脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

天王山を終えて~下を向いている暇はない~

2007年08月16日 | 脚で語るJリーグ


 下を向いている暇はない。

 我々は今日の天王山と呼ばれる浦和戦で苦杯を喫した。ホーム無敗新記録もかかった一戦で相手は因縁の浦和。この結果は本当に悔しすぎる。

 前半からガンバのサッカーはいつもと違う空気が流れていた。いつもの圧倒的なポゼッションは鳴りを潜め、浦和が試合の主導権を握った立ち上がりとなった。お互い素早くボールを繋いではゴール前へと運ぶものの、さすがにここからの決定機はガンバに分があったであろう。26分、CKの展開から安田がシュートを放ちGK都築が弾いたところに播戸が詰めたがこれはオフサイドの判定に泣く。42分には山口のループパスから相手ラインの裏に抜け出た遠藤が冷静にクロス。これに播戸が身を呈してヘッドで突っ込むも阿部の体を張ったディフェンスに阻まれる。
 前半だけでもこの2本の決定機を逸したのは大きかった。浦和にそれほど決定機を与えなかった前半に先制点を奪えなかったこの展開が後半の苦しい戦いを招いたのは言うまでもない。

 後半、播戸に見切りをつけた西野監督は家長を投入。この采配は少し気が早かったかもしれない。この家長の投入でポゼッションは増すものの、流れを決定的に変えるまでには至らなかった。そうこうしているうちに浦和は62分にポンテが左サイドを切り裂き、田中を経由して永井へ。永井は落ち着いてチップでテクニックなシュートを沈める。マークに付いた山口が邪魔で藤ヶ谷がコースを確認しきれなかったのも不運だったが、嫌な時間帯に浦和に点を献上してしまった。
 その後、ガンバのポゼッションはみるみるうちに衰退していく。前線にボールが繋がらず、オフザボールでの選手の動きも少ない。そして高い位置で浦和にボールを奪取されその堅い守備を際立たせることとなった。途中投入された倉田、中山も流れを変えることができず、効率的に試合をクロージングさせた浦和が逃げ切った。

 "守備のチーム"である浦和と"攻撃のチーム"であるガンバ。リーグ2強のこの対極的な構図がクローズアップされたこの試合だったが、後半の停滞ぶりが顕著だったガンバはバレーが1本しかシュートを放てなかったことにも象徴されるように浦和の堅守に完全に沈黙してしまった。先行逃げ切りを徹底される展開としては非常に課題が残る。特に後半は信じられないほどに崩せなかった。
 サイドからの攻撃はアーリークロスの精度が話にならない。後半死に物狂いで守る浦和相手に加地と橋本のクロスでは全くチャンスメイクに繋がらず、ただでさえ突破しなければならない闘莉王の壁を越えることは至難だった。倉田が中央の前で攻撃をかなり意識してプレーしていたが、アタッキングゾーンまでボールを運べない。セーフティな横パスにも終始し、リスクを冒すべきところで物足りなかった。それ以上に後半は制空権を掌握したDFとしての闘莉王の能力も評価せざるを得ないのが非常に悔しいところだ。

 苦言を呈すべきは、このレフェリングを担当した岡田正義。80分のPA内で闘莉王が家長を引っかけたのは明らかにファウルだろう。このレフェリングで試合を決定づけられたなどと考えては悔しすぎるが、少なくとも好ゲームをぶち壊す低レベルの判定だ。

 とにかく記録もかかったホームで宿敵浦和に負けたという現実。全力で声援を送り続けたクルヴァにその虚無感がひどく漂ったが、下を向いている暇はない。まだ1ポイント差で首位は首位。もう取りこぼしは許されなくなった。正直、今季不安定な戦いぶりが続く浦和の取りこぼしにも期待せざるを得ないこの状況は苦しいものがある。しかしながら真価を問われるのはここからだ。ここからさらに逞しいガンバのサッカーでタイトル目指して突き進むしかない。

 あまりに勝ちに慣れすぎた今季の我々は今まさに金槌で頭をドつかれたのである。耽美主義などと語るにはいささか早すぎたようだ・・・