と称される方々の環境問題に対する「意識の低さ」というよりも「意識の無さ」という表現のほうが適当かも知れませんが、驚くばかりです。


島田晴雄さん(慶應義塾大学経済学部教授、内閣府特命顧問)の発言(上の記事の青網をかけた部分)

まず都心部の容積率を現在の1000%からニューヨークなみの2000%に引き上げることが必要です。
現在東京の建物は高層ビルの林立する山手線の内側ですから、平均するとわずかに2.5階しかない。

菊川怜:そんなに低いんですか。それでは、これから都心人口が増えていったら、とても収容しきれませんね。
 


黒川紀章さん(建築家、日本芸術院会員)の発言(上の記事の赤網をかけた部分)

さらに「屋上に緑を植えた場合は容積率を20%上乗せする」。


お二人とも、20世紀の「経済拡大の発想」から一歩も抜き出ていないことが明らかです。

そこで、私のささやかな提案です。このような開発行為やイベントはその目的や規模の大小にかかわらず、かならず「廃棄物」を出します。これまで、銀行系の調査機関、民間や公的な調査機関は、「大規模開発行為」(関西国際空港、本州四国連絡橋、各種テーマパーク、屋根付きドームの建設、首都移転計画など)や「大規模イベント」(オリンピック、万国博覧会など)が日本経済全体、あるいは、地方経済にどの程度の「経済波及効果」(市場規模の拡大、新規雇用の創出、税収の増加など)をもたらすかを経済成長の観点から調査し、マスメディアはその結果を大々的に報道してきました。

今後は、事業計画者は「経済波及効果」とともに、つぎのような情報をセットで試算し、マスメディアに提供したらいかがでしょうか。 


①開発行為の準備期間および完成した構造物の経済的な寿命の期間中に生ずる「水・エネルギー消費量」や「各種廃棄物の総量(固形廃棄物、排ガスおよび排水処理の結果生ずる廃棄物の総量)とその処理・処分に要する費用」

②イベントの準備期間および会期中に発生する「水・エネルギー消費量」や「各種廃棄物の総量とその処理・処分に要する費用」




私たちの経済活動が「環境の許容限度」や「人間の許容限度」ギリギリに近づいている、あるいは一部で限度を超えてしまった現在、環境への人為的負荷が増えるのを避けるためには、量の増大を意味する「新築・増築的発想」よりも、質の向上を重視する「改築的発想」が望まれます。そして、決して忘れてはならないのは、日本は「有数の地震国」であるという現実です。 



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