酔眼独語 

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領土問題と「大人の対応」

2012-08-25 04:57:28 | Weblog
 李明博大統領の竹島上陸と「天皇発言」が発端となった日韓の領土紛争が過熱している。24日には野田首相が異例の臨時記者会見を開き、「不退転の覚悟で臨む」と息巻いた。


 ≪野田佳彦首相は24日夕、官邸で臨時に記者会見し、島根県・竹島(韓国名・独島)と沖縄県・尖閣諸島は日本固有の領土と強調した上で、韓国や中国による領有権の主張に対し「毅然きぜんとした態度で冷静沈着に不退転の覚悟で臨む」と決意表明した。竹島の領有権問題は国際司法裁判所で決着させるべきだとの認識を重ねて示し、離島の警備を徹底するため海上警察権を強化する海上保安庁法改正案の今国会成立を訴えた。

 日本の領土に関して首相が会見するのは異例。韓国や中国との対立が続く中、日本の立場の正当性を国内外に訴える狙いがある。ただ韓国は早速「即時撤回を求める」(外交通商省報道官)と反論、中国も反発する可能性がある。

 首相は、韓国の李明博大統領による竹島上陸や香港の活動家の尖閣上陸事件を念頭に「わが国の主権に関わる事案が発生し遺憾の極みだ。看過できない」と指摘。(1)離島の安定的な保全管理(2)周辺海域の警備体制強化(3)日本の正当性の対外発信―を引き続き進めると説明した≫=中国新聞web=。

 野田は「互いに言い分がある」「大人の対応で」「まず話し合うことが大切」などとも述べた。これらのくだりはもっともだ。領土問題は互いに何らかの理屈がある。その理屈にどう折り合いをつけ、隣国として付き合うか。野田も李明博もそれくらいのことは承知しているに違いない。だが、ここに「政権欲」などが絡むと素直になれない。むしろ領土問題を煽ることで内政の失敗を隠蔽したい―などと考えるようになる。

 不景気が続き、格差は広がる一方だ。世の中の不満は鬱屈している。領土、天皇など「民族」の機微に触れる問題でたきつければ世論は沸騰する。どこかの知恵者がこんな入れ知恵をしても不思議はない。

 会見まで開いて「不退転の覚悟」を示した野田と日本政府は果たして「冷静沈着かつ大人の対応」だったのだろうか。親書を返しに来た駐日韓国大使館課長を門前払いしたあたりから、外務省は冷静さを欠いている。通してやって日本の道理を説いて聞かせ、そのうえで「親書を突き返すなどという非礼な行為はやめて、お帰りなさい」と帰すべきだった。相手の小官僚に屈辱を与えるなど、大人のやることではない。

 なぜ首相会見なのかもよく分からない。「内外に本気を示した」との見方があるが、かえって緊張を煽ったのではないか。

 双方のメディアが冷静さを欠いているのも気になる。なぜ相手がそう出るのかを分析するのがメディアの仕事のはずだが…。とりわけ韓国紙は産経をひっくり返したような書きっぷりである。

 ≪「野田佳彦日本首相が李明博(イ・ミョンバク)大統領あてに書簡を送ってきました。しかしこれを開ける前に、日本外務省はホームページに書簡の要旨を公開するという外交的な欠礼を犯しました」。

オークランド時間で17日夜。ニュージーランドを歴訪中だった金星煥(キム・ソンファン)外交通商部長官は宿舎でソウルからの緊急連絡を受けた。顔がゆがんだ。日本の欠礼があちこちに見えたからだ。

その数時間前の午後6時、東京の外務省庁舎。「ちょっと来てほしい」という通知を受けて訪ねた李京秀(イ・ギョンス)駐日韓国大使館政務公使に対し、杉山晋輔アジア大洋州局長がいきなり封筒を差し出した。李明博大統領の独島訪問に抗議する内容が入った野田首相の書簡だった。

30分間の面談が終わる前、外務省はホームページに書簡の要旨を載せた。日本側が事前公開した書簡の内容はこうだった。

「本17日(金曜日)、野田佳彦内閣総理大臣は、李明博大統領に対し、最近の同大統領の竹島上陸及び日韓関係に関する種々の発言について遺憾の意を伝えるとともに、近日中に、韓国政府に対し、竹島問題について、国際法にのっとり、冷静、公正かつ平和的に紛争を解決するための提案を行う旨伝え、また、日韓関係の大局に立って、日韓関係の未来のため、韓国側が慎重な対応をするよう求める旨の書簡を発出しました」。

本来、首脳間の手紙は内容を公開しないのが慣例だ。これだけでなく手紙にはもう一つの形式上の欠陥があった。首脳間でやり取りする書簡の内容を実務者が本部に報告する際に参考とする貼付複写本もなく、徹底的に密封されていたのだ≫=24日中央日報=。

 暴走する政治とメディア。遠い昔にもそんなことがあったという。
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