環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「首都圏におけるごみゼロ大作戦」  古くて新しい「デポジット制度」 と 「製造者責任制度」

2010-03-14 12:30:32 | 廃棄物

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昨日、NPO法人「町田発・ゼロ・ウェイストの会」が主催した「ワークショップ 首都圏におけるゴミゼロ大作戦」にパネリストとして参加しました。

参加者への配付資料に、次のような主催者の趣旨説明がありました。

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今日わが国では、環境問題に対して関心が高まる中、循環型社会形成に向けて市町村での取り組みが進んでいます。明確なごみゼロ社会への移行は、「ゼロ・ウェイスト宣言」によって実現されますが、初めての宣言が2003年徳島県・上勝町で制定されて以来、福岡県・大木町(2008年)、熊本県水俣市(2009年)がこれに続いています。ゼロ・ウェイストとは、無駄をなくし資源を大切にしながら環境をよくしていこうという考え方です。

「ゼロ・ウェイスト宣言」を制定した上記の自治体は、いずれも人口約3万人以下ですが、42万人を抱える町田市では、2006年から、「ゴミを作らない,燃やさない、埋め立てない」という理念のもとに1年間の大規模な「ごみゼロ市民会議」がおこなわれ、それ以来、ゼロ・ウェイスト社会の実現に向けた多くの取り組みが進んでいます。

21世紀は環境の時代といわれます。日本が環境負荷の少ない持続可能な国に生まれ変わるためにも人口が集中する都市でのごみ政策のあり方を抜本的に見直す必要があります。本ワークショップでは、首都圏において、ごみの削減と資源化をどのように進めるべきか、市民、行政、国の役割は何かなど、ゼロ・ウェイストのまちづくりについて多面的に検討を加え、皆様と一緒に今後の方向を考えたいと思います。

平成22年3月13日
NPO法人 町田発・ゼロ・ウェイストの会
理事長 広瀬 立成
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私のプレゼンテーションのテーマは「廃棄物に対する考え方の相違:日本vsスウェーデン 製造者責任制度の導入」でした。与えられたプレゼンテーションの時間は20分。

私の前に基調報告をされた物理学者の広瀬さんが、ごみ問題にかかわりのある物理学の基本的な法則をお話になりましたので、「広瀬さんがお話になられた物理学の基本法則が理解できれば、廃棄物に対するスウェーデンの考え方は非常にわかりやすく逆に、日本の考え方はわかりにくいのでは・・・」と、日本のゴミ対策に多少の皮肉を込めて、私のプレゼンテーションを始めました。                                 
最初に、次の報道記事を見ていただきました。


私のことを知らない方でも、廃棄物の分野でご活躍中の服部さんのことをご存じの方は多いでしょう。服部さんは行政職員、事業者、学識者と共に、ごみ減量とリサイクルの推進に長く取り組んできたそうです。その服部さんが、家庭から出た空き缶やペットボトルに対する対策としてデポジット制度に注目しているそうです。その制度を導入している国として、スウェーデンの名が出ています。

そこで、次のスライドを見ていただきました。


このスライドはスウェーデンで1984年に導入された「アルミ缶回収システム」の概略を示した図です。その回収率は1990年以降、90%以上となっています。このシステムの導入に当たって、それまで使われていたスチール缶は市場から姿を消し、市場で流通する飲料缶はアルミ缶だけになりました。

1994年からはこのシステムを用いてペットボトルの回収も始まりました。ペットボトルの回収率も現在では90%以上となっています。当初スウェーデンのペットボトルはリユース(再利用)用のペットボトルが主流でしたが、海外からワンウェーのペットボトルが多量に入ってきた結果、数年前からリユース用の厚手のペットボトルは姿を消し、ほとんどがワンウェーのペットボトルになりました。

服部さんが日本でも導入したいとおっしゃる「デポジット制度」は、スウェーデンでは25年以上前に導入され、確実に成果をあげてきたことがおわかりいただけたでしょうか。

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続いて、次の2枚の図を見ていただきました。





そして、スウェーデンの「廃棄物に対する製造者責任制度」の概要をお話しました。
1.廃棄物に対する製造者責任の必要性
2.1990年代の廃棄物政策
3.スウェーデンの製造者責任制度


時間が限られていましたので、「1994年10月1日に導入された古紙、包装およびタイヤ」、「98年1月1日に導入された自動車」および「2001年7月1日に導入された電気・電子機器」の製造者責任制度のうち、「電気・電子機器」に対する製造者責任制度を説明するとともに、日本の家電リサイクル法の問題点を指摘しました。 

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スウェーデンが「製造者責任制度」(拡大生産者責任とも言う)を導入した1994年、OECDは「拡大生産者責任(EPR)」を検討する委員会を発足させました。この委員会に全額財政的援助をしたのが日本です。しかし、これまで、日本は得られた成果をほとんど活用してきませんでした。スウェーデンOECDの検討結果よりも数年早く類似の制度を導入したことは特筆に値します。