脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

これが本場のジャイアントキリング ‐FAカップ‐

2010年01月05日 | 脚で語る欧州・海外
 日本でジャイアントキリングといえば天皇杯だが、新年を迎えて日本のプロサッカーシーズンは終了。イングランドでは「本場」のジャイアントキリングが醍醐味となるFAカップの戦いが熱を帯びている。
 その中、オールドトラッフォードで本選3回戦であるマンチェスター・ユナイテッド戦に臨んだフットボールリーグ1(3部に相当)に所属するリーズ・ユナイテッドが1-0で勝利し、4回戦に進出するというジャイアントキリングが起こっている。破れたマンチェスター・ユナイテッド、3回戦でのFAカップ敗戦は1984年以来だというからリーズの大仕事は大いに脚光を浴びていることだろう。
 
 そういえば、J SPORTSにて放送されている「ENG」(Emglish News Gathering)にて現在FAカップの特集がされており、かなり胸が熱くなった。予備選から出場する9部や10部に相当するノンリーグのチームたちに注目し、その奮闘ぶりを追いかけている。ノンリーグのアマチュア選手たちにとってFAカップの本選に出場できることほど栄誉なことはない。

 今季で129回目を迎えるFAカップは、世界最古のフットボールトーナメントとして世界に広く知られているが、その予備選には実に762チーム(09-10シーズン)ものフットボールクラブがエントリーし、その予備予選を勝ち抜いた32チームのノンリーグのチームが3部に相当するフットボールリーグ1までのプロリーグの48クラブと共に本選1回戦を戦うことになる。前述したマンチェスター・ユナイテッドのようなプレミアリーグ勢と2部に相当するチャンピオンシップ勢の計44チームは本選3回戦からの登場となる。予備予選の戦いは8月に始まり、ウェンブリーで行われる伝統の本選決勝戦は5月に行われている。

 今季は8部に相当するサウザン・プレミアリーグ1サウス&ウエストに所属するポールトン・ローヴァーズFCが最も下位のリーグに所属するクラブとしてFAカップ本選1回戦出場を果たした。本選1回戦の相手はフットボールリーグ1(3部)のノリッチ・シティということもあって、小さなクラブを抱える小さなポールトンの街はささやかな活況を呈したようだ。つまり、本選1回戦に進出したことによって、テレビの放映権が与えられたのだが、それに準拠するためのスタジアム審査やユニフォームスポンサーと引き合いにチームを率いるA・ジョーンズ監督の携帯電話が鳴りっ放し。結果的に0-7でノリッチに完敗を喫するポールトンだったが、この本選1回戦出場で得た収益が日本円で約2,200万円にも及んだという。これはポールトン・ローヴァーズFCの前年度予算の6倍に達する額だそうだ。それはFAカップ本選を目がけてノンリーグのアマチュア選手たちは目の色を変えるわけである。選手たちは全員パートタイムながらこの本選に進める32チームのノンリーグ勢の枠を狙ってシーズンのトップコンディションを狙うのである。

 そういえば、04年にフットボールリーグ1に所属するミルウォールがファイナルに進出して大きな話題を呼んだ(結果は0-3でマンチェスター・ユナイテッドに敗戦)。ノンリーグ勢は本選4回戦進出が非常に困難だが、フットボールリーグ1、リーグ2勢にはまだまだチャンスはあるはず。リーズに続くジャイアントキリングが今大会で今後も見られるだろうか。FAカップが面白くなってきた。

師走、CWCの季節

2009年12月20日 | 脚で語る欧州・海外
 UAEで行われていたFIFAクラブワールドカップ。決勝で南米王者・エストゥディアンテスを延長の末に2-1で下した欧州王者・バルセロナが世界一の座に輝いた。110分に決勝点を挙げたのは今年度のバロンドールであるメッシ。意外にもバルセロナは創立110年で悲願の世界一となる。

 昨年の今頃、このクラブワールドカップを横浜で観戦していたことを考えると1年が経つのは本当に早いものだ。UAEはアブダビに場所を変えた今季のCWCは日本チームの出場が無いのもあってか、どうも身近に感じられなかったのは確かである。3位決定戦で浦項がPK戦の末に3位に食い込んだことでアジアからの出場チームがこれで4年連続の3位となったが、決勝戦が南米王者と欧州王者という組み合わせは今年も不変。やはりまだこの間には大きな差があるのだとも感じる最終日の2試合だった。

 イニエスタの負傷欠場が明らかにチームのバランスを揺るがしていたバルセロナに対して、エストゥディアンテスは前半の良い時間帯に先制できたが、試合巧者ぶりは欧州王者の方が上。しかしながら、チャンピオンズリーグやリーガ・エスパニョーラで毎回お目にかかるバルセロナとまた違い、彼らの追い込まれてからの強さが光った熱い一戦。延長戦に入る前に円陣の中央でいつもの派手なボディランゲージで指示を出すグアルディオラの姿が印象的だった。既に就任して1年余りで数々のタイトルを獲得した闘将「ペップ」にとって初めての世界一のタイトルはどれほどの重みを感じているのだろうか。

 日本にこの大会が戻ってくるのは2年後。その時には日本のチームが欧州王者か南米王者と決勝戦で世界一を争っているのだろうか。

折り返し地点 -欧州CLグループステージ-

2009年11月04日 | 脚で語る欧州・海外
 今季のUEFAチャンピオンズリーグもグループステージが折り返し地点。いよいよノックアウトステージ進出チームが決まり始めた。

 昨夜行われたグループA~Dでは、4チームがグループステージに進出決定。グループAではバイエルンに快勝したボルドーが、グループBでは前年度ファイナリストのマンチェスター・Uが、グループDでは、チェルシーとポルトが揃ってベスト16への切符を手中に収めている。

 ここではやはりボルドーの躍進が目立つ。特にこの2試合で強豪・バイエルンに連勝を果たしたのは非常に大きい。1節でユべントス相手に粘りで1-1に持ち込み、続く2節・マッカビ・ハイファ戦も1-0と手堅く勝利。そしてこのバイエルン相手の2タテである。ユべントスとバイエルンという強豪チームと同居するグループながら、真っ先にベスト16の切符を掴んでしまった。
 ボルドーは昨季もCLには参戦していたが、グループステージでは3位という結果に終わった。今季は昨季以上にメンバーに安定感が見られ、グループステージではこの4試合ほぼ不動。トゥールーズから獲得したGKカラッソ、そしてオサスナから獲得したチェコ代表のプラシールの2人が新加入選手としてしっかりフィットしており、完全移籍が今季決まったグルキュフも昨夜のバイエルン戦で先制点を決めるなど、名実ともにチームの顔となっている。もはやユべントスとバイエルンも敵わないほどの実力を欧州の舞台で発揮している。

 ミランとレアル・マドリーが同居するグループCは混戦になってきた。特に昨夜の試合でこの両者の直接対決がドローに終わり、マルセイユはチューリヒに6-1と圧勝。得失点差でレアル・マドリーがミランを上回るが、勝点が並んだ際には当該チーム間の結果が優劣の基準になるために、ミランがグループ首位に立っている。マルセイユはこの2チームを勝点差1ポイントで追走する。
 ミランは2節でチューリヒに0-1と負けたのが響いている。あの敗戦がなければ既にノックアウトステージ進出が決まっていたはずだ。しかし、この2試合レアル・マドリーとの連戦に1勝1分と奮闘。あとはいかに取りこぼしをしないかにかかってくる。この2試合、C・ロナウドという得点源を欠くレアル・マドリーも同様である。

 今夜は、残るグループE~Hの第4節が行われる。注目はグループEで現在3位と苦戦するリバプール。リヨンに連敗するような事態にばれば彼らのグループステージ突破はかなり厳しくなりそうだ。先日のプレミアリーグ・フルアム戦での惨敗は非常に印象的だっただけに、このリバプールの浮沈は今大会最も興味深いポイントだ。
 そして、グループ最下位に沈むインテル。彼らもセリエAでは好調ながら、CLでは結果が出ていない。勝点差は切迫しているだけにインテルの巻き返しにも注目したいところだ。

「とりあえず」役者は揃った

2009年10月15日 | 脚で語る欧州・海外
 2010年南アフリカW杯予選で南米を戦うアルゼンチンが、14日に行われた5位ウルグアイとの直接対決に勝利し、南米4位での本大会出場を決めた。

 74年以来の本大会連続出場を誇り、W杯の常連国として優勝2回、準優勝2回を誇るアルゼンチンが未曾有の危機に陥った今回の南米予選。10日に行われたペルー戦は3連敗と崖っぷちの状態で臨んだが、ロスタイムにパレルモの決勝点で2-1となんとか辛勝。指揮官マラドーナの雨中のダイビングポーズは記憶に新しいところ。そして迎えたこのウルグアイとの試合で1-0と相手をかわし、何とか本大会の切符を掴んだのである。

 このウルグアイ戦もようやくボラッティの得点が決まったのは84分。希代の名プレイヤーが率いるアルゼンチンは何とも綱渡りの勝負をこなすのがお得意だ。ボリビア、エクアドル、パラグアイ、そしてライバルのブラジルにも負け、39年ぶりに出場できない事態すらも国民の頭を過ぎったであろう。彼らには心臓に悪い南米予選となった。国内では予選途中に就任したマラドーナの監督資質に関して既に懐疑的な眼差しが向けられている。バルセロナでキャリア最高のプレーを見せているメッシでさえチームには必要かと議論が巻き起こっているようだ。予選終了後に監督としての進退を明らかにするマラドーナだが、確かにこれだけヘロヘロになりながら予選を何とか突破しているようでは本大会での結果も危うい。

 「インテリジェンスに満ちた攻撃的サッカーこそ、本来のアルゼンチンサッカー」と豪語していたのは、かつてアルゼンチンに初の栄光をもたらしたセザール・ルイス・メノッティである。そして、8年後にそのメノッティとは対極的なストロングな守備を念頭に置き、「暴力的」とも評されたサッカーで2度目の戴冠を果たしたのがカルロス・ビラルドだった。言わずもがなこのチームの中心として世界を席巻したのが現指揮官のマラドーナ。彼はどんなフィロソフィで代表チームを本大会での勝利に導くのだろうか。未だ霞がかったその視界は見えず、本大会のベンチには彼の姿がないことも考えられる。彼がフィールドだけでなくテクニカルエリアでW杯を制することはさすがに難しそうだ。

 ともかく、マラドーナにばかりスポットの当たるアルゼンチン。イングランド不在のW杯もしっくりこないが、確かにアルゼンチンのいないW杯はそれ以上に違和感を拭えなかったであろう。とりあえず役者は揃ったというべきか。

光と影を払拭する「マネー」の力

2009年09月24日 | 脚で語る欧州・海外
 「マネー」。ユナイテッドとシティの違いは何かという問いに対して、全ての人が開口一番、こう答えた-----。

 9年前の2000年6月、季刊誌「サッカー批評」内で永井洋一氏が「マンチェスターの光と影」というタイトルで当時のユナイテッドとシティの立ち位置をレポートされている。冒頭はそのレポートの最初の一文であり、当時のシティとユナイテッドをこれ以上ない言葉で切り分けている。時代が変わってしまったといえばそれまでだが、今ではこの言葉は通用しない。かつては、シティファンによってユナイテッドに対する悔恨にも似た感情で使われていた「マネー」という言葉。現在では、シティそのものを象徴する言葉となってしまった。ユナイテッドに比べれば、ファンの帰属意識で明確な結束力を自負していたシティのファン。彼らは現在のシティをどのように見守っているのだろうか。

 世界を震撼させたアブダビ・ユナイテッドグループ(ADUG)によるマンチェスター・シティの買収劇から1年が経った。その1年前にはタイの元首相でタクシン・シナワット氏がクラブを買収。彼の資産凍結によって損失補填もままならないことから、シティはアラブマネーの傘下に売却されることとなる。アラブマネーを中心に巨万の富を築いたスレーマン・アルファヒム率いるADUGは約2億1000万ポンド(約407億円)でシティを買収。個人資産額でアブラモビッチの約10倍を有するというアルファヒムにとっては、それほど難しい選択ではなかったはずだ。たちまち「世界一の金持ちクラブ」となったシティ。その夏にはレアル・マドリーからロビーニョを4200万ユーロで獲得し、冬の移籍市場ではデヨング、ギヴン、ブリッジ、ベラミを獲得するなど主役に躍り出た。今夏もコロ・トゥーレ、レスコット、バリー、アデバヨール、テベス、サンタクルスなど錚々たるメンバーを補強。200億円以上の投下資金でプレミア屈指の陣容を実現させているのは記憶に新しい。

 そこにはかつてディビジョン2(イングランドでの3部)にまで転落した98-99シーズンの面影は一切ない。プレミアへ這い上がった00-01シーズンも18位ですぐさまディビジョン1へ。再び昇格を果たした02-03シーズンからの戦いぶりは7シーズンで二桁順位が4度。もはやユナイテッドには遠く及ばないシティの戦いぶりにマンチェスターのファンも悲観を通り越したことであろう。
 現役時代はユナイテッドの中心選手としてその名を馳せたヒューズ監督が就任した昨季こそリーグ10位、UEFAカップベスト8止まりだったが、今季の陣容は尋常ではない。現実的にも「プレミア制覇」が狙えるチームになった。長年、ユナイテッドの後塵を拝してきた彼らにとっては、先日のマンチェスターダービーは奮い立ったことだろう。あとわずかで及ばなかったが、シティにも十分勝機はあった試合だった。

 かつてはクラブ買収にファンの反応は非常に冷ややかだったプレミアリーグ。現在ではむしろ歓迎されているという。プレミアを構成する大半のクラブが海外資本であり、それは当たり前の光景になってきた。しかし、ここまで「マネー」の力を借りてクラブが肥沃化していくことに、これまでのシティファンは抵抗が無いのだろうか。マンチェスターでも下層労働者階級のファンが多いというシティ。かつてその言葉は、同じ街にある金満クラブ・ユナイテッドに対する変質を揶揄する言葉であった。プレミアリーグへの海外資本流入は彼らの意識を徐々に変容していったのであろうか。「マネー」の匂いが普遍化しているプレミアにおいて、“アンチユナイテッド”で結ばれていたシティへの帰属意識はそのままに、「マネー」はいつの間にかその意識の土台になっているようだ。

 古くからクラブの象徴であったDFダンがアストン・ビラに移籍し、現在のシティ在籍選手の最古参は、6年目を迎えるオヌオハ。5年目のリチャーズとアイルランド以外はほとんど2年目~3年目の新顔が並ぶ。そこにはかつてユナイテッド以上に“ファミリー”を自負していた痕跡はない。マンチェスターにかつての光と影はもう無いのかもしれない。新たな形でその歴史を紡ぎ出している。
 「マネー」の力で、これまでの借りを返す時が来たのかマンチェスター・シティ。英国版「銀河系軍団」はビッグ4の牙城を崩せるのだろうか。この数シーズンに期待がかかる。

無傷のブルーズ、傷だらけのスパーズ

2009年09月22日 | 脚で語る欧州・海外
 一体この2チームにはどうやって勝てばいいのだろうか。そう思わせるぐらいスペインではバルセロナとレアル・マドリーの勢いは凄まじい。C・ロナウド、カカ、イブラヒモビッチとあれだけのビッグスターが揃えば当然。おそらくWOWOWの加入者も増えたのではないだろうか。しかし、侮るなかれ今季もプレミアリーグは面白い。6週目を終えたプレミアでは、徐々に各チームの差が見えてきた。

 先週末に行われた6週目は、マンチェスターダービーも行われたが、今季好調なロンドンの2チームもマッチアップ。スタンフォードブリッジで首位を走るチェルシーと今季まだ1敗のトッテナムが対戦した。結果は3-0とホームのチェルシーが完勝。無傷の6連勝を遂げたが、対照的にトッテナムは前節のマンチェスター・U戦に続き2連敗。おまけに守備の要であるキング、バソングを負傷で途中交代させるハプニングもあり、開幕4連勝のチームには明らかな陰りが見える。

 終始チェルシーのペースで進んだ試合は、前半こそトッテナムも前線のデフォーを軸に対等に渡り合おうとするが、徐々にポゼッションで上回るチェルシーが試合を圧倒。A・コールのヘッドで先制すると、後半の序盤にたたみかけたチェルシーはバラック、ドログバのゴールで試合を決める。ドログバはこのゴールでチェルシー在籍通算100ゴールまであと1ゴール。試合を決定づけた後半は、ドログバに100ゴール目をという心遣いや若手のボリーニがデビューを果たすなど余裕の試合展開。確実にアンチェロッティの目指すポゼッションサッカーは実を結びつつあり、特に中盤の安定感とドログバ、アネルカが良好な共存関係を築いている点は大きい。リーグとビッグイヤーの二冠はアンチェロッティの頭には描けているはずだ。課題は今後控えるビッグ4同士の対戦をどう制するかだ。

 対照的にボロボロだったのはトッテナム。ただでさえ司令塔のモドリッチを負傷で欠く苦しい現状に加え、この試合では負傷が代名詞のキングが膝を負傷、鳴り物入りで加入したカメルーン代表のバソングも競り合いの末に脳震盪でフィールドを後にする展開。デフォーに代えてクラウチを投入し、アーリークロスを多発してチャンスを狙うが、狙いが完全に不明瞭でチェルシーの足元にも及ばず。開幕戦からの勢いをこの2戦で完全に削がれた形だ。古巣を相手に孤軍奮闘していたGKクディチーニの姿が非常に泣ける試合だった。やはりビッグ4の壁は厚いのか。はっきり立ち位置の見えたレドナップ・スパーズ。とにかくモドリッチをはじめ、守備陣の主力の帰還を待つしかない。

 オールドトラッフォードで行われたマンチェスターダービーはロスタイムが6分にも及ぶ壮絶な撃ち合いに。マンUはここまで5得点のルーニーがこの日も先制点を挙げ、チームを盛り上げるが、マンCも負けじとマンUのミスを突いてバリーのシュートで追いつく。その後は双方空中戦から2得点のフレッチャーと悪童・ベラミが大暴れ。ベラミのゴールでロスタイムに3-3に追いついたマンCだったが、96分にオーウェンのゴールを許し力尽きた。

 まさに完全なスペクタクル。史上屈指の陣容を揃えるライバル同士がダービー史に残るシーソーゲームを見せてくれた。潤沢な資金でビッグ4に詰め寄ろうとするマンCに鉄槌を下したのは、皮肉なことにフリートランスファーでマンUに加入したかつてのワンダーボーイ・オーウェン。しかしながら、ミスの多かったマンUは決して連覇への道程が明るい訳ではなさそう。特にベラミに3点目を許したファーディナンドのパスミスは頂けなかった。マンCも僅差で敗れたとはいえ、アデバイヨールを欠きながら手応えのある試合ができたことに可能性を感じているのではないだろうか。

 なにはともあれ、無傷のチェルシーの独走はしばらく続きそうだ。

今年もあのアンセムに心躍る

2009年09月16日 | 脚で語る欧州・海外
 昨日、今季のUEFAチャンピオンズリーグのグループステージが開幕。いよいよ欧州に本格的な新シーズンの息吹が感じられる時期になった。まさに世界屈指の名勝負の舞台。これほど優勝候補を絞るのが難しい大会もない。中継が奏でるあのアンセムに胸が高鳴るファンも多いはず。果たして今季はどんな名勝負が繰り広げられるのだろうか。

 おそらく本命は新・銀河系軍団を形成したレアル・マドリーと昨季の欧州王者であるバルセロナが軸になるだろう。豪華絢爛な陣容を誇るこのスペイン勢を昨季のファイナリストであるマンチェスター・Uとチェルシーやリバプールといったプレミア勢、悲願のビッグイヤーに手を伸ばしたいインテルをはじめユベントス、ミランあたりのカルチョ勢が追撃する構図になるだろう。

 先駆けて行われた昨日のグループステージ第1節8試合では、本命・レアル・マドリーがチューリッヒ相手にその破壊力を披露。5-2と順調に白星スタートを切った。この白い巨人がリードするグループCは、第3節と第4節のミランとのマッチアップが最大の見所。カカを擁するレアル・マドリーが彼の古巣・ミランにどこまで力の差を誇示できるか注目だ。

 その他の試合は順当に格上チームが勝利と思いきや、ユベントスとA・マドリーは引き分けスタートと苦い滑り出し。特に昨季のリーガトップスコアラーであるフォルランとアグエロを擁するA・マドリーは格下のアボエル・ニコシア(キプロス)にスコアレスドローという内容。プレーオフを勝ち上がったニコシアは大会初出場。コンスタントに自国の代表チームに招集されている選手はわずか7名ほどの弱小チームだ。彼らにとっては、金星に近い満点のスタートともいえるのではないだろうか。
 ユベントスもフランス王者ボルドーを突き放せず。ジョビンコがジエゴ不在の穴を埋められなかったようだ。ジエゴ、F・メロと大会屈指の中盤を揃えるだけに初戦をこういう形で迎えることになったのは残念かもしれない。

 第1節2日目の今夜は、昨季の王者・バルセロナが覇権を狙うインテルとの対戦を控える。イブラヒモビッチとエトーの互いに古巣を迎えるエースの対峙からしても至極のマッチアップ。今年も我が家のHDDが烈火のごとく獅子奮迅の活躍を見せる時期がやって来たのである。

ターフ・ムーアの熱狂

2009年08月21日 | 脚で語る欧州・海外
 プレミアリーグはこのミッドウィークに2節が行われ、昨季王者のマンチェスター・U(以下=マンU)が今季イングランド・チャンピオンシップから昇格してきたバーンリーに敵地で敗れる波乱が起きた。ビッグ4では、CLを戦ったアーセナルを除いてチェルシーとリバプールが共に順当に勝利。トッテナムとチェルシーが開幕2連勝を果たしている。

 バーンリーの本拠地であるターフ・ムーアが熱狂に湧いた。まるで昨季のハルシティを見ているかのよう。精細を欠く王者を相手に19分、左MFのブレイクがゴールを奪う。GKイェンセンの再三の好守もあり、そのまま逃げ切ったバーンリーが34年ぶりにプレミアでの勝利を挙げた。タイムアップのホイッスルが鳴った瞬間に顔色を変えずバーンリーのコイル監督がマンUベンチに赴く。決して王者への敬意を忘れない様子ながらも、目の前の金星に明らかな手応えを感じている顔を見せていた。

 王者マンUは、明らかに精彩を欠く不出来な内容に終始。簡単なパスミスや前線と中盤の噛み合いの悪さがひたすら目立った試合だった。67.3%のボールポゼッションは1点も奪えない結果に。ファーディナンドとファンデルサルの欠場を抜きにしても、どうも今季はエンジンがまだかかっていないようである。

 対照的にチェルシーはサンダーランドを相手に見事な逆転勝利。アンチェロッティが導入したダイアモンド型の中盤の頂にはデコが鎮座し、決勝ゴールとなる3点目を見事に決めた。開幕戦では、ミケルを中盤の底に起用していたが、この日はエッシェンを配置。バラック、ランパードでデコをサポート。終了間際にはシェフチェンコの出番も回ってくる光景も。イヴァノビッチが出番を掴んで存在感を見せていたり、ドログバと組んだカルーも上々と、特に戦力の入れ替えが無いながらも現有戦力で十分といった戦いぶり。今季指揮官以外に大きな動きがなかったことが最もストロングポイントになっているかもしれない。

 今季初勝利を掴んだバーミンガムもマクファッデンがプレミアの舞台で久々のゴール。ウルヴスことウォルヴァーハンプトンも2戦目で早くも初勝利。ターフ・ムーアの熱狂と共に昇格組がプレミアリーグに新鮮な風を吹かせてくれている。

プレミアリーグ09/10酔夢譚

2009年08月18日 | 脚で語る欧州・海外
 いよいよイングランド・プレミアリーグが先週末に開幕。チェルシーをはじめ今季もビッグ4を中心に来年の5月まで続く熱い38試合の火蓋が切って落とされた。

 アンチェロッティが指揮を執るチェルシーはハルシティと対戦。分厚い彼らの守備に手を焼き、新加入のハントに先手を奪われる展開。しかし、コミュニティシールドを制したチェルシーはドログバのミラクルな2発で逆転勝利。彼が見せた見事な直接FKと終了間際の角度のないループシュートはさすが。昨季から陣容はほぼ変わらずとも、その連携面の向上を武器に今季はリーグ制覇に雲行きも上々の発進を果たした。

 昨季の王者、マンチェスター・Uはプレミア復帰のバーミンガムを相手にやや苦戦。ルーニーのゴールで面目は保ったものの、新加入のGKハートを中心に守りから攻撃までバーミンガムも可能性を見せてくれた。開幕戦は落としたが、これからの戦いぶりに少し期待が持てそう。一方のマンUは、C・ロナウドの移籍が少なからずとも響いている印象。加えてファンデルサルとファーディナンドの負傷離脱で序盤戦は守備面で苦戦するかもしれない。

 開幕から元気な様子だったのが、アーセナル、ストークシティ、そしてウィガン。アーセナルは敵地でエバートンを6-1と一蹴。セスクの2ゴールにエドゥアルドも開幕ゴールを決め、トゥーレ、アデバヨールの退団を感じさせない快勝劇。
 ストークシティは、プレミア初陣のバーンリーに経験値の違いを誇示。2点目のデラップのロングスローから相手のオウンゴールを導くあたりは彼ららしい得点パターン。なんとか今季は中位争いに顔を出したいところだ。
 そのミドルゾーンに食い入りそうなウィガンは、昨季6位のアストンビラを蹴散らした。ロダレガ、クーマスのゴールで相手の守備の拙さを突く上々のスタート。対するアストンビラは、昨季終盤から全く建て直せていない状況に、昨季のような中盤戦までの躍進は今季は難しそう。

 その他、バリー、トゥーレ、アデバヨール、テベスと豪華補強のマンチェスター・Cは開幕戦を快勝スタート(アイルランドのテクニカルな2点目は何ともニクい)。トッテナムにリバプールが苦杯を喫するなど、開幕戦から悲喜こもごもの展開を見せたプレミアリーグ。万年優勝予想を独占するビッグ4の一角にどこが食い込んでくるのか。今季はそのポイントが面白くなってきそうだ。

中村俊輔、戦いの場をスペインへ

2009年06月23日 | 脚で語る欧州・海外
 日本代表の中心プレイヤーで、スコットランドプレミアリーグ・セルティックの中村俊輔が来季からリーガ・エスパニョーラ・エスパニョールへの移籍することが22日に確実になった。

 

 古巣の横浜FMが獲得を断念したことで、今回の移籍が決まった結果となったが、中村俊に関しては、やはりまだ海外の高いレベルでできるならプレーして欲しいというファンの声は多かったはずだ。個人的にもスペインでプレーする中村俊の勇姿は今から非常に楽しみであるし、何らかの結果をスペインでも残してくれると思う。今回セルティックを退団するストラカン監督もかねてから中村俊がスペインで順応できること示唆していたのだから(マーティン・グレイグ著「中村俊輔」スコットランドからの喝采より)。

 エスパニョールはスペインのバルセロナに本拠地を置く。創立は1900年と同じ街のライバル・FCバルセロナには1年及ばないが、スペインでは老舗クラブだ。今季は監督がシーズン中に2度交代し、成績も浮沈の激しいシーズンだった。12試合勝ちが無いと思いきや、終盤には勝利を重ねて残留争いから脱出し、10位でフィニッシュに至った。長年チームの軸になっているデ・ラペーニャ、タムードの両ベテランにはプレミア移籍の噂が囁かれているが、個人的には現有戦力と中村俊の融合は興味深い。来季は確実にリーガのTV観戦がこれまで以上に増えそうな気がする。これまでスペインで成功した日本人選手はいないとも言えるだけに、是非、中村俊にはその才能を新天地でいかんなく見せつけて欲しいものである。

 
 
 この鮮やかなFKをスペインでも存分に披露して欲しい。

 フランス・リーグアンのレンヌに移籍した稲本も同様、日本人のトッププレイヤーが世界の第一線で長くプレーできるのはやはり嬉しい。今から中村俊の活躍が楽しみでしょうがない。