環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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巨大構造物が抱える大問題  都庁舎 780億円大改修

2009-03-25 18:28:21 | 巨大構造物/都市/住環境
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私が20年前より懸念していた「日本の都市再開発への疑問」がいよいよ現実の大問題となってきました。次の記事をご覧ください。


現在の都庁舎は世界的に有名な建築家、故丹下健三さんの作品です。私が以前から疑問に思っているのは、著名な建築家は一般に建物を設計するのには熱心なのですが、建設された構造物を維持することにはあまり関心がないようです。

●大型施設 維持費もズシリ

●自治体庁舎 どうしてそんなに高くなるの? 維持費は膨大

また、その構造物の建設時や使用時、ましてやその廃棄時にもたらされる環境問題に対してもあまり意識していないように思われます。

●新都庁舎にアスベスト材

企業にとって先行投資は、競争力を確保するために、そして何よりも企業の存続のために、経営上最も重要な意思決定です。目先の判断で誤った方向に先行投資すると、企業経営上致命的なダメージを招くことになるでしょう。
 
●「今日の決断」と「将来の問題」

今日の決断が将来を原則的に決める(2007-04-04)

1993年7月に開業し、2002年9月に閉鎖された屋内スキー場「ザウス」(千葉県船橋市)、94年に全面開業し、2001年2月に倒産した「シーガイア」(宮崎県宮崎市)、92年3月開園し、2003年2月に事実上倒産した「ハウステンボス」(長崎県西彼町=現西海市)に代表されるようなテーマパークは、マスメディアでは、通常、経済的な視点(金の流れ)からしか論じられません。

しかし、巨大構造物は事業者にとっては先行投資による莫大な借金を、金融機関にとっては不良債権を、そして、環境にとっては多大な負荷を生じていることは疑問の余地がありません。全国の大都市につくられたドーム型の多目的施設、都庁をはじめとする自治体の高層庁舎、関空、本州四国連絡橋、東京湾アクアラインなどもその例外ではありません。
 
多くの場合、事業の決定者は後年、その責任を問われることはありません。構造物の経済的寿命は長く、事業決定の最高責任者は通常、高齢者であることが多いので、問題が生じたときには他界していることが少なくないからです。
 
このことについては、私の本『21世紀も人間は動物である 持続可能な社会への挑戦 日本vsスウェーデン』(新評論、1996年7月)でも指摘しましたが、2005年になって「無駄な公共事業の具体的事例」として関西経済圏の巨大構造物がマスメディアで批判されはじめました。

●関空離陸、湾岸開発促す 

それでは、2003年に完成した東京駅周辺、汐留、品川駅周辺、六本木周辺の高層ビルなどはどうなるのでしょうか。これらの巨大構造物は少子・高齢化などの将来の社会状況の変化とは無関係に存在しつづけます。
 
●これが汐留15万人都市

こうした建造物の経済的寿命は40~50年あるいはそれ以上ですから、事故が起こったり、エネルギー(とくに電力)不足になったり、あるいは意図的に廃止されないかぎりは、2050年あるいはそれ以降も稼働しつづけ、その間、それらの機能を維持するために大量の資源・エネルギー、水の供給を要求し、環境負荷を与えつづけることになります。そして、最後は廃棄物化します。次の図は私が20年前から抱き続けてきた「巨大構造物に対する懸念」をまとめたものです。
 

●巨大構造物の将来 その具体例を軍艦島にみる

●軍艦島 風化する20世紀建築の「祖型」


2000年末に、ヒートアイランド現象に歯止めをかけるため、東京都は、「東京都自然保護条例」を改正して、都内で新規着工するビルの屋上緑化を義務づけることを決め、屋上を緑化するビルに対しては容積率をアップする「ボーナス」を決めたという報道がありました。また、2003年1月11日付の朝日新聞に掲載された全面広告「新春座談会 人と資産の都心回帰」では建築家の故黒川紀章さんが「たとえば屋上に緑を植えた場合、容積率を上乗せするとか、インセンティブが必要」などと発言しています。
 
これらの決定や発言は「ヒートアイランド現象に歯止めをかける」という本来の目的と、その目的を達成する一つの手段と考えられる「屋上緑化」が意図的に逆転させられていて、「屋上緑化の推進」が目的化してしまっています。

これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようです。これから2030年ごろにかけて、巨大構造物(老朽化した原発の立て替え、あるいはその廃棄処分を含めて)から次々に発生する膨大な社会コストに、日本は追い立てられることになると思います。


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