環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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経済的に窮地にある関空と忘れてはならない環境問題

2009-07-18 18:43:50 | 巨大構造物/都市/住環境
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下の図をクリックしてください。
 


昨日の関空の記事の内容は経済面で、経済的視点からしか論じられておりませんでしたが、21世紀もほぼ10年経過した現在では経済的側面からだけでなく、環境的側面からの問題点も論じるべきものだと思います。そこで、一昨日のハウステンボスに関する記事で示した「巨大構造物に対する懸念」を再掲します。


上の図の環境的側面(③、④および⑤)を考えてみようと思うのです。次の図をご覧ください。




大量の電力消費、大量の水消費、大量の廃棄物、巨額の先行投資などの考え方は巨大構造物に共通するもので基本的には同じですが、空港の場合にはもう一つの新しい懸念材料が加わります。それは「今後の航空用燃料(ジェット燃料)の供給」がどうなるかということです。ある資料によりますと、航空用燃料の需要予測はみごとなまでに右上がりの傾向を示しています。この資料には2010年までの見通ししかありませんが、さらなる空港新設、既存空港の拡張・整備計画などがありますので、その後もジェット燃料の増加傾向は続くでしょう。


一方、次の図は化石燃料の可採埋蔵量を示しています。


現在のエネルギー体系のままで、世界がエネルギー資源を消費し続けると、一体どのくらいで地球上のエネルギー資源がなくなってしまうのか心配になりますが、この疑問に正しく答えられる人はおそらくいないでしょう。「神のみぞ知る」と答えるのが無難であり、また、正しい答えでもあるでしょう。しかし、私たちの地球が有限であること、私たちの生命の維持にかかせないエネルギーを地球のエネルギー資源に依存していることをはっきり認識すれば、この疑問に対する答えを探そうと考えるのは当然でしょう。エネルギーの専門家はとりあえずの手がかりとして「確認可採年数」を議論の参考にしています。

航空用燃料であるジェット燃料は石油製品の一つで、石油(原油)を常圧蒸留装置にかけて得られます。得られる各石油製品の割合は原油の種類によって異なりますが、ジェット燃料の生産割合は原油のおおよそ3%程度だそうです。エネルギーの専門家の中には灯油や軽油のようないわゆる白油(中間留分)が十分あり、これらの白油からジェット燃料が生成できるのでジェット燃料の供給の心配はないと言うのですが、果たしてそうなのでしょうか?

白油からジェット用燃料を生成できても、白油の元である原油の供給量に資源上の制約があるわけですから、このような説明は私には納得し難いものです。関西国際空港の社会的寿命は少なくとも50年はあるでしょう。はたして、開港50年後の関西国際空港では離発着便数の削減無しに離発着するジェット機の航空用燃料は供給可能なのでしょうか?

借入金の返済のためには離発着する便数を増やすことになりますが、そうすれば、航空用燃料の消費量が増加することは火を見るよりも明らかです。一方、水素を将来の航空機の燃料と考える専門家がいますが、どの程度の可能性があるのでしょうか?

1995年8月3日、運輸大臣の諮問機関、航空審議会の空港整備小委員会は関西国際空港二期工事、中部新国際空港、首都圏第三空港の三都市圏の空港整備を三大プロジェクトと位置づける第7次空港整備5カ年計画(1996~2000年度)の骨格を決めました。日本のみならず、東南アジアの発展途上国は経済成長に合わせて空港の整備や新設など様々な巨大プロジェクトを計画しています。

私のような素人はこのようなプロジェクトを決めるにあたって、完成後のエネルギーの供給の可能性などが十分考慮されているのかどうか疑問に思います。もう一度、「今日の決断が数十年後の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則を思い起こしてください。

私の疑問に対しては、エネルギー関係者からは次のような回答がかえってきそうです。「化石燃料と言えば、これまで利用し続けてきた石炭、石油、天然ガスがあとどのくらい残っているかばかりが話題になるが、まだ、豊富な未利用資源が眠っているではないか」と。

ここで言う未利用のエネルギー資源とは、南ベネズエラのオリノコ河流域に広い範囲で存在が確認されている「オリマルジョン」(C重油、石油残さ油のようなもの)や「メタン・ハイドレート」のようなものです。一説では、オリマルジョンの埋蔵量は約1兆2千億バレル、サウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵する量だそうですし、メタン・ハイドレートは天然ガスがシャーベット状になったもので、水深約300メートル以上、26気圧以上の海域に天然ガス埋蔵量の数十倍から千倍の賦存量が見積もられているそうです。このメタンハイドレートを石炭・石油に変わる21世紀の主要エネルギー源になると期待する人もいます。

このような可能性を秘めたエネルギー源の存在が確認されていても、その商業的な利用までにはかなりのリードタイムが必要となります。エネルギーの供給の可能性よりもさらに重要なことは、環境への負荷の更なる増大であることは言うまでもありません。



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