脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

【AOQLO企画】2010年MVP

2011年02月26日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。続いて、ガンバ大阪の2010年MVP。

 これはなかなか選出が難しい。2010年のガンバでは遠藤が前人未到の8年連続でベストイレブンに選出され、ベストヤングプレイヤー賞に宇佐美が選ばれた。序盤から平井が出色の得点力を発揮してヒーローとなったし、6試合連続で得点を量産し続けた橋本の活躍も欠かせない。チームで突出した貢献度を見せた選手を1人に絞るのは至難だ。
 だが、そこをなんとか1人選ぶとすればGK藤ヶ谷陽介を推したい。

 

 昨季限りで引退した松代の「1」を引き継いで臨んだガンバ在籍7年目のシーズンは、藤ヶ谷にとってもこれまでとは違ったシーズンだったと思う。実は意外なことに彼は12年のプロキャリアの中で、J2札幌時代の2004年シーズンと昨シーズンの2年間しか「1」を付けていない。そういう意味でも新生・藤ヶ谷誕生のシーズンとなった。在籍選手では年長の部類に入り、GKというポジションでも最年長。後進の木村や太、河田らに自らのプレーを教示して引っ張る立場になったはず。相乗して今季の藤ヶ谷にとってはそれらのことが刺激になっただろう。2010年シーズンの彼の活躍は、Jリーグが97年から固定背番号制になり、これまで岡中、松代しか付けたことのなかったガンバの「1」に相応しい活躍だったのではないだろうか。

 2010年のガンバはリーグ戦全34試合中15試合において自分たちよりも対戦チームに多くのシュートを許している。これまで「超攻撃」とも形容されたガンバとしてはこの数字は意外かもしれない。しかし、そのうち勝利もしくは引き分けという試合が11試合なのだ。つまり、シュート数で相手が上回っていてもそれがガンバの勝敗には直結しない。相手よりも少ないシュート数で勝負を決めているか、失点を最小限に抑えられているといえる。高木、山口、中澤が補完し合いながら最終ラインを引き締めたこともそうだが、何よりもそこには藤ヶ谷の好守があった。例えば、序盤の勝てないガンバにおいて彼の存在がひと際目を引いた試合は多かった。第6節大宮戦(○3-1)、第7節清水戦(△1-1)などはその最たる例だろう。
 また、脚光を浴びる選手が多いガンバの中で、あまり目立ったキャラではないものの、確実にこの7年でレベルアップしていることも2010年のシーズンでは改めて感じた。ハイボールに強い訳ではないが、両サイドの守備範囲とその反射神経は更に研ぎ澄まされている気さえする。前任のマルキーニョスに代わって新潟から加わったジェルソンGKコーチによる厳しい鍛錬の成果かもしれない。

 2010年シーズンはリーグ戦全34試合にフル出場。ミスが少ないのも藤ヶ谷のストロングポイントだ。今季も「フル出場」を掲げる円熟期の守護神。できることなら彼が忙しくない試合が増えればチームとしても最高なのだが。
 そんな訳で彼を2010年のMVPに。

【AOQLO企画】2010年ベストマッチ

2011年02月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。続いて、ガンバ大阪の2010年ベストマッチ。

 昨年のガンバの試合観戦は天皇杯を含め13試合。しかし、なぜこの試合を生で観ていなかったのだろうと悔やまれる。おそらく現地でこの試合を目の当たりにしていれば、選手並みのアドレナリンが分泌されたのだろう。それはLIVE中継をテレビで観ていてもひしひしと伝わってくる熱戦だった。

 無冠に終わった2010年のガンバ、その試合の中で最もエキサイティングでベストな試合、そうれなれば、おそらく今回のこの企画でも圧倒的なポイントを積み重ねるであろう。そう、第13節浦和戦(万博)をベストマッチに推したい。

 

「ナショナルダービー」とかつては呼ばれ、現在のJリーグでもドル箱カードとなったガンバVS浦和。そのイメージに恥じぬ白熱のシーソーゲームだった。
 18分、エジミウソンに先制点を献上するも、徐々にガンバが試合を掌握。遠藤、ルーカスとゴールを肉薄するシュートを連発。すると、45+1分に遠藤からのスルーパスを宇佐美が決めて前半のうちに同点に追いつき後半へ。
 64分には、遠藤の絶妙なアウトサイドキックから相手DFのクリアミスによるオウンゴールを誘発。一気に勝利へといきたかったが、この後にルーカスが退場になるなど穏やかでない展開。90+3分にセットプレーからエジミウソンにまさかの同点弾を許すと、誰もが2-2でのゲームセットを考えたに違いない。何せほとんど時間は残っていなかった。
 しかし、それも束の間、早々とキックオフしてプレーを最後まで続けるガンバ。ノーミスでボールを繋ぐと、最後は武井の折り返しをイ・グノが落とす。するとそれを遠藤が一気にゴールめがけてシュート。これが決まって劇的な決勝点となった。試合は3-2とガンバの逆転勝利で決した。

 全得点を演出した遠藤は、自身も得点してベスト16進出に大きく貢献した南アフリカW杯を経た直後。まさに「神々しい」といっても良い存在感だった。2010年シーズンの遠藤は天皇杯も含めて3回対戦した浦和を相手に全ての試合で得点。屈指の人気カードでこれだけの勝負強さを持っていれば試合が盛り上がらない訳がない。クリスマスに万博で見せた天皇杯準々決勝浦和戦のFKも見事なものだった。
 また、この試合では遠藤にスポットライトが当たりがちだが、最後のプレーで殊勲の活躍を見せたのは武井。85分に宇佐美に代わって投入されたこともあり、本来はリードした場面でクローザー的な役割だったが、彼が疲弊する浦和守備陣を相手に走り回って最後の起点を作ったことは見逃せない。

 この試合が文句なしで2010年のガンバのベストマッチだ。

【AOQLO企画】2010年ベストゴール

2011年02月24日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。まずは、ガンバ大阪の2010年ベストゴール。

 2010年のガンバの戦いにおける得点場面といえば、遂に覚醒した5年目の秘蔵っ子平井と天性の才能をいかんなく発揮してベストヤングプレイヤー賞にも選ばれた宇佐美、6試合連続ゴールとストライカー並みの爆発力を見せてくれた橋本の3人がそのメインを占めるだろう。他にも浦和戦に無類の強さを発揮してホームでもアウェイでも貴重な得点を奪った遠藤、日本での最後のシーズンで大事な場面で得点を決めたルーカスなど主役に相応しい選手はいる。彼らの中から2010年のベストゴールを選ぶとするなら、個人的にはこのゴールになった。

 第15節ヴィッセル神戸戦(○3-1) 52分橋本英郎のゴール

 
 0:55あたりからゴールシーンのハイライト

 現在、シーズン前のキャンプでの負傷により長期の戦線離脱を余儀なくされている橋本だが、2010年の彼はリーグ戦だけで8得点もの記録を残した。そのハイライトとなるのが第15節神戸戦からの6試合連続ゴール。まさにこのゴールこそが彼のゴールラッシュの幕開けだった。

 イ・グノが左サイドのタッチライン際から折り返したクロスを、後方から走り込んだ橋本が左足ボレーで華麗にゴールに沈めたこのゴール。ライン際ギリギリで折り返したイ・グノの粘りも素晴らしいが、何よりフリーランでそのままイ・グノの後方からマークをかわしてコースに入った橋本の狙いも完全に得点を意識したもの。この時、イ・グノはまずボールに触る事が最優先で、ほとんど中央を見る余裕がなかったはず。「あわよくば」というクロスだっただろう。これに橋本はシュートをイメージして最適なコースでエリア内に進入。利き足ではない左足でのシュートでネットを揺らした。通常であれば、入ってくるクロスに対して対角線上に走り込み、ボールに近い方の足でシュートするのがよく目の当たりにするボレーシュートの光景なのだが、この橋本のゴールはボールのサイドから入ってきての左足ボレーと難易度がすこぶる高い。走り込むコースからシュートまでを完全にイメージできていないとできない芸当。橋本のサッカー資質の高さを改めて感じるナイスゴールだった。焦らず怪我を治して、再びこんなゴールを見せて欲しい。

 個人的に次点となるも、極めてベストゴールに近かったのが第26節・大宮戦、32分の宇佐美のゴール。ハーフライン付近から持ち込んだドリブルのスピード、シザーズフェイントで相手DFを手玉に取ってのシュート。その振り抜きの速さも圧巻。最後まで橋本のゴールと迷うこととなったが、来季はこれ以上のゴールシーンを見せてくれると期待しての次点扱いにしたい。

 
 3:22あたりから宇佐美圧巻のゴールシーン。
 平井の2点目もおもしろい。

既にシーズンイン、2011年奈良のサッカー

2011年02月21日 | 脚で語る奈良のサッカー
 国内の各種カテゴリーがそのシーズンインを控え、開幕まであと2週間弱となったJリーグでも先週からプレシーズンマッチが行われている。奈良では既に全国クラブチーム選手権大会の奈良大会が既に1月23日から開幕。準決勝を迎えて橿原公苑陸上競技場で2試合が行われた。

 

 昨季は奈良県リーグでJSTに続く2位・ポルベニルカシハラは、同じく5位の大和クラブと第1試合で対戦。2点を先行したポルベニルが後半の大和クラブの反撃を1点に抑えて勝利。2年連続の全国大会出場に王手をかけた。

 
 ポルベニルのGKを務める古田はかつてJ2・徳島で活躍。
 今季も奈良県リーグで現役続行の模様。

 続く第2試合では、関西リーグ復帰を目指す奈良県1部リーグの盟主・JSTが奈良県3部リーグ(昨年3部Cブロック2位)のCapisurFCと対戦。試合は前半の終了間際にCKからのプレーを最後は森が決めて先制する。先制点こそ遅かったものの、このままJSTのワンサイドゲームからと思われたが、予想外の善戦ぶりを見せたCapisurが43分に追いつくと、70分(クラブチーム選手権は35分ハーフ)で試合は決せずPK戦へ突入。準々決勝のアスペガスFC戦をPK戦で辛勝したCapisurに期待が高まったが、JSTのGK一二三がCapisurの2人目から4人目までを3連続セーブし、JSTがPK戦を3-1で制して決勝進出を決めた。

 
 先制点を決めた森が突破を試みる。
 試合はJSTが圧倒的優勢かと思われたが・・・

 
 後半、JSTは金本がこの決定機を決められない。
 試合はCapisurが追いつく展開に。

 
 Capisurは都南クラブのOBチーム。
 奈良クラブに在籍した選手も名を連ねる。
 PK戦で大金星を狙ったが・・・

 
 最後はPK3連続ストップを果たしたJSTが勝利。
 ポルベニルと3/6に決勝を戦う。

 共に4度目の出場となった関西府県リーグ決勝大会で1次ラウンド敗退となった2チーム。今季5度目の出場、そして関西リーグ決勝を狙う2チームが順当にクラブチーム選手権大会の奈良県一を決めることになった。この2チームを中心に2部から昇降格で3チームが入れ替わった注目の奈良県1部リーグ。既に前哨戦は始まっている。

西日本社会人大会<4> 讃岐 VS アイン

2011年02月16日 | 脚で語る地域リーグ
 西日本社会人大会の2日目、S3グラウンドの最終試合は、カマタマーレ讃岐(四国1位、JFL昇格)とアイン食品(関西2位)の対戦カード。地域決勝で見事に優勝を果たし、今季からJFLへと参戦する讃岐が昨年に続きこの大会に参戦していたのだ。試合はアインが先行する展開ながら何とか讃岐が2-1と逆転勝利。J1(今季からJ2)の京都でプレーしていた西野がスタメンフル出場を果たすなど、1ヶ月後のJFL開幕へ策を練る2日間になったようだ。

 

 讃岐は前日の島根戦とメンバーを変えて試合に臨んだ。DFには松本山雅から新加入の大島が入り、中盤にはMIOびわこ草津から加入の坂井、神戸国際大から加入の荒維、徳島セカンドから加入の野口が名を連ねる。そして何よりもギャラリーの注目を一際集めたのはかつて磐田や清水などでプレーし、京都から加入したFW西野泰正だった。
 しかし、この豪華絢爛な讃岐に対してアインは先制する。18分、スピードを活かして突破した梅村がそのまま讃岐の最終ラインを突破してシュートを決める。昨年優勝した全社の5日間で無失点だった讃岐がこんなに簡単に失点してしまうのは何とも珍しい光景に見えてしまったが、これだけ新戦力がいれば当然。むしろ、きっちり連携を構築するためのチャレンジが随所に讃岐からは見えた。

 
 18分、アインがこの梅村の突破で先制点をゲット。
 序盤から良いパスワークを見せたアインが試合をリードする。

 
 相原、神崎の2人で新加入の大島をサポート。
 相原は地域決勝でも全試合出場で讃岐においては不動の存在。

 讃岐は立て直して攻勢に転じるが、アインもよく守る。讃岐に比べると経歴も派手な選手はあまりいないが、FC刈谷から新加入して間もない原賀が左サイドバックに入り、サイドライン際で当たりの強さを発揮していた。攻撃面では昨季限りで中心選手だった鈴木が退団したのは痛いが、FWの坂本を中心にそれを感じさせなかった。

 
 大体大から新加入のルーキー藤岡。
 今後アインの中心選手になりそう。

 
 讃岐・MF荒維とアイン・DF原賀が競り合う。

 
 前半で退いたが、神崎の守備は今季も健在。
 讃岐の堅守の中心。自身も初のJFLにチャレンジ。

 讃岐は再三サイドから西野をターゲットにクロスを放り込みにかかるが、なかなか実らない。しかし、42分にはその展開から野口の折り返しを坂井がシュート。相手GKが処理にもたついたところを中島が押し込んで讃岐が同点に追いついた。相手のミスを逃さないあたりはさすがというべきか。 
 後半に波夛野が神崎に代わって入り、更にロックがかかった讃岐。66分には野口が逆転となるシュートを決め試合をひっくり返した。

 
 なかなか讃岐のクロスは西野に合わない。
 まだ最初の試合、これが噛み合えば讃岐は強いはず。

 
 アインの新戦力であるGK畑。
 中央大から加入の実力派。これは更に守りに磨きがかかりそう。

 
 後半から波夛野が出場。
 間違いなくJFLの長丁場では重要な選手。

 
 讃岐の逆転弾を決めた野口とアインの新加入・河俣が競り合う。
 河俣は大阪学院大の副将を務めた選手。

 讃岐はまだまだ調整不足な感が否めず、連携面などで苦戦を強いられたが、個人の力で勝っていた。西野も得点こそ無かったが、時折声を荒げながらJでの経験を還元すべくフル出場。予定通り3日間大会が行われれば、タイトルも狙えたと思うが、新加入選手の多いチームとしてはもちろん調整試合。ほぼターンオーバーで2試合をこなした讃岐がどういう形で初年度のJFLを戦うか少し楽しみになってきた。
 一方のアインも関東からGK畑、関西から河俣、藤岡、そして刈谷から原賀と、大卒ルーキーや実力派の選手たちを堅実に補強している模様。JFLに戦いの場を移す讃岐に十分善戦していた。これはチームが完成してくれば、今季の関西リーグでも危険な存在になってきそうだ。

 
 
 西野、吉澤などJ経験者を擁したカマタマーレ讃岐。
 15日には見事にJ準会員に承認。
 J入りをかけた新シーズンを迎える。

西日本社会人大会<3> HOYO VS 島根

2011年02月15日 | 脚で語る地域リーグ
 西日本社会人大会は13日に2日目を迎え、J-GREEN堺S3グラウンドではHOYO AC ELAN(HOYO Atletico ELANより改称(九州1位))とデッツォーラ島根(中国2位)が対戦。試合は3-0でHOYOが勝利を収めた。

 

 大分県リーグからKyuリーグ(九州リーグ)に昇格1年目でリーグを制し、昨季は地域決勝にも臨んだHOYO。この大会には中心選手の堀を含む一部の選手が参加しておらず、地域決勝に参加していた選手は堤、中島、原、古賀といったあたりの選手だけ。前日のアイン戦もPK戦負けを喫していたが、大会参加メンバーの大半が新加入選手で、この島根戦では彼らがフィットして連携の良さを随所に見せる。10分に中原のクロスに糟谷がバイシクルシュートを見せてチャンスを作る。地域決勝で目立った選手こそいないものの、糟谷とカマタマーレ讃岐から今季新加入の佐藤のコンビが前半から幾度となく島根ゴールに迫る場面が見られた。16分にはその糟谷のパスに反応して相手DFラインを上手く抜け出した中嶋が浮き球のシュートでゴールネットを揺らす。ギラヴァンツ北九州より新加入の期待のFWが前日のアイン戦に続く得点。早速結果を出した。

 
 昨年の地域決勝でも2試合に出場。
 HOYO中島が中盤でボールを捌く。

 
 HOYOのMF長は前日のアイン戦で中嶋の得点をお膳立て。
 島根戦もフル出場。

 対する島根も試合開始からかなりペースでHOYOボールに食らいついた。中盤から運動量を発揮してHOYOを追い込む。こちらも昨季は中国リーグで山口にあと一歩と迫る戦いを見せた。この大会では、早速宇部ヤーマンから新加入のGK穂積とJFLのV・ファーレン長崎から加わったMF幸野屋がスタメン出場。しかし、前日の讃岐戦は0-5とJFL昇格チームにその差を突きつけられた。その悔しさがあったのか、島根は試合開始から随分アグレッシブだった。HOYOに先制点こそ献上したが、34分には空山が、そして37分には幸野屋がシュートを放ってHOYOゴールを狙う。

 
 HOYO陣内へ突破を試みる島根・MF梁瀬。
 決定機を作ることはできず。

 後半に入ると、島根の息切れが目立ち始め、徐々にHOYOが試合のリズムを掌握。69分には佐藤が堀内からのボールを胸トラップして鮮やかなボレーシュートをゴールに沈める。その直前に決定機をポストに当てていただけに佐藤にとってはようやくのHOYO加入後初得点となった。82分には再び佐藤が決めて3-0とし、勝負を決めた。

 
 讃岐より新加入のFW佐藤が貫禄の2得点。
 シュートを6本放つアピールぶり。

 
 途中出場の古賀が決定機を決められず天を仰ぐ。
 地域決勝1次ラウンドの山口戦では決勝点を決めた。

 前述の通り、HOYOには地域決勝で見た選手のほとんどがいなかった。しかしながら、得点を決めた中嶋、佐藤に加えてゴールを守った船津も北九州から加入したばかり。ベンチには控えGKでこれまた讃岐から加入した河原(奈良育英高出身)がいるなど層の厚さはピカイチではないだろうか。この快勝劇から今季のHOYOの快進撃が見えるような気がした。今季のKyuリーグもダントツの優勝候補なのは間違いない。
 一方、この大会の島根は厳しい2試合となってしまった。ベテランの庄司が39歳ながらまだまだ健在でフル出場で頑張っていたのが印象的だったが、まだまだシーズン始まったばかり。群雄割拠の中国リーグが始まれば山口と共にリーグを盛り上げてくれるだろう。

西日本社会人大会<2>南国高知 VS 三洋洲本

2011年02月14日 | 脚で語る地域リーグ
 なんとか天候が回復の兆しを見せてきた13:00からの第2試合。前の山口-V鹿児島がPK戦までもつれ込んだこともあって、少し遅れて始まったのは南国高知FC(四国4位)と三洋電機洲本(関西1位)の対戦。結果こそ1-0の最小得失点差だったが、終始三洋洲本が圧倒。関西リーグ覇者がまずまずのスタートを切った。

 

 南国高知は個人的にも初見となるチーム。一時期「カットゥーオ」と名付けられた鰹のキャラクターが話題をさらったが、かつては四国リーグで無類の強さを発揮していたこともあり、2001年から2005年シーズンまでリーグを5連覇。地域リーグ決勝大会の常連チームでもあった。近年は讃岐や徳島セカンドの陰に隠れていたものの、その2チームがリーグから姿を消すこともあって、再び全国の舞台を狙うべく愛媛FCしまなみとの2強態勢が予想される。しかし、対する三洋洲本がベストメンバーでなかったながらもこの試合では両者の差が見えた印象だ。

 
 南国高知の攻撃を支えるFW筒井。
 以前は徳島セカンドでプレーしていた選手。

 三洋洲本はGK浅野が負傷で試合のメンバーから外れており、道上が先発出場。新加入選手は見られず、大会登録メンバーもリーグ戦のメンバーと変わらない。地域決勝や入替戦の時とは少しメンバーに変化がありながらも、関西リーグ2年連続MVPの成瀬を中心に連携では常に南国高知に優位に立った。16分、左サイドから稲垣が折り返したところに井上が詰めて難なく先制する。ところがここから追加点が遠い。32分、45分と立て続けに決定的なシーンをエースの梅川が決められない展開が続いた。後半も友定のミドルや途中出場の森川のボレーシュートなど見せ場は作ったが、結局1点止まりだった。それでも地域決勝の時と若干のメンバー変更がありながら、連携面はさすが。かなり攻撃に課題の軸を置いてこの大会に臨んでいるのかなという印象も感じた。

 
 09年、10年と2年連続リーグMVPの成瀬。
 三洋洲本JFL再挑戦のためにも欠かせない選手。

 
 南国高知は三洋洲本の安定した守備の前に沈黙...

 対する南国高知もGK川竹がファインセーブを見せて最後尾からチームの背中を叩く。FW筒井に良い形でボールが入れば決定的な場面を作れたかもしれない。時折見せるカウンターやセットプレーでチャンスを窺うしかなかった。まだリーグの開幕まで時間があるだけに、このスパーリングがどれだけ活きてくるか、今季の四国リーグには注目してみたい。

 
 南国高知の四国覇権奪回へ向けたシーズンが始まった。
 

 

西日本社会人大会<1>山口 VS V鹿児島

2011年02月13日 | 脚で語る地域リーグ
 関西地方には珍しい規模の積雪で、まさかの1日目中止を強いられた西日本社会人サッカー大会。雪も溶けたJ-GREEN堺では12日より、当初の2日目に1日目の予定をスライドする形で大会は行われることに。始動したばかりの8クラブが開幕を見据えた準備戦を繰り広げた。

 

 当初S1グラウンドで行われる予定だった試合はS3グラウンドに場所を移して行われ、第1試合ではレノファ山口(中国1位)とヴォルカ鹿児島(九州2位)が対戦。0-0から直後に行われたPK戦の末に7-6で山口が勝利を収めた。

 

 大阪湾から吹きすさぶ冷たい風と、時折横殴りで降ってくるみぞれのような雨の中で試合は行われた。試合のペースを握ったのはV鹿児島。前半から左ウイングの山田、かつて鳥栖や松本山雅に在籍した栗山を起点にどんどんシュートを放つ。フィニッシュこそ枠を捉えられないばかりでその精度に欠いたが、シュートの意識で勝るV鹿児島が山口を圧倒する形となった。

 
 V鹿児島の新戦力・栗山は突破にシュートに躍動。

 
 山田も栗山と並んでチーム最多の4本のシュートを放った。
 一昨年の地域決勝1次ラウンド(春野)で印象に残っていた選手。

 0-0で折り返した後半、山口はシャイネン福島から新加入の小川、ジェフリザーブズから新加入の高田、そして中村の3人を一気に投入。なんとか1点を狙うべくサイドから攻撃を仕掛ける。
 V鹿児島は63分に栗山がドリブルで持ち込みながら決定的なシュートを惜しくも右に外す。ことごとく枠に収まらなかったチャンスの山。ここは決めておきたかったところ。対する山口も後半アディショナルタイムにDF伊藤が攻め上がってゴールを肉薄するシュートを放つが、わずかに右に外れて試合はスコアレスでPK戦へと突入した。

 
 山口は後半から入った中村が左サイドからチャンスを作る。

 
 ジェフ・リザーブズから加入したばかりのDF高田も後半プレー。
 時折攻め上がるなど印象を残した。

 
 スーパーサブの兒玉が残り15分から登場。
 しかし、決定的な仕事はできなかった。

 
 徳島セカンドからV鹿児島に加入のMF須貝。
 早速スタメンフル出場。

 
 後半アディショナルタイムには伊藤がこのシュート。
 山口の最後のチャンスはわずかにゴール右に外れる。

 そのPK戦は7人目まで突入。V鹿児島の7人目である松下が外してしまうと、山口は田中が決め辛くも勝利した。

 

 

 V鹿児島はクラブが法人化し、正式にJ準加盟の申請を明言するなど今後の注目を集める。かつて選手兼監督としてプレーした前田浩二氏がGM兼ヘッドコーチとしてカムバック。新戦力もこの大会までに6名が発表され、JFLへの挑戦に並々ならぬ意欲で新シーズンをスタートした模様だ。
 対する山口も昨季は地域決勝で悔しい1次ラウンド敗退。中国リーグでは島根や松江の台頭、岡山ネクストの存在など、決して独壇場という訳でもなさそう。今年は地元で国体も控えることもあって、チーム共々勢いに乗りたいところだろう。この試合ではまだ連携面がチグハグだったが、もちろん中国リーグの優勝候補には変わりない。

真冬の西日本一決定戦は雪との戦い

2011年02月11日 | 脚で語る地域リーグ
 この週末はかなり天気が下り坂。関西でもかなり雪が降るという天気予報だった。その証拠に非常に冷える3連休前の夜となり、翌日の積雪が心配された。Jリーグの開幕まではまだ1ヶ月あり、各クラブは国内外の温暖な場所でキャンプに余念がない。しかし、どのカテゴリーもおとなしいこの真冬の時期に、地域リーグのカテゴリーでは公式のコンペティションが開催される。西日本社会人サッカー大会だ。

 今年はJ-GREEN堺(堺NTC)で行われるこの大会。関西、中国、四国、九州の上位2チームの計8チームが2つのグループに分かれてノックアウト方式で対峙していく。勝者と敗者同士が最終的に優勝をはじめ各順位を決めていくという単純明快な大会。
 関西リーグからは三洋洲本、アイン食品、中国リーグからはレノファ山口、デッツォーラ島根、四国リーグからは今季よりJFLに挑戦するカマタマーレ讃岐、南国高知FC、九州リーグからはKyuリーグ昇格初年度からいきなり九州制覇を果たしたHOYO Atletico ELANとヴォルカ鹿児島という顔ぶれ。三洋洲本、山口、讃岐、HOYOは地域決勝を戦ったチームでもあり、その激闘の余韻と今年の新たな戦いへの試金石としても注目を集めて当然。しかも今年は会場が昨年完成したばかりの堺NTCともあってTwitterを見ている限りでも期待していた方々は多かったはずだ。

 ところが、1日目となるはずの11日は早朝から予報通りの雪。午前7時30分の段階で大阪府内の阪神高速が全線通行止めになるなど、関西のど真ん中では1年に1度あるかないかという積雪ぶり。躊躇しながらも開催を信じて会場に向かうと、到着早々Twitterで関西リーグのアカウントから中止の速報ツイートが流れてきた。下記の写真をご覧頂ければ中止となった会場の様子が良く分かるだろう。しかし、残念。

 
 本日2試合が行われる予定だったS1グラウンド。
 完全に雪化粧。中止措置には芝を守るための意向も。

 
 S2グラウンドでは雪の中、選手たちがボールを蹴る。
 試合が無くなって、トレーニングを始めるチームも。

 
 関西リーグ勢、三洋洲本はトレーニング開始。
 明日から入替戦の鬱憤を晴らしたい。

 選手の怪我やピッチコンディションを考慮した中止措置だったが、大会としては2008年以来の雪による中止で、明日以降の日程が変更を余儀なくされた。各日程がそのままスライドし、結局最終順位を決められぬままに大会は2日間で行われることに。明日以降第1試合は11:00キックオフ、第2試合は13:00キックオフに。S1グラウンドの試合はS3グラウンドへ変更となった。

 今季からJFLを戦う讃岐をはじめ、虎視眈々とその舞台を狙う山口や鹿児島、HOYOといったチーム陣に、今季再び奈良クラブがリーグで挑戦することになる三洋洲本、アインの戦いぶりもチェックしたいところ。何にせよ、地域リーグ勢の新たなシーズンが幕を開けようとしている。

「チーム」として勝てるチームに

2011年02月09日 | 脚で語る奈良クラブ
 昨日から奈良クラブのトレーニングに吉田悟新監督が合流し、本格的に2011年を戦うチームが走り出したといえる。ミッドウィークの水曜はいつもの柏木公園球技場と場所を変えて、奈良県フットボールセンターでのトレーニングだった。

 個人的にも奈良クラブが関西リーグに昇格してから、特に昨年などはトレーニングマッチ以外で全くチームのトレーニングを覗きに行くことができなかった。先週のチーム始動日に初めて柏木公園に足を運ぶことができたぐらいで、それまでのYANAGI FIELDでのトレーニング風景がぼんやり頭に浮かんでくる。試合はほとんど応援に駆けつけているのに。

 やはり、監督のいる風景は新鮮だった。吉田監督は、ホイッスルを使ってボール回しから細かく選手たちに指示の声を出す。フットボールセンターの人工芝グラウンドをフルで使用できる機会は時間的に貴重ということもあって、ボール回し、紅白戦とゲーム重視の内容だったが、選手に混じってプレーまでしながらも吉田監督のコーチングは絶えなかった。これが至極当たり前の風景なのだろう。これまでは、山口前監督時代も含めて、チームの中心選手の矢部がコーチを兼任してトレーニングも試合もリードしていたが、あくまでも「選手」という風にしか見えなかったし、この点においては選手として専念するための苦しさが彼にもあったと思う。そういう意味では、この雰囲気は選手たちにも新鮮で程よい緊張感をもたらしてくれているのだと思う。

 チーム代表を「監督代行」の据えざるを得ないお粗末な指導陣の環境下で、よくリーグのDiv1を戦えたなと思う。最終的には4位という成績だったが、白星を得られた試合は最終的には経験豊富な選手たちの「個の力」がモノを言ったなという試合ばかり。それが証拠に三洋洲本やアイン、阪南大クラブといった関西リーグ屈指の強豪チームに勝つことはできなかった。本当の意味での「チーム」としての組織力が足りてなかったのだろう。

 県リーグ時代からそうだったが、このチームに足らなかったのは監督を頂点としたサッカーチームとしてのパワーヒエラルキーだ。「馴れ合い」ではなく勝負の世界に生きる徹底的に緊張した序列関係が足らなかった。社会人の草サッカーチームに毛の生えたような駆け出しだったことを考えればそれも止むなしだが、それが新監督の就任と同時に少し埋まったのかなと感じる。今季はこれまでにない充実したトレーニングで、チームの「組織力」での勝利を掴むシーズンにすべきだ。