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伝染病や栄養不良に起因する過去の病気に代わって、70年代後半頃から喘息、アレルギーやストレスに起因する健康の問題が増える傾向にあります。適切な住居と室内環境の維持が私たちの健康の上からも以前に増して重要となってきました。
スウェーデンは住環境・室内環境の分野でも「予防志向の国」の視点からさまざまな先駆的な試みを行なってきた、最先端をいく国です。80年代には、「Sick Building 」「Healthy Building」あるいは「Indoor Climate」と冠した住環境・室内環境に関する国際会議やシンポジウムを数多く主催してきました。
そこで議論されたテーマはラドン、カビ、アスベスト、ホルムアルデヒドのような化学物質、空調施設など様々です。建材から出る化学物質の健康への影響、気密性の高い住宅での空調施設のあり方など、まさにいま、日本で「シックハウス症候群」と呼ばれたり、あるいは「化学物質過敏症」と称されている問題群の解明と対策でした。
これまで、大気汚染を議論するときには、住宅や事務所の「室内空気の質」はほとんど考慮されてきませんでしたが、現在では、室内空気の質が外部空気の質より劣る場合があることがわかっています。建材、家具、脱臭剤、樟脳やナフタリンのような防虫剤などから発する化学物質、ダスト、たばこの煙、コピー機、燃焼施設からの排気など室内空気の汚染源は様々です。
日本でも、アルミサッシなどの使用や省エネルギー対策の結果として、住宅や事務所の気密性が高まるにつれ、「室内空気の質の問題」が重要になってきましたが、残念なことに、80年当時スウェーデンで開催された専門家会議についての日本の関心はあまり高くありませんでした。当時に比べれば関心は高まったとは言え、日本の状況は国際社会をリードするまでにはいたっていません。
スウェーデンがこれらの問題に早めに取り組んだのは、30年前のオイルショックのときの省エネ対策と無縁ではありません。化石燃料の高騰に対応する策の一つとして、空調設備を効率的に機能させて省エネルギーを図ろうとすると、どうしても住宅の気密性が高くなります。そうすると、室内の空気の循環が悪くなり、建材からの化学物質が外に出ていかなくなります。それが、健康に悪い影響を及ぼさないかどうか、いち早く議論していたのです。ここで有効な手段は日本ではあまりポピュラーではない「疫学(Epidemiology)」という学問です。
90年代中頃から日本でも「シックハスウス症候群」という言葉がマスメディアに登場し、いまでは社会に定着した感があります。この言葉の広がりと、それへの対策を観察すると、日本がまさに「治療志向の国」であることがよくわかります。それゆえに、住環境・室内環境や労働環境に関する研究も、データの蓄積も、そして、具体的な対応もまた、日本の大変遅れている分野の一つであると言わざるをえません。
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