脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

那覇西、先手必勝で名門に勝利 ~秋田商VS那覇西~

2008年12月31日 | 脚で語る高校サッカー
 大晦日の国立西が丘サッカー場で行われた1回戦第2試合は、秋田商と那覇西が対戦。前半2点を先取した那覇西が後半の秋田商の猛追を1点に抑え、見事に2回戦進出を果たした。

 
 

 選手権最多の37回出場を誇る名門・秋田商を相手に、那覇西は立ち上がりから果敢に攻撃を試みた。開始わずか3分でFW城間(3年)が相手DFラインの裏に抜け出して先制点を奪う。序盤からプレスが甘くミスの目立った秋田商に対して那覇西は、中盤の津波(2年)、糸数(3年)、そしてミドルゾーンにも顔を出すFW仲田(3年)の連携を軸に、追加点を狙って攻め立てた。31分には攻め上がったボランチの仲村(3年)がゴールを決めて前半を2-0と理想的な展開で折り返す。

 
 那覇西の攻撃を牽引したMF仲田(3年)

 
 那覇西が前半からエンジン全開で攻め込んだ

 
 沖縄から集まった応援団 三線を使った独特の応援が素晴らしい

 よほど長谷川監督のゲキがハーフタイムに乱れ飛んだのか、秋田商が後半持ち直した。前半からミスの目立った選手たちに、この日ベンチだった主将の須田(3年)を送り込んで精神的な安定感をもたらす。足が止まり始めた那覇西に対して、55分過ぎから秋田商の粘りの反撃が始まった。
 秋田商のカギとなったのは、右サイドに張って得意のドリブルで仕掛け続けたFW鎌田(3年)。小柄ながら4-5-1の右サイドとして、後半はウイングの位置でプレー。彼のドリブル突破は那覇西DF陣を再三苦しめ、66分には彼の折り返しからFW菅原(2年)のゴールを生んだ。71分にはMF斎藤純(1年)のヘディングシュートが決まったかと思いきやオフサイド。秋田商は反撃虚しく、前半立ち上がりのミスの多さ、連携不足から奪われた2失点を返せず、1回戦で姿を消すことになった。

 
 U-17代表でも活躍した秋田商MF神田(3年)

 
 
 巧みなドリブルで前線の起点になった秋田商MF鎌田(3年)

 
 秋田商は菅原(2年)が1点を返したが・・・

 
 1年生MF斎藤純をはじめ、主力は若い秋田商の今後に期待

 インターハイでは地区予選で敗退、九州プリンスリーグでも2部で11位と今季の那覇西は振るわなかった。しかし、名門・秋田商を破ったことは彼らの自信になっただろう。2回戦の相手は、圧倒的な強さを誇示した佐賀東。九州勢対決を制すれば、沖縄県勢初のベスト4も見えてくるのではないだろうか。

佐賀東、インターハイ越えに順調な発進! ~東海学園VS佐賀東~

2008年12月31日 | 脚で語る高校サッカー
 第87回全国高校サッカー選手権大会は、昨日の開会式と開幕戦に続き、今日より各地で 1回戦がスタート。国立西が丘サッカー場では、東海学園VS佐賀東と秋田商VS那覇西の2試合が行われた。

 
 

 東海学園と佐賀東の試合は7-0で佐賀東が圧勝。今年のインターハイでベスト4入りした実力を見せつける試合だった。前半から試合の主導権を握った佐賀東は、攻守における連携で東海学園を圧倒。9分にFW小池(3年)が先制点を決めると、12分には2年生FW赤がスルーパスに抜け出し追加点。38分にも赤がチームの3点目を奪うと、後半もさらに攻め立て、45分にMF中原(3年)の折り返しを再び小池が頭で押し込む。59分には再三高いテクニックで東海学園守備陣を翻弄した10番の桃井(3年)が相手GKのクリアミスをそのままシュートして5点目を決めると、70分には赤がハットトリックとなる6点目のゴール。終了間際のロスタイムには、途中出場コンビの平石(3年)の個人技からアシストを受けた黒川(2年)がダメ押しの7点目を決めて試合終了。インターハイ準決勝で昨年優勝した流通経済大柏をあと一歩まで追いつめた実力をいかんなく発揮した。
 4年ぶり2度目の出場を果たした東海学園はまだ創部8年に満たない経験不足が出たか。初戦の相手が悪かった。

 
 ボールを持つたびにテクニックと存在感を見せつけた佐賀東MF桃井(3年)

 
 佐賀東FW赤(3年)はハットトリック 狙うは得点王しかない

 プレスの甘い相手に佐賀東の攻撃は冴え渡った。ハットトリックを達成した赤は2年生にも関わらず、蒲原監督からは「得点王を狙え」という指令が飛んでいるようで、佐賀県予選5試合で8得点の実力を発揮。そして、最も印象に残ったのが中盤の桃井で、技巧派の彼が繰り出すドリブルは誰にも止められなかった。パスセンスや狭いプレーエリアでも群を抜いたプレーを見せてくれた彼の活躍が佐賀東の攻撃をコントロールしている。また、攻守に絶え間ないアップダウンを繰り返した主将のMF中原(3年)も黒子役でチームの大勝に大きく貢献。丁寧にパスを繋ぐポゼッションサッカーを陰で支えた。

 
 大勝劇を陰で支えた佐賀東の主将MF中原(3年)

 
 赤と2トップを組む小池(3年)も負けじとゴールを決めた

 
 東海学園はほとんどチャンスを作れず・・・

 
 かつて選手として名古屋で活躍した東海学園・鶴田監督も苦渋の表情

 この総合力は是非とも続きを見たいところだ。DFラインからのロングフィードはほとんど皆無。ひたすら繋ぎ、相手をいなす持ち前のポゼッションサッカーは、この冬に大成の兆しを見せている。

 
 優勝を視野に入れているか 佐賀東・蒲原監督

一条、美しく散る ~第87回全国高校サッカー選手権開幕戦~

2008年12月30日 | 脚で語る高校サッカー
 第87回全国高校サッカー選手権大会がこの日、国立競技場にて開幕。開会式の後に行われた開幕戦では、奈良県代表の一条高校が茨城県代表の鹿島学園高校と激突。
 一条は、前半に先制し試合をリードしたが、後半に鹿島学園の猛攻を振り切れず、同点に追いつかれる。試合は互いに譲らずPK戦のもつれ込み、結果2-3で一条は惜しくも初戦敗退を喫してしまった。

 
 青空の下、盛大に行われた開会式

 
 飛行船「ツェッペリン号」も上空から見守る

 
 開幕戦の舞台に立った奈良県代表の一条高校 相手は鹿島学園高

 
 鹿島学園のMF工藤(3年)が一条のゴール前に迫る

 
 鹿島学園の主将阿渡(3年)が左サイドからクロスを上げる

 
 一条DF梶本(3年)が鹿島学園FW三橋(2年)をマーク

 一条、鹿島学園ともに2年ぶり4度目の出場となった全国の舞台。インターハイベスト16、プリンスリーグでも関東2部で4位という実績を残す鹿島学園に対して、一条はインターハイでも地区予選敗退。全国的にはほぼ無名といってもおかしくないイレブンたちは国立のピッチで躍動した。
 試合は、前半から個人技で勝る鹿島学園に長短のパスを織り交ぜられ、ポゼッションを譲る展開に。一条はGK西井を中心に集中した守備を見せ、FW北野、奥田の2トップの飛び出しを狙い、ロングボールで前線に一気にボールを運ぶ。中盤で鹿島学園のプレスに苦しんだが、先制したのは一条。左右に揺さぶった攻撃がチャンスを生み出した。
 32分に左サイドからの折り返しを、逆サイドから詰めていたMF原田が詰めてゴールを奪う。鹿島学園の守備陣の一瞬の隙を突いた。

 
 12分、一条は原田(3年)のFKに北野(2年)が頭で合わせるがゴールならず

 
 直接FKの際もスルーパスを狙うなど鹿島学園は攻撃に工夫が

 
 押され気味の一条が先制点を奪う 決めたのはMF原田(3年)

 
 ファインセーブの連発でチームを鼓舞した一条GK西井(3年)

 
 積極的な飛び出しが印象的だったFW北野(2年) 来季はチームの核か

 後半に入ると、一方的な展開に。一条は鹿島学園の猛攻を食らい続けることになる。しかしGK西井が次々に相手のシュートをセーブし続けると、CBの梶本、木村のコンビも相手の攻撃をディレイさせ、容易にゴールを割らせない。一条の巧みな守りの前に鹿島学園は攻めあぐねた。
 57分に鹿島学園のCKのチャンスに阿渡のヘディングシュートを許し、一条は追いつかれるが、決して諦めず80分間を戦い切り、試合はPK戦へと突入した。

 
 鹿島学園のシュートを止め続けた一条GK西井(3年)

 
 しかし、セットプレーから同点ゴールを許してしまう

 
 一条の攻守の起点はMF小峠(3年) 的確な配球でチームを引っ張る

 
 チャンスメイク、ドリブル 持ち味を見せたMF奥田(3年)

 
 相手の猛攻に苦戦したが、主将として声を出し続けたDF元木(3年)

 運命のPK戦は、先攻の一条が2本立て続けに外す苦しい展開。鹿島学園は3本目まで全員が成功させ、4人目が決めれば勝利というところだったが、ここで一条GK西井がファインセーブ。しかし、次の一条の5本目を鹿島学園GK長峰が止める。
 この瞬間、開幕戦で一条の2年ぶりのチャレンジは幕を下ろした。

 
 一条、2本目の岡本一馬(3年)のキックは相手GKに阻まれる

 
 これを決められれば負けというところでGK西井が意地を見せたが・・・

 
 一条5人目の元木のキックは、無情にもGK長峰がセーブ

 
 勝利を掴んだ鹿島学園 次の相手は野洲か岐阜工か

 
 下を向く必要はない 讃辞を送るべき素晴らしい戦いだった

 
 チームのスローガン通り 彼らの戦いは素晴らしかった

 近年、なかなか勝ち進めない奈良県勢。非常に悔しい敗戦となったが、彼らがこ戦いで得たものは大きいはずだ。この光景を後輩たちがどんな想いで見つめていたか。来年のリベンジに期待したい。奈良県の高校サッカーは決して色褪せていないはずだ。

いざ、元日決戦へ ~天皇杯 準決勝 VS横浜FM~

2008年12月29日 | 脚で語るガンバ大阪
 天皇杯準決勝にて横浜FMと対戦したG大阪。来季のACL出場権を懸けたこの戦い、何としてでも制したいG大阪が延長戦の末に山崎の決勝ゴールで1-0と辛勝。2年ぶりの元日決戦に駒を進めた。元旦、対するのは柏。是が非でも欲しい天皇杯のタイトルに大きく近づいた。

 

 この12月最後の試合とはいえ、この1ヶ月で6試合目。さすがの選手たちの疲弊は明らかで、遠藤は右足の痛みを押して先発出場。満身創痍の状態だった。

 
 元日決戦へ向け、これ以上ない盛り上がりを見せる横浜FMサポーター

 
 左サイドの攻防 両者の意地と意地がぶつかる

 若手を積極的に登用する横浜FMがペースを握るが、集中した守備を見せるG大阪が次第に盛り返す。31分には播戸が明神からのパスに飛び出してGKと1対1のチャンスを迎えるが、左足のシュートはポストを直撃。決定的なチャンスをフイにする。その後も狩野、兵藤、長谷川ら若手を中心とした横浜FMの攻撃をG大阪は凌ぎ切った。

 
 安田理が突破を試みる

 
 右足を痛めた遠藤に代わってキッカーを務めた橋本

 
 G大阪の前に立ちはだかる大きな壁 DF中澤祐二

 
 31分、抜け出した播戸のシュートは不運にもポストに嫌われる

 
 横浜FMで最も危ない男だったMF狩野

 後半もここまでの過密日程が選手たちの足を止めさせ始める。サイドに重点を置いて仕掛けてくる横浜FMの攻撃を藤ヶ谷、山口、中澤らがはじき返すが、後半もG大阪のチャンスは少なく、後半開始から播戸に代えて寺田を起用するが、先制点は遠かった。

 
 木村体制で出番を増やす長谷川が攻め上がる

 
 激戦で疲労は限界のはず 遠藤と加地が悲願のため力を振り絞る

 
 193cmを誇る横浜FMのFW金をシャットアウトする山口

 
 兵藤と加地がマッチアップ

 
 中澤もミスが少なく、完封試合に大きく貢献

 試合は15分ハーフの延長戦へ。遠藤が負傷交代で77分にベンチに下がり、倉田がピッチに入っていた。ここでこそFWの得点力が問われる。走り負けた方が敗者だ。悲願の天皇杯奪取に向けた短いようで長い長い30分間が始まった。

 
 いざ、延長戦へ!!

 後半終了間際から徐々に足が動き始めていたG大阪は、100分にルーカス、101分に寺田が果敢にシュートを狙うなど攻勢に出だした。切り札である平井も投入し、延長戦も佳境に差し掛かった117分、寺田のドリブルから山崎へパスが送られ、PA内でボールを受けた山崎は迷うことなく落ち着いたシュートを決める。ほぼ勝利を確信したかのような歓声がスタンドを包む。117分に及ぶ言いようのない緊迫が打ち砕かれた瞬間だった。

 
 後半終了間際に横浜FMは山瀬を投入

 
 新潟へ移籍する横浜FMの大島はこれが最後の試合となった

 
 小宮山の突破を封じ、攻守においてバランスを保った加地

 
 久々の出場機会を得た倉田も落ち着いたプレーを見せた

 
 今季、ナビスコ杯の横浜FM戦では値千金のゴールを決めた平井

 
 117分、決勝ゴールを決めた山崎がゴール裏に駆け寄る

 
 苦しい戦いに終止符を打つ山崎のゴールに歓喜が巻き起こる

 
 そして長かった120分間が終わる!

 
 2年ぶりの元日決戦に進出 狙うのはもちろん優勝しかない

 
 試合後、殊勲のゴールを決めた山崎がサポーターのもとへ

 
 古巣を沈めた一撃 今季は何度、彼に助けられたのだろう

 決勝戦の相手は柏。非常にノッている不気味な相手だ。念願の天皇杯制覇に向けて大きく前進したG大阪のヤマ場はさらに続く。もう一度2007年の元旦、浦和との決勝戦の悔しさを思い出してぶつかろう。
 2009年の元旦、初めて青黒のユニフォームでタイトルを勝ち取ったその時、来季のアジア連覇への序曲はスタートする。あと1試合、満身創痍のG大阪が、全速力で走り抜けた今季最後の大一番を迎える。

大阪ダービーを制し、Jユース杯を制す!

2008年12月27日 | 脚で語るガンバ大阪
 今年のJユースカップ決勝は、C大阪U-18とG大阪ユースの対決。この大阪ダービーを0-2からの大逆転で4-2と勝利したG大阪ユース(以下G大阪Y)が4度目の大会優勝を果たした。

 

 G大阪Yは、前半C大阪U-18に先制され、後半の立ち上がり49分にも1点を失うが、51分に宇佐美の突破から得たPKを大塚が決めると、その直後には田中が右サイドの山田からのクロスを頭で決めて同点に追いつく。勢いにのったG大阪Yは、72分に1年生の大森が逆転弾となるシュートを決めると、77分にはわずか16歳ながら来季からのトップ昇格が決まっている宇佐美のミドルシュートが決まって勝負を決めた。

 
 舞台は長居 久々のダービー アウェイの雰囲気が漂う

 
 トップ昇格内定の大塚、菅沼、宇佐美を擁するG大阪ユース

 
 プリンスリーグでは苦杯を舐めさせられた相手 気合いが入る

 
 ユースの対決ながら久々のダービーにスタジアムもヒートアップ

 
 主将としてチームを引っ張る大塚(左)と守護神の森廣

 
 登録はなんとDF 果敢にシュートを狙うC大阪U-18のFW中東

 
 会場の注目を集めたのは、この年代のスター宇佐美貴史

 
 G大阪Yの攻撃を凌ぎ、C大阪U-18が果敢に仕掛ける

 
 中東とのマッチアップに燃えた菅沼 フィジカルでは負けない

 
 G大阪Yを陰で支えるボランチ田中

 
 0-2で迎えた51分、宇佐美がエリア内で倒されPKを得る

 
 これを大塚が難なく決めて反撃の狼煙が上がった

 
 その直後の52分に山田のクロスを詰めていた田中が頭で押し込む

 
 諦めない!巻き起こる歓喜 G大阪Yに火が着いた

 
 攻守のバランサーとして君臨 1年生MF水野

 
 72分には交代出場の1年生大森(#17)が逆転ゴールを決める

 
 来季トップ昇格へ名刺代わりの1発! 77分に宇佐美がゴール!

 
 途中から入って、試合のリズムを変えたMF大森 来季以降のキーマン

 
 ゴールは無かったが、3点目と4点目をお膳立てのブルーノ

 
 末恐ろしい16歳 宇佐美の圧倒的技術に会場は沸いた

 
 そしてタイムアップ G大阪Y4度目のJユースカップ優勝!

 
 途中で下がった宇佐美がなぜか試合終了の挨拶時にピッチ上に・・・
 大物の器を感じさせるおっちょこちょいさ

 
 久々の松波コールにノリノリの松波監督 就任1年目で結果を出した

 
 予選からの10試合で35得点7失点という強さで走り抜けた

 
 1年目の松波監督を支えた前監督の島田コーチ 彼の力は大きい

 
 G大阪育成部門最大の功労者である上野山氏はJリーグへの出向が決定
 有終の美を飾り、教え子たちより大きな門出祝いをもらった

 圧巻の攻撃力を示したG大阪Y。宇佐美をはじめ、大塚、菅沼らが来季トップでどれだけできるかが楽しみになってきた。そして、何よりもこの日は久々の大阪ダービー。昨年の決勝を遙かに上回る観衆が訪れ、試合後に行われたサポーターのエール交換は珍しい光景でありながら、実に清々しく、歴代の決勝戦最大のハイライトとなっただろう。

奈良ダービーを思う

2008年12月26日 | 脚で語る奈良のサッカー
 府県リーグ決勝大会の準決勝が行われた日曜日に、Jユースカップの準決勝も大阪で行われていた。府県リーグ決勝大会の決勝戦が奈良ダービーならば、奇しくもJユースカップの決勝戦は大阪ダービー。こちらは27日に決勝戦が長居スタジアムで行われるが、しばらくトップチームでは大阪ダービーはご無沙汰なだけに、非常に盛り上がりそうである。

 奈良ダービーは、来年の1月18日に、これまた奇しくも長居第2で行われるのだが、勝利した方が自動昇格、負けた方は履正社FCとの入替戦に回ることになる。対峙するのは奈良クラブとJST。今季も奈良県リーグでは首位を争った好敵手<ライバル>といっても良いかもしれない。

 思えば、奈良クラブとJSTのマッチアップは、因縁めいている。奈良クラブの前身、都南クラブの最後の試合が今季の奈良県リーグの開幕前に行われたJSTとの奈良県社会人選手権決勝だった。試合は1-0で辛勝した都南クラブが奈良クラブとして、7月の全社関西大会の切符を掴んだのだが、県リーグでは、消化試合の違いもあって常にJSTに上を行かれた。単純に今季のリーグでの成績を見れば、奈良クラブはJSTの後塵を拝している。共に無敗でリーグを戦い続け、奈良クラブが3分けを喫したのに対して、JSTはわずか1分け。選手の若さを武器に快進撃を続ける彼らに奈良クラブは常にプレッシャーをかけられたものだ。正直、県リーグプレーオフでの直接対決は必然だったと感じる。そのプレーオフでこそ4-0で奈良クラブが圧勝したが、リーグでの直接対決は1-1の痛み分けに終わっているのだ。

 今回の奈良ダービーは、用意された舞台が違う。奈良県リーグにおいても、また、関西社会人サッカー界にとっても一石を投じる画期的なマッチアップとなったはずだ。昨季も府県リーグ決勝大会の決勝は滋賀ダービーだったが、2年連続で県代表2チームが決勝まで勝ち上がれることは、確実に奈良県サッカーのレベルが関西でも決して低くないことを実証してくれている。

 奈良クラブの誕生は、奈良県リーグに確実に新たな息吹をもたらした。サポーターが応援する風景、以前にも増した勝負に対するこだわり、これまでは“見せ物”ではなかった試合に訪れる観客、“アンチ奈良クラブ”の意識で試合に臨んできた県リーグの他のチームはどこも手強かった。奈良クラブとJSTに並ぶ奈良県リーグの強豪Atleticoは、全国クラブチーム選手権の切符を掴んだ。奈良クラブの1強状態にならなかったことが各チームの切磋琢磨をもたらした気もしなくはない。

 その意味では今回の相手に不足はない。奈良県サッカーが少しずつ変わり出している姿を年明けのダービーで垣間見てもらえれば、それは奈良のイチサッカーファンとして本望である。

気持ちを切り替えて ~天皇杯 準々決勝 VS名古屋~

2008年12月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 神戸ユニバー記念競技場で行われた天皇杯準々決勝の未消化分、G大阪VS名古屋が行われ、2-1でG大阪が逃げ切り、29日の国立での準決勝に駒を進めた。

 

 非常に寒さの厳しい中、G大阪はCWCと布陣を変えることなくこの戦いに挑む。12日間で4試合目の過密日程はピークを迎えた。しかし、リーグで上位争いをできなかったG大阪にとっては、この天皇杯を制する以外、来季のACLの出場権は得られない。世界と渡りあったことで“燃え尽き症候群”も懸念されたが、体は重くとも選手たちの試合勘は鈍っていなかった。

 13分、右サイドの加地からのフィードを橋本が頭で落とすと、山崎が拾って橋本とスイッチする形でボールを受け渡す。そして走り込んだルーカスに送られたパスをルーカスが見事なシュートで先制点を呼び込んだ。前がかりになっていた名古屋は、最終ラインと中盤の間にぽっかりエアポケットが空いた状態で、全く守備が効いておらず、ルーカスと橋本の両翼が自由に形を作ることができた。

 
 13分、ルーカスが鮮やかなゴールを決めて先制する

 
 清水への移籍が決まったヨンセンは名古屋でのプレーがこの日最後となった

 橋本、山崎、播戸、ルーカスが多彩なパス交換を見せ、予想以上に良い形を見せるG大阪は、その後も15分にルーカス、16分に山崎とゴールを狙う。
 22分には右サイドでもたついた小川のボールを山口がカット。これをルーカスがハーフライン付近の播戸に預けてカウンター攻撃を仕掛ける。播戸から右サイドを走り込んだルーカスにボールが渡り、彼のクロスで誘発した右CKを橋本が遠藤と繋いでクロスを上げると、中澤がファーサイドにて頭で合わせて追加点を奪った。

 
 今季のリーグ新人王に輝いた小川と橋本が対峙

 
 右サイドでは、加地VSマギヌン 未だ因縁のマッチアップ

 早い段階で点差を広げ、試合のイニシアチヴを握ったG大阪。前半こそ持ち味のパスサッカーが連動し、効果的に得点を奪ったが、後半に入ると試合を決定づける3点目が奪えず、次第に名古屋の反撃を受けていく。

 
 スピードを活かしてエリア内で持ち味を見せる玉田

 
 リードを奪っていたこともあって、FKではルーカス、山口が蹴る一幕も

 70分に名古屋は、吉田のロングパスに反応した杉本がG大阪のDFラインを絶妙な飛び出しで抜け出し、1点を返す。追加点を狙うべく高くなっていたライン設定がスピードのある杉本の狙われてしまった。この後は藤ヶ谷の好守もあって、何とかG大阪が名古屋の追い上げをシャットアウトして逃げ切った。

 
 オフサイドぎりぎり、絶妙な飛び出しで1点を返した杉本

 
 ややCWCの疲れが見えたか安田理

 しばらく、ゴールのない播戸に3点目を奪って欲しかった。この日も周囲を活かす良い動きを連発しており、ゴール以外の局面で体を張ってチャンスメイクをしている姿は印象的だが、今季はゴールに恵まれてなさすぎる。チームの疲れがピークに差し掛かるここらで彼のゴールがG大阪の起爆剤になることは間違いないのだが。29日に期待したい。

 
 57分、ルーカスのスルーパスに飛び出した場面 決めて欲しかった

 
 播戸と増川 姫路は琴丘高の同期が奇しくも兵庫での試合でマッチアップ

 
 疲れている暇はない 天皇杯をしっかり勝って来季もあの舞台を味わいたい

 
 試合後には名古屋サポーターがノルウェーの国旗でヨンセンに最後のエール

 これで準決勝進出だが、今季は天皇杯にこだわりたい。ACL出場権が懸かっているのはもちろんのこと、やはり昨年の元旦、浦和との決勝戦の悔しさが脳裏から離れない。新年早々からあれほど悔しい思いをするのも酷だが、今季はリーグ不調の借りを天皇杯で返して欲しい。そのためには、今一度、気持ちを切り替えて自分たちのサッカーを完遂するのみだ。

自動昇格に王手!2008年を締め括る ~府県決勝大会準決勝 VS 東レTOP~

2008年12月23日 | 脚で語る奈良クラブ
関西府県リーグ決勝大会
準決勝
14:00キックオフ @ビッグレイクCコート

○奈良クラブ 4-1 東レ TOP (滋賀県) ●

得点
39分石田
65分松野正
66分石田
72分和阪

<メンバー>
GK17村松
DF3上西、2梶村、22橋垣戸、11松野智
MF16河合(60分=24東)、21中村、18和阪、13金城
FW7石田(73分=23石原)、14後山(46分=10松野正)

 

 冷たい風が容赦なく吹きつけるビッグレイクにて、準決勝を対峙することになったのは強豪東レTOP。昨季、関西リーグに昇格した滋賀FCでさえ滋賀県リーグの順位では後塵を拝した最も警戒すべき相手とのマッチアップに、試合前から緊張感が漂う。試合前には11:45キックオフの試合で、同じ奈良県代表のJSTが東大阪をPK戦の末に下し、決勝戦進出を決めた。今季何度も県内で対戦したライバルの躍進に奈良クラブも気合いが入らないわけがない。負ければそこで終わりの80分間が始まった。

 

 奈良クラブは、欠場の水越の穴を中村のボランチ起用で埋める。その他の先発はこの大会ではお馴染みのメンバー。特に梶村、橋垣戸のCB陣、そして石田を起点にボランチの和阪、金城らが高い位置で攻撃を組み立てる安定感は増している。この日も早い時間帯に先制点を奪えるかが鍵になった。

 
 DF松野智が左サイドをケアする

 東レは日曜日に紀北蹴球団を6-1で下し、初戦の三菱京都戦の敗戦をリセットした。噂通り、非常に個々が上手く球際も強い。奈良クラブは前半の序盤に中央から勢いよくシュートを許し、先制点を奪われてしまう。

 
 サイドから中央から東レの攻撃が牙を剥く 忍耐の前半だった

 
 加入後、日増しに安定感を見せるGK村松

 前半終了間際に石田が同点ゴールを決め追いついた奈良クラブ。相手の攻撃を耐え凌ぎながら、攻撃のリズムを徐々に作り始めた。手応えを感じて前半戦を終える。

 
 石田のゴールがチームに火をつける

 日曜日の試合の影響が色濃く出たか東レ。後半は次第に奈良クラブがペースを握る展開へ。後半から出場した松野正が貪欲にゴールを狙い、前線を活性化させる。両サイドのスペースを有効的に使い出した奈良クラブが決定機を作り出した。
 65分に、松野正が10月のプレーオフ以来となるゴールを決めて逆転に成功すると、そのわずか1分後には石田がこの日2得点目となるゴールを決めて、試合を決定づける。再三前線に顔を出した和阪や石田とのコンビネーションが冴え渡った。
 72分に和阪がダメ押しの4点目を決めて守備陣の負担を減らすと、最後まで集中したディフェンスで東レの攻撃を凌ぎ、決勝進出を決めた。

 
 
 待望のマサゴールにチームが盛り上がる!

 
 その直後には石田が決めて3-1とした

 
 
 和阪が4点目を叩き込む 高い位置で攻撃を牽引

 
 ボランチの中村(#21)は守備的で落ち着いたプレーを見せた

 
 河合(手前)もここにきて定位置奪取 和阪との連携も良い

 これで、来年1月に行われる決勝戦は奈良勢同士の対決となった。確実に奈良クラブの誕生で刺激を受けているJST。県リーグ上位プレーオフでは勝利したものの、奈良県リーグでは1-1のドロー。チーム立ち上げ前の2月には社会人選手権奈良県大会での決勝でも顔を合わせている因縁のライバル。共に切磋琢磨してきた成果がここに表れたようだ。最も負けられない相手との一戦に、奈良県のレベルの底上げを共に感じる。実に感慨深い決勝の組み合わせとなった。

 
 負傷で離脱していた東も久々に途中出場 勝利に貢献した

 
 攻撃を自重し、ゴール前での守備が光った主将の上西

 
 何よりもサポーターを沸かせた松野正のゴール 10番が良く似合う

 
 負傷で試合を遠のいている矢部(左)だが、選手との信頼関係は揺るぎない

 
 関西リーグ自動昇格に王手の奈良クラブ 年を越してその真価が問われる


第43回(平成20年度)関西府県リーグ決勝大会
決勝戦

奈良クラブ VS JST (奈良県)

2009年1月18日(土)
14:00キックオフ @長居第2陸上競技場

FIFA CWC 決勝戦 リガ・デ・キトVSマンチェスター・ユナイテッド

2008年12月22日 | 脚で語る欧州・海外
 FIFAクラブワールドカップの決勝戦、南米王者のリガ・デ・キトと欧州王者マンチェスター・Uとの一戦は、大会MVPを受賞したルーニーの得点を守りきったマンチェスター・Uが1-0で勝利。99年トヨタカップ以来の栄冠を手にした。

 

 右SBにラファエル、ボランチにキャリック、右SHにパクを起用し、C・ロナウドを左SHに回してルーニーとテベスの2トップという布陣で臨んだマンチェスター・U。パチューカ戦と変わらぬ4-5-1を敷いてきたリガ・デ・キト。トップ下のマンソを中心に強敵に挑むことになった。

 開始5分にウルティアのFKからカンポスがゴール前に走り込みビッグチャンスを得たキトだったが、パチューカ戦でもポゼッションでは相手にリードを許したように、やはり地力ではこの相手には敵わない。強く吹き込む追い風がキトの流れを引き寄せてくれればという立ち上がりだった。

 
 パス能力に秀でたキャリックを入れてきたマンチェスター・U

 
 キトの攻撃を組み立てるのはMFマンソ

 10分、ファーディナンドのロングパスをルーニーがフィニッシュに持ち込んだように、先発のルーニーは前線で驚異的な存在であり続けた。彼をターゲットに両サイドから、そしてエリアを問わずC・ロナウドがチャンスを作る。
 しかし、この日はC・ロナウドをキトの守備陣がよく封じた。ドリブル偏向の彼にとって苛立ちが募る展開。前半はスコアレスドローで折り返した。

 
 決定機を決められず憮然とするルーニー

 後半の立ち上がりにアクシデントが起こる。DFヴィディッチがファウルで退場となり、急遽テベスに代えてその穴にエバンスを投入、4-4-1というような布陣にスイッチしたマンチェスター・U。中央にC・ロナウドを配置し、ルーニーを左に回した。ファーガソンの采配に守備のタスクをその自己犠牲でしっかりと担えるルーニーのプライオリティを垣間見る。昨季のCLでも何度か見られたこの配置はマンチェスター・Uの常套手段。1人欠けた中で、攻守のバランスを考えた布陣は功を奏すのか、会場の注目は集まった。

 
 アジア人として初の栄冠に輝いたパク・チソン フル出場で勝利に貢献

 
 攻め上がったエブラとのコンビネーションが合わず苦しむC・ロナウド

 73分にエリア手前でボールを受けたC・ロナウドが巧みにコントロールしたパスを左に走り込んだルーニーへ。眼前にDFがいながら右足を一閃したルーニーのシュートが決まり、マンチェスター・Uが大きな先制点を挙げた。
 1人多い中、キトは最後までチャンスを狙い続けたが、ファーディナンドを中心に厚い守備を敷くマンチェスター・Uの前にゴールを奪えなかった。

 
 
 スタジアムを盛り上げたC・ロナウドのFKも得点には至らない

 
 
 73分、C・ロナウドのアシストからルーニーが決勝弾を決める

 風邪で体調をこじらせているベルバトフや若手のウェルベックも個人的には見たい選手ではあったが、やはりクオリティはマンチェスター・Uが一回りも二回りも上だった印象があった。プレミアリーグの過密日程や先日CLノックアウトステージの初戦がインテルに決まったことも、彼らのこの後の熾烈なシーズンを物語る。今日帰国の途に着いた彼らからは、この大会の歓喜は既に過去のものになっているに違いない。スタジアムに駆けつけた多くのマンチェスター・Uファンを熱狂させて、風のように去っていった“赤い悪魔”たち。彼らは様々な意味で“非日常”を提供してくれた。

 
 シルバーボール賞はC・ロナウドの手に

 
 大会MVPはルーニー 全てにおいて“違い”を見せつけた

 
 セレモニーは尋常でない火薬の量 スタジアムが煙に包まれる

 
 歓喜に酔いしれるマンチェスター・U 完成度はクラブ史上最高峰か

 
 チームを率いて23年目 サー・アレックス・ファーガソン監督

世界との邂逅 ~FIFA CWC 3位決定戦 VSパチューカ~

2008年12月22日 | 脚で語るガンバ大阪
 FIFAクラブワールドカップの3位決定戦で北中米王者のパチューカと対戦したG大阪。1-0と勝利したG大阪が、アジア王者として初めて挑んだこの大きな舞台で大会3位となる成績を収めた。

 
 
 

 マンチェスター・U戦と変わらぬ布陣で臨んだG大阪は、細かくパスを繋ぐメキシコの古豪相手に終始しっかりとしたプレスで対応。29分に右サイドの橋本が中央の播戸に送ったパスをそのまま播戸がダイレクトで山崎へ。オフサイドラインぎりぎりで抜け出した山崎が難しいボールをうまくシュートし、先制点を奪った。

 
 11分遠藤のFKのチャンスは得点ならず

 
 セットプレー時もしっかり集中した守備陣

 
 藤ヶ谷の活躍も光る 最後尾ででG大阪を支えた

 
 
 29分、山崎が今大会2得点目となる値千金の先制弾

 
 パチューカもカウンターでチャンスを狙う

 
 ルーカスの決定機をパチューカGKカレロが阻む

 
 中澤のヘディングシュートは決まらず

 
 58分、播戸がエリア内で倒されるがファウルはなし

 
 左サイドを駆ける安田理

 
 前半も大きなチャンスを迎えた播戸 ゴールはないが、アシストで一仕事

 
 世界との戦いで、やはり存在感を発揮したのは遠藤

 
 その遠藤のCKに山口が合わせる定番のパターン 惜しくも決まらず

 
 1-0で勝利 アジア王座について1ヶ月 世界との戦いを終えた

 
 大会3位は、今後のG大阪の大きな指針となる 彼らの功績は大きい

 この結果は素直に嬉しい。見応えのある試合だった。G大阪、パチューカ共に攻撃的な持ち味を発揮した。GKカレロを中心に勝利への執念を感じさせたパチューカだったが、彼らを打ち破ったG大阪の実力もある程度世界に発信できる良い機会になった。西野体制7年目の集大成は、この世界との邂逅を必然だと思わせてくれた。

 ACLから続くG大阪の大きな挑戦は終わった。しかし、今後この成績が足枷になるようではチームの成長はない。真の意味で世界に通用するクラブに成長するには、ここからがスタートだ。そのためにも25日に準々決勝を控える天皇杯は、G大阪になってから未だ制していない。気持ちを切り替えて元旦の国立で歓喜を得るために再スタートを切らなければならない。大会の盛り上がりに乗じて、“燃え尽き症候群”を発症してしまうならば、G大阪はそこまでだ。

 G大阪の魅力あるサッカーを多くの人々が新たに味わった。さらに強くならなければいけない。