脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

青と赤、クリスマスサバイバル -G大阪 VS 浦和-

2010年12月26日 | 脚で語る天皇杯
 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会は準々決勝を迎え、万博では大会3連覇を狙うG大阪が浦和と対戦。互いに譲らぬ接戦は1-1のまま延長戦へ突入すると、G大阪が宇佐美の決勝点を守り切り延長戦30分を制して、準決勝進出。他会場の結果からG大阪は、29日にエコパで清水と準決勝を対戦することとなった。また、フィンケ監督が退任する浦和はこれでシーズン終戦となった。

 

 気温わずか4度の万博記念競技場。試合前には雪がちらついていた。かつて「ナショナルダービー」とも形容されたこのカードでなければ、もっと観衆はまばらだっただろう。この日駆けつけた入場者数は公式発表で14,815人。スタジアムは毎度のごとく綺麗に青と赤に色が分かれていた。吹きすさぶ風のせいでとてつもなく身に染みる寒さだったが、試合は予想以上にどちらも引けを取らぬ接戦となった。

 
 浦和サポーターにとって今季2度目の万博は雪に。

 G大阪は加地が今季の残り絶望という負傷で、右サイドには安田理が配置され、前線のスタートはルーカスとイ・グノ。浦和も岡本、宇賀神、高橋と若手が積極登用され、個人的にも良く知っている選手たちが軒並みベンチスタート。これがフィンケの浦和かということをこの時期になって改めて実感した。そして、いずれにせよこの試合で退団が公表されているルーカス、ポンテという両チームを長らく支えたブラジル人選手も最後を迎えることになる試合だった。

 G大阪は序盤から橋本が中盤からよくフィニッシュに絡んだ。6分に浦和GK山岸にセーブされるものの際どいシュートを放つと、21分には右サイドからルーカス、武井と繋いで橋本へ渡ってのシュートはサイドネットに。小気味良いいつものパス回しにリズムが出れば、先制点の場面は早くやって来そうだった。
 ところが、浦和もポンテが1人を気を吐いて中盤を牽引。プレーエリアも広い柏木の散らしと宇賀神や高橋のサイド攻撃がバランスよく、気を許せば細貝も機を見てシュートを放ってくる。前線のエジミウソンよりも二列目からの攻撃は浦和の脅威だった。

 
 浦和・エジミウソンをマークするG大阪・高木。
 今季もこの男なんだかんだでリーグ3位の16得点。

 
 G大阪は右サイドバックに安田理を。
 左の下平とのバランスもなかなか良かった。

 34分に安田理が右サイドから狙ったシュートがポストに直撃し、38分には下平からのパスを受けた橋本が振り向きざまにシュートを放つもわずかにゴール右に逸れ、立て続けにG大阪が先制のチャンスをフイにしてしまう。前半終了間際には浦和・エジミウソンのシュートがわずかにサイドネットという場面があったが、結局前半を終わって両者拙攻が募りスコアレスで折り返すこととなった。試合はおそらく1点を争う試合になるという雰囲気だった。

 
 明神は相変わらずの安定感で攻守に存在感。
 浦和の危険なパスをことごとくカット。

 後半に入ると、49分に浦和はMF堀之内が負傷してしまい、急遽鈴木が代役でピッチに。G大阪の右サイドでは安田理と浦和・宇賀神のマッチアップが熾烈化していた。68分には安田理が浦和陣内を突破すると、中央へクロス。これをイ・グノが頭で合わせて先制かと思いきや、オフサイドに沈んだ場面もあった。

 
 宇賀神と安田理のマッチアップは迫力あり。

 
 これが最後の大会となる浦和・ポンテもヒートアップ。
 気合いが入っていた。

 前述のイ・グノのオフサイドの場面の直後、G大阪は宇佐美を投入。前線に入れずに彼を中盤、トップ下の位置に起用する。シーズン通してリーグ戦7得点。しかもホームの浦和戦では得点も挙げている。彼が何かを起こすのではと誰もが考えたタイミングでの登場だった。
 先制点は72分。そのG大阪だった。浦和・山田暢のハンドによってゴール前絶妙な位置で得た直接FKのチャンスを彼が右足で見事に決める。2010年のハイライトとして彼が南アフリカで見せたデンマーク戦のFKがあるが、それを彷彿とさせる華麗なキックに場内は歓声と沈黙に真っ二つに分かれた。

 
 
 
 
 
 
 
 浦和戦にことごとく強い今季の遠藤。
 これで3戦3得点。

 ところが試合はこれで終わらない。浦和も先制された直後にエスクデロ、田中を連続投入。徐々にリズムを取り戻す。81分には再三安田理とバトルを繰り広げていた浦和・宇賀神が田中からのパスを受けた流れからシュート。これが決まって試合は1-1の振り出しに戻ることとなった。

 
 
 
 浦和は宇賀神がエリア手前から強引にシュートをねじ込む。
 圧巻のシュートセンス。

 
 田中の途中投入から浦和も持ち直した。
 全盛期の頃には及ばないが、ドリブル突破は彼の魅力。

 1-1となった試合は15分ハーフの延長戦へ。98分に佐々木という切り札を入れて運動量の落ちてきた浦和に揺さぶりをかけるG大阪。延長前半終了間際の103分に下平のロングパスを受けたルーカスが落ち着いてパスを出すと、走り込んだ宇佐美が相手DFに囲まれながらもシュートを決める。またしてもこの場面で勝負強さを発揮した18歳。試合はこれが決勝点となった。

 
 
 下平からのパスを受けたルーカスが焦らずに・・・
 
 
 
 
 
 
 宇佐美へパスを送ると、これを宇佐美が決めた。
 
 
 そして、後は守りきるのみ。
 エアバトルを中澤中心で乗り切る。

 
 ラストプレーのCKには浦和GK山岸も攻撃参加。
 このプレーの直後に120分間終了を告げるホイッスルが。

 
 浦和に競り勝ったG大阪。3連覇まであと2勝。
 29日にはエコパで清水と対戦。

 
 2年間浦和を率いたフィンケ監督。
 この敗戦でチーム最後の指揮となった。

 
 同じくレバークーゼン移籍のため細貝もこれで退団。
 勝ってチームを離れることはできず。

 
 
 両チームを退団することが決まっている2人のブラジル人選手。
 ポンテ(上)はこれが浦和で最後のプレーに。
 ルーカス(下)は元旦までG大阪でプレーできるか。
 

接戦というお約束 -G大阪VS栃木-

2010年10月10日 | 脚で語る天皇杯
 Jリーグの無い10月の3連休最初の土曜日、各地で天皇杯3回戦が開催された。前々回、前回と連覇を果たしているG大阪が狙うところは間違いなく天皇杯3連覇。2回戦で大阪体育大を下して、ホーム万博で迎え撃つことになったのはJ2の栃木SC。2回戦では岐阜とのJ2勢対決を3-2と競り勝っての王者への挑戦だ。前半互角以上の戦いを見せた栃木だったが、アジア王者すらも経験しているG大阪が後半3得点を奪取して2点差を逆転。3-2でG大阪が勝利して4回戦へと駒を進めた。

 
 連覇中のG大阪は満身創痍。
 代表召集の遠藤、負傷で明神らを欠く陣容。

 
 栃木はJ2で今季11戦無敗を記録。
 苦戦する中盤戦、浮上のきっかけにもしたい。

 
 前半試合のペースを握ったのは栃木。
 中澤を中心にG大阪は守る展開に。

 
 10分、平井が絶好の決定機をフイにする。
 G大阪が序盤からリズムを失うきっかけになった。

 
 今季出場機会に恵まれている武井は栃木出身。
 しかし、前半は相手のシンプルなカウンターに苦戦する。

 
 14分、栃木が高木のヘッドで先制点を挙げる。
 右サイドからのクロスにしっかり合わせた。

 
 加地は再三の攻撃参加もフィニッシュに繋がらず。
 水沼や高木らとマッチアップを強いられる場面が多かった。

 
 先制して勢いづく栃木とそのサポーター。
 この試合に競り勝てば、十分番狂わせだった。

 
 拙攻の続くG大阪。
 再三相手から奪うCKからチャンスを得るが…

 
 横浜FMから期限付き移籍中の水沼。
 左サイドを起点に栃木の攻撃を演出。

 
 
 
 38分には船山がシュートを決めてなんと栃木が追加点。
 かつて万博ではミューレルがよくやっていたダイブパフォーマンス。

 
 二川は相手の厳しいマークにほとんど仕事ができず。
 前半でお役御免となる展開。

 
 この陣容では橋本がピッチ上の指揮官。
 攻守にハードワークで前半から孤軍奮闘。

 
 後半、佐々木と大塚を投入したG大阪。
 53分にイ・グノが決めて反撃開始。イ・グノは公式戦初得点。

 
 前半の中盤から後半はCBへとシフトした山口。
 前半は直接FKを蹴る姿も。

 
 栃木のパウリーニョは切り替えの起点。
 時折見せる攻撃参加でG大阪を牽制。

 
 
 1点を追いかけるG大阪は平井が83分に同点弾を決める。
 上手く相手DFの裏に抜け出した。

 
 
 
 
 86分には佐々木のドリブルから最後は途中出場の大塚。
 逆転の3点目を決めてこの日の主役に。

 途中出場の佐々木、大塚の活躍で前半と見違えるような息の吹き返し方を見せたG大阪。2点のリード後半で一気に逆転へと持ち込んだが、このあたりでJクラブとの初戦を苦戦するのはここ数年のG大阪のお約束。05年シーズン(第85回大会)は横浜FCに3-3からのPK勝利(7-6)、06年シーズン(第86回大会)は当時J2の湘南に2-1と辛勝、07年シーズン(第87回大会)はこれもまた当時J2の山形に2-2からのPK勝利(5-3)、ガンバ大阪になって初優勝となった08年シーズン(第88回大会)でも延長戦の末に辛くも甲府に2-1と勝利しているのだ。なぜ、こんなに天皇杯の初戦を格下相手に苦戦しているのか。また今季もその謎を残してくれた戦いぶり。その意味では、前半の2点のビハインドは既定路線、何も怖いものではなかったのかもしれない。
 ともかく、前半の恐ろしく決定機を迎えられないチームのリズムを佐々木がその得意なドリブルで引き寄せた。イ・グノの得点も佐々木のCKによるアシスト。決勝点を奪った大塚を含め、なんとか采配が実を結んだ試合だった。

 
 試合後、主審に苦笑しながら詰め寄る松田監督。
 G大阪は松田監督時代の神戸に勝てていない。

 
 ラスト10分、勝利が見えていただけにサポーターも茫然。
 非常に悔しそうだった栃木の選手たち。

 
 勝利したとはいえ、G大阪にも笑顔はなし。
 西野監督としてもストレスの溜まる試合だったのでは。

京都を背負った意地の衝突 -佐川印刷VS京都-

2010年09月06日 | 脚で語る天皇杯
 今季の天皇杯は1回戦から中1日でJリーグ勢が登場する2回戦に突入。各地でJクラブに挑むアマチュアクラブの戦いが繰り広げられたが、西京極もその例外ではない。J1京都と1回戦で奈良クラブを破ったJFL佐川印刷(以下=印刷)との試合が行われ、延長戦の末に3-2で京都が何とか勝利した。京都は5月30日以来の公式戦初勝利。そして秋田新監督就任後、初めての公式戦勝利となった。

 

 京都は通常と変わらぬベストメンバーを起用。中盤の底にヂエゴを起用し、左サイドバックに中村太、柳沢とディエゴに前線を託す。印刷は奈良クラブと戦った1回戦のメンバー11人を全て刷新。かつて京都に在籍した大槻を軸に、中野、櫛田、吉木という中盤のレギュラー選手、そしてエースの平井と塩沢が前線でコンビを組んだ。
 試合は予想外の立ち上がりを迎える。3分に印刷MF吉木が思い切りの良いシュートでチームに活力を与えると、9分に塩沢がヘッドで京都ゴールを揺らす。今大会の2回戦、ジャイアントキリングが起こるならまずはこの対戦カードではないかと思っていたが、予想以上に楽に印刷は京都から先制点を奪った。

 
 
 9分に塩沢が先制点となるヘディングシュート。
 打点の高い1発で撃ち合いの口火を切った。

 
 印刷の攻撃面でリズムをもたらしていたMF吉木。
 物怖じしない姿勢は11人に共通。

 この先制点でリズムに乗った印刷は、精度の高いパスワークと機を見たカウンターで京都を翻弄する場面を幾度も作る。16分にはパスを繋いで京都の守備網を完全に崩して中野がシュートを打つ場面も。徐々に京都には焦りが感じられてきた。しかしながら、勝てていないとはいえ京都もJ1の意地、2つも格下の相手に負けるわけにはいかない。渡邉の攻め上がりやドゥトラの突破によって印刷ゴールにじりじり忍び寄る。印刷は瀧原、高橋を中心に身を挺してそれを阻み続けた。京都は中盤に起用したヂエゴが周囲とフィットせず27分に角田と早々の交代。まずは1点を目指して早めのベンチワークを見せた。

 
 負傷がちながら得点力はチーム№1の塩沢。
 前半を目一杯プレー。

 
 京都は中山が中心になって攻勢に転じる。
 ここで負ければその1敗の重さは大きい。

 
 ドゥトラの突破を印刷がブロック。
 集中した守備網を形成する印刷。

 31分、京都は右サイドからFKのチャンスを得ると、これをディエゴが水本の頭に合わせて同点とする。この辺りから京都が格上らしいリズムを取り戻すが、印刷は守りでも粘りを発揮。GK大石の活躍と京都の決定力不足に助長され1-1のまま前半を終了。後半も両チームは決定機を決められず、拮抗した展開で90分を終えることとなった。

 
 小柄ながら運動量を武器に活躍を見せた中野。
 早稲田出身のルーキーだ。

 
 31分に水本が渾身のヘッドで京都が1-1の同点に追いつく。

 
 大槻の存在感は印刷にとって絶大。
 常にチャンスは彼のボールキープから演出される。

 90分で決着のつかない試合は15分ハーフの延長戦へ突入。すると92分、右サイドからのクロスに交代出場のFW葛島がダイビングヘッドで勝ち越し弾となるチーム2点目を奪う。追いつめられた京都、逃げ切りたい印刷、延長戦はさらに白熱した様相を呈す。102分には前半から苛立ちを募らせていたディエゴが印刷ゴールに突進、同点となるシュートを決める。この時間帯、少し印刷は集中力が切れていたのか守備時のハードワークが影を潜めた。106分には再びFKのチャンスから角田が頭で決めて京都にリードを許してしまう。しかし、残り15分を切っていたものの、まだ印刷には何かを起こしてくれそうな感触があった。それほど全員が前を向いてプレーし続けていた。

 
 体を張って京都の攻撃を防いだDF瀧原。
 印刷は攻守における集中力が素晴らしかったが…

 
 終始当たっていた印刷のGK大石。
 彼の活躍は守備の時間を強いられるチームを勇気づける。

 
 延長突入と同時に会心のゴール。
 印刷はこれで少し気が緩んでしまったか…

 意地と意地がぶつかり合う京都勢同士の撃ち合いは、106分に京都MF安藤が2枚目の警告で退場、また終了間際にはベンチから京都のコーチが退席処分に処せられるなど波乱含みの展開。115分には京都ゴール前でGK水谷がこぼしたボールに平井が反応するが間一髪でクリアされてしまう。最後まで見逃せない攻防が続いたが、結局3-2で京都が逃げ切り、印刷の天皇杯は2回戦で幕を閉じることとなった。

 
 勝利への執念は双方ともに同じ。
 わずかな集中力の差が試合の展開を分けたのか…

 
 106分に角田が逆転ゴールを決める。

 
 115分、印刷の決定的な場面。
 これが決まっていれば…

 本当に息をつかせぬスリリングな試合だった。京都の不振も背景にはあるが、JFLで戦う印刷のサッカーのクオリティを証明する試合にもなった。試合後には京都の選手たちを労う拍手やエールもあったが、それ以上に印刷を喝采する声も多く聞かれた。同じ京都を本拠地に戦う両チーム。その在り方はプロとアマという対極的なものだが、改めて「京都に佐川印刷あり」ということを試合観戦者に深く印象付けただろう。ジャイアントキリングは起こせなかったが、彼らがJ1クラブを相手にこれだけの戦いを演じてくれたことは、1回戦で彼らに敗れた奈良クラブを応援する者としても感慨深く、刺激になった。サブ主体で臨まれたが、1回戦の結果は成るべくして成ったものだと納得できる。それほどのチームワークを印刷は持っていた。彼らを超えなければ天皇杯でJ1クラブは打ち負かせない。それどころか今後JFLへとステップアップすることもままならないだろう。噛み締めるものが多い好ゲームだった。

 
 試合終了と同時に倒れこむ印刷の選手たち。
 敵味方関係なく惜しみない拍手とエールが送られた。

 
 その数はほんのわずかだが、サポーターの声援があった。
 企業チームだが、京都を誇るチームには間違いない。

中秋を席巻、ジャイアントキリング旋風

2009年10月12日 | 脚で語る天皇杯
 各地で行われた今季の天皇杯2回戦。この12日にJ1の千葉とJFLのHonda FCの一戦を残すが、格下チームがJリーグクラブを破るジャイアントキリング旋風は今季も猛威を振るっている。

 その代表格となったのは北信越リーグの松本山雅FC。ホーム・アルウィンで迎えたのは、クラブ力とサポーターの力において日本が世界に誇るビッグクラブ・浦和。この試合を2-0とまさかの完封勝利で3回戦進出を決めた。
 彼らにとっては、未曾有の大舞台。アルウィンは1万4千人を超える観客で埋まったようだ。チームの年間運転費はおそらく浦和の代表選手の年俸ほど。その松本山雅が相手のミスを逃さず、強かに2得点を奪い、大会史上希に見るアップセットを達成したのだった。次の3回戦はFC岐阜と対戦するが、何よりも来週から始まる全社(全国社会人選手権)に向けてこの勝利は大きくチームの士気を上昇させたはずである。

 東北1部リーグに所属する福島ユナイテッドFCもアウェイでC大阪を2-1と撃破。全国的にその知名度を広げる躍進を果たした。今季は昇格1年目にして東北1部リーグにて無敗の10勝3分という戦績でフィニッシュ。惜しくも得失点差1点差でリーグ優勝と地域決勝進出枠は逃したものの、来週から始まる全社にも出場を決めているため、全社経由での地域決勝進出は大いにその可能性がある。そのためにも大きな勝利で弾みをつけたはずだ。

 JFLのホンダロックは、J2の東京Vに1-0と完封勝利。堅守に定評がある彼ららしい無失点でアマチュアクラブの意地を見せた。次戦はACLでもベスト4入りしている強豪・名古屋。JFL13位のホンダロックの堅牢な守備がここに通じるのか非常に注目だ。
 対照的に東京Vはこれで5年連続の天皇杯初戦敗退。4年連続で0-1の零封負けを喫することに。運営問題で揺れるかつての名門を象徴する敗戦となってしまった。

 大学勢では総理大臣杯を制した福岡大がJ2水戸3-2と競り勝ち、明治大がJ2湘南を1-0で破るという快挙。11日には鹿屋体育大がJ2徳島を3-1で打ち破った。若さを武器に余すところ無くその勢いを結果に反映した大学勢。この結果、福岡大は前年度覇者のG大阪と、明治大はJ1で降格争いの最中にいる山形とマッチアップ。鹿屋体育大は磐田との対戦が決まった。彼らの躍進がどこまで続くかも大会の注目ポイントだ。

 その他の試合でも関西大が甲府に、そしてJFLの横河武蔵野FCが大分に、同じくJFLのジェフリザーブズが柏にPK戦まで持ち込むなど格上チームと肉薄。JFLの高崎はJ1で優勝争いを続ける鹿島に最少失点での敗戦を演じ、鳥取も札幌をあと一歩のところまで追い込んだ。北信越リーグの金沢も仙台を相手に延長戦まで持ち込む好勝負を披露。明暗を分けたのはわずかな運だったのかもしれないが、例年以上にアマチュアチームの躍進が目立つ結果となった。
 2回戦からJリーグ勢全チームが参加する組み合わせとなった今大会。弱小ながらその地域アイデンティティを表象する地方の各クラブにとっては意義深い大会になったといえるだろう。勝ち上がった地域リーグ・JFL勢の引き続きのジャイアントキリングを期待して今大会を見届けたい。
 

それぞれの天皇杯

2009年09月21日 | 脚で語る天皇杯
 このシルバーウィークに今季の天皇杯1回戦全24試合が行われた。その1回戦を突破したのはJFL勢が6チーム、地域リーグ勢が9チーム、大学勢が8チーム、高校勢が佐賀東の1チームとなっている。10月に行われる2回戦からはいよいよシードのJFL勢とJリーグ勢が登場してくるため、彼らにとってはこの壁を突破するのは困難だが、ここに“ジャイアントキリング”という大会特有の面白さも加わってくる。しかし、どうも地域リーグ勢の一部には決してそこが全てではない実情があるようだ。

 北信越リーグを中心に全国でも地域クラブが将来のJリーグ参入を目指して活動を展開する今日、スポーツナビのコラムにてフォトライターの宇都宮徹壱氏が、1回戦を突破した地域リーグ勢の苦しい胸の内をレポートされている。そう、松本山雅FCやツエーゲン金沢といった地域リーグでもJFLを上回る陣容を揃える彼らにとっては、「全社経由JFL行き」というルートにその舵は取られているのだ。

 関西では、皮肉にも初出場の奈良クラブ以外、天皇杯に出場している地域リーグ勢はない。逆に、天皇杯2回戦の翌週に開幕する全国社会人サッカー選手権(通称/全社)に出場する関西代表の5チーム勢の全ては順当に関西リーグ1部のチームで占められている。しかしながら、全国でもリーグレベルの低い関西リーグ勢からJFLへ送り込めるチームは現状では見当たらない。せめて地域決勝大会へ進めて御の字というところだが、それもまたままならないのが実情だろう。

 宇都宮氏のコラムにはハッとさせられた部分がある。決して関西では存在しないクラブチームのジレンマだ。本気で上を狙える地力があるからこそ、手放しでJチームとの対戦を喜べない。こちらからすればものすごく贅沢な悩みでもある。決して2回戦のJリーグ勢との対戦で手を抜くことは考えられないが、それでも翌週に5日連続で行われる“死のトーナメント”を控えているのであれば、選手のやり繰りは至難の業。もちろん天皇杯の戦いが全社に影響がないとは考えにくい。

 ここまでに及ぶには関西勢もまだまだ時間がかかりそうだ。何しろこの2大会をしっかり戦えるだけの総合力を有するチームは皆無。全社の遠征費の捻出だけでも頭を抱えるチームは多い。無論、前述の2チームも資金が潤沢をいう訳ではなく、松本山雅などもオフィシャルで遠征費の募金を募っている。それでも、彼らには「JFL」という目標地点が見えており、そこへ向かうモチベーションはピークを迎えている。それはそうだ。松本山雅に至っては今季の地域リーグ決勝大会は、自分たちのホームであるアルウィン。ここを目指すのが最大の目標であることは当然である。

 2回戦を金沢は仙台を相手に敵地・ユアスタで、松本山雅は浦和レッズとホーム・アルウィンで戦う。どちらにせよ、両チームのサポーターにとっては大いに盛り上がるであろうマッチアップだ。こちらでは、奈良クラブの天皇杯1回戦突破を手放しで喜んでいる。故に関西と北信越のレベルの距離を感じながらも、この2チームの両大会での健闘を心から祈っている。

醍醐味増した天皇杯

2009年09月18日 | 脚で語る天皇杯
 いよいよ明日から今季の天皇杯が開幕する。第89回を迎える今大会からはレギュレーションが一新。J1も含めたJリーグ全クラブが2回戦から登場することになった。各47都道府県代表チームは1回戦を突破すれば未曾有のマッチアップを期待できる。つまり、地方の社会人チームや大学・高校チームなどがJクラブと2回戦で顔合わせすることが確実になった。これまでより早い段階で、この大会の醍醐味である「ジャイアントキリング」を見られる可能性が高まったのだ。

 全国の地域リーグや都道府県リーグに属する発展途上の社会人チームには、これほどの発奮材料はないだろう。かつてはJの舞台で名を馳せた、または不完全燃焼に終わった男たちの再起の場になる可能性もある。自らの就職活動にも繋がる大学や高校チームもこれまた然りである。各地域での存在感や知名度を上げるためにも2回戦でJクラブが待ち受ける今大会の組み合わせは魅力的だ。

 こちら奈良県から初出場のチャンスを掴んだ奈良クラブも関西リーグ勢としては唯一の出場となるが、地域リーグのカテゴリーに特化すると、全国の有力チームが軒並みその名を連ねている。東北1部のグルージャ盛岡、福島ユナイテッドFC。全国最強エリアの北信越からはJAPANサッカーカレッジ、松本山雅FC、ツエーゲン金沢、サウルコス福井といった強豪揃い。四国からはカマタマーレ讃岐、徳島ヴォルティス・セカンド。中国からはレノファ山口。九州からは沖縄かりゆしFCといった錚々たるラインアップだ。
 特に昨季の大会で湘南を破り、4回戦まで進んだ松本山雅、その彼らと切磋琢磨する金沢の2チームは今大会ジャイアントキリングの主役候補。陣容はJFLのそれを上回る勢い。中国を制した山口や讃岐も十分何かを起こしてくれそうな気がする。上を目指すクラブが増え、地域リーグのカテゴリーも市民権を得てきた今日、これらのチームの奮闘が天皇杯序盤戦の盛り上がりには欠かせなくなってきた。

 さすがに最終的にタイトルを奪うのはJクラブであることは間違いないだろうが、少しでも格下チームが反旗を翻す「大金星」に期待したいところだ。

鮮烈!これがサガン鳥栖! ~天皇杯5回戦 神戸VS鳥栖~

2008年11月15日 | 脚で語る天皇杯
 ホームズスタジアム神戸で行われた天皇杯5回戦。J1の神戸と先週大分を破ったJ2の鳥栖が対戦。5-2で鳥栖が華麗なジャイアントキリングを達成し、圧勝した。

 

 センセーショナルな立ち上がりだった。開始わずか1分で鳥栖は、左サイドを走りこんだ野崎のクロスに藤田が左足で合わせて先制。もの凄い勢いで前線からのチェイシングを実行し、攻撃への切り替え時には大胆なダイレクトプレーでゴール前に一気にボールを運ぶ鳥栖。9分には、その中盤のダイレクトプレーから左サイドに走り込んだ廣瀬が粘ってクロスを中央に送ると、藤田がシュートを放ったこぼれ球にフリーの高橋が詰めて追加点を奪った。

 
 前半から飯尾とともに集中した守備を見せた鳥栖DF内間

 
 開始直後の先制点をお膳立てしたMF野崎

 26分には、三たび左サイドからチャンスを掴んだ鳥栖。島嵜のクロスに廣瀬が合わせて3点目を奪い、試合を早い段階から決定づける。大久保、ボッティ、レアンドロが不在といえ、現在リーグでも絶好調な神戸を前に、J2で6位に位置する鳥栖が、完全に試合をリードする信じられない光景が広がった。

 
 神戸からボールを奪う鳥栖の守備 攻守の切り替えが早かった

 
 神戸はFW吉田が孤立 コンビを組んだ岸田は15分で交代

 開始わずか30分経たぬうちに、3点のリードを奪われてしまった神戸。15分にこの日スタメン起用されたFW岸田を下げ、鈴木を投入し、左MFの栗原を前線に上げる。左右のMFである田中と鈴木のポジションチェンジで何とかリズムを生み出したい神戸だったが、前線の吉田が孤立し、チャンスを生み出せない。鳥栖は守備でも完全に自分たちのリズムを掴んでいた。CBの飯尾を中心に、前線に藤田を残したほぼ全員で守備に徹する鳥栖は、まさに鉄壁と言えるべき集中した守備を構築していた。

 
 神戸は田中を軸に攻撃のチャンスを作りたかったが

 
 2点目を決め、鳥栖の猛攻を組み立てたMF高橋

 後半に入って神戸が河本のゴールで1点を返すが、鳥栖の猛攻は衰えることなく、52分には、廣瀬が4点目となるゴールを決める。右サイドで高橋から右SBの日高に繋ぎ、その日高からのクロスを廣瀬が右足で合わせる美しい展開だった。5分後には、前線で藤田がヘッドで競り合って落としたボールを高橋が上げると、走り込んだ藤田がダメ押しの5点目。5得点全てサイドからの崩しで、効率的にゴールを奪った鳥栖が、神戸の追い上げをその後1点に留め、圧勝でベスト8入りを決めたのだった。

 
 52分に日高のクロスを廣瀬がこの日2点目となるゴール

 
 名手、金南一も鳥栖の前に沈黙

 
 神戸DF北本も、まさかの5失点に意気消沈

 唸らざるを得ない鳥栖の攻撃的スタイルに驚きを隠せない試合だった。神戸にミスが多かったのは確かだが、キックオフから果敢にチェイシングを徹底させる鳥栖の“がむしゃらぶり”は計算にも裏打ちされ、必然の結果を生んだといえるだろう。得点源の藤田は、完全に守備タスクを免除され、前線に張って起点になった。その分をフォローすべく、中盤で高橋、船谷、島嵜がハードワークを厭わない。マイボールにした際の両SBの攻撃意識は、即座にチャンスを生み出す決定的要因になった。
 印象に残ったのは、1対1の場面で鳥栖はほとんどアドバンテージを掴んでいた点。球際の強さが目立ち、相手からボールを奪う力強さは秀でていた。

 
 鳥栖を率いるのは、名物監督の岸野氏 熱く義理深い指揮官だ

 
 遙々神戸まで駆けつけたサポーターと歓喜を分かつ

 確かに神戸のミスは響いた。開始直後に失点したことで、前がかりになったところをとことん突かれたが、やはり鮮烈な印象をもらったのは、そこを突いた鳥栖の攻撃的な姿勢。天皇杯の“一発勝負”の怖さとともに、彼らの熱さは確かにJ1のチームを凌駕していた。

 
 チームを背負う不動のエース藤田 その嗅覚は凄まじい

 
 今大会の台風の目、サガン鳥栖 次戦は横浜FMだ!

第88回天皇杯4回戦 ~京都 VS 水戸~

2008年11月02日 | 脚で語る天皇杯
第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦
13:00キックオフ @西京極運動公園陸上競技場兼球技場

○京都サンガF.C. 3-0 水戸ホーリーホック●

得点
11分安藤
46分西野
47分林

<京都サンガF.C.メンバー>
GK21水谷
DF22渡邉、24増嶋、5手島、4中谷(HT=25西野)
MF30加藤弘、26角田、3シジクレイ(74分=15中山)、18安藤
FW11林(79分=31宮吉)、13柳沢

<水戸ホーリーホックメンバー>
GK1本間
DF30中村(61分=17金澤)、3平松、32大和田、2小澤
MF18赤星、7村松(78分=37朴宗眞)、16パク、6堀(61分=26ビジュ)
FW9荒田、19西野

 

 昨季は同じJ2で戦っていた両チームの対決。昨年は初戦で明治大に敗退した京都だったが、ホーム西京極で4回戦をきっちり勝利し、リーグ戦6試合未勝利の中、久々の公式戦勝利を手にした。

 

 これまで京都に勝ったことがない水戸が、試合の立ち上がりこそは素早い連動とパス回しでペースを掴んだ。しかし、それも束の間。この日右SHで先発出場の加藤弘が渡邉と上々のコンビネーションを見せる。11分にはその加藤弘のパスから渡邉が相手DFの裏に巧みなパス。これを受けた安藤がDFを背負いながらも落ち着いて反転し、先制点を決める。佐藤、フェルナンジーニョを温存した京都は、中央からのアタックにやや迫力を欠いたものの、右サイドを起点に試合の流れを掴んだ。

 
 11分、安藤が落ち着いて先制点を決める

 
 この数試合、気を吐く増嶋 京都でのシーズンで大きく成長

 前半の中盤には水戸も京都のミスを突いて、攻撃を牽引する赤星を中心にチャンスを作るが、GK水谷をはじめ、集中した京都の守備を崩せない。39分には赤星が左サイドの角度のない位置から技ありのループシュートを狙うがシジクレイが間一髪でクリア。41分にはその赤星のクロスに西野がヘッドで合わせるも、ゴールは遠い。

 
 水戸は赤星からチャンスを多く作ったが、ゴールを奪えず

 後半開始から京都はFW西野を投入。角田を最終ラインに回し、3-4-3の布陣にシフト。相手が格下とはいえ、内容を重視したサッカーを目指す。するとこの策は効果覿面。後半開始早々の46分には、柳沢のロングパスを西野が頭で折り返したところを林がシュート。こぼれたところに反応した西野が詰めて追加点。その1分後には、林が3点目となるシュートを決めて試合を決定づけた。

 
 投入直後の追加点でチームに勢いをもたらした西野

 
 2点目、3点目を呼び込んだのは林

 前半に比べても、攻撃のリズムは明らかに良くなった京都。54分には西野がゴール前で決定的なチャンスを迎えるが、水戸GK本間のファインセーブに遭う。79分には高校生プロプレイヤーの宮吉を投入するなど、追加点は奪えなかったが、余裕のある采配も見せた京都がきっちり天皇杯の初戦をモノにした。

 
 攻守にフル回転 年齢を感じさせないシジクレイ

 
 及第点の活躍を見せた加藤弘 レギュラー争いに加わりたい

 
 前半は中盤で、後半は最終ラインでチームを統率した角田

 京都は後半、攻撃に鋭さが増した。特に西野と林はゴールに直結する動きで存在感を大いに発揮。終盤のリーグに向けて存在感をアピールした。そしてわずか16歳の宮吉も出番を得たが、個人的には3点目が入った直後から見たかった選手。加藤弘、安藤も含め、若手の台頭が著しく見えた試合で、確実にJ1残留を決めたい京都。昨季の初戦敗退に比べれば、大きな収穫があったのではないだろうか。

 
 京都に欠かせない柳沢の存在 この調子で早めにJ1残留を決めたい

 
 遙々水戸から駆けつけたサポーターを労う沼田社長 微笑ましい一幕

第88回天皇杯3回戦 ~セレッソ大阪 VS ソニー仙台~

2008年10月12日 | 脚で語る天皇杯
第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦
13:00キックオフ @長居スタジアム

○セレッソ大阪 1-0 ソニー仙台●

得点
65分ジウトン

 

<セレッソ大阪メンバー>
GK21山本
DF5前田、2羽田、23山下
MF34平島、4藤本、10ジェルマーノ、18ジウトン、31乾
FW24白谷(68分=6濱田)、33カイオ

 

<ソニー仙台メンバー>
GK1金子
DF2橋本、25谷池、5亀ヶ渕、26天羽
MF7大瀧、22千葉、4瀬田、19麻生
FW8本多(61分=6桐田)、10高野(69分=9村田)

 

 JFLのソニー仙台をホームスタジアムの長居に迎えて天皇杯の緒戦を迎えたC大阪。どんよりとした上空の雲の如く、格下のソニー仙台を相手にC大阪は前半から攻めあぐねながら、1-0と辛勝。何とか4回戦の大宮アルディージャ戦へ駒を進めた。

 先日、香川が代表戦で初ゴールを決めたのは記憶に新しいが、この日のC大阪はその香川の不在を埋めるべく3バックを敷き、左SBでプレーすることの多いジウトンを2列目のサイドハーフで起用。右サイドには平島、トップ下に乾が入るという布陣で試合に臨んだ。一方のソニー仙台は、現在JFL9位につける今季の戦いぶり。攻守にバランスのとれたチームを牽引するのは、DF谷池、天羽といった数少ないJリーグ経験者たちだ。

 
 前半から右サイドをアップダウンし、攻撃のリズムを与えたDF平島

 香川を欠いても、対峙する相手は格下のJFLチーム。C大阪はいつも通りのサッカーをすれば勝算はあったはずだが、序盤からチャンスはことごとくゴールに嫌われる。特にカイオとコンビを組んだ白谷は8分のチャンスから、24分、34分と再三の決定機をフイにし続けた。保持率では圧倒的に支配するものの、前半から目立ったのはアタッキングエリアでの勝負弱さだった。ソニー仙台に2列目も含めた全員守備を徹底され、千葉、瀬田のボランチコンビが息の合った連携で、C大阪の藤本、ジェルマーノを抑えた。中央で起点になったのは乾のみ。歯ぎしりするような攻撃を打開すべくC大阪は左右の平島、ジウトンをもっと活かしたかった。

 
 前半から決定機をフイにし、急ブレーキになってしまったFW白谷

 
 カイオはもっと高さを活かしたかった

 後半に入ると、60分に大瀧が左サイドのクロスにヘディングシュートを合わせるも、GK山本がかろうじてセーブするなど、ソニー仙台も意地を見せる。そんな中、冷や冷やするC大阪サポーターの待ちに待った先制点は65分に訪れた。
 前半に比べて高い位置でポジションを置けるようになったジェルマーノがエリア手前でシュートを狙うと、相手DFがブロック。このこぼれ球をジウトンが奪い、エリア際の左サイドから低いクロス。これをカイオが巧く合わせたようにも見えたが、そのままゴールラインを割っており、C大阪が先制する。
 立て続けに追加点を奪いたかったところだが、予想以上にシステマティックなソニー仙台の前にその後もC大阪攻撃陣は沈黙。それどころか、終了間際には彼らの猛攻を食らい、途中出場、ソニー仙台FW桐田の強烈なシュートをゴールライン上でC大阪前田がクリアするなどの場面も見られた。

 
 値千金のゴールを奪ったジウトン サイドで存在感を発揮

 
 C大阪のDFラインを統率する前田(前方)と羽田(後方)

 J1昇格に向けて1試合も落とせない厳しい戦いを強いられているこの時期に、こんな肝を冷やす試合をしてしまったことで、サポーターの不安は拡大したかもしれない。ノックアウト方式なので、スコアは関係ないが、やはりC大阪には“ゴール”で格の違いを見せて欲しかった。寂しさ際立つ調整試合にしか見えなかった印象も否めないことを考えれば、モチベーションの方向は天皇杯どころではないという叫びもチラホラ聞こえてきそうだ。それは今日の有料入場者数わずか2,403人という数字が物語っているのかもしれない。

 
 前半から獅子奮迅のドリブル突破を見せたソニー仙台MF麻生

 
 60分のチャンスを決めたかったソニー仙台MF大瀧

 他会場の結果を見ても、JFLを含めたアマチュア勢とJ2の差が決して大きくはないということが分かる。栃木SCはPK戦の末に熊本を下した。関東1部リーグの日立栃木UVAも山形を相手に1-4で敗れるが、延長戦へ持ち込む戦いを見せた。国士舘大が徳島に完封勝利を果たしている。横浜FCも終了間際の逆転劇で沖縄かりゆしFCに辛勝。愛媛も佐川印刷相手に先制される展開ながら、逆転勝ちを収めている。
 
 敗れることはなかったが、足下をすくわれかねない薄氷の勝利で試合を終えたC大阪。“ホームの利”もどこへやら。閑古鳥の鳴くスタンドと危なっかしい終了間際の試合運びに、ほとんどゴールシーンの歓喜は記憶から遠ざかってしまった気がする。


第88回天皇杯2回戦 ~カターレ富山 VS ツエーゲン金沢~

2008年09月21日 | 脚で語る天皇杯
第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦

●カターレ富山 1-2  ツエーゲン金沢○
得点
9分永井(金沢)
62分永井(金沢)
82分長谷川(富山)

13:00キックオフ @加古川市運動公園陸上競技場



<カターレ富山メンバー>
GK中川
DF26中田、3堤、4金、19西野
MF7朝日、8渡辺(66分=18羹)、16景山(55分=17木本)、10上園
FW13長谷川、15石田

 

<ツエーゲン金沢メンバー>
GK20水上
DF27大河内、19中尾、6森、4辻田
MF14稲垣、5山田、26奈良、10木村
FW8吉田(77分=16海野)、9永井(88分=22川上)

 
 試合直前には富山サポから金沢サポにきつ~い挑発が

 加古川で行われた北陸対決。遠方にも関わらず多数駆けつけたサポーターの前でジャイアントキリングは達成された。今季、群雄割拠の北信越リーグで3位に終わり全国地域リーグ決勝大会へ出場できなかったツエーゲン金沢がJFLのカターレ富山に挑んだ注目の一戦。前半の早々に先制した金沢が格上の富山を2-1で下し、3回戦進出を果たした。

 
 前半戦は豪雨にまみれた北陸対決in加古川!

 上空を厚い雨雲が覆い、13時キックオフにも関わらずスタジアムは照明に照らされた。前半の途中からは激しい雨が降り出したが、両チームのサッカーは互いのプライドが激しく火花を散らし、強烈な雨脚をモノともしない。
 この試合は徹底すべきサッカーのスタイルを打ち出した方の勝利だったと言える。格上の富山相手にまずしっかり守ってカウンターに徹した金沢は狙い通りだった。対して富山は、ボールをある程度支配できるもののミスが多く、終始攻守の緩急に欠けた。
 前半9分、攻勢に出ていた富山のDFラインの隙を突いて、ロングボールに抜け出した金沢FW永井がそのままGKとの1対1を冷静に決めて先制する。電光石火のカウンターで思いがけないリードを金沢が奪った。
 富山は、この試合に勝利すれば3回戦はホーム富山でのFC岐阜戦。何としてでも勝ちたい試合だった。先制された後も上園、朝日を中心に押し込み続けた。しかし、中央の2トップに良い形でボールが繋がらず、どうもシュートが的を捉えられない。攻撃のバリエーションも少なく、人数を割いて守る金沢を崩すことはできなかった。

 
 金沢の攻撃の起点になったMF奈良

 
 2得点でジャイアントキリングの原動力になった金沢FW永井

 後半も富山はボールをキープするが、ボールを奪ってからの連動性は金沢に分があった。62分に左サイドに走りこんだFW永井がこの日2点目のゴールを決める。MF木村、FW吉田、永井の3人がスピーディーに縦へ仕掛けていくサッカーは大いに見応えがあり、決して試合を支配した訳ではなかったが、永井の2点目で勝負は決まったと言っても良かった。守備面では、CB中尾と森が奮闘。ハイボールへの制空権を握り、PA内で相手2トップを封じ続けた。
 富山は途中出場の羹が何とかリズムを作って、82分にPA内でボールを受けたFW長谷川が意地の1発を返すが、終盤の富山の猛攻を凌いだ金沢が見事逃げ切り、3回戦のFC岐阜戦へ進出を果たした。

 
 2点目を決めてボルテージ爆発のスタンドへ向かうFW永井

 
 大挙して駆けつけた金沢サポも歓喜爆発

 
 奈良県出身のFW吉田も持ち味を発揮した

 加古川という互いのチームに縁もゆかりも無い地で起きたドラマ。勝どきを上げる金沢サポーターの歌声は試合後のスタジアムにいつまでも鳴り響いた。

 
 試合後、金沢サポからカターレ富山へエールの横断幕が

 
 次戦は皮肉にも今日勝った富山のホームでFC岐阜に挑む