脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

青と赤、クリスマスサバイバル -G大阪 VS 浦和-

2010年12月26日 | 脚で語る天皇杯
 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会は準々決勝を迎え、万博では大会3連覇を狙うG大阪が浦和と対戦。互いに譲らぬ接戦は1-1のまま延長戦へ突入すると、G大阪が宇佐美の決勝点を守り切り延長戦30分を制して、準決勝進出。他会場の結果からG大阪は、29日にエコパで清水と準決勝を対戦することとなった。また、フィンケ監督が退任する浦和はこれでシーズン終戦となった。

 

 気温わずか4度の万博記念競技場。試合前には雪がちらついていた。かつて「ナショナルダービー」とも形容されたこのカードでなければ、もっと観衆はまばらだっただろう。この日駆けつけた入場者数は公式発表で14,815人。スタジアムは毎度のごとく綺麗に青と赤に色が分かれていた。吹きすさぶ風のせいでとてつもなく身に染みる寒さだったが、試合は予想以上にどちらも引けを取らぬ接戦となった。

 
 浦和サポーターにとって今季2度目の万博は雪に。

 G大阪は加地が今季の残り絶望という負傷で、右サイドには安田理が配置され、前線のスタートはルーカスとイ・グノ。浦和も岡本、宇賀神、高橋と若手が積極登用され、個人的にも良く知っている選手たちが軒並みベンチスタート。これがフィンケの浦和かということをこの時期になって改めて実感した。そして、いずれにせよこの試合で退団が公表されているルーカス、ポンテという両チームを長らく支えたブラジル人選手も最後を迎えることになる試合だった。

 G大阪は序盤から橋本が中盤からよくフィニッシュに絡んだ。6分に浦和GK山岸にセーブされるものの際どいシュートを放つと、21分には右サイドからルーカス、武井と繋いで橋本へ渡ってのシュートはサイドネットに。小気味良いいつものパス回しにリズムが出れば、先制点の場面は早くやって来そうだった。
 ところが、浦和もポンテが1人を気を吐いて中盤を牽引。プレーエリアも広い柏木の散らしと宇賀神や高橋のサイド攻撃がバランスよく、気を許せば細貝も機を見てシュートを放ってくる。前線のエジミウソンよりも二列目からの攻撃は浦和の脅威だった。

 
 浦和・エジミウソンをマークするG大阪・高木。
 今季もこの男なんだかんだでリーグ3位の16得点。

 
 G大阪は右サイドバックに安田理を。
 左の下平とのバランスもなかなか良かった。

 34分に安田理が右サイドから狙ったシュートがポストに直撃し、38分には下平からのパスを受けた橋本が振り向きざまにシュートを放つもわずかにゴール右に逸れ、立て続けにG大阪が先制のチャンスをフイにしてしまう。前半終了間際には浦和・エジミウソンのシュートがわずかにサイドネットという場面があったが、結局前半を終わって両者拙攻が募りスコアレスで折り返すこととなった。試合はおそらく1点を争う試合になるという雰囲気だった。

 
 明神は相変わらずの安定感で攻守に存在感。
 浦和の危険なパスをことごとくカット。

 後半に入ると、49分に浦和はMF堀之内が負傷してしまい、急遽鈴木が代役でピッチに。G大阪の右サイドでは安田理と浦和・宇賀神のマッチアップが熾烈化していた。68分には安田理が浦和陣内を突破すると、中央へクロス。これをイ・グノが頭で合わせて先制かと思いきや、オフサイドに沈んだ場面もあった。

 
 宇賀神と安田理のマッチアップは迫力あり。

 
 これが最後の大会となる浦和・ポンテもヒートアップ。
 気合いが入っていた。

 前述のイ・グノのオフサイドの場面の直後、G大阪は宇佐美を投入。前線に入れずに彼を中盤、トップ下の位置に起用する。シーズン通してリーグ戦7得点。しかもホームの浦和戦では得点も挙げている。彼が何かを起こすのではと誰もが考えたタイミングでの登場だった。
 先制点は72分。そのG大阪だった。浦和・山田暢のハンドによってゴール前絶妙な位置で得た直接FKのチャンスを彼が右足で見事に決める。2010年のハイライトとして彼が南アフリカで見せたデンマーク戦のFKがあるが、それを彷彿とさせる華麗なキックに場内は歓声と沈黙に真っ二つに分かれた。

 
 
 
 
 
 
 
 浦和戦にことごとく強い今季の遠藤。
 これで3戦3得点。

 ところが試合はこれで終わらない。浦和も先制された直後にエスクデロ、田中を連続投入。徐々にリズムを取り戻す。81分には再三安田理とバトルを繰り広げていた浦和・宇賀神が田中からのパスを受けた流れからシュート。これが決まって試合は1-1の振り出しに戻ることとなった。

 
 
 
 浦和は宇賀神がエリア手前から強引にシュートをねじ込む。
 圧巻のシュートセンス。

 
 田中の途中投入から浦和も持ち直した。
 全盛期の頃には及ばないが、ドリブル突破は彼の魅力。

 1-1となった試合は15分ハーフの延長戦へ。98分に佐々木という切り札を入れて運動量の落ちてきた浦和に揺さぶりをかけるG大阪。延長前半終了間際の103分に下平のロングパスを受けたルーカスが落ち着いてパスを出すと、走り込んだ宇佐美が相手DFに囲まれながらもシュートを決める。またしてもこの場面で勝負強さを発揮した18歳。試合はこれが決勝点となった。

 
 
 下平からのパスを受けたルーカスが焦らずに・・・
 
 
 
 
 
 
 宇佐美へパスを送ると、これを宇佐美が決めた。
 
 
 そして、後は守りきるのみ。
 エアバトルを中澤中心で乗り切る。

 
 ラストプレーのCKには浦和GK山岸も攻撃参加。
 このプレーの直後に120分間終了を告げるホイッスルが。

 
 浦和に競り勝ったG大阪。3連覇まであと2勝。
 29日にはエコパで清水と対戦。

 
 2年間浦和を率いたフィンケ監督。
 この敗戦でチーム最後の指揮となった。

 
 同じくレバークーゼン移籍のため細貝もこれで退団。
 勝ってチームを離れることはできず。

 
 
 両チームを退団することが決まっている2人のブラジル人選手。
 ポンテ(上)はこれが浦和で最後のプレーに。
 ルーカス(下)は元旦までG大阪でプレーできるか。
 

和歌山、関西リーグへ王手 -FC大阪 VS アルテリーヴォ和歌山-

2010年12月24日 | 脚で語るその他国内
 来季の関西リーグ昇格を懸け、関西2府4県の社会人リーグ代表2チームが戦う関西府県リーグ決勝大会。神戸ユニバー記念競技場では大阪府1部リーグ優勝チームのFC大阪と和歌山県1部リーグのアルテリーヴォ和歌山が準決勝で対戦。試合は和歌山が先行しながら優勢に試合を進めるものの、終了間際にFC大阪が追いつき、試合はPK戦に突入。このPK戦を4-1で制した和歌山が年明けの決勝戦に進出決定。関西リーグ昇格に王手をかけた。和歌山は1月15日(土)にこの日第1試合でヤンマー尼崎(兵庫)に2-0で勝利したOKFC(大阪)と自動昇格をかけて戦う。

 

 Aブロックを突破したFC大阪とDブロックを突破した和歌山。FC大阪はJST(奈良)と神戸FCシニアB(兵庫)に続けて3-2と辛勝でここまで漕ぎ着けた。また、和歌山もチーム立ち上げから足掛け5年目でいよいよこの府県決勝大会に挑戦。ブロックリーグ初戦は、ポルベニルカシハラ(奈良)とPK戦にもつれ込みながらこれを4-2で退けると、京都伏見蹴球会(京都)も4-2と撃破して準決勝へ辿り着いた。共に全社では関西予選にも名を連ねるJリーグ志向の本命2チームの潰し合い。試合開始からペースを握ったのは和歌山だった。
 和歌山は右サイドから重松のチャンスメイクから決定機を作る。18分に彼のクロスから西山がヘディングシュートを放つがわずかに左に逸れる。24分にはその重松自身が相手GKが飛び出しているのを見計らってシュートを放つもののわずかに決められない。26分にも芝崎がGKと1対1の場面を作りながらも決められない。早い時間帯に先制点を奪えるチャンスがありながら和歌山はなかなか試合を動かせなかった。

 
 FC大阪FW辻村が厳しいマークに遭う。
 和歌山はしっかりFC大阪を研究していた様子。

 対するFC大阪も今季は全社に出場した経歴を持つ。しかも、昨年はこの準決勝で海南FC(和歌山)にPK戦の末に敗れているのだ。これ以上大阪府リーグでプレーはできないという意気込みでこの大会に臨んでいるはずだった。11分にはエースの高橋が和歌山のエリア内でゴールに迫るがあと一歩で相手DFに潰される。その後も和歌山のボールを奪っては機を見たロングボールの配給と中盤での池松、岡本、金といった選手の展開力で和歌山陣内まで迫る。しかし、26分に辻村のシュートが和歌山GK金丸のファインセーブに遭ったのが象徴的だったが、まずはGK金丸を中心とした和歌山の集中力溢れる守備の前に沈黙を余儀なくされた。

 
 
 
 FC大阪は高橋がゴール前まで攻め込むがゴールならず。
 和歌山は集中した守備を披露。

 先制点は34分、和歌山が先取した。FC大阪陣内ペナルティエリアの左サイドで得たFKを鈴木が蹴ると、中央で船津が頭で合わせてゴールに沈める。おそらく、最もプレッシャーのかかった一戦で得た先制点。一気に選手たちの喜びが爆発した。

 
 
 
 
 和歌山の先制点の場面。
 鈴木の左からのFKを船津が気迫のヘッドで押し込む。

 前半のこの1点を守って和歌山リードで試合は後半へ折り返す。

 
 FC大阪FW塚田を和歌山DF角南が捕らえる。

 
 MF金を中心にパスをつなげていこうとするFC大阪だったが。

 後半に入ると、守りに入ることなく和歌山が仕掛けてくる。47分に泉川が左サイドの角度の無いところから狙ったシュートが右ポストに直撃し、あわやゴールかという場面。チームの雰囲気を盛り上げる積極的なトライだった。両チーム共に負けられない試合。積極的にこの辺りから選手を替えてくる。和歌山は早い時間帯に追加点を取っておきたい。そしてFC大阪は早く追いつきたい。一進一退の攻防が続く試合は66分に動く。
 FC大阪の右サイドで攻撃を牽引するDF下田が相手へのファウルで退場処分となる。1点ビハインドで思わぬロス。しかし、和歌山にとっては願ってもない数的優位を作り出せるチャンスとなった。69分には早速、和歌山MF芝崎が相手GKとの1対1のチャンスを迎える。しかし、ここは決められない。72分には先制点を決めた船津が不意を突くループシュートを放つが決まらない。和歌山の追加点が生まれる展開へ一気に試合の流れは傾いたかと思えた。

 フルタイム80分の試合、残り時間が刻一刻と迫る。74分には負傷中にも関わらずFW上赤坂が投入される和歌山。そして、その直後にFC大阪も監督を務める森岡自身がピッチへ。互いにチーム一の経験値をこの場面に費やす形振り構わぬ姿勢が冷気の吹き込むスタジアムに緊迫感をもたらす。

 
 森岡がゴール前に迫る。
 監督自身がピッチで勝負しにいった。

 アディショナルタイムは4分と出ていた。しかし、そのアディショナルタイム突入直後にFC大阪がCKを得ると、これにDF山本悟が頭で合わせて決める。劇的な同点弾で試合は44分ぶりに振り出しへ。

 
 
 
 DF山本悟が打点の高いヘッドで相手DFをかわして同点弾。
 
 80分が終わり、試合はPK戦へと突入。和歌山の先攻で始まったPK戦は和歌山が鈴木、田丸、阿部と3人連続で決めたのに対して、1本目を高橋が外し、また2本目の國田のキックを和歌山GK金丸がナイスセーブに阻まれたFC大阪。3本目は金が決めてストレート負けこそは逃れたが、和歌山は4人目の上赤坂がきっちり決めてPK戦を4-1と勝利。見事に来年1月に行われる関西リーグ自動昇格を懸けて行われる決勝戦への切符を掴んだ。
 対するFC大阪は悔恨の2年連続準決勝PK戦負け。しかも皮肉にも相手は同じ和歌山勢となってしまった。

 
 全ての明暗を懸けるPK戦へ。

 
 和歌山、FC大阪2本目の國田のキックを金丸がセーブ。

 
 
 和歌山はチームの象徴的存在・上赤坂が決めて決着をつけた。

 
 
 和歌山県リーグの戦いからの脱出が見えてきた。
 アルテリーヴォ和歌山、関西リーグまであと1勝。

トーナメント巧者の本領発揮

2010年12月18日 | 脚で語るガンバ大阪
 国内のサッカーシーンもトップカテゴリーではいよいよ天皇杯を残すのみ。天皇杯は前回、前々回と連覇中のG大阪。25日に行われる今大会の準々決勝・浦和戦(@万博)を1週間後に控えて大学勢と練習試合を敢行。来週末へ向けて仕上がりを確認した。

 
 トップチームは桃山学院大と練習試合(45分×2本)を。
 関西学生リーグ4位の相手に6-2と勝利。

 
 ほぼ定位置を掴みつつある武井。
 明神とのコンビが板に付いてきた。

 
 今季は「点取り屋」として出色の出来だった橋本。
 元旦へ向けてその大仕事をこなせるか。

 
 今季は遂にリーグ戦出場400試合の大台に。
 自己ベスト2位となるシーズン4得点の明神。

 
 中澤もリーグ通算100試合出場を達成。
 この日も高木との連携を確認。

 
 今季限りでG大阪を去り、帰国する予定のルーカス。
 落ち着いたプレーで2得点の活躍。

 
 前人未到のベストイレブン8回連続の選出。
 W杯でも大活躍の遠藤、元旦の国立で今季を締め括れるか。

 
 徐々に調子を上げてきたイ・グノもこの日2得点。
 来季は間違いなく前線の核となれるか。

 
 高木も後半戦から定位置をキープ。
 中澤とのコンビに磨きをかける。

 
 桃山学院大戦では右サイドに入った安田理。
 果たして加地の代役は安田理が務めるのだろうか。

 
 トップチームの後半から出場の宇佐美。
 サテライトのびわこ大戦では圧巻の飛び出しで1得点。

 
 今季はJ1で初ゴールを記録したドド。
 層の厚い攻撃陣で来季以降も出番を掴めるだろうか。

 
 サテライト組の先発に名を連ねた二川。
 彼と山口がトップ組でないことに時の流れを感じる。

 この2年間、天皇杯において無類の勝負強さを発揮するG大阪。その1発勝負での強さは今季も健在か。浦和を万博に迎えるクリスマスの大一番が楽しみだ。

五色の死闘、JFLの壁は高し -三洋洲本 VS 高崎-

2010年12月12日 | 脚で語るJFL
 全国地域リーグ決勝大会が終わり、3位になった関西リーグ王者の三洋電機洲本が、いよいよJFLの入替戦に挑戦。淡路島は南あわじ市のアスパ五色にてJFL17位のアルテ高崎を迎えて第1戦を戦った。地元の大声援を受けて、JFLへあと一歩の三洋洲本が奮闘したが、試合は0-3で高崎の勝利に終わり、非常に苦しい状況で19日の第2戦(@浜川)を迎えることとなった。

 
 この2試合に勝てばJFLへ昇格できる三洋洲本。
 とにかくホームでは勝利して敵地へ挑みたい。

 
 はるばる淡路島まで乗り込んだアルテ高崎。
 JFL残留のためにここは負けられない。

 サッカー専用スタジアムながら、非常にアクセスの困難で名高いアスパ五色。関西ではよく関西リーグや近隣クラブの合宿などで知られているが、この日は地元の皆さんが三洋洲本の応援に駆けつけ、なんとも異様な盛況ぶりであった。アスパ五色にこれだけ人が集まる機会はそうないだろう。もちろん、高崎も数人のサポーターがバックスタンド側に横断幕でチームカラーを演出し、選手を後押しする。高崎も今季JFL17位とはいえ、かつてはこの入替戦(2003年・対FC京都BAMB1993)を制して2004年のJFLへ昇格を果たしたチーム。この入替戦の重要性と難しさは分かっていることだろう。その雰囲気は盛況ながらもどこか緊張感がみなぎっていた。

 地域決勝からほぼ不動の布陣を敷く三洋洲本。市原での3連戦を終えてまだ1週間が経っていない。JFLの全日程を11月中に終えた高崎の方がこの戦いに向けての余裕はあっただろう。ただ、ここまでの移動の行程を含め、高崎に疲労がどれほどあるのかが気になっていた。試合開始から序盤は三洋洲本が試合のリズムを掴む。地元の応援を背にボールを回していった。

 
 最後尾でチームを支えるGK浅野。
 今季の総決算をまずは地元で見せたいところ。

 
 森川がボールを持ち込む。
 積極的に高崎陣内へ攻め込む三洋洲本。

 13分、稲垣が右からシュートを放って三洋洲本が先に試合を動かしていく。22分には友定が果敢にミドルシュートを放っていくが、まだゴールを狙える決定的な場面は作れない。高崎も前線の松尾、山藤といった選手たちがスピードを活かしてスペースを狙っていく。これをCBの太田を中心に粘り強く守っていく三洋洲本。この試合では特に守備的MFの村上がコンディションに冴えを見せ、自陣エリア付近でも相手からボールを奪う守備を見せていた。あとはエースの梅川やスピードのある廣瀬といったFW陣にいかにボールが良い形で入るか。三洋洲本は彼らFW陣が高崎DFのマークに苦しんでいた。

 
 攻撃時の展開に、守備にと奔走する村上。
 彼自身の動きは非常に良かったのだが・・・

 
 高崎は高い位置で川里の動きが目立つ。
 次第にペースは彼らのサッカーへ。

 
 高崎・吉田をマークする三洋洲本・友定。

 例え2試合あろうと、勝負のかかった試合。高崎は落ち着いていた。最終ラインからしっかりパスを繋ぎ、主将の岩間を中心に自分たちのペースで攻撃を組み立てる。徐々にCKからチャンスを得られるようになってくる。先制点はまさにその流れの中から生まれた。
 38分、神谷の左CKから一旦流れたボールを拾った松尾がDFを背負いながら、シュートと見せかけて小島へパス。ここに走り込んだ川里がシュートを決めて高崎が先制点を奪うことに成功する。

 
 
 
 
 高崎・川里の先制点の場面。
 1点を争う試合かと思われただけにこの1点は大きかった。

 前半、最低でもスコアレスで折り返したかった三洋洲本だが、少し先制点を献上して守備陣が集中を欠いた。44分にはボールを持った高崎・岩間がスルスルを上がっていき、狙い澄ましたシュート。決して威力は無かったが、確実にゴールへ収まった。高崎が追加点を奪って前半を2点リードで折り返す展開となった。

 
 
 プレッシャーを跳ね除ける2点目を岩間が決める。
 高崎にとって理想の展開で前半を終了。

 
 太田を中心に安定していたかに見えた三洋洲本の守備。
 前半、痛恨の2失点。

 しかし、前半2点のリードはまだどうなるか分からない。三洋洲本が地域決勝で収めた2試合の90分勝利はどれも逆転勝利。しかも、藤枝での1次ラウンドでは0-2から5-2と転じる大逆転劇を見せている。三洋洲本へ声援を送る観衆は皆諦めていなかっただろう。後半開始から廣瀬に代えて沈を投入し、流れを変えようとする。

 52分、高崎が大きなチャンスを迎える。CKからの展開、松尾のボレーシュートがわずかにGK浅野のセーブに遭う。しかし、この際に相手DFと交錯したプレーがファウルを取られ、2枚目の警告でまさかの退場処分。少し厳しい判定ながら、ツキは三洋洲本に傾いたかに見えた。

 
 村上とのセントラルコンビでリズムを作りたい成瀬。
 なかなか高崎の守備網を突破できない。

 60分には右CKからDF森田が豪快なジャンピングボレーを狙うなど、まずは1点を返すべく相手ゴールに迫りたい三洋洲本。ところが、完全に梅川が相手守備陣のマークに苦しみ、それを周囲の選手でもフォローしきれない。62分にMF井上をピッチへ送り込んでポゼッションを高めようとするが、相手ボールになると、良い形でボールを奪える場面が次第に減っていった。

 
 60分、森田がボレーで高崎ゴールに迫るも無得点。

 
 試合は後半高崎のペース。
 少し動きが硬かったか三洋洲本。

 高崎は64分、左サイドでボールを持った吉田が1人で持ち込んでチームの3点目となるシュートを決める。ほぼ、1戦目の勝負を決定づける3点目。アスパ五色にため息が漏れる。

 
 
 GKの飛び出しにも焦らず、3点目を決めた高崎・吉田。

 82分には、カウンターから途中交代の益子のパスを受けた吉田が再びゴールを狙うと、このシュートがクロスバーを直撃。あわや4点目を奪われるという場面を作られ、ほぼ運動量を失っていた三洋洲本相手に高崎が完勝して第1試合を終えることとなった。

 
 梅川は常時相手DFに囲まれる場面が多かった。
 第2戦、この厳しいマークをいかにかいくぐれるか。

 
 
 高崎の落ち着いた守備の前に沈黙してしまった三洋洲本。
 GKの岩舘を含め、JFL勢が一枚上手か・・・

 
 完勝してホーム・浜川への第2戦に繋げたアルテ高崎。
 遠距離移動の疲れをものともしない試合ぶり。

 
 680人の観衆が集まったとされるアスパ五色。
 勝てなかったが、三洋洲本への声援は大きなものだった。

 やはり、JFLの壁は高いのか。そう思わせてくれるスコアと内容で終わった試合だった。高崎はプレッシャーを跳ね除け、強かった。三洋洲本はもっとやれたと思うのだが、JFL公式サイトにある稲葉監督のコメントのように、どこか見えない緊張があったのだろう。厳しいマークも相まって、前線のパフォーマンス不足が顕著だった。第2戦に向けてしっかり切り替えて臨んで欲しい。日頃の関西リーグでは滅多に見られないが、アスパ五色をこれほどの雰囲気にした多くのサポーターの声援が彼らを叱咤、鼓舞した。たくさんの子供たちも駆けつけていた。関西から、淡路島から、全国リーグで戦うチーム誕生まで、この3点差をひっくり返す奇跡を来週末、関西の地より期待している。
 

三洋洲本、入替戦へ -三洋洲本 VS 讃岐-

2010年12月07日 | 脚で語る地域リーグ
 決勝ラウンド3日目の第2試合は、1日目にY.S.C.C.に勝利して勝点3ポイントを掴んでいる三洋電機洲本と、長野、Y.S.C.C.を撃破して勝点では5ポイントのカマタマーレ讃岐との対戦。1点を争う熾烈な展開となった試合は、後半にDF神崎のヘッドで1点をもぎ取った讃岐が1-0で勝利。見事にJFL昇格を決定させた。敗れた三洋洲本は自動昇格ならず。今季JFL17位のアルテ高崎との入替戦に回ることとなった。

 
 四国3番目のJクラブを目指して讃岐が最後の一戦に。
 サポーターもバックスタンドから声援を送る。

 本命・讃岐にどこまで立ち向かえるか。会場に訪れたほとんど観衆が三洋洲本の健闘に注目していたに違いない。1次ラウンドでは強豪と目されていたsizuoka.藤枝MYFCに0-2から5-2へと逆転勝利。決勝ラウンドに進んでからも初戦のY.S.C.C.戦で90分勝利を収めてしっかりと3ポイントを獲得している。2日目には長野に大敗を喫したが、この試合で90分勝利すれば、三洋洲本のJFL自動昇格が決まるのだ。その謎めいた調子の波は読めないところもあり、「もしかしたら彼らが」という部分はあったかもしれない。実際、試合はその三洋洲本が積極的に攻撃を仕掛けていった。

 前半から三洋洲本は飛ばしていった。4分にこの決勝ラウンドではいつも途中出場だったMF沈がシュートを放ってリズムを作る。23分にはCKからのこぼれ球をDF友定が豪快にミドルシュート。試合開始からほとんど前に出られなかった前日の長野戦とは打って変わって積極的。39分には森田のクロスに梅川が打点の高いヘッドで讃岐ゴール脅かすなど、あと少しという場面を幾度も作る。

 
 決勝ラウンドでは初先発となったMF沈。
 三洋洲本の攻撃をサイドから支えた。

 
 三洋洲本はエース梅川に良い形でボールが入る。
 関西リーグ得点王の意地を見せたい。

 
 中盤でゲームを作るのはMF村上。

 しかし、堅守が売りの讃岐を崩すのは至難。それどころか徐々に讃岐がペースを盛り返す。35分にゴール前まで攻め入ったDF相原の横パスにMF飯塚がシュートを狙えば、40分には攻撃的サイドバック下松の折り返しに大西がボレーシュートを放つなど、技術の高さと連携で三洋洲本ゴールに迫った。また、前日のY.S.C.C.戦がそうであったように、流れの中で崩せなくてもセットプレーで点を奪えるのが讃岐の特徴。前半からFKで下松がその巧みなキックでチャンスを作っていく。

 
 CKからチャンスを作る讃岐MF綱田。
 崩せずともセットプレーが讃岐にはある。

 
 守ってはDF太田を中心に讃岐を止める。

 
 下松のFKは讃岐の大きな武器。
 再三、これでゴールを脅かされる三洋洲本。

 梅川の奮起もあったが、積極的な攻撃が実らず、無得点で折り返した三洋洲本。44分には廣瀬のシュートがクロスバーを直撃しており、得点チャンスは存分にあった。できれば前半のうちに先制点を取っておきたかったところだが、ここであと一歩運が寄って来ないもどかしさ。しかしながら、メインスタンドを中心に讃岐サポーターに負けない応援エールが彼らには送られる。

 
 
 讃岐の守備の前にゴールをこじ開けられない。
 残すところは45分。

 後半に入っても序盤は、50分に成瀬のパスを受けた梅川のシュートがサイドネットを強襲するなど、三洋洲本が攻め入るかと思われた。しかし、ここから讃岐が反撃を開始。56分に飯塚の強烈なシュートがバーを直撃し、直後のCKから長身DF波夛野が得意のヘッドでゴールに迫る。瞬時に劣勢を強いられる三洋洲本。すると、遂に讃岐が58分、ペナルティエリア前左手からのFKをDF神崎が頭で合わせて先制点を奪取した。

 
 
 
 先制点を奪ったのは讃岐・DF神崎。
 かつて三洋洲本と同じ関西リーグで戦っていた選手。

 先制された三洋洲本は、直後に沈、廣瀬に代えて、稲垣、徳井を投入。76分にはボールキープに長けた井上を入れてリフレッシュさせるが、最後まで讃岐のゴールは割れない。讃岐もこの1点を何としてでも守り抜くといった気合いに溢れたプレー。アディショナルタイムを迎えたあたりで三洋洲本・GK浅野がCKになったボールを自分でコーナーポストに置きに走った場面は印象的だった。まさに1分1秒が惜しい状況。しかし、最後まで三洋洲本はゴールを割れなかった。

 
 三洋洲本・梅川の突破を神崎と下松が阻む。
 この2人はかつて加古川で共にプレー。

 
 GK家木も再三ハイボールに強さを見せた。

 
 神崎にとっては、加古川時代に何度も挑戦した舞台。
 夢破れたと思ったJFLの舞台まであと少し。

 
 激しさを増す試合は佳境に。

 
 常に相手には厄介な存在。
 無得点だったものの、吉澤は存在感があった。

 
 主将としてチームを支えた下松。
 J経験者ではないが、その経験は大きい。

 結果、1-0という最小得点差で讃岐が逃げ切って、この大会の優勝と共に来季のJFL昇格を決めた。これで讃岐は、四国リーグだけでなく、全社、地域決勝と三冠を達成。名実共に地域リーグカテゴリーを制覇してアマ最高峰のJFLでJリーグ参入を目指す。おそらく、すぐにでもJリーグ準加盟の段取りが進められるのではないだろうか。果たしてその「堅守」はどこまでJFLで通用するのか今から非常に楽しみ。また、ユーモラス溢れる広報のツイッターもこの大会では好評で、今後もチームの取り組みに何かと話題は尽きなさそうだ。
 一方で、入替戦へ回ることとなった三洋洲本。非常に悔しい敗戦となったが、初戦のポイントで掴んだ入替戦は決死の覚悟で臨みたい。相手はJFL17位のアルテ高崎。厳しい戦いになると思うが、チャンスはあるはず。この大会での戦い方が引き続きできれば、必ず昇格の切符を掴めるはずだ。是非、関西リーグの代表として、王者として、立ち向かって欲しい。
 注目の入替戦は、第1戦が12月11日(土)の13:00からアスパ五色で、そして第2戦が12月19日(日)13:00から高崎市浜川競技場で行われる予定。

 
 
 試合終了の瞬間。
 讃岐の選手は万感の思いで笛を聞く。

 
 入替戦は今週末。
 切り替えて、是非ともJFLへの切符を!

 
 カマタマーレ讃岐、JFL昇格おめでとう!

 
 
 

Y.S.C.C.の終着、そしてスタート -Y.S.C.C. VS 長野-

2010年12月06日 | 脚で語る地域リーグ
 市原で行われた第34回全国地域リーグ決勝大会は、いよいよ3日目の最終日を迎え、第1試合ではJFL昇格に王手をかけているAC長野パルセイロがY.S.C.C.と対戦。両者の意地と意地がぶつかった好ゲームは0-0で90分では決着がつかず、PK戦へと突入。その時点で長野が自動昇格の条件を満たす2位以内を決定させ、JFL昇格を決めたが、試合はY.S.C.C.がPK戦に3-1で勝利した。

 
 
 遂に迎えた最終日。
 長野から、そして横浜からサポーターが数多く駆けつけた。

 
 ここまで2連敗のY.S.C.C.
 関東王者の誇りを胸に、1勝を目指して望みをかける。

 
 90分を凌ぎきれば、悲願のJFL昇格。
 サポーターの思いを一身に背負って試合へ。

 前日の三洋洲本戦では、圧巻の攻撃力を見せて前半で試合を決めてしまった長野。しかし、この試合では違った。後がないY.S.C.C.は、最終ラインに主将・鈴木が、そして1次ラウンドの山口戦以来となる福井の戦列復帰。また、鈴鹿、須原、小澤、平間など前日の讃岐戦に出場していないメンバーが名を揃え、試合開始から長野を追い込む戦いを見せる。試合開始3分には小澤がゴール前に果敢に飛び出し、また7分には負傷のエース辻に代わって先発に名を連ねた青田が渾身のヘッドで長野ゴールを脅かす。長野が前がかりになっていなかったこともあったが、それを差し引いても完全にY.S.C.C.が試合のペースを握っているといって良かった。

 
 負傷のためか戦列を離れていた鈴木。
 決勝ラウンド初出場で気迫の守備を披露。

 
 長野DF籾谷と競り合うY.S.C.C.FW福井。
 1次ラウンドでは1得点。辻の穴を埋めたい。

 Y.S.C.C.は前日の讃岐戦で1次ラウンドからここまで4得点の絶対的なエース辻が負傷交代。この試合ではメンバー外になっており、攻撃面で懸念された。しかし、それが杞憂だったかのように中村、須原、小澤の3人が中盤でボールを動かしてゲームメイク。彼らからボールを受けた青田は前半だけで6本のシュートを打つ機会に恵まれた。
 一方の長野もこの大会屈指の攻撃陣、宇野沢と藤田の2トップは依然脅威だった。彼らをマークしていても2列目から佐藤、栗原、大橋といったドリブラーがチャンスを突いてくる。10分にはDFのクリアミスを佐藤が、そして12分には麻生がFKでゴールを脅かす。90分間で負けなければ自動昇格が決まる長野。1点を奪えばかなり試合は楽になったところだろう。

 
 ボールキープに優れる選手の多い長野。
 MF栗原もその一人。

 
 前半から猛烈にシュートを打ちまくった青田。
 籾谷という壁が立ちはだかる。

 20分、Y.S.C.C.はチャンスを掴んだ。ゴール前左手からFKのチャンス。これを蹴るのは、ここまでチームを引っ張ってきた中村。彼が蹴り放ったボールはクロスバーを直撃し、わずかにゴールは割れなかった。だが、どこかワンチャンスがあるならY.S.C.C.という前半だった。前半のアディショナルタイムには、青田のシュートがわずかに右に逸れていく。「あとは決めるだけ」といった形が続いたY.S.C.C.とそれを粘って守り続けた長野。試合はスコアレスで折り返す。

 
 選手層の厚いY.S.C.C.。
 須原は体を張って攻守の軸になっていた。

 後半に入ると、前半の40分にベンチスタートだった土橋が途中出場していたこともあって長野の攻撃が牙を剥いた。53分に長野FW藤田の強烈なシュート。あわやゴールかと思われたこのシュートをY.S.C.C.のDF松田が頭でブロック。これまでFW(登録もFW)で試合に出場していた男の渾身のクリアに会場は沸き立つ。不思議なことにまるでボールが吸い寄せられるかのように長野のチャンスはこの松田のクリアに遭って幾度も阻まれる。

 
 後半に入って攻勢に出た長野。
 宇野沢、藤田を中心にY.S.C.C.ゴールに迫る。

 
 長野MF佐藤が囲まれる。
 彼のアーリークロスは大きな武器。

 1点を奪いたいY.S.C.C.、逃げ切りたい、そのためにも1点あれば安心できる長野。両者の逸るその思いが試合のトランジションを促す。76分には長野FW宇野沢のシュートをY.S.C.C.GK浜村がファインセーブ。試合終了間際のCKのチャンスにはその浜村もゴール前まで上がって得点を狙った。しかし、最後まで先取点を奪えなかったY.S.C.C.。90分の終わりを告げるホイッスルが鳴ったその瞬間、彼らのJFL昇格への道は断たれた。そして、同時に長野のJFL昇格が決まる。PK戦を控えていたこともあり、勝敗の決していない状況での昇格決定。それは何とも静寂に包まれた昇格の瞬間だった。

 
 長野はベテラン要田を投入して、とどめを狙う。

 
 終盤のGK浜村の気迫あるプレー。
 Y.S.C.C.を応援する子供たちに伝わったに違いない。

 
 90+2分、長野はPK戦に備えてGK海野を投入。
 もちろん、昇格を決めても負ける気はない。

 
 
 後半終了の笛が鳴ったと同時にコーチと握手する薩川監督。
 チームの悲願を成し遂げ、安堵の表情。

 
 ところがPK戦では長野が1-3と敗戦。
 何とも、微妙な終戦となってしまった。

 
 試合には勝ったが、昨年同様それは終戦と同じく。
 しかし、この6試合で最もファイト溢れる試合だった。

 
 
 サポーターと歓喜を分つ長野の選手・スタッフら。
 薩川監督が宙に舞う。
 松本山雅にこれで追いついた。
 本当におめでとう。

 讃岐と並んで大本命の長野はやはり強かった。1日目の讃岐との試合では惜しくもPKで敗戦となったが、前日の三洋洲本でその攻撃力をいかんなく発揮。決勝ラウンドでの展開を楽にした。先日、同じ長野県内でライバルでもある松本山雅がJFL1年目の戦いを終えたばかり。来季からは同じリーグで次なる目標、Jリーグ参入を狙うこととなる。
 そして、ひたちなかの1次ラウンドからその戦いを見届けることになったY.S.C.C.。S.C.相模原がレノファ山口に負けたこともあって、1次ラウンドの1位突破をモノにした。最後までメンバーを入れ替えながら臨んだ6試合だったが、最後までそこまでサッカーの質は落ちてなかったと思う。この長野戦も例に漏れず、休養が中1日以上の選手を多数使い、選手層の厚さを改めて見せつけた。例えほとんどJリーグ経験者がおらず、Jリーグ志向ではないチームでも、ここまで戦えるということを示した。スタンドにたくさん駆けつけた、子供たちを中心としたサポーターの姿は本当に印象的だった。この地域決勝の6試合は、その彼らからも賛辞を送られるに相応しい戦いだっただろう。そして、この笑顔なきPK戦勝利で迎えたY.S.C.C.の終戦は、次のスタートでもあるのだ。来季以降、JFL昇格の最有力候補であるのは間違いない。
 

関西王者、苦難の90分 -三洋洲本 VS 長野-

2010年12月05日 | 脚で語る地域リーグ
 市原で行われている決勝ラウンド2日目の第2試合は、1日目に見事な勝利で順調な滑り出しを見せた三洋電機洲本が、北信越王者のAC長野パルセイロと対戦。しかし、念願のJFL昇格へ向けてなり振り構わず攻め込んだ長野の前に0-4と悔しい完敗。これで勝点で長野が4ポイントと三洋洲本を抜いて自動昇格へ弾みをつけた。一方の三洋洲本はまだ入替戦以上の望みは十分にあり、3日目に自力で結果を掴みたい。

 

 この日も大勢の長野サポーターがバックスタンドに詰めかけ、悲願のJFL昇格への軌跡を見届けようと、試合前から大声援を送る。対照的に、三洋洲本側のバックスタンドにはサポーターらしい人影は見えず、少しの横断幕と幟が設置されたのみ。しかしながら、メインスタンドには赤いチームTシャツに身を包み、「頑張れー」と声を送り続けるフォロワーの方々の姿があった。Jを目指すクラブではないにしろ、1日目に見事な勝利で決勝ラウンドでの戦いに弾みをつけた三洋洲本、この大会の主役になる可能性はある。関西リーグを代表してなんとか自動昇格を果たして欲しいところだ。

 
 この日も長野サポーターは試合前に大円陣で気合い注入。

 
 選手入場の際に長野の選手たちは手を繋いで入場する。

 ところが、試合では「これが現実」といわんばかりに長野が序盤から怒濤の攻撃。3分に宇野沢がシュートを決めて早々に先制すると、8分にはその宇野沢のパスを受けた藤田が追加点となるシュートを決めて一気に試合を2-0とした。

 
 
 
 
 あっという間に長野が先制。
 宇野沢はこの試合2得点1アシスト。

 
 
 
 
 8分にも守備を引き裂かれて失点を喫した三洋洲本。
 藤田が冷静に決めて、長野が追加点。

 圧巻だった長野の勢い。それもそのはず、1日目のPK敗戦で失った勝点を奪い返すには90分勝利以外考えられないというところだろう。そして、彼らに立ち向かう三洋洲本も1次ラウンドでは藤枝MYFCを相手に0-2という状況から5-2まで試合をひっくり返した過去がある。まだ試合の行方は分からないと考えたかった。10分には三洋洲本・村上のシュートを長野GK諏訪がかろうじてセーブ。まずは1点を追いかけたいところ。しかし、徐々に長野の力にねじ伏せられていく関西王者。実力の差を見せつけられる。

 
 籾谷を中心に固い長野の守備陣。
 三洋洲本はボックス内で形が作れない。

 26分には再び藤田が折り返しをダイビングヘッドで決めて長野が3点目を奪取。一層厳しい戦いを三洋洲本は強いられる。

 
 
 
 
 藤田のダイビングヘッドが決まって長野が3-0に。
 GK浅野、あと少し、という悔しさからか立ち上がれない。

 宇野沢、藤田の2トップはまさに脅威だった。29分には佐藤のクロスに宇野沢がヘディングシュート。これはわずかに決まらない。31分には左サイドからここまで2得点の藤田が強引にドリブルで持ち込んでシュートするなど、三洋洲本はこの2人を捕まえるだけでも大変だった。

 
 1日目にようやくゴールの生まれた梅川。
 彼を起爆剤に三洋洲本もビハインドを縮めたいところだったが。

 前半終了間際の43分には再び宇野沢が決めて、長野がリードを4点に広げた。前半を終えて0-4というスコア。これを覆すのは至難だが、まずは1点を取り返したい三洋洲本。後半開始から廣瀬に代えて沈をピッチに送り込む。

 
 中盤のスペースを使うのが上手い長野・大橋。
 かつてNECトーキンで長野と対戦したことも。

 後半も長野のペースは変わらず。藤田が元気にゴールを狙う。一体彼だけで何本シュートを放っただろう。55分にはエリア左からシュートを狙えば、57分には決定的なシュートを放つが、三洋洲本GK浅野がこれ以上取らせてなるものかとファインセーブ。最後尾で守護神が体を張ってシュートの嵐を耐え抜く中で一矢報いたい三洋洲本だった。

 
 長野・野澤は惜しいシュートを放つなど攻撃面で存在感あり。

 
 長野の勢いに押される一方の三洋洲本。
 関西王者がこの展開、チーム力の差を感じる。

 結局、試合は4-0で長野が勝利し、JFL昇格へ大きく前進。3日目のY.S.C.C.戦で90分勝利を果たせば自動昇格可能となった。一方の三洋洲本はまだ望みはある。明日、長野がY.S.C.C.に勝利すれば、自分たちの結果を問わず入替戦に回ることはできる。また長野が敗れて、自力で90分勝利を得れば自動昇格も見えてくる。まだまだ分からない。最終日、自動昇格を掴むのはどのチームになるのか。また、入替戦へ回るのはどのチームか。かなりの観客で賑わいそうな最終日の市原臨海競技場。どんな試合が繰り広げられるか楽しみだ。

 
 悲願のJFL昇格へ大きく前進。
 大勢のサポーターと共に3試合を乗り切る長野、その結末はいかに。

 
 完敗したが、まだ望みは十分ある三洋洲本。
 切り替えて最終日の試合に期待。


 

讃岐が昇格へ大きく前進 -Y.S.C.C. VS 讃岐-

2010年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会は決勝ラウンド2日目を迎え、前日PK戦の末にAC長野パルセイロを下したカマタマーレ讃岐がY.S.C.C.と対戦。試合は先行される展開ながらも3-2と讃岐が逆転勝利を果たし、JFL昇格へ大きく前進。これで入替戦以上の成績を手中にした。一方のY.S.C.C.は先手を取りながらも2連敗。苦しい状況となった。

 

 土曜日ともあって先日を遥かに上回る大応援団が市原に駆けつけたY.S.C.C.。ひたちなかでの1次ラウンド山口戦以来、中盤に土屋、石川、小笹が顔を揃え、攻撃陣に関しては負傷離脱の福井を除いて、ベストではないかという布陣。一方の讃岐はDFラインに前日警告を受けた神崎が出場停止という事態で代わりに齋藤を起用する。
 試合はY.S.C.C.が開始5分で先制点を生み出した。相手の守備ラインの裏に飛び出した辻がこの大会4点目となるゴールを挙げる。

 
 
 
 Y.S.C.C.の得点源となる辻が開始早々の先制点。
 讃岐の出端を挫く会心の一撃。

 先手を取られた讃岐だったが、その直後に相手陣内エリア左手前からのFKのチャンス。これを相手のクリアミスからのオウンゴールですぐに追いついた。

 
 岡本の得点かと思われたが判定はオウンゴール。
 讃岐が試合をすぐに振り出しに。
 
 序盤からよく動く試合は、11分にY.S.C.C.が相手エリア内で笹野が倒されてPKを獲得。これを石川が決めて再び突き放す。

 
 この笹野が倒された場面。
 序盤、明らかに讃岐の守備陣は落ち着いていなかった。

 
 このPKを石川が決めてY.S.C.C.が2-1と勝ち越し。

 おそらく、讃岐にとってここまで四国リーグも含めて「追いかける展開」というのはほとんど無かったのではないだろうか。10月の全社では優勝まで5試合連続無失点。1次ラウンドの長野戦でもすぐに追いつく対応の速さを見せていただけに、追いついた直後にPKを与えてしまったことは少しプランが狂ってしまっただろう。その直後、CKから下松がシュートを放ち、相手GKが弾いたところを岡本が決め損ねる。讃岐はしばらく追いかける時間帯を強いられた。

 
 ゴール前でチャンスは得るものの、同点には及ばない。

 Y.S.C.C.も土屋、中村、小笹が中盤で軸となって縦へとボールを繋ぐ。24分には中村のドリブルから辻へパスを通して、辻が惜しいシュートを放つ場面もあった。Y.S.C.C.も早めに讃岐を突き放す3点目を取りたかったところだったろう。
 しかし、前半のアディショナルタイムに讃岐はエリア内でドリブルで侵入した飯塚が倒されてPKを奪取。これを吉澤が決めて2-2の同点にして前半を終えた。

 
 なんとか前半のうちに追いついた讃岐。
 ここで追いつけたことは本当に大きかった。

 
 神崎の出場停止もあって、最終ラインをまとめた波夛野。
 なかなか序盤は苦戦しているようだった。

 Y.S.C.C.の攻撃をしっかり守っても、なかなか崩し切れない讃岐。50分には右サイドからのクロスをGKが処理し切れず、フリーになっていた岡本まで届くものの、ヘディングシュートはわずかに左に逸れる。しかし、流れの中で決定機を作りながら、得点が遠かった讃岐はセットプレーが功を奏した。後半に入って、讃岐の吉澤や飯塚らの突破をファウルでしか止められなくなってきたY.S.C.C.に対して、讃岐は56分にエリア手前約35mほどの位置でFKのチャンスを得ると、これを蹴った下松のキックにDF齋藤が左足で合わせてゴールネットを揺らす。

 
 決定的だった讃岐・岡本のヘディングシュート。
 流れの中で決め切れない。

 
 
 
 讃岐は全得点がセットプレーから。
 この場面、一瞬にして齋藤が合わせた。

 追いつかれたY.S.C.C.はすぐさま追い上げたいところだったが、前半のうちに足を負傷していた小笹がどうやら限界だったらしく、失点直後に金子との交代を余儀なくされる。しかし、運動量が落ち始めてなかなか決定機にまで至らない。序盤のバタバタぶりが嘘のように安定した讃岐の守備網をY.S.C.C.は崩せず、ほとんど相手エリア内でボールが繋がらなかった。80分には辻が相手のチェックに足を痛めていたこともあり、松田と交代することになったが、既に試合を先行していた際の推進力は彼らには無かった。

 
 DF寺田はY.S.C.C.の右サイドで1対1に強さを発揮していた。

 
 途中出場のY.S.C.C.伊吹と讃岐・波夛野が激しく競り合う。

 
 讃岐の飯塚はドリブルにパスに、相手にとって嫌な存在。

 結果、逆転してからのリードを最後まで守り通した讃岐が3-2で勝利し、PK勝利に続き2連勝で勝点を5ポイントに。これで入替戦以上が確実となり、讃岐のJFL昇格が見えてきた。もちろん3日目も勝利して自動昇格を狙いたいところだろう。
 一方のY.S.C.C.は連敗で厳しい展開となった。1次ラウンドで負傷した福井に続き、小笹、辻と主力に負傷が相次いでいる点は不安材料。3日目は長野という強敵が相手だが、過密日程はこれが最後。まずは1勝を目指したい。

 
 JFLが見えてきた讃岐。
 地元の支援も取り付けており、準加盟も近いか。

 
 僅差で競り負けたY.S.C.C.。
 子供たちも多数応援に駆けつけた前でこの結果は悔しい。
 

本命同士、PKでの決着 -讃岐 VS 長野-

2010年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 1日目の第2試合は、共にJリーグ参入を目指す四国リーグ王者のカマタマーレ讃岐と、北信越リーグ王者で長野エルザ時代を含むと、これが4度目の地域決勝チャレンジとなるAC長野パルセイロの対決。試合は両者互いに譲らず、90分では勝敗つかず0-0。PK戦では7-6で讃岐が辛勝し、勝点2ポイントを獲得。敗れた長野は1ポイントの勝点からのスタートとなった。

 

 両者共に13:30のキックオフを控えて、サポーターがそれぞれバックスタンドで準備を始める。両サポーター共に大きな横断幕を掲げ、約50名近いそれぞれのサポーターは意気揚々と応援チャントを歌い始めた。

 
 平日にも関わらず四国から駆けつけた讃岐サポーター。
 バックスタンドの2階から選手を後押し。

 
 長野は試合前に選手より先にサポーターが円陣。
 チーム、サポ一致団結でJFLを目指す。

 数年のうちにJリーグ参入を目指す両者はまさにこの決勝ラウンドの本命2チーム。10月に行われた全社の決勝、そして高知・春野での1次ラウンドでも対峙し、まさに今季のこのカテゴリーでは屈指のライバルとも形容できる2チームだ。ここまで全社では讃岐が2-0で勝利、地域決勝1次ラウンドでは、1-1からPK戦3-2でこれまた讃岐が勝利している。しかし、本当の意味での真剣勝負はこの決勝ラウンド。試合は1試合目と変わらぬ強風との戦いでもあった。

 前半、風上に立った讃岐が猛然と長野ゴールを襲う。5分に森田がシュートを見舞うと、9分には吉澤のパスを受けた飯塚がゴールを狙う。10分には中島が豪快なミドルシュート、15分には下松が強烈なミドルシュートをお見舞いする。このように讃岐は前半である程度試合を決定づけたかったのだろう。それもそのはず、第1試合より幾分か勢いを増した気もするその強風は、最早GKのゴールキックすらろくに飛ばさないほどの強烈なものだった。
 30分に飯塚の直接FKが風に乗ってゴールバーを直撃した場面は決定的で惜しい場面だった。しかし、ここまでほとんど讃岐の決定機。長野が苦戦していたのは確かだった。

 
 強風を活かして果敢にシュート攻勢の讃岐。
 15分には下松が強烈なミドル。

 長野は防戦一方という状況。しかし、籾谷を中心に守備は集中しており、ある程度ボールを持てる時間も作ることはできていた。野澤、大橋、栗原らのボールキープから前線の宇野沢にボールを集めたいところだったが、ここはさすがに波夛野を中心とした堅固な讃岐守備陣がそれを許さなかった。

 
 再三、ゴール前でチャンスを作る讃岐。
 ここに長野DF籾谷が立ちはだかった。

 
 長野の攻撃を引っ張るのは宇野沢。
 ところが、相手のプレスの厳しさにシュートを打てず。

 0-0で前半を折り返したこの試合。讃岐は是が非でも風上に立った前半に得点を挙げておきたかったところ。後半は間違いなく長野が攻勢に立つのではと思われた。
 しかし、風下に立とうとも攻め立てたのは讃岐。49分に右サイドからのアーリークロスをGKが弾いたところに岡本がダイビングヘッド。わずかにゴールはならなかったが、前半と変わらず、讃岐がペースを握った。

 
 長野・栗原のドリブルに讃岐・森田が対応。
 ボールは持たせてもラストパスの出所を讃岐は許さない。

 
 右サイドから再三ドリブルで仕掛けた野澤。

 1点を奪えず、ぐずぐずしている讃岐の運動量が落ちてきたところに長野は反撃。72分に佐藤のクロスに大島が頭で合わせるが、わずかにゴールならず。そして、75分には讃岐ゴール前約25mの位置で得た大橋の直接FKがゴールバーに当たってしまう。試合を決定づける1点がこのように両者ともなかなか遠かった。

 
 選手たちを惑わす強烈な突風。
 「あわやゴール」という場面が。

 
 讃岐・下松の強烈なチェックを受ける長野・藤田。
 長野のFW陣は結局1本もシュートが打てなかった。

 
 拮抗する試合は、90分で決着つかず・・・

 両者譲らず、結局1次ラウンドに続きPK戦となったこの試合。お互いに6人目が決めて、迎えた7人目。成功した讃岐に対して、長野は失敗。PK戦突入寸前にPK要員のGK海野を投入した甲斐もなく長野は悔しいPK敗戦となってしまった。

 
 PK戦を長野サポーターは全員が肩を組んで見守る。

 
 長野・7人目麻生のキックはポストに弾かれ・・・

 
 讃岐の初戦勝利が決定。
 勝点2ポイントをゲット。

 
 これだけ多くのサポーターが駆けつけた長野。
 まだまだ戦いはこれから。

 この試合を終えて、90分勝利の三洋洲本が勝点3ポイントで一歩リード。明日の長野戦で90分勝利を果たせば、07年の第31回大会でFC Mi-O びわこ Kusatsu(現:MIOびわこ草津)がJFL昇格を果たして以来、3年ぶりに関西リーグ勢のJFL昇格が決定する。
 しかし、まだ展開はどうなるか分からない。この試合のPK決着が2日目以降、どう響いてくるだろうか。

三洋洲本、大きな1勝 -Y.S.C.C. VS 三洋洲本-

2010年12月03日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会はいよいよ決勝ラウンドが開幕。市原緑地公園臨海競技場では、1次ラウンドでそれぞれのグループを勝ち抜いたカマタマーレ讃岐、三洋電機洲本、Y.S.C.C.と2位最上位で決勝ラウンド進出を決めたAC長野パルセイロの計4チームでの総当たり戦が始まった。

 1日目の第1試合では、関東リーグ王者のY.S.C.C.と関西リーグ王者の三洋電機洲本が対戦。試合は2-1で三洋洲本が90分勝利を果たし、JFL自動昇格へ大きな勝点3ポイントを獲得した。

 

 全国的に「初冬の嵐」ともいうべき、大雨と強風に見舞われた12月3日。市原もその例外ではなく、昨晩からの土砂降りの雨と、強風が吹き荒れる。雨こそ第1試合のキックオフ前には止み、晴れ間が覗く天気になったものの、強烈な風はその勢いを衰えない。
 Y.S.C.C.は前半風上に立って、一気に先制点を奪った。4分に中村の右CKからDF寺田が頭で合わせてゴールネットを揺らす。短期決戦での先制点奪取は大きい。この先制劇で試合はY.S.C.C.が優勢に試合を進めるものかと思われた。

 
 
 
 
 開始4分でY.S.C.C.が先制。
 DF寺田がヘッドで決める。

 しかし、風下で攻めあぐねる三洋洲本もすぐに反撃。序盤こそ動きに重さが感じられたものの、19分に森川が放ったミドルシュートを相手GKが弾いたところをエリア右手から梅川が詰めてシュートを決め、同点に追いついた。

 
 
 

 昨季から地域決勝では無得点だった梅川がようやく覚醒。
 関西リーグ2年連続得点王が同点弾を決める。

 追いつかれはしたが、風上のY.S.C.C.は強風を味方に勝ち越し弾を狙い続ける。32分には須原、33分には服部がシュート。しかし、その前には1次ラウンドの札大GP戦で3本続けてPKをストップした三洋洲本GK浅野が立ちはだかった。ボール支配では優位に立ち、決定機を量産するY.S.C.C.だったが、追加点は遠い。

 
 
 38分にはY.S.C.C.須原がこのFKでゴールを狙う。
 わずかにゴール右へ。風を味方につけられず。

 前半を1-1の同点で折り返すと、後半の開始から三洋洲本はMF沈を中尾に代えて投入し、劣勢の逆転を狙う。しかし、風上に立ったとはいえ、Y.S.C.C.の基本技術の高さと組織力の前に劣勢逆転ならぬ三洋洲本だった。なかなかシュートが打てない。押し気味に試合を進めるY.S.C.C.は、51分に松田が惜しいシュートを放ち、55分には大饗が三洋洲本ゴールに迫った。65分には最終ラインの裏のスペースに抜け出した辻がゴールを狙うが、GK浅野がこれをセーブして追加点を許さない。

 
 65分のY.S.C.C.の大きなチャンス。
 1対1となった辻のシュートはGK浅野が見切っていた。

 三洋洲本の粘りの守備は効いていた。特に堅守というイメージは無いが、昨年の地域決勝1次ラウンド金沢戦におけるハードワークのしぶとさを思い出した。66分にはカウンターから沈がシュートを見舞う。これが後半最初のシュートだった三洋洲本。少ないチャンスを生かしたかった。
 Y.S.C.C.はベンチスタートの石川を大饗に代えてピッチに送り込み、運動量の落ちてきた中盤をケアしようとするが、集中力では三洋洲本が一歩上だったか。77分にこの試合3度目にゴールネットを揺らしたのは、これがわずか2本目のシュートとなった三洋洲本だった。

 
 
 
 
 梅川の右からの折り返しを森川が決める。
 ワンチャンスをモノにした三洋洲本。

 後半ほとんど決定機を作れなかった三洋洲本の逆転劇にY.S.C.C.は焦りを隠せない。すぐさまFW伊吹、青田をピッチに送り込み、1点を狙いに行った。Y.S.C.C.は得点源の辻が負傷交代を強いられたことも大きかった。試合をひっくり返した三洋洲本は無理をする必要もない。貴重な勝点3ポイントへ向かって、あとは全員でとにかく守るのみだった。

 
 石川らを途中投入してチャンスを狙ったY.S.C.C.
 しかし、決定機を再三決められなかったのが響く。

 結果、愚直に守り続けた三洋洲本が逆転勝利で、見事に勝点3ポイントを獲得。上位2チームがJFL自動昇格、3位チームがJFL17位との入替戦に回るこの大会において、入替戦以上の結果に大きく近づいた。昨季はあと一歩で決勝ラウンドへ進めなかった「淡路島の雄」が決勝ラウンドの主役になり得るための大きな1勝を上げた。

 2日目は、三洋洲本が長野と(13:30キックオフ)、そして負けを喫したY.S.C.C.は讃岐との試合(10:45キックオフ)で1勝を狙う。