酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

蟹江町殺人事件の奇奇怪怪

2009-05-10 09:25:24 | Weblog
 ゴールデンウイーク初日に報じられた愛知県蟹江町の一家3人死傷事件は、時間がたつにつれて疑問点が広がるというおかしな展開を見せている。初動捜査のミス? 意図的なリーク? メディアも大事な点を隠している印象がある。発生時から時間を追いながら整理してみる。
 

 《2日午後0時20分ごろ、愛知県蟹江町蟹江本町の山田喜保子さん(57)方で、洋菓子店店員の次男、雅樹さん(26)が血を流して倒れ、会社員の三男、勲さん(25)がコードで両手を縛られているのを雅樹さんの上司と県警蟹江署員が見つけた。雅樹さんは左肩付近に鋭利な刃物で刺された傷が数カ所あり既に死亡、勲さんも首を数カ所刺され2週間の軽傷。県警は蟹江署に捜査本部を設置し、殺人事件として捜査を始めた。また喜保子さんと連絡が取れず、行方を捜している》=毎日jp=

 母親は翌日、この家の押入れから遺体で発見された。何カ所にも傷があった。なぜ2日の出動時に見つけられなかったのか。「現場保存や証拠収集を優先したため」というのが愛知県警の説明だが、お話にならない。捜査本部の看板は「殺人」だが、強盗殺人事件の疑いも濃厚だった。被害物件の特定という意味でも、家の中を初日段階で調べるのが捜査の常道だろう。

 さらに唖然とする発表が続く。

 《愛知県蟹江町の親子3人殺傷事件の発覚当初、県警蟹江署員が、三男で会社員の山田勲さん(25)を保護した際、犯人とみられる若い男が室内にいるのを目撃していたことが8日、わかった。

 男は署員が無線連絡しているすきに逃走しており、県警特別捜査本部は強盗殺人容疑で男の行方を追っている。若い男の情報を発表しなかったことについて、県警幹部は「大事な目撃情報だったので公表を控えた」と説明。特捜本部は「結果的に犯人かもしれない不審者に逃走されたが、初動捜査にミスはないと判断している」とコメントした》=読売ONLINE=

 事件現場にいた人物をそのまま立ち去らせるなどあり得ない。被害者宅に向かった警官は何人なのか。ほかに洋菓子屋の人もいる。署に連絡するのも大事だが、現場にいた男を押さえる方が優先されるべきだ。おそらく、捜査本部はこの男のめぼしをつけている。発表すれば動き出すとにらんでいるのだろう。

 10日付けの「読売」によれば、立ち去った男は三男と半日以上も被害者宅に一緒にいた。来訪者があれば三男に布団のようなものを被せて、黙らせていたという。これは三男から出た話を捜査員がリークしたものに違いない。事情を知っているのは三男しかいないからだ。

 次男と母親は、かなり執拗に刺されたり切られたりしているという。軽傷でその後もとどめを刺されることのなかった三男との落差は何なのか。

 愛知県警の発表の仕方は、事件を特定の方向に誘導しようという意図に基づくものではないか。メディアはそこをしつこく追及すべきだ。
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新型インフルは“旧型”だった?

2009-05-07 05:48:44 | Weblog
 ゴールデンウイークが明けても、世の中は新型インフルエンザにかき回されそうだ。「威力はスペイン風邪並み」「最悪の場合は死者5000万人」などの脅しが効いているのだろう。用心するに越したことはない。

 ここにきて、新型インフルについて「季節性インフルエンザクラス」「60歳以上の人は耐性を持っている可能性がある」などの特徴が明らかにされている。実は大して怖くない風邪なのかもしれない。


 《世界保健機関(WHO)の新型インフルエンザに関する委員会メンバーの田代真人国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は6日、同研究所の記者会見にテレビ中継で参加し、新型インフルエンザの病原性について「通常のインフルエンザと同程度」との見解を示した。

 注目すべき特徴としては60代以上の重症患者がほとんどいない点を挙げ、理由は不明としながらも、この世代が何らかの免疫を持っている可能性も考えられるとした》=共同=

 田代氏はメキシコの致死率が通常のインフルエンザの300倍程度に達している点について「精査されてない死者が含まれているためでは…」と説明している。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。アメリカで新たな死者が出て、こちらの致死率も一気に引きあがった。

 世界の感染者数が1500人という段階での数字である。致死率の比較などにたいした意味があるとも思えないが、1%を超えてくるようだと気になる。

 WHOは近くフェーズ6に引き上げる意向というが、パンデミックと呼ぶには違和感がぬぐえない。国内で毎冬インフルエンザに罹る人の数は10数万人のオーダーだろう。乳幼児や年寄りを中心に亡くなる人も少なくない。メキシコ由来の新型がこの域に達するにはどれほどの日数を要するのか。

 これから冬に向かう南米やアフリカは要注意だし、北半球でも秋以降の流行が怖い。ということで、「6」なのだろう。だらだらこの状態が続くと、経済への悪影響が大きくなる。かといって、見過ごせばどんなことになるか分からない。

 とてつもなく厄介なものを抱え込んでしまったようだ。年寄りが耐性を持っているらしいこと、秋口までにはワクチンもできる。恐れずに警戒するしかない。でも、人が耐性を持つ? インフルエンザが「新型」って、なんか変だ。

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臓器移植法改正騒ぎのお粗末

2009-05-06 09:04:18 | Weblog
 臓器移植法改正をめぐる国会の論議がにわかに活発化してきた。現行法が禁じている14歳未満の子どもの移植を可能にしようというのが大きな狙いだ。

 移植法が施行されて10年、この間に脳死者から臓器提供を受けた患者は計345人。移植ネットワークなどはこの数字を「きわめて少数」と述べ、とりわけ子どもが移植する機会がないことを不当と断じている。

 臓器移植によってしか命を永らえることができない患者や家族の苦悩は想像に余りある。いま臓器移植を希望している患者は1万2千人に上っているのに対して、実際に提供されるのは年間100件前後だ。多くの人が絶望にさいなまれていることになる。

 こうした現状を何とかしようというのが、移植法改正の動きである。A~Cの3案に加えて新たな案も出てきた。「政治の無策」を問われるのが怖いのだろう。しかし、国会議員らはどこまで本気なのか。メディアもにわかに移植法論議を取り上げているが、こちらも相変わらずの「流れ任せ」ではないのか。

 共同が5日配信したアンケートを見ると、そう疑わざるを得ない。


 《改正機運が高まっている臓器移植法について、共同通信社は4月下旬から全国会議員を対象にしたアンケートを実施し、今国会での改正実現に回答者の83%と圧倒的な支持が集まった。回答したのは全議員の約20%だった。

 改正の内容に関して賛成者に聞いたところ、現行法では15歳以上に限定されている脳死による臓器提供の年齢制限について、72%が撤廃に賛成で、子どもへの移植に道を開く改正が必要との認識が広がっていることが分かった》=共同=


 回答率が20%のアンケートで「子どもへの移植に道を開く改正が必要との認識が広がっていることが分かった」と結論付ける神経には驚く。8割が答えなかった点にこそ問題の本質が潜んでいるのだ。同時にこの回答率の低さは、共同などのメディアが、国会議員ふぜいにも相手にされなくなっていることを物語っている。よくもまあ、こんなものを臆面もなく配信できたものだ。

 読売は6日付けの社説に「国内で完結すべき命のリレー」の見出しを掲げてこう書く。「死生観の絡む、難しい問題である。だが、これからは海外で臓器がもらえなくなることははっきりしている。国内だけで命のリレーをどう形成するのか、もはや答えを先送りすることはできまい」。

 「命のリレー」などという情緒的な言葉で議論をごまかしてはいけない。生体移植以外の臓器の移植は、つまるところ「死を待つ医療」である。こんな医療の普及が人類の幸せにつながるのだろうか。

 病み、老い、いつかは誰もが死に至る。逃れようがない。この現実を直視することから始めねばならない。先端医療を待つ難病患者がいる。医師のいない山間の村では、風邪をこじらせて肺炎を併発、町の病院に担ぎ込まれたときには手遅れといったケースも続出している。

 移植法の改正案を「まじめに」論議してもらうのは結構だが、医師と医療機関の偏在是正はさらに急を要する。かっこいいこと、時流に乗ったことにだけ焦点を当てていては、この国の下降スパイラルは止まらない。
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新型インフルエンザって、何者だ

2009-05-01 05:15:20 | Weblog
 国内で初めての新型インフルエンザ感染者が出たらしい。


 《舛添厚生労働相は1日未明、記者会見し、国内で初めて、新型の豚インフルエンザの疑いがある患者が見つかったと発表した。カナダから帰国した横浜市に住む日本人男子高校生(17)という。今後、さらに詳しく調べて、新型インフルエンザ患者と確認されれば、国内初の症例となる。同行者がおり、複数の感染者が出ている可能性があるという。ただし、現段階ではAソ連型の可能性も残っている》=asahi・com

 28日にWHOが新型の警戒レベルをF4に引き上げた時点で、こうした状況は折り込み済みだろう。潜伏期間が10日前後あるため、空港などの水際で防ぐには限界があるからだ。問題はこれからだろう。

 精密検査の結果がどう出るか。「新型ではない」の判定が下ることが望ましいが、さて。

 それにしても、今回の「騒動」は疑問が多い。第一はWHOの動きだ。フェーズの引き上げが急激過ぎるのではないか。それとも、政治的思惑に引きずられて、当初判断を誤ったのか。

 メキシコでの豚インフルエンザ感染者多発を受けて、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との声明を出したのは25日だ。このときは警戒レベルはF3のまま据え置いた。2日後にF4を出し、さらにその2日後F5に引き上げた。F5といえば「世界的大流行懸念」段階だ。こう矢継ぎ早に引き上げれば、「爆発的な流行=パンデミック」が始まったと受け止められるのは必至だろう。

 F5引き上げの際、WHOの事務局長は「全製薬会社に対応ワクチンの製造を促し、各国政府に新型に対処する予算措置を要請するため」と述べている。25日時点で、フェーズを上げなかったのは「経済への影響に配慮したため」と伝えられている。WHOはいつから景気の心配をするような政治的機関になったのか。

 新型とはいうものの、普通のインフルエンザではないのか。というのが次の疑問だ。アメリカでメキシコ人の幼児が死亡した以外、犠牲者はメキシコ国内に限られる。インフルエンザウイルス以外の要素が絡んでいる可能性は否定できない。

 いずれにしても、今回の新型インフルエンザ騒ぎは分からないことだらけだ。分からないから、用心に越したことはない、ということになる。
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