脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

香芝、初の全国切符を奪取!

2010年11月03日 | 脚で語る高校サッカー
 第89回全国高校サッカー選手権奈良大会は決勝を迎え、橿原公苑陸上競技場で初の決勝進出となる香芝高校と3年連続の選手権出場を目指す一条高校が対戦。試合は1-0で香芝が勝利し、初の選手権出場と同時に平成12年第79回大会における耳成(現:畝傍)以来、奈良育英、一条の2強態勢を打ち破る快挙を達成。全国の舞台へ挑むこととなった。

 

 
 初の決勝進出は奈良育英を破って。
 0-0からPK戦を制しての決勝進出となった香芝。

 
 ここで勝てば3年連続の選手権出場。
 奈良育英に代わって県内最強を誇示したい一条。

 お互いの大応援団の歓声を背に受けて、前半から試合は一条ペース。これに準決勝の奈良育英戦で発揮した守備力を香芝が見せつける。一条はこの大会ここまでほとんどの得点を挙げている点取り屋のFW喜寅、そして司令塔の奥を中心に攻撃を仕掛ける。香芝のDF陣はセンターの藤岡成と高砂の2人が3年間不動のコンビで組織的な守備の中心になっており、2回戦の生駒戦以来337分間無失点。前線こそ3トップだが、きっちりと高い位置から個々に一条のポゼッションに噛みついていった。

 
 攻め込んでもなかなか決定機を得られない一条。
 オレンジの壁・香芝の守備陣が立ちはだかる。

 
 香芝の最後尾にはGK山本(3年)が鎮座。
 全く焦ることなくゴールを守る。

 一条は攻めども攻めどもゴールが遠い。時にダイレクトパスを織り交ぜ、またCKなどのセットプレーから香芝ゴールを目指す。15分には右サイドから突破し、FW喜寅がシュートを放つも至近距離で香芝GK山本がファインセーブ。香芝は一条の攻勢になかなか攻撃に転じられないが、「まずは守ってワンチャンス」ということであれば、一条をほぼ完璧に防いでいたといえる。

 
 一条のエース・FW喜寅(3年)。
 視野が広く、ワンタッチプレーも得意な選手。

 
 香芝の濱武(2年)と一条の藤下(3年)がマッチアップ。
 両チームともこの2人のサイドバックの動きが目立った。

 
 「ワンチャンスさえあれば俺が」
 といわんばかりに前線に張る香芝FW藤野。

 なかなか攻撃が実を結ばない一条だったが、そこは6年連続でこの県大会決勝を戦っている強豪。決して焦らず、じっくりボールを繋ぐ。対して香芝は最終ラインからのロングフィードを軸に藤野、浅野、山野の3トップが一条の最終ラインとGKの間のスペースを狙った。31分にはスルーパスに藤野が走り込んでシュートを放ったが惜しくもゴールならず。32分には香芝が山野に代えて森田を投入して早めに前線の新陳代謝を促す。33分には一条が喜寅のチャンスメイクから右サイドからの折り返しをファーでMF板谷がヘディングシュート。ゴール前でMF奥が合わせようとしたがわずかに合わない。拮抗する試合は、両チーム共に先制点を奪えず、前半は0-0で折り返すこととなる。1点を争う戦いが予想された。

 後半に入ると、香芝は前半のうちに投入した森田を下げて1年生のFW吉本を入れてくる強気の采配。後半の立ち上がりには同じ1年生のMF藤岡雅の中距離の直接FKを蹴らせるなど、思い切りの良さが目立つ。すると、44分に一条陣内でボールを奪った香芝は、一気に一条の守備ラインの裏を狙って浅野に預けようとする。ここは一条のDFが何とかタッチラインに逃げるが、ここから香芝はワンチャンスをモノにする。最初のスローインで再び浅野に預けると、相手DFに囲まれながらも浅野は粘って再び香芝ボールのスローインをゲット。これをDF北相模がインすると、浅野が受けて背負っていた2人のマーカーの間を抜けてエリア左から中央へ。ここに詰めていた吉本が直接右足で決める。待望の先制点は香芝。主将・浅野の粘りが生み出した貴重な1発だった。

 
 
 
 
 
 
 
 貴重な先制点を生み出したのは浅野、吉本のライン。
 歓喜の抱擁を背にアシストの主将・浅野は気合の咆哮。

 一瞬の隙を突かれた一条。前半の戦いぶりを見ればまだ彼らにも好機はあった。前半あまり見られなかったロングボールも使ってここから再び立て直す一条。前半以上に守備面で集中力を増す香芝。見逃せない展開が続く。

 
 一条のプレスキッカー、司令塔として引っ張る奥(3年)。
 後半は彼から幾度かチャンスを作るが…

 
 香芝はGK山本が最後まで集中を切らさない。

 
 残り時間はアディショナルタイム3分。
 香芝はボールキープで時間を消化したい。

 1点をリードした香芝だったが、一条は喜寅、奥、京都ユース出身の中野を中心に果敢に攻め続ける。これを守護神山本中心に凌ぎ続けた香芝、目の前までタイムアップが迫った試合は既にアディショナルタイム3分を提示していた。とにかく早く終わって欲しいと言わんばかりのスタンドの関係者の浮足立つ声にならない声援。一条陣内でマイボールになればコーナー付近でキープして時間を使う香芝。そのまま80分間を戦い抜き、遂に初の全国選手権出場の切符を掴んだ。

 
 そして、遂に80分のタイムアップ。
 香芝、悲願の選手権出場決定!

 
 80分間声援を止めなかった応援席へウイニングラン。
 どのチームでも素晴らしい光景。

 
 1年生を積極起用する強気の采配が光った米原監督。
 香芝イレブンによって宙に舞う。

 
 ここまで4試合で31得点と強さを見せてきた一条。
 まさかの悔し涙。

 
 新人戦、インターハイ予選で共にベスト4の香芝。
 その総括としてのこの結果。いざ、国立へ。

 冒頭にも述べたように、奈良県高校サッカーの歴史を変えたと言っても過言ではない香芝の快挙。もはや奈良育英、一条の2強時代が終焉を迎えているとも感じさせてくれた。この香芝以外にもここ数年、法隆寺国際や生駒といった公立勢の躍進も目立つ。来年以降の高校サッカーの県内勢力図はどのように変わっていくのか楽しみになってきた。
 ただ、奈良県勢は全国選手権では近年躍進といえるような戦績は挙げられていない。香芝は初出場。名声に失うものは何もない。非常に厳しい舞台となるが、冬の全国の舞台で目一杯この堅い守備力を披露して欲しい。
 
 香芝高校の皆さん、おめでとうございます。

新たな1ページの可能性

2010年10月31日 | 脚で語る高校サッカー
 現在、各都道府県では今年度の全国高校選手権を目指す予選が行われている。奈良県もその例外でなく大詰めを迎えているが、決勝を11月3日に控えた31日の準決勝で波乱が起きている。

 本命ともいえる奈良育英が準決勝で敗退したのだ。

 ベスト4に残ったのは奈良育英、香芝、五條、一条という顔ぶれ。昨年の県代表を一条に0-5と完敗して譲ることになった奈良育英は、ここまで郡山を10-1、そしてこの数年で県内屈指の強豪校と成長しつつある法隆寺国際を6-0と続けて退けてベスト4まで辿り着いていた。対する香芝は、大和広陵、大淀とかつての名門に連勝してその奈良育英に挑むことになったのだ。香芝は今季の県U-18リーグでは一条に続く2位(生駒、法隆寺国際も共に)と健闘している。しかし、この数年奈良県大会は奈良育英と一条の2強態勢。今年も決勝戦はこの2校がぶつかるのではと思っていた。

 ところがだ。奈良育英が0-0のままPK戦で敗れたというではないか。ここまで2試合で16得点を荒稼ぎしている奈良育英の攻撃陣を零封した香芝が決勝進出を果たしたのだ。さすがにこの予想外の展開を知ると、雨のために会場である橿原公苑まで二の足を踏んでしまったことを後悔してしまった。五條と一条の試合は一条が2-0と勝利して順当に決勝進出を果たしている。
 前述したように一条が8年前(平成14年度第80回大会)に初めて奈良県代表を掴んで以来、奈良育英と一条の2強状態が続いている。少しこれまでの奈良県代表の年次ごとの優勝校を整理しておくと下記の通り。

第51回 昭和47年度 女子大附属
第52回 昭和48年度 女子大附属
第53回 昭和49年度 畝傍
第54回 昭和50年度 奈良育英
第55回 昭和51年度 天理
第56回 昭和52年度 北大和(現:奈良北)
第57回 昭和53年度 大淀
第58回 昭和54年度 大淀
第59回 昭和55年度 大淀
第60回 昭和56年度 天理
第61回 昭和57年度 奈良育英
第62回 昭和58年度 大淀
第63回 昭和59年度 大淀
第64回 昭和60年度 大淀
第65回 昭和61年度 天理
第66回 昭和62年度 奈良育英
第67回 昭和63年度 上牧(現:西和清陵)
第68回 平成元年度 上牧(現:西和清陵)
第69回 平成2年度  奈良育英
第70回 平成3年度  大淀
第71回 平成4年度  奈良育英
第72回 平成5年度  広陵(現:大和広陵)
第73回 平成6年度  奈良育英
第74回 平成7年度  耳成(現:畝傍)
第75回 平成8年度  奈良育英
第76回 平成9年度  奈良育英
第77回 平成10年度 奈良育英
第78回 平成11年度 奈良育英
第79回 平成12年度 耳成(現:畝傍)
第80回 平成13年度 奈良育英
第81回 平成14年度 一条
第82回 平成15年度 奈良育英
第83回 平成16年度 奈良育英
第84回 平成17年度 一条
第85回 平成18年度 一条
第86回 平成19年度 奈良育英
第87回 平成20年度 一条
第88回 平成21年度 一条

 これを見ると、この10年間で耳成(現在は畝傍と統合)以外で奈良育英と一条の牙城を崩しているチームは皆無。一条はまさにこの10年でみるみる力をつけてきた。それ以外になると、平成5年度第72回の広陵(現:大和広陵)まで遡らなければならない。もし、香芝が優勝して全国出場を決めることになれば、これは十分に新たな1ページを奈良県高校サッカーに刻むと言えるだろう。

香芝と一条の2校は全国への切符を懸けて11月3日に橿原公苑陸上競技場で決勝戦を戦う。果たして今年、全国の切符を掴むのはどちらになるのだろうか。

次世代のスター候補激突

2010年02月27日 | 脚で語る高校サッカー
 ゼロックススーパーカップに先駆け国立競技場にて行われたU-18Jリーグ選抜と日本高校選抜の試合。両者譲らず1-1のまま試合を終えたが、次世代の日本サッカーを担う若き選手がピッチに躍動。その技術の高さを見せつけた。

 
 注目を集めた柴崎(青森山田)と高木善(東京V)。
 両選手共に見せ場を作り、柴崎は1アシストの活躍。

 
 小柄ながら中盤のダイナモとしてJ選抜を牽引する大森(G大阪)。
 来季のトップ昇格に期待。

 
 その大森と共に先発出場を果たした原口(G大阪)。
 度々ライン際のドリブル突破で会場を沸かせる。

 
 劣勢の中、そのキャプテンシーでチームを鼓舞する碓井(山梨学院)。
 プレスキックからも見せ場を作ろうとした。

 
 ファインセーブを連発した櫛引(青森山田)。
 185cmの長身でそのスケールの高さを感じさせる。

 
 高校選手権ではチームの躍進に貢献。
 この日も高校選抜の守備の要となった須藤(矢板中央)。

 
 この世代屈指のストライカー赤崎(佐賀東)。
 再三の惜しい決定機をものにできず無得点に終わる。

 
 個性の固まりJ選抜を主将として牽引するのは夛田(C大阪)。
 上背はないものの、気迫あるプレーで高校選抜の攻撃を阻む。

 
 原口との大阪コンビで2トップを形成した杉本(C大阪)。
 187cmの長身で再三攻撃の起点に。印象に残った。

 
 関西大第一の主将としてチームをベスト4に導いた小谷。
 後半途中から出場し、最終ラインをまとめた。

 両チームとも連携面でそれほど成熟が見られないながらも、攻守に見せ場を作った80分間(40分ハーフ)。まだ観客がまばらなスタンドを沸かし、この試合だけを目当てに国立に駆けつけたファンも多数いたようだ。試合中から鹿島サポーターの熱烈な声援を受けていた柴崎をはじめ、来季Jリーグの大舞台で活躍する選手たちはこの中からどれだけ生まれるだろうか。

戦いに敗れても君は美しい

2010年01月10日 | 脚で語る高校サッカー
 第88回全国高校サッカー選手権は準決勝を迎え、関西勢で唯一勝ち残っている関西大第一(大阪)は青森山田(青森)と対戦。0-2とリードされながらも、89分とロスタイムに2点を返して同点に追いつく粘りを見せるが、PK戦の末に2-3で敗戦。決勝進出はならなかった。

 大会屈指と語り継がれるであろう劇的な同点劇だった。0-2で迎えた89分、久保綾がゴール前のこぼれ球を上手く体を反転しながらシュート。これが見事にゴールに吸い込まれて1点を返すと、その直後には交代出場の井村が鮮やかなシュートを決めて同点に追いついた。

 関西大第一のここまでの快進撃は全国的にもサプライズだった。個人的にも今大会は母校の近大附の出場を楽しみにしていた。2年前は埼玉スタジアムで奈良育英と前橋育英の1回戦第1試合を観た後、タクシーに飛び乗って、駒場で近大附と星陵の第2試合を観戦したものだった。それが昨年の大阪府大会・決勝では金光大阪と関西大第一という組み合わせ。大阪桐蔭や大阪朝鮮でもないダークホースの決勝進出に多少の驚きはあったが、彼らが全国の切符を掴んだことは更なる驚きでもあった。そして、本大会ではあれよあれよとベスト4進出。北陽が優勝を果たして以来、32年ぶりの快挙にただただ驚くばかりだった。

 2点を先取されながらも試合内容は決して悪くなかった。先制点を許したPK献上が悔やまれる場面だが、ロスタイムの奇跡はそれを束の間忘れさせてくれた。結果的にPK3本を止めた青森山田・GK櫛引の好守を称えるべきだが、全く互角の戦いを見せた関西大第一の健闘は素晴らしかった。
 対する青森山田も勝利確実と思われた矢先の2失点で精神的にも厳しい試合だっただろう。決勝の相手は初出場の山梨学院大付。この試合の疲れを引きずらないことが重要になりそうだ。

 なんとも感動的な試合。個人的にも高校サッカーではなかなか見られない奇跡を垣間見た気がした。試合終了と同時にフィールドにうずくまった選手たちにとってもかけがえのない経験になったはずだ。紫紺のヒュンメルを纏った彼らは今後も記憶の中にずっと残るのだろう。

若き虎たち、ベスト8出揃う

2010年01月04日 | 脚で語る高校サッカー
 全国高校サッカー選手権大会も3回戦が終了し、ベスト8が出揃った。

 広島観音(広島)、矢板中央(栃木)、ルーテル学院(熊本)、山梨学院大付(山梨)、関大一(大阪)、藤枝明誠(静岡)、青森山田(青森)、神村学園(鹿児島)の8校というのはフレッシュな顔ぶれになったのではないだろうか。
 昨年の広島皆実の快進撃が記憶に新しい広島勢は5大会連続でベスト8を手中に収めている。Aブロックの広島観音の躍進にも期待が懸かるところ。2試合連続のクリーンシートは安定感の証拠か、この勢いで2年連続の広島勢の優勝なるかといったところだ。
 Bブロックでは、作陽をPK戦で振り切って伏兵・矢板中央が初めてとなる8強に名乗り出た。その粘りと運でベスト4を狙いたい。

 日章学園を下したCブロック・ルーテル学院の強さは本物。初出場の際に彼らの試合を観戦したが、その前々回大会では埼玉栄に僅差で敗れた。やはり中高一貫での育成が功を奏しているのだろうか、2度目の出場ながらその戦績からブラッシュアップが感じられる。
 Dブロックは、強豪・野洲(滋賀)を初戦で破った勢いそのままに山梨学院大付が前橋育英を破った香川西(香川)すらも撃破。ルーテル学院との準々決勝でその真価が問われそうだ。

 八千代(千葉)を破ったEブロックの関大一の健闘は大きなサプライズ。唯一残っている関西勢としてその意地を見せて欲しいところ。準々決勝で迎える藤枝明誠は強敵だが、八千代を破った実力がフロックでないことを証明したい。
 その藤枝明誠も初出場ながら初戦の徳島商(徳島)戦をPK戦までもつれながらも乗り切った勢いが出ている様子。Fブロックの本命だった国見を破った強さを準々決勝で更に見せつけたいところだろう。

 Gブロックの青森山田は9大会ぶりのベスト8で名門復活といきたいところだ。対するは超攻撃サッカーを体現する神村学園。U-17代表の柴崎を中心に最大の強敵を打ち破れるか。その神村学園もこの8強の中では優勝候補名高い。ここで足元をすくわれている場合ではなさそうだ。

 イングランドでもFAカップ本選3回戦が行われている。国内外問わず新年のサッカーシーンは今年も不変だ。

年の始めは高校選手権

2010年01月03日 | 脚で語る高校サッカー
 年末年始のこの時期は天皇杯もさることながら、高校サッカーの時期だ。天皇杯決勝戦の前日に開幕した第88回全国高校サッカー選手権大会も初戦シード校の登場となった2回戦までを終えてベスト16が出揃っている。

 最大のサプライズは、やはりDブロックにおける「東の横綱」前橋育英(群馬)の初戦(2回戦から登場)敗退だろう。高校総体では米子北に競り勝ち夏の王者に輝いたが、今大会では初戦の香川西戦に2-3と敗戦。インターハイ得点王西澤やU-17W杯でも活躍した不動のボランチ小島を擁しながら初戦で涙を呑んだ。夏からの進化が果たせなかったのか、前半だけで3失点を背負う苦しい展開だったようだ。対する香川西は夏のインターハイでは、1回戦で宮城工に敗れている。この番狂わせは今大会屈指のハイライトになることは間違いないだろう。

 また、Hブロックの神村学園(鹿児島)のロケットスタートも度肝を抜かれるものだった。昨年度のこの大会、そして夏のインターハイで県代表だった東海学園を下して出場となった中京大中京(愛知)を相手に10-2と信じられない大差をつけての勝利。「超攻撃サッカー」を標榜する西の横綱が初戦から十二分にその強さを発揮した形だ。ライバルたちが苦戦する中で2度目の出場ながら優勝を虎視眈々と狙っているようだ。

 奈良県代表の一条は、1回戦の東北(宮城)戦に1-2と敗戦。昨年も初戦は惜しい試合を落としただけに非常に悔しいところだ。インターハイではベスト8進出、県大会決勝では奈良育英との格の違いを見せつけた一条だったが、またしても全国の壁を実感することになった。そのAブロックでは、前回大会の王者・広島皆実をPK戦で下し県大会を突破した広島観音(広島)が4大会ぶりの出場ながら初戦を突破。全日本ユースでベスト16入りを果たした実力をこの全国の舞台で生かせるかが注目だろう。

 Bブロックでは、有力候補だった立正大淞南(島根)が西武台(埼玉)と1回戦で顔を合わせたが、結局は作陽(岡山)と矢板中央(栃木)が3回戦で対峙する展開に。どちらも所属地域のプリンスリーグでは戦績が芳しくないが、ここを勝利すれば準々決勝はおそらく広島観音。強敵とマッチアップが待っている。

 勢いのある日章学園(宮崎)とルーテル学院(熊本)の対戦は、3回戦屈指の好カードに。このCブロックでは名門・帝京をわずか2回目の出場となるルーテル学院が初戦で難なく下したところに時代の変化を感じさせてくれる。日章学園は県大会で鵬翔を6-0と一蹴。どうやらメンバーは全中連覇を果たした選手が主体。それは強いはずである。

 Eブロックでは、激戦区・千葉を勝ち抜いた八千代(千葉)が順調な滑り出しで、3回戦では初戦をPK戦で勝ち抜いた関大一(大阪)を迎える。堅守が売りの八千代だが、この3回戦でも関大一が八千代ゴールを陥れるのは難しいかもしれない。個人的には八千代と日章学園の準々決勝が実現すれば非常に好カードかなとも思う。

 国見(長崎)の2回戦敗退というサプライズがあったFブロック。かつての強豪・東福岡(福岡)の復活も見られず、3回戦では藤枝明誠(静岡)と岐阜工(岐阜)が対戦することに。初出場場ながら今大会の状況では優勝も狙える全日本ユースベスト8の藤枝明誠が有利か。

 こちらも佐賀東(佐賀)という大本命があえなく初戦で散ってしまったGブロックだが、伏兵・高知(高知)が丸岡(福井)、星稜(石川)を相手に連勝。強豪・青森山田(青森)を迎え撃つことになった。今年から大河ドラマ「龍馬伝」も始まる高知。彼らの優勝へ向けた健闘で大いに盛り上がりたいところだ。

 毎回優勝予想が難しい高校選手権。それだけチャンスは開かれている。

敵なし一条、圧勝で奈良を制す -一条VS奈良育英-

2009年11月09日 | 脚で語る高校サッカー
 第88回全国高校サッカー選手権大会奈良大会の決勝が8日に行われ、前年度奈良県代表として全国選手権に出場した一条が奈良育英を5-0で破り、奈良県2連覇を果たすと同時に2年連続で全国への切符を手にした。

 

 橿原公苑陸上競技場の改修も重なって、久々に鴻ノ池陸上競技場で行われた今回の決勝戦。両校から近く、そして「奈良のサッカーの聖地」というイメージだけあってか、この例年と違った雰囲気を感じられる会場には約2,200人(有料入場者のみ)の観衆が集まった。

 

 今夏、奈良で行われたインターハイにおいてベスト8に食い込んだ一条の奮闘ぶりは記憶に新しい。ここまで県大会も戦いぶりも4試合で33得点0失点と無類の強さを誇る内容で勝ち上がってきた。屈指のパスワークを見せる彼らに名門・奈良育英がどこまで対応できるかが注目ポイントとなったこの試合。奈良育英も決勝までの3試合で20得点1失点と隙のない戦いぶりを見せている。

 序盤から一条が優勢にペースを握りながら試合を進める。開始4分でMF奥(2年)、中城(3年)が連続シュートで奈良育英ゴールを脅かすと、13分にはMF板谷(2年)が惜しいシュートを放ちゴールを肉薄。その直後14分にDF上田(2年)の狙いすました強烈なミドルシュートが決まって一条が先制する。

 
 
 観衆の度肝を抜いた一条・DF上田(2年)の先制シュート。
 これ以上ない見事なミドルシュートで試合をリードする。

 奈良育英もサイドからMF杉田(3年)が仕掛け、FW吉田篤(3年)にボールを集めようとするが決定機はなかなか作れない。すると、22分に一条はゴール前に攻め上がったDF山田(3年)からボールを受けた奥がクロスを上げると、これにFW北野(3年)が頭で合わせて追加点を奪う。この2点のリードで一条は完全に試合の主導権を握った。

 後半に入って、まずは奈良育英が攻撃で盛り返すが、ロングボール主体で吉田篤にボールを送り込もうとするも、ラインアップが連動せずルーズボールを拾えない展開が続く。ここを強かにマイボールにして繋ぐ一条がパスと連動したフリーランで奈良育英をじわじわ崩していくのだった。

 
 夏のインターハイで4得点の大活躍だった一条・FW岡本(3年)。
 確実なポストプレーと相手を嘲笑うかのようなプレーで魅せた。

 66分に岡本がシュートを決めて一条が3点目を奪うと、1分後には攻め上がったDF吉田(3年)が続けてゴールを奪う。バイタルエリアからダイレクトパスを繋いで奈良育英を崩し続ける一条の攻撃は止まる気配もなく、後半中盤からはワンサイドゲームの様相を呈する展開となった。73分には投入直後のFW喜寅(2年)がダメ押しの5点目を決めて勝負をものにした一条。県大会をなんと無失点で頂点に登りつめた。

 
 攻守に印象的だった一条・DF吉田(3年)。
 機を見た攻撃参加は奈良育英守備陣を混乱に陥れた。

 
 67分にはその吉田がゴールを決めてリードを4点に広げる。
 73分には岡本のアシストから途中出場のFW喜寅(2年)が加点。

 
 奈良育英は後半からFW黄山(1年)を投入し、チャンスをうかがう。
 ドリブルでタメを作れる彼の良さは活かしきれず。

 
 前線で孤立した奈良育英・FW吉田篤(3年)。
 ライバルを相手に厳しい現実を突きつけられた。

 まさに“一蹴”にふさわしい圧勝劇を見せた一条。昨年の同カードの県大会決勝はPKのやり直しにも恵まれた2-1の逆転勝利だったことを考えると、完全に勢力図は逆転したようだ。特に山本、奥、中城、岡本らで構成される中盤の連動性は昨年の原田、小峠を有したそれを上回る。夏のインターハイを大きくチームの糧に還元している成果がうかがえた大会だったのではないだろうか。
 対する奈良育英は、手も足も出ず、厳しい実力の差を見せつけられることになった。特に開始直後から守備面での焦りが戦況を後手後手にさせてしまった印象だ。

 一条高校には勝者として堂々と全国の舞台に挑んで欲しい。昨年の全国の舞台では鹿島学園を相手に1-1からPK戦での敗戦と惜しいチャンスを逃している。昨年の西井に負けない守護神・小池も最後尾で堅守を見せる。このメンバーとこのサッカーであれば、相手がどこであれ80分間で自分たちの色を映し出せるはず。是非とも今夏のインターハイを思い出させる快進撃を見せてもらいたいものだ。

群馬の虎、夏を制す -前橋育英VS米子北-

2009年08月08日 | 脚で語る高校サッカー
 2009近畿まほろば総体、全国高校総体のサッカー競技は決勝戦を迎え、県立橿原公苑陸上競技場にて前橋育英(群馬)と米子北(鳥取)が対戦。試合は終始優勢に進めた前橋育英が2-0で米子北を下し、インターハイにおいて初優勝を果たした。

 夏の高校野球が始まったこの日、古都で繰り広げられてきた高校サッカー夏の陣はクライマックスを迎えていた。厳しい暑さの中で上がってきた2校はどちらも決勝初進出。準決勝では共に1点差での勝利を収める接戦ぶり。会場の橿原公苑陸上競技場はこの決勝戦を見届けるべくほぼ満員の観衆で埋まり熱気を帯びた。

 
 ここまで勝ち上がったからには負けるわけにはいかない。
 素晴らしい雰囲気の中、決勝戦がキックオフ。

 
 橿原公苑陸上競技場のメインスタンドは観衆でぎっしり。
 地元の奈良の人間でも滅多に見られない光景だ。

 
 米子北のボランチ大江(3年)がリズムを生み出そうとする。

 
 しかし、序盤から試合のペースを握ったのは前橋育英。
 FW皆川(3年)が突破を試みる。

 
 
 4分、その皆川の折り返しを受けたMF三浦(3年)が先制点を決める。
 好調な滑り出し。歓喜に沸く前橋育英イレブン。

 
 
 前橋育英・DF細萱(3年)が果敢に攻め上がる。
 負傷の影響か25分でベンチに下がるも印象を残すプレー。

 
 正確なフィードで米子北守備陣を苦しめたDF木村(3年)。

 
 17時にキックオフされたこの試合。
 後半に入ると、照明に明かりが灯る。
 これもまた滅多にお目にかかれない光景だ。

 
 
 
 46分にはCKから前橋育英が追加点を挙げる。
 皆川がファーで折り返し、そのボールを西澤(3年)がゴール。
 西澤は大会得点ランクトップタイの6得点目。

 
 一矢報いたい米子北もFW山本大(3年)を軸に反撃を狙うが・・・

 
 背中に受けるバックスタンドの大声援。
 劣勢の中で米子北・山本健(2年)は存在感を感じさせるプレー。

 
 両校死力を尽くした70分がタイムアップ。
 速いパスワークで完勝の前橋育英が初優勝を果たす。

 
 試合後、双方の健闘を称え合う。
 奈良の地で全国大会のこんな風景を見られるのは感慨深い。

 あっという間に全日程を終えたサッカー競技だったが、波乱含みの展開だった。決勝では前橋育英が力の差を改めて誇示する結果となったが、個人的には地元の一条が準々決勝まで名を連ねたことが嬉しい限り。実際に試合を観戦した1回戦でも奈良育英が勝利するなど、滅多に恵まれない奈良の地での全国大会で地元勢が少なからずも意地を見せてくれたのではないだろうか。
 しかし、この猛暑の最中、連日厳しい日程を戦った出場校の選手たちにはリフレッシュがてら、是非とも奈良で貴重な思い出を作って帰ってもらいたい。本当にお疲れ様でした。

一条、準々決勝に挑む

2009年08月06日 | 脚で語る高校サッカー
 近畿まほろば総体のサッカー競技は、準々決勝に進む8チームが出揃っている。5日にインターバルを挟んで6日より競技は再開。8日の決勝戦まで戦いは続く。地元・奈良県からは一条がベスト8に名を連ねた。

 好調な結果を見せていた奈良の2校は3回戦で明暗が分かれた。奈良育英は玉野光南(岡山)と対戦。ここまでの戦いの疲れが出たのか1-6と敗戦。対して一条は同じ近畿勢の金光大阪を3-0と振り切っての準々決勝進出を果たしている。遂に次戦で迎えるのは強豪・佐賀東。正念場を迎える。

 準々決勝は10時と正午のキックオフで4試合が行われる。少しでも暑さを克服して好勝負が繰り広げられるのを期待したい。

奈良県勢3回戦へ

2009年08月04日 | 脚で語る高校サッカー
 2009近畿まほろば総体サッカー競技は2回戦が終了。この2回戦から登場の一条、そして1回戦で東海学園を下した奈良育英共に4得点のゴールラッシュで快勝した。

 <2回戦>
 一条 4-2 徳島商業 (橿原公苑)
 奈良育英 4-1 草津東 (橿原多目的)

 1回戦でなかなかの戦いぶりを見せた草津東には苦戦必至と思いきや、4ゴールを奪うことができた奈良育英。3回戦は玉野光南(岡山)が相手。一条は2回戦で6得点の暴れっぷりを見せた金光大阪(大阪)と対戦する。

 酷暑著しい気候の中、インターハイは相手に勝る“根性”が勝負を分けるのだろう。コンディションにだけは十分気を付けて、両校共に1勝でも多く勝ち進んでほしい。