脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

川口がヒーローになってはいけない ~アジア杯総括~

2007年07月31日 | 脚で語る日本代表


 初めてまともにアジア杯のことを書こうと思う。J1の中断期間でJ2を多く観に行く機会を作っていたが、アジア杯は一応全試合チェックしてきた。ガンバという贔屓のクラブのゲームと違って、代表の試合はある程度の冷静さを保って試合を観ることができる。そりゃチームの完成度や連携面などは毎日顔を合わせるクラブチームと違って、熟成まで時間がかかるのは当然だ。ただの「寄せ集め」にすぎないと言ってしまえば言いすぎかもしれないが、今回の日本代表は、やはりW杯を終えて1年でのアジア杯という日程ならではの苦しさが露骨に出たのかもしれない。
 
 周知の通り、日本は3位決定戦で韓国に敗れ、アジア王座どころかベスト3にすら名を連ねることができなかった。PK戦で最後の明暗が出てしまったのは悔しいところだが、3位決定戦においては、PK戦までに試合をきめることができなかった日本の「自爆」と言っても過言ではないだろう。
 大会前にオシム監督は走れない選手に対して再三苦言を呈していた。こっちまでかなり不安にさせてくれるネガティブな発言を連発してはメディアを煽ったが、予選リーグでは無敗でそれなりの結果は出すことができた。明らかに格下のアジア諸国には負けることはできないというプレッシャーもあっただろうが、オシム体制になって初めての「結果」を重視される大会でもあり、オシムなりの選手コントロール術だったのだろう。剛と柔を使い分けることで、彼は選手を鼓舞する術を誰よりも知っている。

 しかし、そのオシムですらどうにもできなかったのはアジア列強諸国のレベルが日本の想像以上に高かったことである。今回から参加したオーストラリアにはかろうじてPK戦によってW杯のリベンジを果たすことができたが、90分で試合を決めることはできなかった。そして、サウジアラビアは日本を凌ぐ実力を持っていた。スコア的には僅差での敗退であったが、FW陣は全く仕事がさせてもらえなかった。オーストラリア人の主審に文句をつけている場合ではない。90分間で相手より得点を奪うことができなかった事実が全てである。
 予選リーグでは圧倒的なボール回しで、いとも簡単にゴール前にはボールを運べた日本であったが、ベトナムの高温多湿のコンディションにその足までもが止まる傾向が試合をこなすごとに顕著になっていく。疲れは溜まり、控えの選手は効果的な仕事ができず、選手を部分的に入れ替えて試合に臨むこともままならなかった。予選はまだそれでも勝ち星を拾えたから良かった。

 決勝トーナメント全試合で90分で試合を決定づけられなかったということは実に明確な課題を突き出してくれたと思う。「日本は怖くない、守りに徹すればカウンターでチャンスは見出せる。」サウジアラビアの戦い方が全てを物語った。
 現在のメンバーであれば、それなりのサッカーはできる。しかし、高原にフィニッシャーとしての全権を委任しているようでは無理だ。サイドの選手は仕掛けの意識に欠け、中盤はセーフティに必要以上の手数をかけてアタッキングサードまでボールを運ぶ。そこを不用意に捕られれば、中盤の広大なスペースをケアできない。最終ラインには本職でないCBが陣取り、徹底的にそこを狙われては相手に思いのままにカモられる。そんなことの繰り返しである。
 問題はそれだけではない。このコンディションも手伝って、加地と駒野の両SBは運動量の維持だけに精一杯で、決定的な仕事ができなかった。スタミナを削る無駄なアップダウンの繰り返しが、終盤に攻撃の停滞を生んだのも事実である。

 DF陣は再考の余地が十分にあるだろう。はっきり言って中澤以外誰も仕事を完遂出来た者はいない。総入れ替えもアリだろう。また、FW陣もワンチャンスに固執するだけではなく、自ら貪欲に仕掛けていく選手が必要だ。佐藤寿には再三期待したのだが・・・

 とにかく、準備不足どころかチームとしての完成度の低さを露呈した日本代表。まだ試合はW杯まで続く。まだ時間はある。オシム体制になってたかだか1年ではないか。この敗戦をバネにもう一度リセットしてもらいたい。得点を生み出さなければゲームは勝てない。個の力で、またはコンビネーションでどこからでも得点を生み出せるチームの再建を切に願う。

 もう川口の目立つ試合は見飽きた。

JFL観戦記① 佐川印刷SC VS FC岐阜

2007年07月30日 | 脚で語るJFL


 うだるような真夏日のデイゲームにも関わらず、「ここは岐阜か!?」と思わせるほどのFC岐阜サポーターが詰めかけた太陽ヶ丘陸上競技場。JFL後期5節、佐川印刷SC対FC岐阜を観戦。

 メインスタンドには約1,500人近い観客が入っている中、左側で奮闘する佐川印刷の一人ウルトラス(90分間よく頑張った!)の応援を蹴散らすようにメイン右サイドの岐阜サポの応援がこだまする。まだ今季JFLに昇格したばかりのチームとは思えないぐらいサポーターの数は多い。しかもここは京都、アウェイである。ホームの常連は皆来ているのではと感じさせる一体感であった。それだけおらが街のチームを愛する気持ちがひしひしと伝わる。

 この試合に勝って少しでも上を狙いたい勝ち点37の岐阜と中位に停滞する勝ち点26の佐川印刷、どちらもほぼ同じポイントで順位を争う他チームとの団子状態にいる中、この試合は落とせないという気持ちが伝わってくるゲームとなった。何しろ岐阜は昇格1年目にして現在5位につける。YKK APとの勝ち点差は4で、その上である熊本との勝ち点差はこの日の時点で10。佐川急便の独走は止められないにしても、後期の試合を一つでも勝ってJ昇格に繋げたいところだ。
 暑さで汗が滲むようなコンディションの中、15時に試合はキックオフを迎える。FC岐阜のメンバーは・・・
GK日野
DF李、深津、小峰、平岡
MF山田、北村、高木、小島
FWジョルジーニョ、片桐
 両チーム立ち上がりは膠着していたものの、さすがに経験値豊かな元J戦士を揃える岐阜は、徐々にボールを繋ぎ始める。右サイドの李と左サイドの平岡を起点に前線のジョルジーニョと片桐にボールを収めるが、元ワールドユース準優勝メンバー辻本を中心とした佐川のDFを崩せない。逆に佐川印刷もショートパスと的確なビルドアップから岐阜をカウンターに陥れる。中心はトップ下を司る元愛媛FCの濱岡和久だ。濱岡から前線の町中、元チームメイトの大坪へとチャンスを作る。
 佐川印刷の指揮官は元ガンバの橋本雄二。熱を帯びたコーチングが目立っていたが、ホワイトボードをテクニカルエリアに持ち込む理論派の側面も見せるこの指揮官は、平静を装う岐阜の松永監督を尻目に序盤からカウンター時のラインコントロールを度々最終ラインに指示していた。
 それもそのはず、地力においては岐阜の方が何枚も上手。攻守の切り替えがお互い速く、見応えのあるゲームになっていく。
 両チーム決定機を幾つか迎えるも、決め切れず0-0のまま後半へ折り返すこととなった。

 後半暑さが影響してか、足が止まる時間帯も両チーム垣間見せる中、立ち上がりの時間帯から岐阜が再三ゴール前に繋げるも、ジョルジーニョと片桐の二枚看板ががこの日はブレーキに。立ち上がり10分間で少なくともイージーな決定機を2回ともフイにしてしまう。18分には佐川に流れるようにに繋がれ、1対1の場面も。ここはなんとかクリアするが、前線でなかなか足元にボールが収まらないジョルジーニョは次第にイライラを募らせるようになっていく。疲れから警告が出るようになってくる岐阜の選手たち。しかしスタンドからは容赦なくレフェリーに岐阜サポの野次が飛ぶ。冷静に考えるとここは京都なのだが・・・とにかく周りからは岐阜の選手に対する声援と擁護の野次が多すぎて、さながら岐阜のホームだ。
 後半21分ジョルジーニョに代わり、岐阜のカリスマ「ゴリさん」こと森山投入。すると佐川も28分にDF松岡を投入し、守りを固める。ドロー狙いの佐川と是が非でも勝ちたい岐阜の総力戦は終盤を迎える。
 終盤に入りさらに岐阜が攻勢に出るが、佐川の攻守というより岐阜に決定力が無さ過ぎた。後半29分のゴール前のFKは片桐が大きく枠を外し、32分には途中投入の木島が決定的なGKとの1対1を外す。溜め息の漏れるスタンド。油断すれば佐川の流動性に長けたカウンターが牙を剥く。終盤の佐川の攻勢を守りきり、結局試合はスコアレスドローに終わる。

 岐阜サポも全力で戦った。試合後は疲れと悔しさの入り混じる表情がスタンドに溢れた。サポーターのベクトルは高い。上を目指している。もちろんチームも選手もだ。元ガンバの選手たちもよく奮闘していた。しかし、ジリジリと照りつける日射しと共に日程も消化される。12月2日の最終戦にこのサポーターたちは笑っていられるのだろうか。そう考えるととても昨年まで地域リーグにいたとは思えないエネルギーだ。JFLのカテゴリーを超えた空間が確かにそこには存在した。

 頑張れFC岐阜!J1の頂で待っているぞ!

真のマニアにお送りするJ1次共通試験

2007年07月27日 | 脚で語るJリーグ


Q1.96年シーズンにガンバ大阪の今藤幸治がFPの2番~11番すべてを付けたのはあまりに有名なエピソードであるが、Jリーグ開幕初年度(1993年)に6番から11番の背番号を付けた選手は?

Q2.カズ以外でカズダンスを踊った現役Jリーガーは?

Q3.97年シーズンのJリーグユニフォーム契約サプライヤーを4社全て述べよ。

Q4.サガン鳥栖前身である鳥栖フューチャーズに在籍した代表歴保持選手で、パナマ代表はバルデス、カメルーン代表はタタウ、では元アルゼンチン代表選手は?

Q5.徳島ヴォルティスの前身、大塚製薬がJ入りを表明していなければ2008年にはJ昇格予定だった徳島をホームタウンとするチームは?

Q6.欧米クラブの影響を受けることが多いJクラブのサポーターの中で、突出して個性的な柏サポによるドゥンビア選手のコールの元ネタは?

Q7.2002年の甲府のメインスポンサーは?

Q8.守備放棄事件としていまだに語り継がれる03年のナビスコ杯京都VS大分戦。その試合で事の発端となったゴールを奪った大分の選手は?

Q9.現在でもまだ社員選手(出向扱いもしくは球団職員)としてプレーする現役選手を2人述べよ。

Q10.埼スタ、札幌ドーム、フクアリ、神戸ウイング(現ホムスタ)、この4つのスタジアムのこけら落としで負けなかったために「こけら落とし無敗神話」を築いたチームは?

・・・って何やってんねん、俺。

J2観戦記④ 京都VS湘南

2007年07月26日 | 脚で語るJリーグ


 日中の晴天から一気に蒸し暑さが増したような日暮れの時刻に久々の西京極へと向かった。J2の30節、第3クールに入って負けなしで現在3連勝、引き分けも挟めば7連勝中の京都が湘南を迎える一戦だ。
 平日の水曜日にも関わらず、子供たちが夏休みということも手伝ってか、アウェイゴール裏以外はまずまず観客が詰まっていて驚かされた。公式記録では8,500人強。平日もなんのそので遙々駆けつけたアウェイの湘南サポは20~30人ぐらいか。とにかくそれと対照的な京都のゴール裏の熱気が現在のチームの調子を代弁するかの如くじりじりと伝わってきた。

 京都は平島の出場停止でDFラインを右から大久保、角田、手島、三上というメンバーで構築する。中盤から前は最近不動のメンバー。個人的に京都が息を吹き返した決定的な要因を、以前C大阪相手にジャーンと斉藤抜きで大勝した湘南との対戦にて見出せれば面白いと思い、そういう意味では両者の戦いぶりに注目できるもってこいのカードであった。
 対する湘南は前線に新外国人のエドワルドが加入し、原と2トップを組む。中盤はアジエルが王様だ。またベテラン加藤も無尽蔵のスタミナでゲームを作る。前回湘南を生で観戦した時とは違い、左の尾亦以外は田村、斉藤、ジャーンとベストに近い駒が揃っていることも注目であった。

 立ち上がり両者落ち着いた出だしであったが、前半5分パウリーニョが抜けだしフリーに。GKも抜いて放ったシュートはジャーンにクリアされるが、ワンチャンスに強いエースの存在が際立つ京都であった。そのパートナーはここ数試合切れている田原。ヘディングの強さは群を抜いている。ことごとく制空権を掌握していた。この二枚看板を操る中盤の二枚看板が徳重と倉貫という今季加入組だ。この2人は試合開始から惜しみなくその豊富な運動量で両サイドを起点としてチャンスを作る。正直現在の京都の好調の要因がこの2人に起因するということは誰もが分かることだろう。あとはどうフィニッシュに持ち込むか、そこを湘南の斉藤、ジャーンという二枚の壁がゾーンでよく守っていた。
 試合の入り方こそ悪くなかった京都だったが、DFラインと石井、斉藤大の間に空いたスペースをなかなかケアできなかった。ポゼッションは握ったように見えるが、いざボールを取られれば、そのスペースから湘南はアジエルを中心にリズムを作り出す。40分には決定的なチャンスも訪れるが、アジエルのシュート逸でチャンスをフイにしてしまう。前線のエドワルドと原のコンビは悪くない印象だ。湘南もフィニッシュにどう繋げるかが注目点だった。

 先制点のチャンスは28分湘南に訪れた。CKからジャーンが合わせ先制ゴールを決める。前回C大阪戦で観た痛快な湘南のサッカーが幕を開けたかに見えた。しかし京都は決して浮足立つことはなかった。むしろ左サイドを切り裂く徳重の突破と倉貫の読みの鋭い展開力から京都も得点の匂いを漂わせる。前半は前がかりになることなく後半に反撃のチャンスを求める形で前半は終了した。

 原に代えて石原を投入した湘南は自分たちのリズムを作る間もなく、決定的な崩され方で徳重の同点弾を献上する。京都の後半の立ち上がりのリズムは非常に良かった。一気に試合のリズムを京都に持っていくには十分な同点弾で、そこから京都のポゼッションは確固たるものになっていく。54分には目の覚めるようなミドルシュートを三上が叩き込む。あっさりと逆転に成功する京都。西京極のボルテージは最高潮に達する。やはりキーマンは中盤の2人であることは間違いないが、前線のパウリーニョ、田原の2人も湘南には厄介であり、この2人に釣り出される形で湘南DFの隙ができたといっても過言ではない。本当にいい相乗効果を生み出している京都の攻撃であった。
 その後、次第に足が止まる湘南にたたみかける意思の表れか、京都は倉貫に代え、渡邉大、そして徳重に代えて中払を投入。結果的に追加点こそは奪えなかったが、看板の中盤2人の不在を全く感じさせない切れた動きでこの2人はチャンスメイクする。渡邉大は果敢に右サイドを突破し、切れ味鋭いクロスを何本も供給する。片や逆サイドでは中払が得意のドリブルで湘南を翻弄。選手層の厚さも誇示する京都に対して湘南は何もできなくなっていた。
 終了間際のジャーンを上げっぱなしにするパワープレーも万事休す。京都が安定した試合運びで勝利を収める。

 これでさらに勢いづいたか京都。この試合を見る限りなかなか負ける気配は無い。すっかり日本屈指のエレベーターチームに成り下がってしまったが、今季は4度目の昇格が盤石の安定ぶりで果たせるかもしれない。勝ち点差1でピッタリと追う札幌も背中は充分見えている。
 対する湘南はフィニッシュに課題を残すこととなった。エドワルドの更なるフィットが望まれるところだ。

 相変わらず、アウェイ泣かせの特殊な造りの競技場と芝の悪さが気になったが、メインスタンドはこの季節虫が本当に多い。まぁ今の京都の好調さにそれを気にするサポもいないかもしれないが・・・

 この後、アジア杯準決勝サウジアラビア戦観戦のため梅田サポフィに移動。結果は皆さん知っての通り。頭を切り替えて、週末の佐川印刷VSFC岐阜のゲームに思いを馳せることにした。

んなアホな。

2007年07月24日 | 脚で語る欧州・海外


 アメリカのカリフォルニア州で動物愛護団体の訴えが認められ、カンガルー皮革のスパイクが販売禁止に・・・

 んなアホな。

 アヤックスがダービッツ負傷の代役に小野伸二の期限付き移籍での獲得を検討中とのこと・・・

 んなアホな。

 イタリアのカターニャが中越沖地震による柏崎原発の放射能漏れを危惧してジャパンツアーを正式に中止・・・

 んなアホな。

 なんか「んなアホな」というニュースが続く真夏日の今日、シルク・ド・ソレイユの「ドラリオン」大阪公演のプレ公演を観劇する機会を頂いた。サッカーと映画以外でこんなの鳥肌が立ったのは久しぶりであった。それほど秀逸。一見の価値あり。まさに「んなアホな」と言わんばかりの曲芸の連続。その凝った演出の連続に感動しっぱなしであった。
 本番は明日から。是非関西圏内の方は必見である。1万払っても損をしたとは思わせない。

 初めてサッカー以外のことを書いてしまった自分自身に・・・

 んなアホな。

  

J2観戦記③ C大阪VS草津

2007年07月22日 | 脚で語るJリーグ


 ゲーム前、アウェイの草津サポから半ばお経にも近いスローテンポのアンセムのようなチャントが高らかに謳われ、長居第2陸上競技場のピッチにこだました。40人ほどの集団から謳われるそのアンセムは選手入場と共にゆっくりとピッチを上げ、これから始まる目の前の48分の1試合を戦う選手たちを鼓舞するには十分なものであった。

 ザスパ草津のゲームを生で観るのは初めてだったが、チームにはJFLのコスモ石油時代から知っている鳥居塚やアトランタ五輪代表も経験した秋葉、平塚ユースから飛び出したかつての逸材高田など、古くからJリーグを知るファンにはよく知られた名前の選手も点在する。そういったベテランと若手が融合するここまで歴史の浅いチームというのも手伝って、以前から一目見ておきたかった。

 前回の第2クール、群馬で対峙したこの2チームはシュート数もほぼ互角で、非常にいい試合をしていたのをスカパーで観戦して覚えている。結果的には0-2でC大阪に軍配が上がったが、実はその試合も含めて草津は5月26日以来勝ち星に見放されていた。引き分けを挟んで5連敗中、その暗闇を抜け出すのにはこの日のC大阪という相手はいささかきつかったようだ。

 終わってみれば、今節のこのゲームのシュート数はC大阪12対草津3。後半に至っては草津はシュート数0。試合のレビューはこの数字を見て頂ければ容易に分かってもらえるはずだ。草津はコンスタントにゲームを支配することなく敗北を喫する。

 先にエンジンをフルスロットルさせたのは草津の方であった。前半8分にC大阪の決定機を切り抜けた後のカウンターから左サイドの佐田から中央にクロス。それに氏原がダイビングヘッドで合わせた。マーベラスな先制点に草津サポは狂喜乱舞。それもそのはず、草津にとっては6月27日札幌戦以来、実に5試合ぶりに挙げる得点だったのだ。しかし、草津はこの試合それだけだった。

 その後、覚醒したかのようにC大阪がペースを握る。U-20W杯を経験してさらに逞しさを増した左サイドの香川とターゲットマン森島康が起点となり、最近キレキレの小松がゴールを狙う。この3人を自在にコントロールする古橋と前線の4人の生きた動きは建て直されたC大阪の象徴であった。26分に古橋のCKが不運にも草津の秋葉にヒットし、オウンゴールを誘発。C大阪は焦ることなく同点に追い付く。こうなるともう草津のサッカーはアンコントラーブルに陥り、そこから全くゲームの支配権をもぎ取ることはできなかった。
 
 C大阪は後半に入るとさらに勢いを増した。草津はよく守ったと思う。結果的に2-1のスコアで終われるような内容では少なくともなかった。最大のハイライトは後半9分に香川、森島康と左サイドから完全に崩し、古橋から最後は小松と非常に綺麗な流れでC大阪が決勝点を挙げる。
 圧倒的なワンサイドゲームの起因となったのは明らかに後半立ち上がりから完全に足を止めてしまった草津の選手たちに起因する。「ラインを上げろ!!」と植木監督が再三ベンチから怒鳴り散らしていたように攻守の切り替えの際にも最終ラインの押し上げを含め、選手が動けなかった。またそれを打開できる決定的なカードを切れないのも草津の選手層の薄さを物語っていた。

 スコアこそ2-1で、C大阪がもっと決められたのではというところに焦点は注がれる試合であることに間違いない。現に前回観戦した湘南戦(クルピ監督の初采配試合)は1-4と完膚無きまでに叩きのめされたのだから。その時と比べるとC大阪は完全に持ち直した印象だ。

 スタジアムを後にし、駐車場に向かうと自分の車の隣に群馬からサポを乗せてきた草津応援ツアーのバスが停まっていた。この日はアジア杯のオーストラリア戦が行われていたが、それを選ばず長居に足を運んだサポーターは3882人。特に群馬から訪れた熱烈なサポは今日の試合内容を受け止めてまた遠路を帰らなければならない。そのバスを見て思わずその労をねぎらいたくなった。

球宴に潜む憂鬱

2007年07月21日 | 脚で語るJリーグ


 今年は8月4日にエコパでJOMOオールスターサッカーが開催される。もちろん私自身、WESTゴール裏にてがっちり参戦予定である。その頃にはJ1中断期間に対する禁断症状が出ている頃であるから、1週間後に再開を控えたこの日程は非常に有難い。注目の出場選手は週明けの23日の月曜日に発表される訳だが、6月末の時点で昨年を上回る11万票強上回る200万票以上の投票が行われている。

 人気選手と監督の内訳を見てみれば、WESTは清水と新潟の選手が非常に多い。監督は断トツで清水の長谷川健太氏がリードしている。本当に地元に愛される人間だ。それを追うのはG大阪の西野監督。リーグリーダーを率いる名将として是非ともラストスパートをかけていきたい。
 GKは新潟の北野が首位を走っている。現在は北野の控えに甘んじるが、長年新潟の人気者である野澤も7位に着けているあたりに新潟のパワーを思い知らされるものだ。個人的に注目は清水の西部。あまりリーグでは目立たぬ存在だが、最後の中間発表では17万票を超える人気で磐田の川口を追っている。浦和の守護神はもう遙か過去のこと。すっかりサッカー処清水に馴染んだ印象だ。
 DFは清水の青山がトップ。G大阪の加地を挟んで、また新潟の千代反田、そして清水の市川とここでも清水と新潟のパワーを思い知る。もはやリーグの順位は全く関係ない。
 MFでもトップを走る清水の藤本、新潟の坂本、田中とこの2チームは上位陣に必ず顔を出す勢いだが、ここでまだ若手の田中が票を伸ばしているあたり非常に興味深い。トップは間違いなく藤本と遠藤の争いになるだろう。
 FWでは2位に着ける広島の佐藤寿が奮闘。関西以西の意地を見せつける。それを追うのはJリーグの生き証人、磐田の中山だ。若手主体のチームにシフトするアジウソン体制の下でそれほど目立ってないが、やはり中山のカリスマ性は絶大なものだ。

 誰が出場することになるかは、最終発表を待たねばならないが、非常に気になるのはこの投票数に見られるオールスターに対する各チームへの投票数の温度差ではなかろうか。

 WESTに限って話をすれば、神戸の選手は各ポジションで榎本達、北本、三浦淳、大久保と票を集めているが、上位陣にはさっぱり無縁だ。最高でMF部門の三浦淳が11万票強を集める程度で、激戦のMF部門では14位に甘んじている。また彼の場合は渦中の選手であるため、票を伸ばしたところで出場は限りなく微妙だ。それどころか数日後にはJ2の選手になっていることが濃厚なのだ。
 クラブ別投票数で見てみると神戸は52万7千票余り。これはWESTでもぶっちぎりの最少投票数であり、投票数1位の新潟が234万票を超えている訳だから、わずか4分の1にも満たない。ビッグアーチに毎試合閑古鳥の鳴く広島の選手でさえ103万票を超えているのだから、神戸サポのオールスターに対する熱意は実に薄いものだと考えられよう。それと同時に神戸の選手がいかに注目度と人気に欠けているかも痛烈に物語っている。特に目玉となる代表クラスの選手も不在で、苦しい台所事情ではあるが、降格圏内にいる訳ではないのに、この数字は本当に寂しいものだ。2つ下にいる広島が2倍以上の投票数を稼いでいる。神戸サポはもっと奮起すべし。本気でおらがチームにオールスターにふさわしい選手がいないのか、それとも球宴までもきっちり選手を休めたいのか?

 などと神戸の話題どころでは済まないチームがEASTに存在する。それは・・・大宮だ。大宮の6月末での投票数はわずか27万票強。これはWESTのMF部門の1位2位を走る藤本と遠藤個人のそれをも下回る数字だ。大宮の選手に対する全投票が藤本個人に集められている投票数に勝てない。なんと寂しいことではないか。
 この大宮の投票数の少なさはリーグ全体でも断トツのぶっちぎり。もはや賞賛の域に達する。FW部門で18位に吉原が顔を覗かせる程度。下手すれば当日大宮サポはエコパには1人も来ないのではないだろうか。他の選手目当てで来たとしても堂々とオレンジのユニを着込むのはこの状況では難しいはずだ。
 今季、完全な得点力不足に悩まされる大宮。他チームのサポからも完全に選択の範囲外とされている様子。ここまで来れば最後はJリーグ推薦選手の選抜にすがるのみ。でもJリーグが発表する取り決めには・・・

「Jリーグ推薦選手はサポーター投票の結果やリーグ戦等における活躍を総合的に判断し、Jリーグと出場監督の協議により決定する。」

とある。うーむ、難しいのではないだろうか。

 とにかく、ある程度の順位に関係なく実力と人気を兼ね備えた選手に票が集まるのは当然のこと。神戸と大宮は痛烈にこの結果を受け止めるべし。それだけ見たい選手がいないということなのだから。

 こんな話はどこ吹く風で、キングカズは30万票に迫る勢い。頭が上がらない・・・
 やはりカズは誰もが見たいよな。

プロビンチャの重要性

2007年07月20日 | 脚で語るJリーグ


 徳島のFW羽地が甲府に完全移籍したというニュースが今週飛び込んできた。今季の徳島においてここまで6得点という数字はチーム得点王。移籍先の甲府が羽地のようなタイプのポスト型FWの補強を懸念していたところ、4月に行われたJ2の練習試合をきっかけに非公式のオファーをかけていたようだ。徳島サポにとっては、晴天の霹靂といった衝撃度があったかもしれない。しかし、その代わりにチームは甲府で出場機会に飢えていた長谷川太郎を期限付き移籍にて獲得した。また、徳島は甲府より得た羽地の移籍金によって更なる補強策を検討中のようだ。

 上記のケースは欧州サッカーに比べてまだまだ閉鎖的なJリーグにおいて、もっと日常的に起こって然るべきケースである。カテゴリーをまたいで、さらなる上のレベルでやれることにプロの選手であるならば誰もがチャンスを見出すはずだ。またこの移籍に向けて水面下で行動を起こしていた甲府もJ1定着のため、早々の問題提起とオファーをかけた抜かりなさは素晴らしい。甲府のこの姿勢は実に評価できる。
 日本にも「プロビンチャ」たるチームが増えるべきだと印象付けたニュースであった。

 先日、相互にリンクさせて頂いている民国96年氏のブログに興味深い記述があった。それは、大分がエジミウソンの復帰と元福岡のホベルトを補強したというトピックスに基づいたもので、氏はこの補強が大分に必ずしもポジティブな補強策でないことを痛烈に批判していた。
 事実、ボランチの人材が甚だ不足している大分にとって、今季のここまでの成績は警鐘を鳴らすに充分である。結果的に日本人選手ではシャムスカ体制でのボランチは務まる人材が皆無だった。そこで、このチームでも信頼と実績のあったエジミウソン、そして福岡で主将まで務めたホベルトに白羽の矢が当たったということである。しかしながら、この補強にチームの将来を見据えたビジョンと腰を据えて若手に経験を積ませていこうという意思が全く感じられないという点で疑問符が付くのは私だけではないはず。この裏で大分はジュニオール・マラニョンとセルジーニョを切ってまでこの補強を選んだ。今季現在17位に沈む大分にとっては中断明けの戦いに向けてのビジョンで頭が一杯のはずだ。
 昨季8位という順位は完全にフロックであり、シャムスカが魔法使いでないことは十分証明された。また今季の度重なるボランチ采配の迷いは顕著で、ファーストチョイスが整わぬままここまでの迷走を繰り広げてしまった。今回の補強がこければ完全にJ2へまっしぐら。監督の責任問題はおろかフロントの責任問題にも十分発展するであろう。
 残念至極なのは、この大分に若手の才能が溢れているということ。GK西川に先日までカナダでU-20W杯を奮闘した福元、梅崎、そして高橋大、森重、金崎や松橋兄弟などもそうだ。彼らのような才能の宝庫をJ2に落としてしまうのは果たしてどうか。もちろん、大分が降格の憂き目にあえば、怒涛の引き抜きオファーが殺到するのは予想できる。

 こうなれば、大分は完全に「プロビンチャ」にシフトしていくべきだ。「プロビンチャ」とはイタリアにおいて、ビッグクラブとも資本的に格差のある地方の中小チームのこと。こういったプロビンチャは自分たちが手塩にかけて育成した選手がトップで活躍した後、その選手をビッグクラブに売ることでクラブの運営を回していく。もちろんその際の膨大な移籍金で更なる人材を補強することも可能である。
 このサイクルは欧州では日常茶飯事であり、移籍市場が中断期間やオフの間に激しく活発化する一因でもあり、サッカー界において実にポジティブである。
 
 現在、まだ歴史の浅い日本のJリーグでこのサイクルが特に目立つのが札幌である。まさに日本におけるイタリア式プロビンチャのモデルケース。もう長くJ2のカテゴリーに甘んじているが、かつては吉原宏太、ウィル、エメルソン、播戸竜二、山瀬功治、今野泰幸、藤ヶ谷陽介とその他のクラブへと輩出してきた人材は多い。その多くがJ1のカテゴリーで何らかのタイトル獲得に貢献している事実も興味深い点である。昨季活躍した加賀健一も今季から磐田に復帰し、重要な戦力としてチームに貢献している。昨季までは低迷する時期もあったが、今季はJ2で首位を独走。若手中心にシフトしてからの我慢がようやく花開いている。まさに理想のチームサイクルではないか。

 冒頭の羽地の一件もこのようなプロビンチャサイクルを明確に示している。徳島が羽地の移籍金でポジティブな補強をしてもらえれば、それは遙かに大分に比べても実のあるものだといえるだろう。徳島だけでなく鳥栖も今季千葉に移籍した新居のケースにあるように徐々にその性格を表しているといえる。

 プロとして上を目指す当然の欲求とチームを覆しかねない大英断のアンバランスさがこのプロビンチャサイクルの醍醐味。しかしながら、そこにシフトしていく中小チームは一度大きなメスを入れ、とことん「育成」という忍耐のチームコンセプトを掲げなければならない。そこで戦える集団が作れればそれが理想形ではなかろうか。

 目先のその場凌ぎのプランを勇気を出して切り捨て、昨季マイスターシャーレを掲げたシュツットガルトを見習うべきだ。

赤い悪魔の狼煙

2007年07月18日 | 脚で語る欧州・海外


 さいたまシティカップにて堂々の来日を果たしているユナイテッドが17日にさいたまスタジアムで浦和と対戦。

 まずは今季の新ユニをお披露目。間違いなく昨季のモデルより見栄えがあり、文句無しの出来映え。NIKE社サプライになって初の秀逸作だと実感。個人的には名門チームほどシンプルイズベストなのだ。
 
 試合はやはりユナイテッドが主導権を握る展開となった。C・ロナウドとエブラを中心に序盤から左サイドにウエイトを置くユナイテッドに浦和は山田はうまく対応を見せ、J王者の面目を保つ。前半、正直浦和は良く守った。もちろん遠路はるばる来日したユナイテッドも万全のコンディションではないし、浦和もガンバとの激戦を終えて中2日、疲労は少なからずあった両チームだったが、浦和の堅守にユナイテッドは攻めあぐねた印象だ。26分に浦和が内舘のシュートで先制すると、浦和にもリズムが出てくる。ユナイテッドは右サイドのフレッチャーも果敢にチャンスメイクし、両サイドから浦和を脅かす。やはり相手はプレミア王者、こうやってJチームと対峙すると決して真剣勝負のテンションではないが、「蹴る、止める」の基本技術の点で浦和との差を垣間見た感がある。特にスコールズやギグスなどはベテランらしい落ち着きのあるプレーで飄々としていた。日本で観るとまたその神格化されつつある欧州ビッグクラブの選手たちが必要以上に特別に見えてくるものだ。中継の実況・解説陣のテンションの盛り上がり方や選手への賛辞の言葉がそれを明確に物語っていた。

 後半立ち上がりからユナイテッドは王者の「らしさ」を垣間見せる。怒涛の攻撃で47分にフレッチャーが、その5分後にはC・ロナウドが得意のエリアからミドルを決め、あっという間に逆転する。特にC・ロナウドのゴールはその卓越した個人技も含め、5万8千人の観客にため息をもたらしたのは事実だろう。しかしながら、ユナイテッドはここから疲れが出たのか、浦和の攻撃を凌いでからのカウンター重視のサッカーにコロリとその姿を変えてしまう。ギグスから去ってからその傾向が顕著になったか、とにかく会場に足を運んだユナイテッドファンが90分間堪能できたかといえば、少し物足りなかったかもしれない。
 ユナイテッドがおとなしくなったことも手伝ってか、後半の浦和はよくやったと思う。特にポンテと小野は彼らのプライド誇示を印象づけるプレーをしていた。欧州随一のクラブと対峙しているこの時間に感化されたのか相馬や永井もいつも以上に仕掛ける意識に冴え、小技が効いていた。Jレベルでは繋がるパスなどがあっさりインターセプトされることはあったが、ユナイテッドの驚異的なスピードを誇る核弾頭ルーニーとC・ロナウドさえケアしておけばという展開となった。
 小野のゴールは称賛されるべき得点だった。ゴール前での落ち着きはさすがで、フェイントで一人釣ってからゴール右隅に流し込んだ。ユナイテッドの守備陣の甘いケアにも助けられ、浦和サポも満足できる展開となったことだろう。

 試合のスコア以上に突出していたのは前述の2人、C・ロナウドとルーニー。その突破力は観客に充分なスペクタクルを与えたのではないだろうか。もちろんコンディションは万全ではない、そしてシーズンも始まっていないことを考慮すれば、親善試合としてはこの2人の驚異的なパフォーマンスは試合を大いに盛り上げたのではないだろうか。今季も昨季以上にこの2人に注目が集まるであろう。日本のユナイテッドファンにとっては大いなプレビューショーになったはずだ。
 個人的にはコパ・アメリカで離脱中のエインセやケガで離脱中のG・ネビル、ルイ・サハ、スールシャール以外ほぼベストメンバーでの来日にゲームではアラン・スミスも観れて満足しているが、欲を言えばナニやハーグリーブスといった新戦力もテストして欲しかったところ。あとはファンデルサールにヤル気が感じられなかった点など気になりところもあったが、これもご愛嬌。フレンドリーマッチ色全開ではあったが、それなりのインパクトを残してユナイテッドは日本での一戦を後にした。

 エインセは放出確実の様子。このままチームに合流せずに新天地が決まる見込みのようだ。行先はレアルかリバプールか。
 とにかく07-08バージョンのユナイテッドが静かにヨーロッパ覇権奪回に向けて狼煙を上げだした。

怒涛の3日間

2007年07月17日 | 脚で語るJリーグ


 7月の3連休、完全にPCすら開かなかった数日間をプレイバック。

 まずは13日の金曜日、梅田にてUAE戦を観戦。勝てたことで十分とは思えない退屈な後半の横パスに終始するサッカーはもはや観る価値なし。前半高原の2点と中村俊のPKで試合を決定づけたが、後半に得点は奪えず。1失点は完全に気の緩みと鈴木のチェックの甘さがもたらした。勝ち点3をしっかり奪ったが、もっとスペクタクルなサッカーを見せて欲しかったのも確か。水野の投入で縦への推進力アップを試みたオシムの采配は評価できた。やはりベトナムの「蒸し暑さ」に苦しめられる今大会の象徴的な一戦だったが、日本の力以上にUAEが前半あまりにイージーな守備意識だったことと、一人退場で少なくなったUAEのゲームプランの狂いにも助けられたのではと思うのは私だけだろうか。

 翌日の土曜日は、台風の影響で順延も心配されたナビスコ準々決勝浦和戦2ndleg。
 前半から前代未聞の雨の激しさの中、ガンバの攻撃が牙を剥いた。先週ドローに終わった埼玉のゲームが完全に余興だったのかと感じる完全な圧勝劇に陶酔。特に光ったのは前半からそのドリブルセンスが光った家長。そして先制点と攻撃参加からの1アシストで輝きを見せたシジクレイ。特に後半の家長の浦和をことごとくいなすドリブルのテクニックは神がかっていた。世界を経験し、ことごとく山田とのマッチアップを制した安田やケガから復帰した播戸の貢献もあり、その攻撃意識は如実にスコアに反映される。5得点以上の圧勝劇ととっても過言ではない。またそれが「対浦和」という絶好の対戦カードであり、そしてタイトルのかかった逃げの効かない事実上ノックアウト形式の一戦だったことにも起因され、聖地万博のムードは天気と反比例した最高の盛り上がりに。
 我々ガンバサポがこれまで強烈に意識してきた浦和という宿敵がこの圧巻の粉砕劇で、ただのJ1その他1チームであったという認識に回帰できた気もする。それぐらい実力の差を見せつけた最高の試合であった。主力が勢揃いできる8月の万博での再戦を心待ちにしたい。

 2日後にはアジア杯ベトナム戦。最も日本が日本らしい満足できる試合運びができたのではなかろうか。とにかく勝ち点3以上に4得点をオウンゴール献上後に気持ちを切り替えて、落ちついて奪取できたのは大きかった。中村俊を差し置いて、FKを蹴った遠藤に気持ちの強さを垣間見た気がする。
 次戦はオーストラリア。W杯のリベンジだけではない。新しい日本のアジアチャンピオンへの戦いはこの試合から真価を問われるはずである。