脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

阪南大、今季初勝利 -阪南大 VS 大産大-

2011年04月30日 | 脚で語る大学サッカー
 高槻市立スポーツセンター陸上競技場で行われた関西学生リーグ前期第4節の第2試合では、今季未だ勝利に見放されている阪南大と大産大が対戦。ここまで1分2敗と苦戦を強いられていた阪南大がカウンターにセットプレーに攻守で圧倒。大産大を3-0で下して今季初勝利を挙げた。

 

 主将の井上を負傷で欠いたことも影響してか、ここまでのリーグ戦で全く調子の上がらない前年王者・阪南大。前節は1部昇格組の姫獨大に1-2と敗戦。昨年度はわずか3敗だったことも考えれば、もうこれ以上の敗戦はリーグ優勝に大いに影響してくるだろう。前節の後半から入って良い動きを見せた成田(1年)、河田(1年)、奥野(3年)を先発で起用し、チームに変化をもたらす布陣でこの試合に挑んできた。
 一方の大産大はここまで3連敗。前期日程の前半は格上チームばかりとの戦いが強いられる。何としてでも初勝利をここで達成したいところ。J2水戸でもプレー経験のあるDF満生(2年)やFW中山(2年)を先発に起用して打開を図る一戦となった。

 先手を取ったのは阪南大。10分に右サイドの飯尾(3年)のクロスを奥野がヘッドで決めて先制点を生み出す。先発起用に応える一発は、先週の姫獨大戦で交代出場後に見せた鋭いヘディングシュートを思い出させてくれた。その後も河田が惜しいシュートを連発するなど、阪南大が決定機を作っていく。

 
 
 
 
 飯尾の折り返しに奥野がダイビングヘッドを決めて、阪南大が先制。

 序盤こそ大産大もある程度ボールを動かせる状況だったが、次第に阪南大がポゼッションで大産大を凌駕。前半終了間際にはドリブル突破を試みた成田がエリア内で倒され得たPKを今村(4年)が蹴るが、これは大産大・GK神園(3年)が見事にセーブ。神園はその直前にも1対1で見事なセーブを見せており、この守護神の奮闘に応えたい大産大はMF塩川(2年)のドリブルが頼みの綱。時折見せる彼の俊足がかろうじて相手エリアまでボールを運ぶきっかけとなるが、エース鍔田(4年)に良い形でボールが収まらずフィニッシュまで漕ぎ着けられなかった。

 
 大産大は塩川のドリブルで好機を見出す。

 
 
 前半終了間際には神園がPKをストップ。

 阪南大が1点のリードを守って臨んだ後半。前半の接触プレーで負傷したGK土師(3年)に代えて原田(2年)を投入した阪南大の落ち着く間もなく、大産大がいきなりの猛攻。塩川が一気にドリブル突破して阪南大守備陣を切り裂きシュート。わずかにポストに当たってこれは外れるが、キックオフ直後のこのプレーで阪南大もヒヤッとしたことだろう。だが、逆にこれが彼らには緊張感を落とさず後半も戦うきっかけとなったのだろう。現にベンチからは2~3人の監督・コーチ陣から怒号に近い激しいコーチングの声が飛んでいた。

 
 力強いプレーが印象に残った大産大・DF佐道(4年)。

 前年王者にとってこの試合は絶対に落とせなかった。55分には今村が強烈なシュートで大産大ゴールを脅かすと、66分には右サイド、相手エリア手前サイドライン付近からの成田のFKを今村が頭で合わせて追加点を挙げる。PKの失敗を取り返す今村のこの1点で阪南大は更にリズムに乗った。

 
 
 成田のFKから今村のヘッドが決まる。

 
 得点に絡む働きで1得点の活躍、阪南大・今村。

 68分には奥野のパスを受けた技巧派・村山(4年)が惜しいシュート、その直後にも村山のパスから最後は飯尾が大産大ゴールを肉薄するなど完全にペースは阪南大。特に前半からほとんどのチャンスに絡んでいる成田の活躍が目立った。86分には、この日何度も見せたドリブルでのカウンターで途中出場・可児(2年)のゴールをアシスト。初先発フル出場で見事にチームの勝利に貢献した。

 
 ガンガン仕掛けていく成田。
 清水ユース出身の1年生、今後の活躍が楽しみ。

 
 阪南大は守りでも固くゴールを封じた。

 試合は3-0で終了。阪南大は4試合目にしてようやくの初勝利。成田、奥野などが顔を揃えた先発メンバーの刷新で勢いが出た印象だ。このまま前年の勢いを取り戻せるか注目したいところ。
 一方の大産大は、80分に途中出場の安(4年)が決定的なシュートを外すなど、無得点で終わるのが何とも惜しいというほど決定機を逃す場面が見られた。特に最後尾ではGK神園が好守を連発していただけに惜しまれるところ。後半途中から川西(3年)を入れて、少し試合を組み立てられるかという流れもあったが、阪南大の地力に負けてしまい、これで4連敗となった。

びわこ大、関西大に完封勝利 -関西大 VS びわこ大-

2011年04月29日 | 脚で語る大学サッカー
 GWに入り、関西学生リーグはこのGW最初の週に3日間で2試合が予定されている。第4節(4/29)と中1日で行われる第5節(5/1)。ここは前期序盤の勝負どころとなりそうだ。高槻市立スポーツセンター陸上競技場では、開幕3連勝の関西大が2勝1敗のびわこ大を迎えて対戦。試合は関西大ペースを堅守でかわし、持ち前の攻撃力を活かしたカウンターを成功させたびわこ大が2-0で快勝した。

 

 先週末の関学大との関関戦を撃ち合いの末に3-2で乗り切った関西大。ここに来て先発メンバーからは寺岡、櫻内の2人が外れる。櫻内は先週の試合での負傷が原因のようだが、寺岡を外したのは1、2年生選手起用のためか。実際、この日の先発メンバーには右サイドバックに内田(1年)、センターバックには藤原(2年)の2人が起用され、前線を1トップで担ったのはこれまた1年の原口であった。

 
 内田、和田、原口と1年生が3人先発に名を連ねた関西大。

 対するびわこ大は、高校選手権で立正大淞南高ベスト4進出の原動力になったMF加藤、DF中村の1年生2人が先発。2節の近畿大戦で敗戦を喫したものの、ここまで3試合9得点と攻撃陣は絶好調だ。特に主将の湯田(4年)をはじめ浅津(4年)、松田(2年)という3人の攻撃ユニットが強力であることは、この3人全員がスコアラーに名を連ねた前節・大産大戦(4-1で勝利)からも明らか。一気に関西大に黒星をつけたいところだ。

 
 立正大淞南高出身の選手を多く揃えるびわこ大。

 試合は、関西大のペースで序盤から進んだ。岡崎(3年)、田中(3年)の中盤のコンダクター2人を中心にボールを回し続ける。原口こそ石橋(4年)を中心としたびわこ大守備陣の強力なマークの前になかなか前を向けないが、和田(1年)の巧みな散らしも効いていた前半、サイド攻撃はチャンスを生み出した。20分、この日初先発の内田が右サイドを駆け上がると、正確なクロスを中央へ送る。これに前節劇的な逆転弾を叩き込んだ海田(2年)が直接合わせてシュートするがわずかにゴールに及ばない。

 
 初先発の1年生サイドバック・内田。
 堂々としたプレーで決定機を演出。

 
 前節、気合いのシュートを決めた田中が攻守に汗をかく。

 
 寺岡に代わり、最終ラインに入った藤原(2年)。

 びわこ大は集中した守備でまずは関西大の攻撃をしのぎ続ける。特に競り合いの強さを見せていた但馬(4年)、石橋のセンターコンビを軸に押し込まれるのは計算済みか、焦らずに自分たちにリズムが傾くチャンスを待っていた。すると、前半途中から関西大のミスを突いて攻撃にスイッチする場面が多く見られるようになってきた。38分には浅津が抜け出してシュートまで持ち込む。これは関西大DF小椋(2年)のブロックに遭い、得点こそならなかったが、徐々にカウンター攻撃からびわこ大もボールを持つ時間を増やしていった。

 
 G大阪ユース出身で多数の後輩を前に負けられない。
 びわこ大・DF二戸(4年)が気迫のプレー。

 
 竹内(3年)がボールを奪う。
 びわこ大が少しずつボールを持つ時間を増やしてくる。

 0-0で折り返した後半、先に仕掛けたのはびわこ大だった。FW松田が抜け出してGKと1対1の場面を作ったが、シュートはわずかに枠を捉えられない。ほぼ1点という状況だったが、今思えばここで試合はびわこ大に流れが傾いていたのだろう。57分には今度は関西大・海田の強烈なシュートをびわこ大・GK柴田(3年)がファインセーブ。決定機の応酬に得点の予感が両者から漂い出した。

 
 
 海田のシュートはびわこ大・GK柴田がセーブ。

 60分、先制したのはびわこ大だった。右サイドのエリア手前から河村(3年)がアーリークロスを送ると、これに浅津が頭で合わせてゴールに沈める。4年生エースの得点でびわこ大は活気づいた。

 
 先制点を決めて喜ぶびわこ大の選手たち。

 この先制点を献上した直後に関西大は、マークに苦しみほとんど前を向かせてもらえない原口をあきらめてドリブルで局面を打開できる片山(2年)を投入。74分には和田に代えて奥田(2年)を投入するなど攻撃のカードを増やして得点を目指す。
 ところが、75分に自陣で関西大ボールを奪ったびわこ大・湯田が浅津にボールを繋ぐと一気にカウンター一閃。エリア内で浅津からパスを受けた松田が追加点となる得点を奪った。

 
 関西大は片山を入れてねじを巻く。

 
 追加点のきっかけはこの湯田のプレーから。

 
 
 浅津からのパスを松田が決めて、試合を決定づける。

 この後も関西大の攻撃をGK柴田を中心に守り切ったびわこ大が2-0でこのまま試合を決めた。

 

 関西大は開幕3連勝でストップ。これで両者は3勝1敗となり、3勝1分でトップ2を走る立命大、桃山大を追走する形に。中2日ですぐに第5節を戦わねばならない。攻撃の軸が定まらない関西大は大産大と対戦。どれだけ上位争いに有利となる得失点差を稼げるか。また、びわこ大は不調に喘ぐ前年王者・阪南大との対戦が待っている。昨年はリーグ22試合でわずか8勝で8位に沈んでいたが、今年はここまで4試合で3勝。絶好調の攻撃陣にリードされて、昨年以上の順位は狙えそうだ。

皇帝、粘りの逆転劇 -関西大 VS 関学大-

2011年04月25日 | 脚で語る大学サッカー
 長居スタジアムで行われた関西学生1部リーグ前期第3節の第2試合は、伝統の関関戦、関西大と関学大の対戦カード。両チームの応援団がメインスタンドから声援を送る中、両チームは白熱のシーソーゲームを展開。関学大が先行する試合は、関西大が粘って追いつき、終了間際に海田の逆転ゴールで3-2と関西大が勝利を収めた。

 

 ここまで開幕2連勝の関西大と1勝1敗で臨む関学大。双方ともに1部の強豪校として周知のライバル関係。前節・京園大戦では先行される展開ながらも、交代出場選手の活躍で3-1と勝利した関西大は、その試合で得点を奪った安藤が先発起用され、期待を感じさせる。

 

 一方、一昨年のリーグ優勝の後、昨年は7位と低迷した関学大。2年連続で天皇杯本大会に兵庫県代表として出場。関西学生選手権では3位に入賞したが、特筆すべき戦績は残せていない。関西大と比較すると、先発11人中5人が4年生。それだけラストイヤーとして賭けてくるものはあるはず。関学大としては全日本大学選抜、U-21日本代表にも選出され、G大阪や神戸から熱視線を浴びるMF阿部(4年)を中心に、全日本選手権を制した関西大を下して勢いに乗りたいところだ。

 
 主将の桑野(4年)がチームを牽引する関学大。
 関関戦は負けられない。

 前半から関学大がアグレッシブに攻撃を仕掛けてくる。関学大は前述の阿部がドリブルにラストパスに関西大守備陣を追い込んだ。先制点は必然と早い時間に訪れる。10分、ドリブルで中央突破した阿部から右サイドの中村へパス。MF中村(4年)は相手DFのアプローチを受けながらも即座に折り返すと、これをMF平山(3年)が頭で押し込んだ。

 
 阿部のドリブル突破から試合は動いた。

 
 阿部のパスを中村は受け取り、そのまま突破。

 
 折り返しを平山がヘッドで決める。

 0-1とされて関西大も徐々にシフトアップ。関学大のハイプレッシングになかなか前へボールが運べず、エンジンのかかりが遅かったが、20分に関学大GK一森(2年)のファウルで得たPKをMF岡崎(3年)が決めて試合を振り出しに戻すと、一気にチームは追撃態勢へ。24分にMF和田(1年)のシュートがわずかにゴール右上をかすめる。30分にはその和田の右からの折り返しをFW安藤(3年)がヘッドで狙うもゴールならず。気が付けば、ボール支配はほとんど関西大。前半のうちに逆転こそならなかったが、非常に良い流れで前半を終える。

 
 
 前節はPKを失敗した岡崎だったが、ここは落ち着いて成功。

 
 関西大・和田がドリブルでボールを運ぶ。

 後半に入ると、この流れを拙いと感じたか、関学大は昨年チームから唯一大会優秀選手に選ばれたMF梶川(4年)とMF浦島(4年)を頭からピッチへ送り出す。折り返す直前に比べると、この交代策で幾分か関学大もペースを取り戻す。拮抗する試合、関西大も65分に前節交代出場後ファーストタッチで得点を決めたFW原口(1年)を投入して逆転の機会をもぎ取ろうとした。

 
 前節は5分で結果を残した原口が65分からピッチへ。

 しかし、その原口投入の直後に関学大が相手のミスから素早いカウンターで勝ち越し弾を奪う。ゴールを決めたのは原口の先輩でもあるFW三ノ宮(3年)。関西大の岡崎、田中(3年)とは同学年でG大阪ユースでプレーした元チームメイトだった。これで関学大が試合を優勢に進めるかと思えた。

 
 勝ち越し弾を決めた関学大・FW三ノ宮。

 試合が盛り上がったのはここからだった。そのわずか3分後に関西大が再び同点に追いつく。得点を決めたのはMF田中。岡崎、三ノ宮、田中・・・まるでG大阪ユースの同窓会ともいえるようなゴールの共演で試合はまたもや振り出しに。

 
 負けじと田中が決めて関西大が同点。吠える田中。

 ドローで終わるまいと再び関学大が前半序盤の機動力を取り戻す。80分にはMF関(2年)がゴール前の混戦から強烈なシュートを見舞うが、これは関西大GK金谷(2年)が見事な反応で横っ飛びセーブ。実はこの2人も2年前は同じG大阪ユースの同学年チームメイト。2-2のまま試合はクライマックスを迎える。

 81分に関西大はドリブラーのFW片山(2年)を、そして関学大もFW山内(3年)をお互いに「1発」を持つ切り札を投入して勝負を決めにかかった。

 
 関学大のDF高松(4年)は精度の高いプレスキックで魅せてくれた。

 88分、岡崎のスルーパスを受けた海田(2年)が決めて3-2と関西大が土壇場で遂に逆転に成功。この海田も2年前までは磐田ユースの一員。中盤のタレント力でラスト数分のところで関西大が違いを見せた。

 
 
 
 
 
 
 ドロー濃厚かと思われた試合を決めたのは海田のこの1発。

 試合は両チーム相互にリズムを握る時間が訪れていたが、やはり阿部の力に依存するところが大きかった関学大に対して、関西大は最終ラインから焦らずビルドアップして攻撃を構築。岡崎、田中のセントラルMF2人の動きが良く、和田の落ち着きもあって攻守にコントロールできた。両サイドバックの都並(2年)、櫻内(4年)の2人もよく攻撃に絡んでいた。FWの軸こそ定まらぬ感はあるが、誰もが点を奪えるということはこの3試合で実証できたのではないだろうか。とにかく関学大がそれほど悪くなかっただけに、関西大の「勝負強さ」が強烈に印象に残る試合だった。
 大学ブランドとして「カイザース」という名称をアメフト部中心に使用している関西大。サッカー部においてもそのイメージキャラクターである「皇帝」の肖像がユニフォームにプリントされている。まさに今年の関西学生サッカー界で「皇帝」と呼ぶに相応しい陣容すら抱える関西大。この逆転劇はさらにこの「皇帝」を逞しくした感すらある。

 
 粗削りながら攻撃の積極性はピカイチの都並。

 
 岡崎と田中は欠かせぬキーマン2人。

 
 2年生とは思えぬ寺岡のプレーは圧巻。

 
 個性派集団がまとまった時、タイトルを総なめできるか。

必然のアップセット -阪南大 VS 姫獨大-

2011年04月24日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生1部リーグは第3節を迎え、長居スタジアムでは第1試合で前年王者・阪南大が今年より1部再昇格を果たした姫獨大(姫路獨協大)と対戦。常に試合をリードした姫獨大が2-1で逃げ切るというアップセットを演じ、今季リーグ初勝利。一方の阪南大は3試合で1分2敗とまさかの3戦未勝利に追い込まれている。

 

 昨季の関西学生1部リーグは阪南大が18勝1分3敗でリーグを制した。しかも、総得点72は2位の関西大の49を遥かに上回る驚異的な数字。失点も12チーム中最少で得失点差は53点だった。まさに「王者」というべき成績で、その中心選手だった棚橋、井手口はそれぞれJ2の富山、横浜FCへと入団した。ところがその2人を中心とするチームから新たにリスタートした今季の阪南大は予想以上の苦戦を強いられている。第1節の京園大戦を2-2で引き分け、低調なスタートを切ると、先週の第2節では大体大に0-2と完封負けを喫してしまった。主将で中心選手の井上を開幕前に負傷で欠いてしまい、プランが狂ってしまったか。昇格組の姫獨大にはどうしても負けられない一戦だった。
 対する「挑戦者」の姫獨大は、昨年は2部Bブロックで優勝し、2008年以来3年ぶりの1部昇格。監督を務めるのはかつてヴィッセル神戸のU-15やユースの監督等を歴任し、S級ライセンスも有する昌子力氏。ここまでの2試合は桃山大に0-2、立命大に0-3と実力の差を見せつけられる戦いを強いられている。ここに来て前年度王者との対戦は酷であった。

 
 ストライカーであるFW中村(4年)が攻め込む。
 阪南大はこの試合で是が非でも初勝利を挙げたかった。

 少し出遅れ、15分遅れで会場に着くと、なんと姫獨大が1-0でリードしている。堂々と前年王者と渡り合う彼らの姿がそこにはあった。ここまでの2試合全て中盤のメンバーに変更がある阪南大は、この日は谷本(3年)、今村(4年)、可児(2年)、金村(1年)という陣容。川崎U-18出身で関西大学選抜に1年から選出されている可児を中心に姫獨大陣内へ攻め込む。第一印象、小柄な選手が多いというイメージだった姫獨大は、人数をかけてしっかり守り、攻撃の軸は徳島ユース出身の友成(1年)のドリブルで一気にボールを運ぶ。前半から彼の存在は光っていた。ここまで2試合は先発で彼を起用していない姫獨大。明らかに友成が作るリズムで姫獨大は阪南大に劣るどころかリードするに相応しい試合展開を見せていた。

 
 奈良育英高出身のDF二見(2年)。
 昨年は関西選抜に選ばれるなど、将来が楽しみ。

 
 二見と並んで将来のチームリーダー候補・DF永井(2年)。
 磐田ユースの出身。

 
 前半から印象に残った姫獨大・MF友成。
 チームでも数少ないJユース(徳島ユース)出身の技巧派。

 阪南大は前半のうちに金村に代わって清水ユース出身の成田(1年)、そして後半開始時から森田に代わって河田(1年)を投入。しかし、次の1点は阪南大の同点弾ではなく、姫獨大の追加点だった。56分、スルーパスに走り込んだ廣利(2年)がシュートを決める。相手DFを背負いながらもGKの飛び出しを冷静に見極めてゴールに流し込んだ。

 
 
 
 廣利のこの得点で姫獨大が2-0とリードを広げる。

 まさかの0-2。さすがに尻に火がついた感のある阪南大が反撃を開始。65分に可児のシュートがポストを弾くと、72分にも同じく可児のシュートで姫獨大ゴールを強襲。75分にも奥野(3年)のヘッドはわずかにGKのセーブに遭う。押せ押せの攻勢で、明らかに流れは阪南大へ傾いてきた。すると、78分にエリア内に攻め込んだ阪南大MF成田を姫獨大DF日向が倒してしまう。判定はPK。これを今村が決めて阪南大が1点差に迫った。

 
 今村のPKで追いすがる阪南大。

 
 87分、河田のヘッドはわずかにバーの上・・・

 この阪南大の攻勢に姫獨大は素早く守備重視へシフト。司令塔として及第点以上の出来を見せた友成に代えて五百川(2年)、88分にもDF山根(1年)を投入して見事に逃げ切った。

 正直なところ、終盤の阪南大の追い上げは凄まじく、いつ同点になってもおかしくなかった。しかし、そこまでの決定機を決めてリードを広げていたのは姫獨大。機を見てディフェンシブに切り替えて最後までよく守った。「金星」というよりも内容的にも必然のアップセットだったといえるだろう。このGWは関学大(4/29@J-GREEN堺)、関西大(5/1@神戸ユニバー)と強豪校との連戦が続く。1部再挑戦の前期最大の正念場が迫っている。
 一方の阪南大は信じられない3戦未勝利。この時点で昨年の3敗(前後期含めて)に迫る2敗目となってしまった。どうもゴールが遠い。次節の同じく3戦未勝利同士の対戦となる大産大戦で確実に勝利を狙いたい。

無傷のGW、さらに高みへ -VS 阪南大クラブ-

2011年04月23日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第3節を迎えて、開幕連勝の奈良クラブは阪南大クラブと対戦。激しい雨の中、3-1で勝利を収めて連勝を3に伸ばした。来週末は一端のインターバル。GWが明けてからアイン食品、三洋洲本と優勝候補の2チームとの連戦を控える。

 

 Jリーグがこの日より再開し、JFLがようやく開幕。残念ながら全国的に天候は大崩れとなった。試合が行われた鶴見緑地球技場もその例に漏れず、激しい雨。かつては天然芝だった球技場は最新の人工芝に換装されていたが、さすがにこの日ばかりは大量の水を含んで水しぶきが上がるほどのコンディションだった。

 奈良は3試合連続同じ先発メンバー。サイドで攻撃の核となっている辻村兄弟はもちろんのこと、前節ようやく待望の初得点を挙げた牧とここまでまだ無得点の檜山が前線でコンビを組む。対する阪南大クラブは昨季と比べても大幅にメンバーが変わっている様子。主将のDF川島を中心に今季初勝利を狙う。

 立ち上がりから奈良はスロースタートだった。相手にポゼッションを明け渡し、序盤から守備の時間を強いられる場面が続いた。先制点まで1本もシュートらしいシュートの場面が作れない。左サイドの吉田、辻村剛を中心に相手陣内へ攻め込むが、足元でのプレーが多く、スペースを上手く使うまで時間を要した。しかし、相手のミスにも助けられ、結果的にはフィニッシュの場面で決定力の差を見せて試合を決する形になった。
 26分に檜山が相手DFの間を抜けてシュートを決める。昨季のチームトップスコアラーが待望の今季初得点。思えばこれがファーストシュートだったのかもしれない。しかしながら、この日は前半から効率的に得点を奪うことができた。33分には辻村隆の右CKから谷山が合わせて追加点。45分には李がシュートを決めて3点目を決めた。

 

 決定機の際に集中力を見せた攻撃陣。各ポジションの選手が前半途中から絡むように動いて、互いをフォローした。この調子でいけば後半は更にゴールラッシュが期待できた。ところが、強くなる雨でピッチコンディションが悪化。人工芝とはいえ至る所にできる水溜りがプレーをまともにさせない。球際で激しくプレスをかける阪南大クラブの前に前半以上にパスワークは沈黙を余儀なくされる。後半、序盤に相手の突破を許して失点を喫したが、1点に留めた。思えば良いところなく追加点を稼ぐことができなかったが、それ以上に相手の連携面で未熟な部分に助けられたのは正直なところ。3-1というスコアではやはり物足りない試合だった。

 吉田監督のオフィシャルコメントにもあるように、この試合の勝利で満足しているレベルでは上は目指せない。たたみかけることができなかったことで、後々得失点の勝負になってくれば悔やまれる試合となるだろう。しかし「結果」としては勝利は勝利。リーグ唯一の3連勝は大きなスタートダッシュとなった。GWを挟み、5月には昨季1勝も挙げることができなかった難敵との連戦が控えている。ここは是が非でも引き分けすら考えず勝っておきたい。そのアイン、三洋洲本と2つの優勝候補を打ち破るために、来週末(30日)のガンバとのTMで一度自分たちの課題をとことん洗い出しておくべきだ。もちろん、良い内容で勝負ができるに越したことはないが、シーズンオフからここまでTM、公式戦全てで無敗。一回リセットするためにも、コテンパンにされるのもアリかもしれない。しばしのインターバルをきっちり課題修正に充ててほしい。

カウンター3発「まずは守備あり」 -ガンバ VS 済州-

2011年04月21日 | 脚で語るガンバ大阪
 Jリーグは震災の影響もあり、しばしの中断状態だが、AFCアジアチャンピオンズリーグのグループリーグは折り返して後半戦、第4節を迎えた。万博ではグループEのガンバ大阪と済州ユナイテッドが対戦。アウェイでは1-2と逆転負けを喫していたが、引き分け以下だとグループステージ突破が非常に厳しくなるこの一戦。見事にガンバが3-1と済州に勝利し、勝点を6ポイントに。済州とは同ポイントだが、この試合でガンバが得失点差で上回り、グループ単独2位を確保した。

 

 個人的にもJ1開幕戦以来、久々の万博。やはり皆スタジアムの熱狂に飢えているのか、水曜日にも関わらず結果的に1万人を超える観客が詰めかけた。この日はこの数日でも少し冷え込んだ日となったが、この状況では皆ビクともしない。キックオフ直前にどっと増えたスタジアムの観衆は、従来の風景を思い起こさせてくれた。
 注目はガンバのDFラインの先発メンバー。この日は中澤、山口のCBコンビにキム・スンヨンが右、下平が左に据わった。中盤以降はお馴染みのメンバー。イ・グノ、アドリアーノあたりの攻撃陣に得点が欲しいところだ。試合前には震災で亡くなった方々への黙祷が捧げられた。

 

 実際、試合が始まってみると、やはり中断によるイレギュラーなインターバルが影響しているのか、ポゼッションはガンバが上回る流れも、自分たちのミスでボールロストを繰り返し、あの遠藤さえもピリッとしないミスの目立つ展開。それでも左からの下平によるクロス、宇佐美の再三スピードを活かしたドリブルで突破を試みるが、ホン・ジョンホ、キム・イホを中心としたブロックの前に得点にまで至らない。少し今日のガンバ(いつも?)はエンジンのかかりが遅いと実感できる序盤だった。

 
 前半から宇佐美が果敢に前へ攻め上がる。

 
 下平のクロスは開幕戦でも先制点を呼び込んだ。

 しかし、「まずは守備から」とはよく言ったもので、ガンバは済州の緩慢なボールキープからチャンスに繋げた。26分、自陣で済州・FWサントスがボールキープしているところをイ・グノが猛然とチャージ。ボールを話したところを遠藤がワンタッチへ宇佐美に送ると、一気に宇佐美は加速。3タッチほどでアドリアーノまでパスを送ると、アドリアーノはDF3人に囲まれながらもドリブルで前進。エリアに差し掛かるところで左足を振り抜きシュートへ持ち込んだ。グラウンダーのシュートはギリギリゴールの右隅に決まって先制点となる。アドリアーノはフォローに走っていたイ・グノをチラリとも見なかったのではないだろうか。そう思わせるほどの素早いカウンター、個人突破。ガンバの守備から攻撃への切り替えの速さが功を奏した。

 
 
 
 
 アドリアーノがドリブルからシュートを決めて先制。
 3/5のJリーグ開幕戦以来となる得点。

 32分にも相手にブロックされるが、アドリアーノが良い形でシュートまで漕ぎ着ける。済州の守備が固く追加点こそならなかったが、アドリアーノのポジショニングとイ・グノの運動量は光っていた。西野監督はどうも済州が地上戦では敵わないと判断し、空中戦を仕掛けてくる(マッチデイプログラムより)と予測していたようだが、前半だけ見る限りでは済州も足元へ繋ぐサッカーという印象。ガンバにとってはそこまでの脅威はなかったはずだ。

 
 済州のブロックが宇佐美の突破を阻む。

 
 イ・グノは深い位置での守備でも貢献。

 1-0で折り返した後半、追加点は簡単に奪えた。48分に相手からボールを奪った遠藤が一気にアドリアーノへロングパス。遅れて背後からカバーに来たホン・ジョンホをワンフェイントでかわすと追加点となるシュートを決めた。前半同様の見事なカウンター。「まずは守備から」、いかに相手からボールを奪うか。あとは点取り屋が見事に仕事をこなしてくれる。アウェイで済州に負けたのが信じられないほどにリズム良くチームは回り出した。

 
 
 
 
 48分には遠藤からの1本をしっかりと決める。
 ツイッターも始めて心身共に絶好調か。

 済州も勝負は捨てていない。66分に長身のキム・ウンジュンを前線に入れると、早速ハイボールを活かした攻撃を実践。その直後の67分にホン・ジョンホのロングFKを入ったばかりのキム・ウンジュンがヘッドで落とし、これをシン・ヨンロクが決めて1点を返す。ホームでも逆転への狼煙を上げるきっかけの1発を決めたこの10番の1点。少し嫌な流れへ傾くのでは…と思った人もいたかもしれない。実際、済州はこの1点を返して以降流れを引き寄せた。

 ガンバは宇佐美に代えて武井、下平に代えて負傷から復帰した加地を投入、加地が右に据わってスンヨンを左に回し、武井をサイドハーフに据えてテスト。この時間帯は度重なる相手のセットプレーの応酬に我慢の時間が続く。75分に2点目同様、イ・グノにカウンターからチャンスが到来するも決められず、引き続き1点差の中、ロングボール主体に切り替えた済州相手にガンバにとって厳しい時間帯は続いた。82分にはロングパスを受けたシン・ヨンロクが胸トラップからガンバゴールを強襲するものの、わずかにバーの上。なんとか試合を決める3点目は必要だった。

 
 
 苦しい時間帯、中澤が好プレーで魅せる。

 
 藤ヶ谷が集中を切らさずゴールを守る。

 
 二川と競り合うマ・チョルジュン。
 ハイボールを再三放り込んできた。

 佐々木を途中投入する必勝パターンも、85分にアドリアーノが絶好機を決められずハットトリックを逃す。しかし、ここまでのガンバの得点の流れはカウンター。押し込まれた時にこそチャンスが巡ってくるもの。3点目もそのカウンターから生まれた。
 残り時間が3分ほどになり、ハイボールをエリア内に入れてくる済州。前がかりになっているところで相手のミスを突いた。加地が佐々木へ落とす。佐々木はサイドライン際ギリギリでかろうじて右足でロングパス。その先には全力で相手陣内へ走りこむイ・グノがいた。ボールキープするイ・グノがボールを落とすと、そこに走り込んできた武井が目の覚めるような強烈ミドルシュート。これが決まって安堵感溢れる3点目。久々の熱狂、万博は歓喜に沸いた。

 
 加地が負傷から復帰。3点目のきっかけを作った。

 
 1試合で両サイドバックを演じたキム・スンヨン。
 今後の起用法が興味深い。

 負けられない重要な一戦を勝利で乗り切ったガンバ。裏ではグループ首位の天津がメルボルンに敗れ、勝点1ポイント差でその天津を追走する2位に浮上。グループステージ突破が十分見えてきた。まもなくJリーグも再開する。ここで一気にリズムに乗ってタイトルへ突っ走るべく良いきっかけになった試合ではなかっただろうか。

リファイン、紫紺の軍団 -関西大 VS 京園大-

2011年04月19日 | 脚で語る大学サッカー
 17日、高槻・萩谷総合公園サッカー場で行われた関西学生リーグ1部前期第2節の第2試合は、昨年度2位の関西大と入替戦を制して今年度から1部に昇格してきた京園大(京都学園大)が対戦。試合は京園大が先制する意外な展開だったが、関西大が交代出場選手の活躍もあり、3-1と逆転勝利。昨年度のインカレ王者が新たに関西のタイトルを見せて好発進している。

 

 昨年度は全日本大学選手権(通称インカレ)を制した関西大。しかし、関西ではリーグが準優勝、関西選手権は2回戦敗退という結果に終わり、総理大臣杯と天皇杯に出場すらならなかった。今年度より本来赤だった1stユニフォームを紫紺(2ndユニフォームが赤になる模様)にチェンジ。各年代の代表クラス、大学選抜を多く揃え、この錚々たる豪華メンバーに恥じない「全カテゴリー日本一」を目指して再発進。注目選手を挙げればキリがないが、リーグ開幕戦は大体大を1-0と振り切って白星スタートを果たしている。軒並み各年代代表の経歴を持つ多彩な選手が今年もその門を叩いたが、開幕戦に続き、神戸ユースからやってきた和田篤紀(U-17日本代表)が1年生では唯一先発出場を果たしている。
 一方の京園大は、昨年度2部リーグBブロック2位となり、大院大との入替戦に競り勝って念願の1部昇格を果たした新進気鋭のチーム。選手層の厚みや注目選手という点で他の強豪校に見劣りするが、開幕戦では昨年のリーグ王者・阪南大に2-2のドローを演じるなど早くも話題を提供してくれている。早くも1節、2節で強豪2チームを相手にすることになった。ちなみに西政治(元福岡)、手島和希(元京都)という東福岡高出身の元Jリーガーが2人コーチを務めているというのも驚きだ。

 
 阪南大と引き分けスタートの京園大。
 前線で清水ユース出身の杉山(3年)がボールを運ぶ。

 
 今年こそ関西王者を目指す関西大
 ユニフォームを紫紺にチェンジ。守備の要は寺岡(2年)。

 試合は立ち上がりから予想外の展開。関西大以上にアグレッシブに攻撃を仕掛けてきた京園大。13分に早速MF城内(3年)の鮮やかなシュートで先制。会場がどよめいた。体躯的に大柄な選手が多い京園大は序盤から守備意識をしっかりと持ち、関西大に形を作らせない。攻撃面ではMF村上(3年)を中心に再三攻め込み、29分、自陣エリア内でファウルからのPKを献上するが、これをGK芹沢(2年)が見事に止めてチームを盛り上げた。前半の京園大は物怖じせずハードワークで関西大を追い込み攻撃に転じていった。

 
 思いがけない先制弾は京園大・MF城内のシュートから。

 
 DF朝比奈(3年)を中心に関西大をブロックし続ける前半。
 京園大はこれを90分間続けられるか。

 一方の関西大は、良い形でボールが繋がらず前半は予想以上に苦戦した。最終ラインには2年連続の全日本大学選抜でチーム主将・櫻内(4年)、U-19日本代表を含めたありとあらゆる選抜メンバーに名を連ねる寺岡(2年)らが顔を揃えるものの、その彼らがボールを持つ時間が多い。まだ余裕こそ見えたもののチャンスは少なかった。前述のように京園大のファウルでPKのチャンスを得たが、これを司令塔・岡崎(3年)が失敗。前半は及第点以下のスローな印象で0-1とビハインドを背負って後半へ折り返す。

 
 意外な岡崎のPK失敗の場面。
 ここで一気に試合を振り出しに戻したかったが…

 
 1年生唯一の開幕戦から2試合連続出場を果たした和田。
 お父さんは神戸の和田昌裕監督だ。

 今季の関西大、やはり注目が集まるのはその豪華なDFラインだけではなく、昨季までエースだった金園(現磐田)の抜けた穴を誰が埋めるのかという点だろう。全体的にタレントというタレントが揃っている関西大、他校からすれば贅沢な悩みなのかもしれないが、各ポジションの中でFWのレギュラー争いが最も熾烈、個人的にはそこに注目していた。今年で4年生になる瀬里(G大阪Y出身)は意外にもベンチにすら入っておらず、先発を務めたFWは千葉U-18出身の奥田(2年)と青森山田高出身の中島(2年)という若いコンビ。開幕戦も同じコンビで臨んでおり、奥田の得点で1-0と勝利している。前半は沈黙していたFW陣が後半魅せてくれるのか、それとも中盤のタレント力で押し切るのか。スコアでリードを許す分、そこが大いに楽しみだった。

 
 関西大の主将を務めるDF櫻内。
 タレント軍団をまとめる数少ない主力の4年生。

 
 昨季の優秀選手でもある岡崎は欠かせない選手。
 G大阪ユース出身。

 後半、前半のハードワークが影を潜める京園大を尻目に関西大が一気にギアを上げる。前半以上に右の櫻内、左の都並(2年)のオーバーラップも機能し、サイドから中央にボールが放り込まれるようになってきた。前半は厳しいチェックに苦しんでいた岡崎、田中(3年)の元G大阪ユースコンビが余裕を持ってゲームを作る。
 55分、サイドから入ったボールに田中、奥田の2人が重なるようにして反応したが、最初に合わせた田中の打ち損じを背後にいた奥田が詰めて関西大が1-1の同点に追いついた。その直後に関西大は中島を下げ、代わりにFW安藤(3年)を投入。これが功を奏し、更に攻撃が活性化。68分には櫻内の右からの折り返しを安藤が逆サイドで受け、コントロールして逆転弾となるシュートを決める。試合は2-1、戦制したはずの京園大は防戦一方の展開となってきた。

 
 
 まずは奥田が2試合連続となる得点を決めて1-1に。

 
 安藤が逆転ゴールをゲット。前線をかき回した。

 関西大は完全に自分たちのペースを取り戻した印象だったが、このメンバーではまだスコア的に物足りないというのが本音。何せまだベンチには今年G大阪ユースから新たに加入した水野(U-16日本代表)、原口(U-15、U-16、U-17日本代表)が控えている。開幕戦では出番が無かったようなので、是非見てみたいところだった。
 すると、84分に原口が奥田に代わって遂にピッチへ送られる。原口はいきなり魅せてくれた。田中のロングパスに反応。一気に京園大の守備ラインの裏へ抜け出すと、そのまま左アウトサイドでゴールへ流し込む。リーグ戦初出場ファーストタッチでの得点に会場は沸き上がった。

 
 出場時間わずか5分強で結果を残した原口。
 年代別代表でも常連、日本を背負う選手になれるはず。

 結局、試合は3-1で関西大が選手層の厚さを見せてしっかり逆転勝利。リードを許して前半を終えた時にはどう巻き返してくるだろうと思ったが、このタレント力を思う存分見せつけられた印象だ。昨季からの主力も多くが健在で優勝候補なのは間違いない。交代選手が次々と結果を出したFW陣は定位置争いが熾烈そのもの。原口というビッグルーキーの加入で今後も関西大の前線からは目が離せない。ユニフォームと共にリファインされた紫紺の軍団が日本一へ着実に走り出した。24日(日)には関学大との関関戦が早くも控えている。
 一方の京園大は前半の戦いが引き続き継続できれば、1部でも勝ち星は拾えるはず。何人かの選手のユニフォームの背番号が手書きの貼り付けで微笑ましい光景だったが、プログラムにも載っていない1年生の選手が出番を多く掴んでいるだけに、そのフレッシュさで初めての1部での戦いを突っ走って欲しいところだ。

4年目の“R”evolution -立命大 VS 大産大-

2011年04月18日 | 脚で語る大学サッカー
 関西社会人リーグと時期を同じくして関西学生リーグも開幕。今年も1部12チーム、2部2ブロック計20チーム、3部3ブロック計28チームによる戦いが始まっている。17日には高槻・萩谷総合公園サッカー場で1部・前期第2節の2試合が行われ、第1試合では昨年度3位の立命大が10位・大産大と対戦(第2試合に関しては次エントリーにて詳述)。試合は3-1で立命大が快勝。リーグ制覇へ開幕2連勝と絶好のスタートを切っている。

 

 昨年はリーグ3位、全日本大学選手権1回戦敗退と一昨年から全く前進できなかったシーズンを過ごした立命大。阪南大、関西大の2強を追走する意気込みはどこよりも強いはず。開幕戦では今年度より1部に昇格を果たした姫獨大を坂本(3年)、藤田(4年)ら主力選手の得点で3-0と一蹴。悲願であろう関西王者、インカレ王者を目指してスタートを切っている。
 対する大産大は、開幕戦では桃山大に0-1と敗戦。なかなか自分たちのサッカーをさせてもらえなかったようだ。1部昇格後2年連続で10位、入替戦でかろうじて1部に生き残る状況を脱すべく初勝利といきたい。

 
 注目はこの選手、坂本一輝。
 関西屈指のストライカーだ。

 先制したのは立命大だった。11分にエース坂本のシュートで手早く先取点を奪うと、中盤の藤田を中心にしっかりパスを回してゲームを作ろうとする。しかし、大産大も序盤は相手へのプレッシングが功を奏し、ボールを奪う場面は多く見られた。20分に立命大・坂本には負けじと、こちらもエースの鍔田(4年)が同点に追いつくシュートを押し込んだ。切り替えの速いここまでの展開で撃ち合いになることも予想されたが、試合は徐々に地力で勝る立命大のペースへ傾いていく。

 
 前半からチャンスメイクにセットプレーに活躍。
 MF藤田(4年)がゲームをオーガナイズ。

 
 大産大は長身のストライカー鍔田(4年)が同点弾を生み出す。
 前半は立命大の脅威になる時間が多かった。

 37分に立命大はDF山田(3年)が猛然と攻撃参加してエリア際まで粘ってCKを獲得。これを藤田が蹴ると、FW篠永(4年)が頭で合わせて追加点となる2点目を奪う。大産大は流れの中での立命大の攻撃を封じていたものの、セットプレーでこじ開けられてしまった。
 そして、試合をさらに立命大のペースに傾けたのは45分の出来事。ロングパスに反応してDFラインの裏に飛び出した大産大・FW川西(3年)が立命大・GK岸上(2年)と接触。回避できず止む無しという場面だったが、主審の判定は警告。既に1枚警告を提示されていた川西はそのまま退場処分となってしまい、ここで前半終了。スコアはまだ1-2という状況で追い上げていきたい大産大にとっては、厳しい後半45分を強いられることとなった。特にスペースへの飛び出しという点では彼の存在は効いていただけにこの場面は悔いが残る。

 
 ボールタッチが柔らかく、印象に残った立命大・MF垣根。
 京都U-18出身の2年生。これからが楽しみ。

 
 
 
 少し酷な判定だったこの場面。
 しかし、事前に警告を1枚もらっていたのが痛かった…

 予想通り、後半は立命大が攻守に圧倒する。中盤の底で藤田、垣根(2年)がしっかりボールをキープして左右に捌くと、サイドから篠原(4年)が果敢に仕掛ける。かと思えば坂本、篠永らFW陣が下がってボールを受けてドリブルで再三仕掛けるなど大産大は防戦一方。60分、これが何本目かというCKのチャンス。前半と同じく藤田が蹴ると、淵本(3年)が頭で触り、背後にいた坂本がダイビングヘッドでゴールに沈めた。まさに試合を決める3点目となった。

 
 
 
 坂本のこの日2点目のシーン。
 野洲高出身の実力派ストライカー。
 昨年度はリーグ得点王。全日本大学選抜にも選ばれた。

 
 柏U-18出身の右サイドバック篠原(4年)。
 元々前目の選手らしく、スピードある攻め上がりが印象的。

 
 藤田と共にチームを中盤でハンドリングするのはMF村上(4年)。
 プレーエリアの広い選手が多い立命大を象徴する選手。

 3-1としてから立命大が積極的に交代で1年、2年の選手を試用。広島ユース出身のMF宮本(2年)、國學院久我山高出身のMF双木(2年)、そして注目の大型新人、FC東京U-18出身のFW前岡(1年)がピッチに登場。特に宮本、双木はパス、ドリブルで仕掛け、前岡は彼らとのコンビネーションでゴール前に迫る場面も見られた。まだまだコンビネーション不足という感は否めなかったが、おそらく来年以降の中心選手、この3人は今年から多く活躍の機会があるかもしれない。面白い3人だった。

 
 出場時間こそ短かったが、存在感を見せた立命大・FW前岡。
 連携が上がってくれば確実にゴールは近い。

 結局、試合は3-1で立命大が後半ほとんど大産大を寄せ付けず快勝した。Jクラブの下部組織出身の選手も多く、その能力の高さを見せてくれた立命大。1部昇格4年目の今季は「"R"evolution~革命~」がチームスローガンという。確かになかなかベスト3の壁を越えられない1部での戦いの現状は何としてでも打破したいところ。対抗馬の一つとして見据えるべき阪南大がまさかの1分1敗とつまずいているだけに、この前期から優勝候補として見逃せない。次節は同じ京都勢・京園大(京都学園大)との対戦。注目は2年連続得点王へ快調なスタートを切った坂本の活躍。おそらく今から多くのJクラブが熱視線を注いでいるであろう彼の活躍が立命大の浮沈を握っていそうだ。

日岡山の激戦 -VS アミティエSC-

2011年04月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第2節を迎え、奈良クラブは日岡山グラウンドで今季Div1に昇格してきたアミティエSCと対戦。前半から先行される苦しい試合展開ながらも後半建て直して3-2と振り切った。開幕戦勝利を収めたチームが軒並みドローで試合を終え、これでディビジョン唯一無傷の開幕2連勝。このまま無敗でGWを迎えたいところだ。

 

 先週の開幕戦と先発メンバーは変わらずこの試合に挑む奈良。この対アミティエというカードには昨季苦い思い出がある。初対戦となったKSLカップのグループリーグ第2節(@びわこ大)、0-3と全く良いところなく敗れたのはわずか半年前。県内以外で全く結果が出せなかった昨季のネガティブ要素を全てを凝縮した試合で、まさにチームの現状に危機感を投じたターニングポイントだった。その意味ではこの試合に特別燃えていた選手もいたのではないだろうか。結果を見ればそうとも思える熱さが溢れる試合となった。

 試合開始からリズムを握ったのは奈良だった。早速決定機を作りアミティエの出鼻を挫こうとするが、相手も開幕戦では昨季の王者・三洋洲本相手に善戦しており、そう簡単にはいかない。すると、徐々に流れはアミティエに傾いていく。
 10分に相手選手の突破をDF眞野が引っかけてしまい、アミティエにPKを献上。これをMF長島が決めようとするが、奈良GK日野が完全に読み切ってこれをストップ。最初の窮地を救ってくれた。ところが、このPK失敗を機にアミティエがギアを上げて一層攻撃的に。完全に試合のペースはアミティエのものになってしまった。奈良もある程度パスワークでボールを繋げるものの、前線に良い形で全く入らず、理想のシュートレンジでフィニッシュできない。そうかと思えば、迅速なカウンターでアミティエが急襲してくる。22~25歳の年齢層で占められるの彼らの構成はまさにハードワークの塊。本当に良く走るチーム、このランパワーという面で前半は大いに苦しめられた。すると、40分に右サイドからの下中のクロスを山本がヘッドで決めてゴールを破られた。

 
 前半から李を中心にパスを繋いでいくが…
 アミティエの攻守のバランスの前に沈黙。

 ビハインドで後半へ折り返したが、ここで吉田監督は前半守備面で苦戦を強いられていた黒田に代えて、橋垣戸を投入。前節も途中起用した3バック気味の布陣にシフト。この施策によって全体的に押し上げが効き、序盤から攻撃の機会を得ることができた。
 50分には辻村隆がエリア手前から左足を振り抜き同点弾を奪うと、その直後にはこれまで再三食らっていたカウンターを今度は奈良が実践。流れるようなパスワークから最後に三本菅のパスを中央で受けた牧がダイレクトシュートで逆転弾を生み出す。一気に試合を形勢逆転。流れを掴んだかのように見えた。
 しかし、53分、右サイドを破られてクロスを放り込まれると、下中に同点ゴールとなる強烈なシュートを許してしまう。後半序盤の怒涛の展開は、どちらも負けたくない意地のぶつかり合い、完全に撃ち合いの様相を感じさせるものだった。

 序盤からアミティエのプレッシングと全体の走力は凄まじいものだったが、2-2になってからトーンダウンしたように感じた。事実、自軍の得点が生まれたこともあってか、奈良は前半以上にうまくボールを繋げる場面が増えてくる。69分には再びカウンターから最後は辻村剛がループ気味のシュートを決めて3点目を奪い再びアミティエを突き放した。

 
 わずか2試合で抜群の存在感を見せてくれている辻村隆。
 チャンスメイクはもちろん、自分で決められる点が長所。

 
 前節の出来を払拭する逆転弾を決めた牧。
 しかし、まだまだできるはず。

 球際の接触が激しい試合となったが、最終的には「守り勝った」「走り勝った」と形容するのがベストだろうか。事実、前半の攻撃陣がピリッとしていない時間帯の日野の好守には大いに助けられたし、1失点で前半を折り返したことが試合の勝利の根幹。後半、前半以上に走りまくって何とか手にした勝利だといえるだろう。
 ただ、課題は多く見えた試合だったと思う。前節から引き続き散見された決定機逸の場面。正直、後半更に加点できるチャンスは何度もあった。今後試合を重ねてここが確実なものになれば、1点差をいう接戦を更に楽な展開に持ち込めるはず。また、守備面ではまだまだ前がかりになった際の切り替えが全体的に遅く、ピンチは幾多にも上った。この点もトレーニングの中で今後成熟していってくれることを期待している。

 
 最終的に試合を決めたのは兄・辻村剛の得点。
 無尽蔵と形容できる彼のスタミナはチームにとって大きい。

 ともあれ、後半の序盤が全てを物語るように、自分たちで試合の流れを手繰り寄せることができた印象深い勝利。今後多くの試合を振り返る際に語り草になる試合だったかもしれない。次戦は開幕2連敗中と苦戦している阪南大クラブと対戦(4/23@鶴見緑地)。しっかり勝利して開幕3連勝でGWに突入したいところだ。

開幕ダッシュ、まずは一歩 -VS ラランジャ京都-

2011年04月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグが開幕し、奈良クラブの2011年の戦いも幕を開けた。開幕戦は京都・太陽が丘にてAS.ラランジャ京都と対戦。試合は、前半終了間際に先制しながら、後半序盤に追いつかれる展開。後半のアディショナルタイムにセットプレーから三本菅の決勝点で2-1と劇的に勝利を手中にした。

 

 既に夏の到来を感じさせるほど日差し、その天候に似つかわしい開幕からの熱い接戦。昨季と同じ開幕カードは最後の最後まで勝敗が分からぬ戦いになった。思い起こせば、昨季の開幕戦、このカードは1-1(西京極補助)の引き分け。奈良が先制し、L京都がその直後に追いつくという形だった。

 ガラリと陣容の変わった奈良クラブ。先発にはCBに眞野、谷山の若いコンビが名を連ね、左右のサイドバックには新加入の吉田、黒田が、そして守備的MFに三本菅、李が並び、両翼に辻村兄弟がそれぞれ左に弟・隆史、右に兄・剛史が起用された。前線は檜山と牧という昨季同様、京都時代からの顔が揃った。
 対するL京都は高卒ルーキーの木下が先発に名を連ねているぐらいで、昨季からの大幅なメンバー変更は見られないものの、JFL・びわこから加入したオリバーがトップに陣取る。平均身長はお世辞にも高いとは言えない奈良にとって、彼の長身ぶりは何とも気になる厄介な存在だった。

 
 眞野が昨季から引き続きCBで先発出場。
 TMでは先発が少なかったが、昨季の貢献度を考えれば当然。

 
 吉田は金沢時代の盟友・中尾、大河内と対戦。
 結果的に彼の左足が勝負を決めた。

 試合は前半から奈良ペース。11分に左サイドの辻村隆と檜山の個人技によるコンビネーションから折り返して、最後は辻村剛が触るもののわずかにゴールならず。そして、39分には右サイドの裏を抜け出した李のクロスを檜山がダイレクトで右足ボレーを試みるもバーの上に。日差しで気温がグングン上がる厳しいコンディション、前半に先制しておいた方が多少なりとも楽な展開に持ち込めるのはあの場にいれば誰もが思ったはずだ。
 前半終了間際、檜山のボールキープから李と繋いで、その李がエリア内で折り返すと、フリーになっていた辻村隆が落ち着いてワントラップからワンフェイントを入れて左足でシュートを決める。この直後に前半終了の笛が鳴った。なんとか先制点を前半のうちに奪えたのは良かった。

 
 L京都・中尾のプレッシャーに檜山が対峙。
 檜山は無得点も再三スペースに飛び出して陥れた。

 
 辻村剛がドリブルで仕掛ける。
 得点の予感は十分。次節にも期待。

 
 先制点は辻村隆が得意の左足で決めた。
 
 後半の立ち上がり早々、L京都が中尾のロングスローから大河内が直接頭で合わせて同点に追いつく。これには驚いた。関西リーグは初めてとなる奈良GK日野も成す術なく。結局振り返れば昨季の開幕戦、14節と3試合連続で彼のロングスロー経由で得点を許してしまっている。試合終了まで何度もこの「マナスペシャル」の機会を与えることとなったが、そこらのFKより高いその精度と相性の悪さに終始冷や冷やさせられた。

 
 
 
 
 得点に直結する「マナスペシャル」というべきこのロングスロー。
 プレミアリーグのデラップ(ストーク・シティ)も顔負けだ。

 1-1となって、奈良・吉田監督は橋垣戸、矢部を連続投入し、システムを3バックにして前がかりに。しっかり勝負に出てポゼッションを高めようとした。更に81分にも攻撃的なカードとして蜂須賀を投入。少しでもチャンスを狙う。
 後半のアディショナルタイムに差し掛かろうとした頃、再三右サイドの高い位置でボールを持っていた矢部が大きく逆サイドへ折り返すと、詰めていた辻村剛が一度落として三本菅へ。強引なシュートを選択せずに三本菅は左に開いていた吉田へ。最後は吉田がエリア左手からシュート。これは相手GKに阻まれたものの、これで得たCKを吉田が三本菅の頭に合わせて決勝点を土壇場で奪った。

 
 決勝点を頭で豪快に決めた三本菅。
 今季はシーズン通して守備的MFとしてフル稼働になりそう。

 あと少しでドローに終わってもおかしくなかった試合。自分たちのミスによるボールロストも多く、決して評価できる内容ではなかっただろう。ただ、勝利への気持ちはしっかりと具現化できた試合だったと思う。今後、拮抗した試合で同じように切り抜けていくためにもこの苦戦を必ずや糧にしていきたいところ。
 早速、明日、第2節アミティエ戦(@日岡山)が迫っている。開幕ダッシュで前期日程から飛ばしていきたい。