脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

最終戦、至極のマッチアップ -SAGAWA SHIGAvs長野-

2011年12月10日 | 脚で語るJFL
 今季のJFLも残すところ最終節のみとなった。最終節とはいえ厳密に言うと震災で延期となっていた前期第1節。佐川守山陸上競技場では前節の讃岐戦で2年ぶりの優勝を決めたSAGAWA SHIGA FCが2位につけるAC長野パルセイロと対戦。ハイレベルな攻防戦は、後半SAGAWA SHIGAがセットプレーから2点を奪うと、長野の反撃を1点に押さえて逃げ切った。長野もJFL昇格1年目ながら準優勝という結果で2011年シーズンを締め括った。

 

 

 
 SAGAWAは試合後に岡村の引退が発表された。
 GK村山は岡村の「6」のユニフォームを着て写真撮影に。

 
 長野は昇格1年目とは思えない善戦ぶり。
 勝てばSAGAWAとの勝点差1でシーズンを終えることになる。

 SAGAWA SHIGAは中村が出場停止で、御給、森田が控えスタート。今季のSAGAWAを見るのは初めてだったが、昨季までの良く知るSAGAWAとは少し陣容が変わっていた。しかしながら、天皇杯・G大阪戦でも度々Twitter上では話題に上がっていた若手の奈良輪をはじめ櫛引、清原、鳥養といった若手が先発出場。もちろん主将の山根をはじめ最終ラインを束ねる冨山、旗手、大杉、そして攻撃の核である大沢などは健在。中盤には出場停止の中村に代わってびわこ大から加入2年目の小池が先発に名を連ねていた。
 対する長野も今季から加入の谷口や寺田、向、藤井などの選手と、これまでチームを牽引してきた既存選手ががっちり融合しているようで、JFL昇格1年目ながら19勝6分7敗という驚異的な戦績。特に失点数25というのはリーグ屈指の数字で、守備出身の薩川監督の指導の賜物か。とにかく十分JFLで戦えることを証明している。思えば、1年前の地域決勝大会、1次ラウンドをワイルドカードで勝ち上がってきたというのが信じられない。前線の宇野沢、藤田のコンビはその時から変わらず。元々強いチームだということは自明だったが、それをJFLの舞台で見られるのは純粋に楽しみだった。しかも相手は王者・SAGAWA SHIGA。どんな戦いを見せてくれるのか。

 試合は序盤から激しい攻防戦。最終ラインからしっかり組み立てる長野に対して、サイドを効果的に使いながら緩急つけた攻撃で長野を揺さぶるSAGAWA SHIGA。9分には左サイドバックの藤井が威勢よくドリブルで進撃。最後は攻め上がった野澤が鋭いシュートを放つ。どちらも守備の堅いチーム、1点を争う勝負が予想されたが、序盤は長野がシュートを積極的に狙っていった。

 
 東京Vから移籍加入の向がドリブル突破。
 長野は中盤のスペースをドリブル多用で攻めていく。

 
 SAGAWA SHIGAのライトサイダー奈良輪。
 攻守に好プレーを披露。

 
 長野に今季から加入した谷口はかつて滋賀県リーグでプレー。
 先発のCBとしてチームを牽引していた。

 長野の攻勢にも怯まず、自分たちのサッカーにしっかりシフトするSAGAWA SHIGA。中村が出場停止だった面で攻撃の手数はかかっていたのだろうが、それでも大沢のドリブルや山根のパスによるチャンスメイクで次第に長野を凌駕。30分にはCKから櫛引が惜しいヘディングシュートを放つと、43分には山根が際どいシュートをお見舞いする。これはゴール左にわずかに外れたが、前半は0-0で両者後半へ折り返すこととなった。45分間があっという間の好ゲームだった。

 
 相変わらず宇野沢が存在感のある選手。
 本人ももう一度Jの舞台でやりたいはず。

 
 その宇野沢と組む藤田。
 昨季の地域決勝でもこのコンビは際立っていた。

 
 ベテラン山根はSAGAWA10年目。
 佐川東京時代からの古参選手だ。

 後半に入るといきなり試合が動く。開始1分経たぬうちにCKからこの日先発出場の小池がヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。長野は完全に後半の出鼻を挫かれた。先手を打とうしていた長野は追いかける展開に。58分には藤田に代えて平石を投入して反撃に出る。64分にはこの平石が左から鋭いシュートを決めたが、判定はオフサイド。長野は1点が近いようで遠い。

 
 
 先制点の場面。セットプレーからSAGAWA SHIGAが先手。

 
 野澤は左ではなくて中央でプレー。
 昨季の地域決勝でも特に印象に残っていた選手。

 
 先制点を決めたSAGAWA SHIGAの小池。
 地元のびわこ大から加入して2年目の選手。

 72分には大沢を下げて宇佐美を投入し、逃げ切りの態勢を見せるSAGAWA SHIGAだったが、その直後にCKから今度は清原が合わせて追加点。長野を突き放す。崩せなくてもセットプレーで確実に奪えるSAGAWA SHIGAの強さを実感。

 
 清原が追加点。歓喜の先には引退を決めた岡村の姿が。

 
 大橋の献身的な守備は長野に欠かせない。

 
 大島も柏から長野へ移籍して3シーズン目。
 今では谷口とコンビを組む。

 76分に長野もFKから野澤が頭で決めて1点を返す。まだ時間は十分と言わんばかりに攻勢に出る長野。守るSAGAWA SHIGA。同点の機会も十分にあった長野だったが最後までSAGAWA SHIGAの守備を割ることはできず、2-1でタイムアップとなった。

 
 終了間際には御給(左)が途中出場。
 彼が途中出場というところに時の流れを感じる。

 
 長野の猛攻。
 宇野沢のシュートは体を張って止められる。

 JFLの1位と2位の対決に相応しいハイレベルな応酬だった。スコアも含めて勝敗を分けたのは僅差なものだった。メンバーが変わっても一定のクオリティを維持するSAGAWA SHIGAの層と質も驚きだが、そこに互角以上の戦いを見せている長野も素晴らしい。松本山雅と町田がJ2参入となるであろう来季は共に優勝候補に挙げられるだろう。スタジアム問題がクリアすれば長野もJ参入のチャンスは見えてくる。また、アマチュア企業クラブとしての矜持を「優勝」という形で改めて見せてくれたSAGAWA SHIGAも今後上位2チーム(2012年シーズンからのJ2とJFLの入替戦実施が濃厚。もし、その場合J2下位2チームとJFL上位2チームがその対象になるが、JFL2位チームはJ2・21位との入替戦を戦わなければならないことが予想される。クラブライセンスとの兼ね合いもあり、JFLからJ2への参入は一層至難となる見込み)となるJ参入枠の前に強固な「門番」として立ちはだかるだろう。
 とにかくSAGAWA SHIGA FC、2年ぶりの優勝おめでとうございます。

 
 佐川大阪時代から数えると6シーズン。優勝は3回。
 S級ライセンスを持つ中口監督。
 果たして近い将来Jで指揮を執る日は来るのだろうか。

 
 
 23勝1分9敗。総得点60、総失点34での優勝。
 JFL2年ぶり3度目の優勝を果たしたSAGAWA SHIGA FC。
 間違いなくアマ最強チームだ。
 

HOYOの飛躍、JFLをほぼ当確へ -相模原vsHOYO-

2011年12月06日 | 脚で語る地域リーグ
 今季の全国地域リーグ決勝大会も最後の対戦カードに。残る椅子は1つ。入替戦と目されていたこの3位の座は、この日のJFLの展開で(来季のJ2参入を当確させた松本山雅と町田と、ジェフ・リザーブズの解散もあって16位・ソニー仙台の残留がほぼ決定)入替戦なしでのほぼ自動昇格となった。そしてこの3位の座を懸けたS.C.相模原とHOYO AC ELAN 大分の試合は2-1でHOYOが勝利。HOYOがこの3位として来季のJFL昇格をほぼ決定づけた。対する相模原は決勝ラウンド3連敗で4位に終わった。

 
 いよいよ今季の地域決勝大会もこの試合が最後。
 相模原かHOYOか。昨年のひたちなか以来のカード。

 
 相模原は、八田、井上、富井、吉岡が同時に先発に名を連ねた。
 90分勝利しかJFLへの道はない。

 
 HOYOは90分敗戦を回避すればOK。
 この試合でGKは船津ではなく野寺を起用。

 1次ラウンド3連勝の相模原がもう全く後がない状況にまで追い込まれた3日目。相模原としてはもう90分勝利でようやく3位に滑り込めるという背水の陣であり、HOYOにとっては90分で負けなければ絶対優位というかなり大きなアドバンテージの違いがあった。ちなみに地域決勝大会でのこの対戦カードは昨年のひたちなかでの1次ラウンド以来。その時には相模原が2-2からPK戦6-5でHOYOを辛くも振り切った。1年を経ての再戦となったわけだ。

 試合は、相模原が攻勢と行きたいところだったが、HOYOはまず守備をきっちり固めて動じない。8分に森谷のミドルシュートをHOYO・GK野寺がセーブ。18分にも相模原は、金澤の右サイドからの絶好の折り返しを齋藤があと一歩決めることができなかった。チャンスは作るが、ゴールが遠い相模原。そんな彼らに追い打ちをかける展開が訪れる。
 21分、相模原守備陣の裏へ右サイドからエリアに侵入した中嶋を相模原・DF井上が後ろから押す形で倒してしまい、これにはもちろんPKの判定。HOYOはこのPKを倒された中嶋自らが決めて貴重な先制点を挙げる。

 
 相模原にとっては慎重にいきたかった場面だったが…

 
 
 
 中嶋がPKを決めてHOYOが先制に成功する。

 すると、ここから相模原はエクスキューズな施策に。この先制点の場面でどこか痛めたのか井上を下げてここまで2試合先発起用されていた中川を急遽ピッチへ。続く35分には富井を諦めて、代わりに村野を投入する。前半40分も経たぬうちに2枚のカードを切ってしまう異常事態に何かしらの動揺を隠せない。しかし、1点を追うために前へ前へボールを進める相模原の焦燥感はひしひしと伝わってきた。この試合では佐野が前線で齋藤と組むような形で、森谷がそれをサイドハーフの位置でサポートする布陣だったが、この佐野が完全にHOYO守備陣にマークされていた。結果的に点取り屋の齋藤の効果的にボールは入らない。1日目から森谷のゴールへの執念は見られたが、チーム全体で相手の守備網を崩すといった場面はなかなか見られなかった。この試合の33分には前がかりになったところを奪われて一気にゴール前へロングボールを繋がれてピンチになる場面もあった。GK山本の好守でここを乗り切り、前半を1点のビハインドで相模原は折り返す。

 
 HOYO・佐藤を自陣で追い込む相模原・森谷。

 
 守備に徹する時間が多かったが、切り替え役はこの田上。
 HOYOのコンダクターとして存在感を発揮。

 
 とにかく積極的に前へボールを送る相模原。
 工藤が最後尾で闘志を前面に出したプレー。

 後半に入って、その相模原のトライは結実する。60分に途中出場の村野がCKから相手のクリアボールに頭で合わせて同点に。相模原の意地がここから見られる。そんな展開になるかとも一瞬思った。しかし、このゲームは結果的にはHOYOのゲームだった。そう思わせたのは5分後、65分にHOYO・MF原が途中出場の直後に目の覚めるようなミドルシュートをエリア手前から決める。佐藤が相模原のエリア内で粘ってボールキープし、フリーの原に上手くリターンパスを送った。

 
 HOYOの2点目の起点をそのボールキープから生み出した佐藤。
 シュートこそなかったが値千金のアシスト。

 
 1次ラウンドに比べると、その快足ぶりが影を潜めた金澤。

 
 村野がヘッドでゴールを決めて勢いに乗るかと思いきや…

 無理をせずに自陣で11人が守るHOYOに対して、攻め込んでいくしかない相模原。2点目を奪われた直後には八田に代えて天野を送り込みサイドを活性化させる。72分には村野が惜しいシュートを見せるが得点には至らない。75分にはセットプレーからゴール前の混戦で齋藤がシュートを試みるが、エリアに一体何人が密集しているんだというようなHOYOの壁の前にそのシュートを弾かれる。この直後にHOYOは自陣からボールを持った堀が一気にドリブルで駆け上がり、強烈なシュート。相模原はかろうじてGK山本がこれをセーブするが、油断すればこのような針の穴を通すような堀のドリブルシュートが襲ってくる。まさにハイリスクだが、全員攻撃でHOYOの守備を崩さなければならなかった。

 
 HOYOは前線にこの堀がいる限り常に脅威。
 カウンターでスナイパーの如くゴールを狙う。

 
 落ち着いた守備を見せたGK野寺。
 2日目まではベンチを温めたが、この試合ではアピール。

 結局最後まで相模原は再度同点に追いつくことができずタイムアップ。この瞬間、HOYOの最低でも入替戦、ほぼJFL昇格が決定となった。大分県リーグから九州リーグに昇格2年目でのスピード昇格。堅い守備で勝利に徹したサッカーを見せた。

 
 タイムアップの瞬間。
 両者、死力を尽くした戦いに膝を落とす。

 
 3位に滑り込んだHOYO。
 JFLの結果からも来季の昇格はほぼ当確。

 
 選手を労う相模原・望月監督。
 1次ラウンド3連勝のチームが3連敗…
 本当にこの大会は恐ろしい。

 HOYOは1日目を0-4で落としながら、残り2日を2連勝。元来守備には定評があったチームで得点力も非凡なだけあって、昇格してもおかしくない実力だった。結論からいうとY.S.C.C.の1日目のサッカーが強すぎたということか。しかしながら、大分を拠点にJリーグ経験者を多数有し活動するHOYO、現在ではすっかりサッカーどころ(Jクラブ5、JFLクラブ2)の九州に新たな全国リーグのチームが誕生したということになる。HOYOの選手、スタッフ、関係者の皆様おめでとうございます。HOYO AC ELANの「ELAN」とはポルトガル語で「飛躍」という意味とか。来季からの飛躍に要注目のチームだ。
 対する相模原は、優遇措置としての2年連続の挑戦は結果を出せずに終わった。厳しい現実。同じBグループを戦った当事者としてもこの衝撃は隠せない。それだけ地域決勝大会という大会がどれだけ過酷で恐ろしい大会かということを実感できたといえる。来季も間違いなく相模原はこの舞台に勝ち上がってくるだろう。JFL昇格を争い、今季以上の戦いを奈良クラブと演じる機会があればと切に思うばかりだ。

藤色の軍団、JFLへ -Shizuoka.藤枝vsY.S.C.C.-

2011年12月05日 | 脚で語る地域リーグ
 今季の全国地域リーグ決勝大会もいよいよ最終日である3日目を迎え、2日目に来季のJFL昇格を決めたY.S.C.C.に続けと、ここまで勝点4ポイントで2位につけるShizuoka.藤枝MYFCがそのY.S.C.C.と対戦。第2試合の結果に関わらず、この試合に90分以内での敗戦を喫しなければ、自動昇格枠の2位が手堅い藤枝は、試合を1-1からPK戦に持ち込み、ここまで2連勝のY.S.C.C.に7-6で勝利。これで決勝ラウンド2位を手中にし、来季のJFL昇格を決めた。JFAによるテクニカル映像はこちら

 
 2日目をPK敗戦した藤枝だったが、アラン、石田が復帰。
 この3日目で勝点では残り3チームでは非常に優位だった。

 藤枝は2日目に警告の累積で出場停止だったアランと石田が先発にカムバック。前日に退場処分を食らった奈良林を欠くものの、チョン・リュンポがこれをカバーする。
 対するY.S.C.C.は一足早くJFL昇格を決めたが、勝負は最後まで追求。前日のメンバーからGK浜村、DF片根がこの決勝ラウンド初先発で名を連ね、1日目に途中出場から活躍した吉野が森田に代わって先発を務めた。

 試合はいきなりのスーパープレーで幕を開ける。ハイボールにY.S.C.C.のDFと藤枝・石田が競り合ってこぼれたボールに、藤枝・アランが約35mはあろうかという距離からそのままダイレクトボレーシュートでゴールへ叩き込む。あまりの一瞬の離れ業にスタンドからはどよめきが。持ち前の得点力を発揮するとこの男がどれだけ脅威かということを知らしめた1点で藤枝が試合を先行する。

 
 スーパーシュートで試合を動かした藤枝・アラン。
 こんなシュートはこのカテゴリーでは規格外。

 
 15分には藤枝・納谷のFKにアランがこのヘッドでチャンスを作る。

 ところが、Y.S.C.C.も黙ってはいない。18分にセンターサークル付近で藤枝のアランからボールを奪うと、一気に速攻。辻がエリア前からシュートを一度は試みるもブロックされたこともあって、落ち着いて後ろからフォローに回った平間に返すと、その平間から左サイドの後藤へ。この後藤が一気に縦を勝負すると、グラウンダーの折り返しをゴールエリアへ放つ。すると、これを中で待ち構えた吉田が体を捻りながらゴールへ流し込んだ。Y.S.C.C.がその組織力の高さを見せつけて同点に追いついた。

 
 
 
 
 
 吉田の渾身のシュートがネットを揺らす。
 昇格が決まっても目の前の勝負を諦めないY.S.C.C.の同点劇。

 1-1というスコアになってもその後も両者は譲らず。共に決定機を作り合いながら後半へ折り返す。わずかにY.S.C.C.が地力で藤枝を凌駕する展開だった。

 
 Y.S.C.C.の辻をマークする藤枝・DF望月。

 
 1アシストのY.S.C.C.の左サイドバック後藤。
 東農大から今季加入の選手だが、3日間で特に印象に残った。

 後半に入ると、藤枝も果敢に追加点を狙いに来る。57分にホン・テイルがループシュートを狙うが惜しくも決まらず。76分には左からの折り返しにアランがヘッドで合わせる。やはり2日目に比べると、流動的にポジションを右に左に変え続けるアランの存在は相手チームにとっては厄介なもの。この試合だけで1人でシュートを8本も放っているこの優良助っ人外国人をなんとかブロックしてY.S.C.C.はこの試合をPK戦へ持ち込んだ。

 
 PK戦へと突入。
 藤枝はこの時点でかなりJFL昇格を近づけた。
 負けても第2試合でHOYOが5点差をつけて勝たない限り2位は約束された。

 このPK戦では、8人目のY.S.C.C.のキッカーを藤枝・GK豊瀬がセーブすると、そのまま藤枝の8人目をその豊瀬が務めて見事にキックを決めるとゲームセット。勝点を5ポイントとした藤枝が見事に来季のJFL昇格を掴んだ。

 
 相手のキックを止めた後、ボールをセットする藤枝・GK豊瀬。
 これにはスタンドからどよめきが。千両役者。

 
 
 そしてこの豊瀬が1人でPK戦をクロージング。
 藤枝が勝利、そしてJFL昇格決定。

 
 
 
 かつて藤枝ネルソンとしてその産声を上げたチームは、日本で初めてネットオーナーシステムを採用し、ネットオーナーによってチームの運営や強化方針を決めていくというチーム・藤枝MYFCとして歩みを新たにする。2010年には既存の静岡FCと統合してShizuoka.藤枝MYFCとなったが、その静岡FC時代にも何度も挑戦してその扉を開けられなかったJFLという高みにようやく辿り着いた。この決勝ラウンドでも攻守のバランスの高さで常に安定した戦いを披露した。Y.S.C.C.と並んでのJFL昇格。改めてAグループの2強の強さをこの試合のレベルの高さからも実感したのは間違いない。来季、サッカーどころ静岡において既におなじみであるHonda FC以外では久々のJFLチーム(静産大以来か)ということで、どんな戦いぶりを披露するのか楽しみ。選手、スタッフ、関係者の皆様、本当におめでとうございます。

 
 選手兼監督(ヘッドコーチも含めて)として3年目。齊藤が宙を舞う。
 元日本代表の名DFがチームを牽引した。

3年越しの悲願、Y.S.C.C.JFL昇格を掴む -相模原vsY.S.C.C.-

2011年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 続く第2試合では、関東勢同士の対戦。こちらもここまで再三火花を散らしてきたチーム同士、JFA優遇枠のS.C.相模原と関東王者Y.S.C.C.が対戦。試合はY.S.C.C.が先行する展開で2-1と逃げ切った。これでY.S.C.C.の2位以内が当確。来季のJFL昇格を決めた。対する相模原は最高でも3位に滑り込むしかない背水の陣となった。

 

 

 天気が崩れ、第1試合の前半に見られた晴れ間が嘘のような曇天で、雨が降り出してくる天候。しかし、昨季3度も相まみえたライバル同士の因縁の対決が最も両者明暗の分かれた形で迎えることになろうとは。Y.S.C.C.にとっては昨季の地域決勝大会のひたちなか1次ラウンドで敗戦を喫したこのカード。その時は相模原の劇的な敗戦でY.S.C.C.が決勝ラウンドに進むことになったが、決勝ラウンドではY.S.C.C.は4位に沈んだ。万感の思いが交錯するこの巡り合わせ、2009年のアルウィン、2010年のひたちなか、市原、そしてこの長居第2とY.S.C.C.を見てきた者としても感慨深い。前日相模原は藤枝に敗戦。ここで負けると後がなくなる。Y.S.C.C.は前日圧勝スタートでこの試合で90分勝利を掴めば昇格を当確させる。緊迫の90分間が始まった。

 「平日のY.S.C.C.はもう卒業」という言葉がY.S.C.C.サポーターの方から出た1日目。まさにこれまで仕事との兼ね合いでメンバーをなかなか揃えられなかったことがY.S.C.C.のウィークポイントだった。路線としてのアマチュアクラブならではの悩みではあるが、それでもこの決勝ラウンドに3年連続で挑めていることには感服する。ただ、今季は一部の主力がシーズン前にチームを去り、中盤の顔ぶれは一新。それでも現有のベストで最高のゲームを初日から見せていた。この日は1日目に電光石火の先制点を決めた青田がベンチに下がり、中盤に森田が出場する。中盤に厚みを持たせて相模原を少しでもポゼッションで上回りたいという思惑だっただろう。
 相模原は、1日目のメンバーから富井が外れ、吉岡が先発。得点力のある吉岡の起用がどう影響するか。1日目に気になったのは絶対的なエース・齋藤にほとんど良い形でボールが入らなかった点。守備で能力の高い藤枝に完全にブロックされた1日目だったが、この試合ではどうか。点の奪い合いという展開も頭をかすめたが、Y.S.C.C.の前日のハイペースサッカーがどこまで遂行されるか。この試合も相模原は受け身に回るのか。見どころの多い試合となった。

 
 相模原・村野を囲むY.S.C.C.の守備。

 
 Y.S.C.C.は最終ラインで服部の存在感が際立っていた。
 
 試合は案の定Y.S.C.C.が前日同様の連動性で相模原を凌駕していく立ち上がり。それでも藤枝戦に比べれば、まだ前がかりになる彼らを尻目に相手エリア内まではボールを持って行ける相模原。7分には森谷がボレーシュートで牽制すると、10分にはY.S.C.C.のミスを拾った森谷が自身で突破してシュートまで持ち込む場面が見られた。
 しかし、前日に圧倒的なムービングサッカーを見せたY.S.C.C.の勢いは健在。15分には吉田のクロスに辻が頭から飛び込んでゴールを狙うと、21分には、相手のゴールキックを拾ってから簡単に繋いで相模原守備陣の裏に抜け出た吉田が、決められなかったものの絶好のシュートチャンス(この左足シュートが決まっていればかなり楽だった)を作るなど随所に好連携を見せる。特にこの吉田のシュートの場面は常に逆サイドを狙っているというプレーの連続性の延長だった。最後に吉田にパスを通したのは小澤だったと思うが見事なダイレクトパスだった。

 
 
 この吉田のシュートは惜しかった。

 
 
 平間のFKがバーを叩く。Y.S.C.C.の全方位型攻撃恐るべし。

 前半は両者共にゴールまで及ばず、それでもレベルの高い試合になった45分。48分にY.S.C.C.は主将の服部がヘッドで惜しいシュートを見せる。対する相模原も吉岡が51分に絶好のシュートをGKにかろうじて阻まれるという一進一退の立ち上がり。そして後半に入って10分ほどで先制点の場面はY.S.C.C.に訪れた。相模原のスローインからのリスタートのボールを3人で囲んで奪うと、そのまま吉田が一気に左から走り込んだ辻へ。辻は相手DFが寄せる前に左足を振り抜く。彼らしい先制点。ベンチもスタンドも仕事人の活躍に沸く。

 
 
 相模原・吉岡のこのシュートはY.S.C.C.のGK小林がセーブ。

 
 
 
 そして待ちに待った辻のエースとしての矜持示すこの得点。

 先制点を献上して焦る相模原。しかし、流れが傾くことはない。65分にはY.S.C.C.が平間のグレートなミドルシュートで追加点。これには勝負が決まった感じすら窺えた。

 
 
 平間がミドルを決めて更にY.S.C.C.が突き放す。
 
 この後、相模原は村野、齋藤を諦めて、松本、富井を続けて投入。齋藤が無得点というのは苦しいところだが、国士舘大出身の松本の期待をこの決勝ラウンドではかなり感じる望月監督の采配。前線で孤軍奮闘する森谷の姿が印象的だったが、この日はゴールまでの拙攻が目立った。72分にはY.S.C.C.のミスからGKと1対1になった佐野が決められない。80分に奥山が1点を返して1点差に詰め寄り、その直後には森谷がシュートもゴールマウスをわずかに右。最後の最後まで追撃の1点が遠かった。

 
 
 
 
 この場面を決められない佐野…これには相模原サイドは溜息。

 
 
 
 この森谷の粘りのシュートもわずかにゴールを捉えられず。

 
 Y.S.C.C.辻は1本シュートをバーに当てている。
 本当に得点力の高い選手。プロからも熱視線はあるのでは!?

 先行逃げ切りのY.S.C.C.。5分のアディショナルタイムも乗り切ると、タイムアップの笛に広がる歓喜。3年越しの決勝ラウンド突破でようやくJFL昇格を決めた。思えば、2009年のアルウィン。3日目に金沢との対戦でようやくPK戦(12-11)で初勝利をもぎ取った彼らは、その結果で試合前に決まってしまった松本山雅の昇格歓喜ムード一色の中ひっそりとピッチを去っていった。あれほど報われない勝利の姿はなかった。でもあの時の経験が間違いなく今のY.S.C.C.を逞しくしたと思う。試合後に宙を舞う選手兼監督の鈴木、その嬉し涙を拭いながらのスタンドへ向けた挨拶にはグッとくるものがあった。この日はU-10の子供たちも遥々応援に駆けつけたようで、スタンドと選手たちが一体となって喜ぶ光景にその関係者の絆が見てとれた。本当にY.S.C.C.の選手、スタッフ、サポーター、関係者の皆様おめでとうございます。

 
 そしてタイムアップ。Y.S.C.C.のJFL昇格決定。

 
 なんと「待ってろ!JFL」と書かれた記念Tシャツに衣替え。

 
 
 
 
 
 松久コーチも胴上げ。
 
 
 昨季まで主将としてピッチで戦っていた鈴木監督兼選手。
 宙を舞った後、涙ながらにスタンドに挨拶。

 敗戦を喫した相模原はもう本当に後がなくなった。この時点で勝点はゼロ。敗退か入替戦(場合によっては自動昇格)の3位しか道はなくなった。最終戦はHOYO。昨季の1次ラウンドでの対戦時には相模原が辛くもPK戦6-5で勝利している。しかし、3位のためには90分勝利しかない。それ以外は敗退しか待っていない。これ以上ない背水の陣。勝負どころだ。

 
 追い込まれた相模原。
 もう勝つだけだ。それも90分での決着を。

九州王者の矜持 -Shizuoka.藤枝vsHOYO-

2011年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 大阪・長居第2陸上競技場にて行われている第35回全国地域リーグ決勝大会決勝ラウンドは2日目を迎え、第1試合では東海リーグ王者のShizuoka.藤枝MYFCと九州リーグ王者のHOYO AC ELAN 大分が対戦。互いに譲らぬ攻防戦はスコアレスのままPK戦に突入。その結果7-6でHOYOが勝利し、勝点2ポイントを獲得。決勝ラウンドでの3位以内に望みを繋いだ。JFAによるテクニカル映像はこちら

 

 前日の試合では明暗が分かれた2チーム。S.C.相模原を1-0と僅差で下した藤枝は、攻撃の核であるアランと石田が警告累積のため出場停止。その代役として、昨日は出番のなかった元川崎、仙台の西山、そして皆川が先発に名を連ねた。
 対するHOYOは、初日は0-4とY.S.C.C.に完敗。そのメンバーから宮田、原、生口が外れ、中島、渡邊、古賀を先発で起用。シュート数わずか3本に終わった昨日のような試合はもうできないとばかりにこの試合に向けた意気込みは強かったはず。試合が始まると、前日とは違う彼らの勢いが伝わってきた。

 序盤に攻撃のリズムを作ったのは藤枝。アラン、石田を欠くものの、地力とその構成力はお見事。石井、納谷が中盤でボールをしっかり捌くと、前線で西山が積極的にドリブルで勝負に出る場面も見られた。加えてサイドから効果的にクロスを放り込むが、ゴールにはあと一歩届かない。
 すると、藤枝の攻撃を乗り切って、次第にHOYOがペースを掴んできた。藤枝の攻撃の芽を摘むと徐々に相手陣内へボールを運ぶようになる。16分には堀のFKから攻撃を作る。一度弾かれながらも再度堀から放り込んだクロスに長身のDF田中がヘッドでゴールに迫るが得点には至らず。19分には藤枝のルーズなクリアからボールを拾いパスをテンポよく繋ぐと、最後は駆け上がった安藤のクロスをエリア内で中嶋がジャンピングボレーでシュートを試みる。25分には、堀がGKの軽率なクリアボールをそのままシュートするが、相手GKが飛び出したままの無人のゴールを捉えることはできない。しかしながら、前日と打って変ってHOYOの攻撃が快活で、特に堀がボールを持つ場面、また、FKから効果的なボールを入れる場面が目立った。

 
 晴れ間ものぞいた前半の立ち上がり。
 藤枝は橋本を中心に攻め込む。

 
 
 16分のHOYOの田中のヘッド。
 これはGk正面だったが、改めて堀のキックの能力を実感。

 
 中嶋のボレーシュートはわずかに決まらず。
 前半の途中からはHOYOの時間だった。

 
 内田を中心に失点は避けたい藤枝が粘り強く守る。

 
 藤枝の西山はドリブルで再三見せ場を作る。
 しかし、フィニッシュまでたどり着けず。

 それでも好守を見せる堅い藤枝。前半をスコアレスで乗り切ると、後半から皆川を下げてチョン・リュンポを投入。少し中盤でボールロストが目立つところを補完しておきたかったか。それでもHOYOが前半と変わらず頑張りを見せる。
 藤枝は、61分と早い時間帯で西山を下げて、昨日値千金の得点を挙げた清水を投入。もう少し西山で勝負するところを見たかったが、やはり孤立していた感は否めない。アランと石田の欠場で攻撃面で緩急がつけられなくなっていた印象だ。HOYOは昨日先発だった原、生口と投入し、ポゼッションで負けじとフレッシュな戦力を機を見て入れてくる。77分に中嶋のシュートがポストを強襲した場面は実に惜しかったが、82分には鴨川を入れて更に追い込みたいという姿勢。87分には藤枝・奈良林がこの日2枚目の警告で退場処分になる展開で、運をも味方につけたかったところだが試合は90分で決着つかず。PK戦に突入した。

 
 なかなか1点が遠い膠着戦に藤枝・斉藤監督もハラハラ。
 説明不要の元日本代表DF。守備面では抜かりない。

 
 納谷が中盤でリズムを作る藤枝。

 
 九州リーグMVPの田中が攻守両面でHOYOを支える。

 PK戦では7人目で、先攻HOYOが決めたのに対して、藤枝はホンがミス。ここで7-6と決着。HOYOがPK勝利の勝点2ポイントを獲得することになった。

 
 
 
 PK戦の末にHOYOがようやく勝利。
 しかし、得失点差では依然苦しい展開。
 3日目は90分以内の勝利が不可欠。

 
 藤枝はPK敗戦で勝点1ポイントという結果に。
 奈良林の欠場は厳しいが、Y.S.C.C.に勝ちたいところ。

 HOYOの復調に九州王者の意地を見ることができた試合だった。やはりエース・堀の存在感は間違いない。中嶋とのコンビも決定機を作るという点ではしばしば効果的だった。
 しかしながら、90分以内で勝利したかったHOYOに対してこれをPKまでしのいだ藤枝。両者ともに3日目の展開に影響する分水嶺になったかもしれない。依然2位以内という点では藤枝が俄然有利。アラン、石田が戻ってくることを考えると、奈良林の出場停止を補って余りあるか。しかし、相手は最も手強いY.S.C.C.。藤枝は今季のサッカーの集大成が問われる試合になるだろう。

 
 最終日は相模原と対戦。昨季のPK負けのリベンジなるか。
 そのためには堀の得点力は必須だ。
 

質実剛健、恐るべし横浜 -HOYOvsY.S.C.C.-

2011年12月03日 | 脚で語る地域リーグ
 全国地域リーグ決勝大会の1日目第2試合は、九州リーグ王者で1次ラウンドのCグループを1位通過したHOYO AC ELAN 大分と関東リーグ王者で1次ラウンドをワイルドカード(2位チームの上位1チーム)で3年連続決勝ラウンド進出を果たしたY.S.C.C.の対戦。試合は終始Y.S.C.C.がリードする展開で4-0と快勝。勝点3ポイント共に大きな得失点差4点を獲得した。

 

 

 ここまで2年間、地域決勝大会の舞台では屈辱を味わってきたY.S.C.C.。2009年のアルウィン、そして2010年の市原と、いつも4チーム中の最下位に沈んで入替戦にも進めなかった。その雪辱として、関東リーグ王者の質実剛健ぶりを改めて誇示してくれたサッカーだった。
 試合開始2分、FW青田が須原からの浮き球のパスを中央からHOYOエリア内に入って受けると、しっかりと決めて先制。青田のシュートセンスも脱帽だったが、マーカーが外から追う形になったHOYOの守備は残念だった。やはり層の厚い関東リーグ最多34得点の攻撃力。いきなりの先制パンチで試合を優位に進めることに成功した。
 この後のY.S.C.C.のサッカーは強かで素晴らしいものだった。ボールを止める、蹴るという点で自分たちのミスが少なく、ほとんどHOYOにボールを取られない。また、それぞれの選手が流動しながらスペースを埋めていくことで流れを常に作り続けるタフネスがあった。27分には右サイドから渡邉が右サイドから切り込んで中央へ折り返すと、これをエース・辻がしっかり合わせて2点目となるゴール。隙のない攻撃でY.S.C.C.が加点していく。

 
 2点目は左サイドバック・後藤の大胆なサイドチェンジから。
 相手の中途半端なクリアを誘発させた。

 
 中盤で平間がボールキープ。
 Y.S.C.C.は前半だけでシュート10本。

 
 電光掲示板には「大分-横浜」という違和感のある表記。

 2点リードで折り返したY.S.C.C.は後半に入っても一向に衰えない。57分にはHOYOの緩慢なボールキープを自陣で奪うと、小澤が見事なロングパスで前線の辻へ。辻がこれを持ち込むと、上手く相手DFをかわしてゴールへ沈める。大きな3点目で明らかに勝負あり。ここでHOYOに盛り返せる可能性すら見出せなかったのも驚きだったが、Y.S.C.C.の堅実かつストロングなそのサッカーに魅了される。

 
 
 頼れるエース・辻正男。
 昨季のひたちなかを彷彿とさせる頼もしさは健在。

 
 大宮の長兄・大剛、横浜FMの次兄・千真…
 渡邉三兄弟の末っ子・渡邉三城は右サイドで躍動。

 75分には途中出場コンビでHOYOを崩した。吉野が右サイドから折り返したボールを松本がニアで受けて角度のないところから4点目となるゴールを決める。全てが上手く回り続けたY.S.C.C.はこのまま4-0で試合をクロージング。対するHOYOは初戦から全く振るわず、4失点大敗となった。

 
 途中出場コンビの吉野と松本で1点をダメ押し。
 層の厚さも侮るなかれ。

 
 HOYOはエース・堀がほとんど見せ場を作れなかった。

 
 HOYO・中嶋がボールを持ち込む。
 しかし、堀とのコンビはシュート1本しか放てず。

 まさにY.S.C.C.の見事なサッカーに釘付けになった90分。サポーターの方に話を聞くと、昨季限りで「平日のY.S.C.C.」は返上したとのことで、今まで再三この地域決勝大会で悩まされてきたベストメンバーが3日間揃わないという事態も今季は克服したようだ。シーズン前には何人かの選手が神奈川教員クラブに移籍したり、練習環境は中学校のグラウンドで夜行っていたりと苦労話は絶えないチームだが、この舞台でこのサッカーができるのは本当に素晴らしい。初日からいきなりの運動量に2日目以降が懸念されるが、間違いなくY.S.C.C.はJFL昇格に大きく前進したといえるだろう。
 また、HOYOの撃沈ぶりにも驚きは隠せない。2月の西日本社会人大会以来見たが、スケールダウン著しい印象。堀、佐藤、中嶋で構成される前線もパッとせず、シュートは90分でたった3本。特に守備陣は先制点を献上してからブレーキが効かなかった。Jリーグ経験者も多いだけに、昨季のこの大会では来季の台風の目になるかとも思えたが、一転苦戦を強いられることになった。失点4、得点0は非常に厳しい結果となったHOYO。2日目以降の戦いに注目だ。

 
 明暗分かれた両者の戦い。
 さて、Y.S.C.C.は相模原を相手にどんなサッカーを見せるのか。

藤枝先勝、曇天の相模原 -Shizuoka.藤枝vs相模原-

2011年12月02日 | 脚で語る地域リーグ
 第35回全国地域リーグ決勝大会の決勝ラウンドが大阪・長居第2陸上競技場にて開幕。1次ラウンドを勝ち抜いたShizuoka.藤枝MYFC、Y.S.C.C.、S.C.相模原、HOYO AC ELAN 大分の4チームが来季のJFL昇格をかけて激突。第1日目の初戦はAグループ1位突破のShizuoka.藤枝MYFCがS.C.相模原と対戦。途中出場の清水の値千金の1点で藤枝が勝利を挙げた。JFAによるテクニカル映像はこちら

 

 

 

 この大会屈指の注目カードとなった1日目の初戦。東海リーグ王者・藤枝と関東2部リーグながらJFA優遇枠で2度目の出場となる相模原と対戦は、決勝ラウンドの行方を占う意味で大きな一戦。 前半の序盤から両者探り合いの幕開けとなったが、どうも相模原の様子がおかしい。1次ラウンドでも安定して見せていた自信に満ち溢れたサッカー、一種の「オラオラ感」と形容できるオーラが見えず、まずは守備を固めて丁寧に自分たちのサッカーを展開していく藤枝の前に「先行逃げ切り」という1次ラウンドからのサッカーが思うように発揮できない。藤枝は中盤で、Jでも屈指の経験を誇る石井を中心にじっくり相模原を追い込み、チャンスを狙い続けた。

 
 Jでは通算297試合出場の石井。
 34歳ながら、依然このチームで存在感を発揮。

 相模原は、古賀が負傷のせいかベンチ外。そのためMFとして富井が先発に名を連ねその穴を埋める。1次ラウンドから左の古賀よりも右の金澤、村野のコンビの方が怖いという印象はあったが、それでも藤枝の前にそのタフな推進力は前半からさほど見えずにいた。ここまで前半沈黙する相模原はあまり記憶がない。なかなか前線の森谷、齋藤の2人に良い形でボールが入らない。25分にはアランのボールを受けた藤枝・納谷がバーのわずか上を越える惜しいシュートで相模原を牽制してくる。対する相模原もカウンターからの速攻で、前を向いた際の齋藤が起点になってサイドの村野や中川からボールを入れようとトライするものの前半で得点を奪えず、両者スコアレスで折り返した。

 
 焦らず、じっくり追い込んでくる藤枝の前に相模原は苦戦。
 佐野も思うようにボールを操れず。

 
 相模原は工藤を軸にしっかり守って、藤枝をかわそうとする。

 後半に入って、両者メンバーを早い時間帯にはいじらずそのまま勝負へ。藤枝がロングボールを多用して前半以上に長短織り交ぜたパスで相模原をいなすが、依然両者ともに譲らない。63分には何度も前線にロングボールを送り込んだ藤枝が結果的に相手のクリアミスのチャンスから最後は石田が頭でゴールを揺らすが、これはオフサイドの判定に泣く。

 
 石田は前線で再三チャンスを演出。
 終始、相模原の守備陣を警戒させた。

 
 藤枝・橋本と対峙する相模原・中川。
 藤枝はサイドを突いてくるのが上手かった。

 71分に藤枝が先に動く。納谷に代えてFW清水を投入。すると、その清水が74分に右サイドの望月からのアーリークロスを体をひねりながら見事なヘディングシュートで先制点となるゴール。絶好の時間帯の先制点で拮抗した試合に藤枝が展開をもたらした。
 対する相模原は、この直後に富井に代えて吉岡、そして松本を投入して攻勢に出るが、その後も1点を奪えず。結果的に藤枝がそのまま逃げ切って1-0と初戦で90分勝利。勝点3ポイントを奪取した。

 
 藤枝・アランがシュートを狙う。
 彼はJ1・鹿島に在籍するアレックスの双子の兄。

 
 相模原を下した藤枝の選手たちの安堵の表情。
 しかし、まだ2日残る日程。何が起こるか分からない。

 個人的には昨季の経験を活かして、リベンジを挑む相模原の初戦に期待していただけに、藤枝の狡猾さを実感した試合だった。これだけうまく相模原を「受け」に回して無失点に抑えるという守備力とそのバランスはかなりのもの。まだ2度しか見ていないチームだが、予想以上に藤枝の実力を実感した試合だった。藤枝は明日の試合結果によっては自動昇格枠の2位以内を確保する可能性もありそう。
 相模原は、慎重に行き過ぎたか。特に彼ららしくないロングボールでの放り込みも散見されただけに、ビハインドを背負った時にいかに切り抜けられるかという点でもうひと踏ん張りして欲しかった。この敗戦で救われたのは、最少得点差の0-1だということ。そして1次ラウンドに比べて、最悪3位であれば入替戦に回るor自動昇格枠に引っかかるということ。重要なのは明日のY.S.C.C.戦になりそうだ。この日の曇天を同じく、雨は降らなかったものの、少しスッキリしない初戦になってしまったのではないだろうか。