脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

リーグ終了、試練の秋へ -vsバンディオンセ加古川-

2011年09月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはいよいよ2011年シーズンの最終節を迎え、和歌山の桃源郷運動公園陸上競技場では、Div1優勝を決めている奈良クラブが2位・バンディオンセ加古川と対戦。撃ち合いの末に2-3で敗れた。奈良クラブは今季リーグ戦初黒星。対するバンディオンセ加古川はリーグ3連勝で有終の美を飾り、10月15日から開幕する全社に繋ぐ勝利となった。ちなみにこの後に行われた第2試合では、Div2の1位と2位が激突。既に来季のDiv1昇格を決めていたディアブロッサ高田に2-2で引き分けたアルテリーヴォ和歌山が来季のDiv1昇格を決めた。

 

 初のリーグ戦敗戦。前節のメンバーから出場停止の辻村剛に代えて李を中盤に加え、試合に臨んだ奈良クラブ。しかしながら、ここまで攻撃を抑えられるとは思わなかった。前半から効果的な攻撃は影を潜め、決定機もほとんど作れず。前半唯一といっていい見せ場は蜂須賀のミドルシュートの場面ぐらいで、攻めあぐねた末に両サイドを揺さぶられて先制点を献上するという悪い流れで前半を終えることとなった。前節のTOJITSU滋賀戦と同じく、前期の戦いを踏まえて研究され尽くしたという加古川の戦いぶりは強かで、守備ラインを上げすぎることなくしっかり引いてまずは守りに徹してきた。

 後半、いつも通りのパスワークでリズムを掴みつつあったが、スピードが武器である嶋の投入で一気に縦への推進力は上がった。69分に左サイドのFKから橋垣戸が合わせて同点に追いつく。完全に流れは奈良に傾いた。84分には、嶋のスルーパスに走り込んだ途中出場の浜岡が冷静にGKとの1対1を決めて逆転。残り時間が5分ほどいう場面で勝利をグッと手繰り寄せたかに見えた。
 しかし、ここからが魔の時間帯だった。加古川も交代出場で余力を残していた宮本が89分に左サイドから折り返すと、これを西口が決めて同点に。そしてアディショナルタイムの3分には、最終ラインでボールを持った眞野が相手をかわそうとした際にボールを奪われ、GK日野が上がっていたところを突かれて豪快なループシュートでそのまま決められた。前期の淡路佐野では4-0という完勝を演じることができたが、この日は攻めきれず、ペースこそ作りながらも試合巧者になれず惜敗となってしまった。

 結果的に順位は決まっていたが、しっかり勝って無敗でリーグを終えたかったのは本音。優勝祝勝会のこの試合の後に控え、なんとも寂しい負け方にはなってしまった。しかし、前向きにとらえるしかない。リーグ再開後は交代出場の選手が結果を出したり、良い動きを見せることで明らかにチームを鼓舞できていることは確か。特に3試合で2得点を演じた浜岡というベテラン選手の存在はチームに大きなものであることを改めてプレーで示してくれた。無論、シーズンを通して回顧すれば、11勝2分1敗、総得点42、総失点13というこの戦績は選手層のことを考えても評価されてもちろんだが、得点を生み出した選手たちが12人に上ることを考えると、まさに全員サッカー、全員攻撃を体現できたのではないだろうか。対照的に守護神・日野に頼るところが大きい守備陣の奮起はまだまだ必要。被シュート数が多かったことからも分かるように、まずはシュートを打たせない守備面の建て直しは今後の課題になる。それにしても、昨季の10月、KSLカップでの空中分解したような無様な負けっぷりが嘘のようで、今季の開幕前には「Div1残留」が今季の最大目標にもなりかねないと頭を過っていたことを思えば、昨夜のような盛大な祝勝会を迎えられたことは最大の喜びだろう。
 また、この試合で橋垣戸の得点をFKでアシストした吉田がアシスト王を決定づける今季7アシスト目。昨季の畑中(昨季限りで退団)に続き、2年連続でアシスト王の輩出となった。シーズンを通してそのスピードと段違いの正確なクロスで得点を量産してくれた。彼自身も町田、福島Uで満足に活躍できなかった鬱憤を晴らすかのようなパフォーマンスだった。
 残念だったのは、トップに1点差で牧が得点王を逃してしまったこと。これは悔しい。祝勝会でも本人が相当悔しがっていた。今季は6節から11節まで6試合連続で得点を叩き出してくれるなど驚異的なペースでゴールを量産したが、再開後はまさかの無得点と失速。檜山とのコンビは相変わらず観る者を魅了するコンビネーションだったが、周囲を引き立てる脇役に終始してしまった。その分も是非とも地域決勝の舞台で暴れて欲しい。

 シーズンを勝利で締め括ることはできなかったが、優勝というかけがえのない経験を手にした。果たして関西リーグの卒業試験、そしてJFLへの入試となる地域リーグ決勝大会で、この集大成を見せられるか。この秋、より一層のリファインを経て、次の公式戦であるKSLカップを迎えられるようにして欲しい。まだ奈良クラブのシーズンはここからが正念場だ。

沈黙、混沌の幕開け -G大阪vs甲府-

2011年09月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の首位を走るG大阪は、ホーム万博で第27節を甲府と対戦。前回対戦では3-4で競り負けた相手だったが、この日はホームで今季初となる無失点で0-2と敗戦。今季4敗目は12試合ぶりの敗戦で、優勝争いを続ける中で非常に痛い1敗となった。対する甲府は前節の福岡戦に続き今季初の連勝。

 

 4連勝で迎えた前節・横浜FM戦をドローで終え、リーグ優勝へ粘りの戦いが続くG大阪。2位につける柏とは勝点差が1ポイント。おそらく今季のJ1優勝はその2チームと3位・横浜FM、そして4位の名古屋に絞られるはず。直接対決を残すのは名古屋だけということで、勝点が切迫している他チームの勝敗に大いに左右される展開。前回対戦時に撃ち合いで敗れた相手でありながら、甲府の現在の順位は16位と降格圏内だけに、ここは負けられないところだ。G大阪は、前節先発だった武井に代えてキム・スンヨンが先発に名を連ねる。左SBにはルーキーの藤春が4試合連続の先発。対する甲府はこのタイミングでダニエルが出場停止から帰還。市川がベンチへ入り、先発には吉田が名を連ねる。佐久間監督に代わってから片桐がハーフナーの後ろにトップ下として配置するようになったようだ。パウリーニョも含めてテクニックのある選手は多い。

 
 
 2万人近くが入った万博。
 この試合展開は一体どれほどの人が予想できただろうか。

 それでもG大阪は、途中加入したラフィーニャとシーズン開幕から活躍するイ・グノのコンビがここまで19得点挙げており、失点数は多いものの負ける気がしないのも本音。相手が16位ともあって、撃ち合いは予想できてもこの展開は予想できなかっただろう。前半終了時点でメインスタンドには席を立つ人が見られたほど。それほどこの試合のG大阪の攻撃は「非日常」的な退屈なものとなってしまった。
 両チームミスが少ないわけではなかったが、G大阪はゴール前へボールを進めるものの落ち着かない。カウンター時にシフトアップするG大阪の攻撃に対して、井澤、山本のボランチコンビ、そして吉田、内山の両サイドバックがしっかり寄せてくる甲府。中央には屈強なダニエルが186㎝を誇る長身でハイボールを跳ね返す。G大阪のくさびに対して3人も4人も詰め寄るこの素早いプレスの意識は徐々にG大阪にこれまでなかった焦りをもたらす。

 
 甲府の守備の厚さを崩せず。
 ラフィーニャも得意の形を作れない。

 
 甲府の守備の要として立ちはだかったダニエル。
 幾度となくチャンスボールを潰し続けた。

 甲府は、30分に片桐のライナー性のクロスボールをハーフナーが合わせ損じたところを柏がシュート。これはG大阪が藤ヶ谷のセーブで切り抜けるが非常に危なかった。元来、守備がスペシャルなチームではない。守備だけでいえば、26試合で42失点という数字はミドルクラス以下。これまで圧倒的なその得点力でここをごまかしてきたチームにとって得点が奪えなければ必然的にこういう場面が巡ってくるのは当然だ。34分には二川が渾身のドリブル突破から折り返し、キム・スンヨンが合わせるが、ギリギリのところで甲府のDFに体を入れられた。

 0-0で迎えた後半、分水嶺となったのは61分の交代の場面だった。G大阪は藤春、キム・スンヨンに代えて佐々木、武井を投入。なんと最終ラインを加地、山口、高木の3バックにシフト。すると、その1分後に中盤からバランスの崩れたG大阪のあたふたぶりを尻目に甲府・パウリーニョがドリブルで突進。エリア前から得意の左足でミドルシュートを決めた。相手DFの板挟みになったラフィーニャがボールを奪われた後に見事なまでのダイレクトパスの連続から一気にパウリーニョに繋がれる。甲府の集中力が発揮された瞬間だった。

 
 パウリーニョと対峙する山口。
 しかし、先制点の場面は完全にパウリーニョの勝利。

 
 
 ほとんどの場面で相手DFの素早い寄せに孤立を強いられる。
 ラフィーニャはG大阪加入後最も苦しんだのでは…

 1点を追いかける展開になったG大阪。ラフィーニャには良い形でボールが入らず、彼がシュートまで持ち込む場面も作れない。イ・グノが突破してもダニエルを中心に甲府の最終ラインが身を挺してこれを止めにかかった。後半のG大阪は前半からたった3本しかシュートを上積みできず。自ら3バックにしてしまった直後の混乱から奪われた1点の重みに苦しむばかりか、試合終了間際には、前がかりになったところをカウンターで簡単に裏に出され、安易な守備を見せた明神をかわしたハーフナーにダメ押しの2点目を決められて試合を終えることになった。

 
 
 
 
 アディショナルタイムのハーフナーの得点。
 日本代表クラスにあまりにイージーな守備で対応してしまった。

 痛い1敗。前節の横浜FM戦の引き分けも帳消し以上に思える取りこぼし。ここまで閉塞感の漂い続けた攻撃はG大阪らしくなく、元来持ち合わせていた守備面での脆弱性を改めて見せるだけとなってしまった。なんとかチームを動かそうとした61分の交代と布陣変更だったが、全体的に勝負を焦っていたと感じる。とはいえ、甲府の守備の高い集中力とタスク実行力の賜物。彼らは決して無理をせず、ほとんど数的不利の場面を作らせなかった。G大阪にとっても今季初の完封負けということだったが、甲府にとっても15節・鹿島戦以来の完封勝利ということで、残留に向けた強い意志を確かに感じる勝負に徹した試合運びだった。
 甲府に敗れて以来、2ヶ月ぶりの敗戦も甲府の前に。次節は20周年を飾るイベントを兼ねたホームでの浦和戦。残りのリーグ戦は7試合。明日、2位の柏が勝利すれば逆転で首位に浮上する。このG大阪を1差で追いかける名古屋、そして3差で追う横浜FM。今季も最後までJ1の優勝争いは混沌となりそうだ。

 
 どうも遠藤に元気がない様子だった。
 やはり、G大阪の浮沈は彼次第か…

覚醒のKG -関学大vs立命大-

2011年09月24日 | 脚で語る大学サッカー
 太陽が丘球技場Bにて行われた関西学生リーグ1部の後期第1節の第2試合は、5位・関学大が8位・立命大と対戦。この試合終わってみればなんと6得点の猛攻で関学大が6-0と大勝。来季G大阪に入団が決まっている阿部(4年)が4得点、コンビを組む三ノ宮(3年)も2得点と2トップが大活躍。2人ともこれで得点ランキングトップに躍り出た。これで関学大は、リーグ戦6試合無敗。対する立命大はリーグ戦6試合未勝利と対照的な2チームの試合だった。

 

 1点を争う大体大と阪南大の1試合目と打って変わって、関学大のゴールラッシュになった2試合目。関学大は比較的主力に4年生が多い中に、名古屋ユース出身の小幡、そして福森と1年生コンビが先発出場。対する立命大は左SBに篠原(4年)でなく武田(2年)を起用。直近5試合で2得点得点力不足が顕著なだけに昨季のリーグ得点王坂本(3年)の爆発に期待をかけたい後期初戦だった。
 しかし、試合が始まるとその出来の対照的なこと。関学大は常にフィニッシュをシュートの意識で阿部を中心に攻め立てる。立命大の攻撃を許すことなく、関学大は攻めまくった。19分に阿部がゴールラッシュの口火を切る1点目を奪取すると、36分には三ノ宮の突破から最後はゴール前にこぼれたところを再び阿部が決めて2点目。その直後には阿部が完全にフリーで抜け出してシュートという場面があったがシュートは無情にもバー直撃でハットトリックは後半にお預け。43分には左サイドから駆け上がった津田(4年)の折り返しを三ノ宮がヘッドで決めて前半だけで3-0とする。

 
 もちろん試合の主役は阿部浩之。
 無双状態の得点力で4得点と大活躍。

 
 関学大は1年生の小幡が印象に残った。
 小柄ながら間違いなく将来のチームを支える選手。

 
 関学大は前線ももちろんのこと、中盤で関(2年)が奮闘。
 攻守に強さを見せ、存在感の大きさを感じさせる。

 “手も足も出ない”と言わんばかりに好き放題攻められた立命大。後半から大型FWの前岡(1年)を投入して建て直しを図るが、後半も相変わらず関学大が攻守にペースを握る。63分には阿部がハットトリックとなる見事な抜け出しからの3点目で4-0とすると、71分には、今度はエリア右手からノーステップ気味にループめいたシュートでゴールの高い位置に決めて自身4点目。来季J屈指の攻撃陣を誇るG大阪入りを納得させる見事な存在感。その4分後には三ノ宮がこの日2点目を決めて関学大が6-0とそのリードを広げた。

 
 特別指定選手として既に東京Vでもプレーする梶川(4年)。
 その非凡なパスセンスと攻撃センスは関学大の要。

 
 この日は三ノ宮も爆発。
 遠慮なくハットトリックといきたかった。

 
 前半からキレのあるプレーを見せていた高松(4年)。
 関学大で最も気になる選手の一人。

 打つ手無く惨敗を喫した立命大は、これで6試合もリーグ戦での勝利に見放されることとなった。ほとんど決定的な場面を作れなかったのが残念。特に坂本がずるずると中盤までボールを引き寄せにいかなければならない展開が苦しかった。速い時間帯から1年生の前岡を入れるが、これがほとんど功を奏さなかったのは中盤の構成力の差というべきか。とにかく覇気の無さも含めてかなり気になる試合運びだった。次節は、前期接戦の末に敗戦を喫した大体大と対戦。なんとか浮上のきっかけを掴みたい。


 終始苦しい戦いを強いられた立命大。
 前期の序盤こそスタートダッシュは良かったが…

 
 エース・坂本は来季の今頃どこに去就が決まっているか。
 立命大の復調には彼がゴールを決めないと。

 
 小柄ながらテクニックのある戸高(2年)。
 劣勢の中でも好プレーは見せた。
 
 対して、覚醒のKGこと関学大。加茂総監督もおそらくご満悦の6点圧勝劇で、これで後期も上位陣にしっかりしがみつくことができそう。勝点が切迫した上位陣はどこが振り落されるかという勝負なだけに、この勢いでリーグ優勝も狙いたいところ。関西大、桃山大と直接勝負となる11月が勝負どころとなりそう。何にせよこのカテゴリーでは阿部は少しレベルが違う存在。常にゴールへと向かうその姿勢は今からJでどんなプレーを見せてくれるのかという妄想を掻き立てられる。また、同じくゴールでアピールした3年の三ノ宮もJ入りを意識してこのまま活躍を期待したい。また、主力に4年生が多い関学大は、小幡を中心に1年生選手など下級生戦力のアピールも欲しいだろう。11人中5人も4年生で構成されているのは来季のことを考えると少し心配の種かもしれない。

 
 来年の今頃は、この姿がG大阪のユニフォームで見られるか。

痛いロスト2ポイント -大体大vs阪南大-

2011年09月23日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生リーグの後期日程がいよいよ開幕。京都府立山城運動公園太陽が丘球技場Bでは、1部の2試合が行われ、第1試合で6位・大体大と7位・阪南大が対戦。阪南大前半先制して優位に試合を進めるものの、追加点が遠く、後半のアディショナルタイム終了間際に同点弾を被弾。1-1の引き分けに終わった。大体大と阪南大の勝点差は変わらず4ポイントのまま。

 

 秋晴れの太陽が丘球技場B。陽射しこそ強いものの風が強く、心地よい清涼感に満たされる。まさに秋のサッカー日和といった天候だったが、試合は熱かった。
 阪南大、大体大共に天皇杯出場を果たした関西勢を代表する2チーム。大体大は3年ぶりの総理大臣杯制覇で、大学枠での出場となったが、厚別での1回戦では北教大岩見沢校に総理大臣杯まさかの敗退。総理大臣杯のリベンジをとられる形になった。一方の阪南大もこの大体大との決勝となった関西選手権を制し、総理大臣杯に出場。初戦で敗れたが、優勝を果たした大阪府選手権経由で天皇杯にチャレンジ。1回戦ではJFLの強豪・SAGAWA SHIGA FCに敗戦と、双方1回戦で姿を消すことになったが、前後期のインターバルでどちらも共に結果を残したといえる。その両校が後期最初の試合で顔を合わせることになった。
 大体大は山田、山口という1年生コンビが先発に顔を揃え、ベンチにも坂本、藤山、泉谷と1年生が3人もスタンバイ。明らかに今後のチームも見据えたメンバー構成を垣間見せた。対する阪南大は、先日C大阪入団が内定した井上(4年)を軸に、GKには原田(2年)が入り、CBには永井(2年)ではなく二見(2年)が岩本(4年)をコンビを組む。前線では可児(2年)と中村(4年)のコンビ。そして、ベンチには神門(3年)が入った。

 試合は、前半から阪南大が効果的に攻撃を展開。井上から泉澤(2年)、中村にボールを繋ぎ、大体大ゴールに迫る。対する大体大も前線の山本(2年)を中心に、左MFの田上(3年)とで積極的なドリブル突破を見せる。しかし、前半こそ何度かチャンスを作るがなかなかエリア内でシュートを打たせてもらえず。対して、この日は阪南大の左サイドで泉澤が切れのあるプレーを見せており、40分にはその泉澤のシュートで阪南大が先制して前半を折り返すこととなった。

 
 阪南大ゴールに迫る大体大・山本。
 二見に倒されたこの場面は惜しくもPK獲得ならず…

 
 阪南大の選手に囲まれながらも突破を試みる田上。
 何度も左サイドからチャンスを作る。

 後半に入っても阪南大のペースは変わらず。左から飯尾(3年)のオーバーラップ、中村の突破、井上のセットプレー、泉澤のドリブルなどでチャンスを作る。49分には、飯尾の折り返しから泉澤がシュートを合わせるが、相手GKのセーブに遭う。65分にも井上が抜け出してニアからシュートを放つが惜しくも右に外れ、追加点が遠い。
 対して1点を追いかける大体大も64分にFW脇(3年)、FW泉谷を合わせて投入。同点のチャンスを窺う。88分には、脇が相手DFの裏に抜け出してGKと1対1の決定機を迎えるがこれを決められず。アディショナルタイムに入り、敗戦濃厚かと思われたその3分だった。馬場(3年)のFKにファーで頭で合わせたのは松竹(4年)。起死回生のゴールで大体大が1-1に追いついて試合を終えた。

 
 効果的な攻め上がりに定評がある阪南大・飯尾。
 この試合でも随所に持ち味を披露。

 
 C大阪入団が決まった関西屈指のプレーメイカー井上。
 負傷で出遅れたが、後期の巻き返しには欠かせない選手。

 
 先制点を決めた泉澤。
 今季はイタリア遠征メンバーにも選出され、切れ味見せる。

 

 
 アディショナルタイム3分の同点ヘッド。
 松竹が逃さなかった。

 前半こそ仕掛ける場面が目立っていた大体大が、次第に淡泊になり、阪南大のペースにハマりすぎていた印象があったが、最後の最後でチャンスを見逃さなかった。松竹のヘッドは集中力の勝利ともいえる流れ。このリーグ戦のインターバルで様々な経験を積んだ大体大の成長の証か。新しい選手も起用しながら、後期の戦いぶりが注目できる。また、追加点が最後まで遠かった阪南大は痛い引き分け。ほぼ勝利を掴んでいただけにこの2ポイントロストは、後期の巻き返しを左右してきそうだ。次節は、大体大が不調の立命大と、そして阪南大は好調の関学大を相手にする。

遠かった1点 -vsTOJITSU滋賀FC-

2011年09月19日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは残り2節となり、18日に奈良クラブは、TOJITSU滋賀FCと第13節をビッグレイクにて対戦。優勝を決めて更に連勝を伸ばしたい奈良クラブだったが、1-1の引き分けで試合を終えた。TOJITSU滋賀FCは負ければ来季からのDiv2降格が決まっていたが、この引き分けによりAS.ラランジャ京都との降格争いは最終節にもつれ込んだ。

 

 久々のビッグレイクでの試合。この場所は府県リーグ決勝大会時代から何度も奈良クラブが試合を行ってきた地。今季は初めてとなるBコートでのリーグ戦となった。無論、優勝が決まったことで、残り2試合のモチベーション維持はこれまでより難しい。TOJITSU滋賀には前期の鴻ノ池での対戦でも勝利こそしたが、再三決定機を作られて苦しめられた。そういう意味では厳しい試合になると予想された。
 奈良クラブは、前節途中からボランチで入り、今季初得点を決めた黒田を先発で起用。李をあえてベンチに置いた。いつもポゼッションの中核として全方位にボールを捌いてくれる彼をあえて不在にして、どこまでやれるかを試したのだろう。地域決勝に向けて、層の薄い選手層の中でいかに個々の経験値を積み上げるか、このメンバーで絶対勝てというメッセージは間違いなく込められていた。

 試合は、開始直後にこの日キャプテンマークを巻いた檜山が惜しいシュートを早速放っていくが、案の定TOJITSU滋賀も序盤からアグレッシブ。ホームで負ける=降格するわけにはいかないということもあって、フィニッシュはシュートでという意識は高い。TOJITSU滋賀の岩田のシュートがポストに当たってかろうじて失点を逃れる場面もあった。奈良も黒田、三本菅が高い位置でボールを奪って、右サイドの蜂須賀、左の辻村剛に繋いでチャンスを作る。31分には、吉田の左CKから橋垣戸が完璧なタイミングでヘッドを合わせて先制点を奪った。
 しかし、36分にはTOJITSU滋賀がDF上田のパスに土岩が反応して抜け出し、シュートを決めて同点。こちらの先制後の守備の緩みを巧みに突かれた。前半を1-1で折り返すことになる。

 後半に入ってもTOJITSU滋賀の集中した守備を崩せない。今季は、2節のアミティエ戦、8節のラランジャ戦、11節の阪南大クラブ戦と、先制点を奪われても試合をひっくり返してきた。明らかに1点を争うこの試合でも次の決勝点を狙うのはこちらだという気迫を見せて欲しかったが、相手の運動量低下に合わせて回数が増えるダイレクトプレーも最後の最後でパスが繋がらない。自分たちのミスから食らうTOJITSU滋賀の鋭いカウンターに肝を冷やす場面が度々見られた。後半には吉田監督が「なんでお前たち1点を取りに行かないんだよ!」と激高する場面も。TOJITSU滋賀のスピードある飛び出しを警戒するあまり、積極的なアタックが影を潜めがちになった。シュートの打てない後半は非常に長く感じられた。
 それでも、前節初得点の浜岡、そしてスピードのなる嶋を投入して最後まで狙い続ける。後半終盤に嶋がGKと1対1の場面を迎えたが、わずかに決められない。両チーム死力を尽くした試合は1-1のドローで終えることとなった。

 双方ベストを尽くした良いゲームになった(試合終了後の辻村剛の一発退場は想定外だったが…)。勝ちたかったのは本心だが、何よりTOJITSU滋賀の残留への執念がそれを阻んだ。しかし、11月から臨む地域決勝のことを考えると、これを弾き飛ばせるほどの決定力と構成力が欲しいところでもある。13試合に渡ってリーグで負けていないことは非常に評価できるが、10月にほとんど公式戦を戦えないことを考えると、これまで以上に結果、内容にこだわって欲しい。残留をかけた相手の気迫に決勝点が奪えないようでは、まだ地域決勝を勝ち抜くことはできない。来週の最終節は、2位・加古川との試合(@桃源郷)。加古川も全社、そして補充枠という点でまだ地域決勝進出のチャンスはある。前期は圧勝できたが、もちろん後期も内容、結果ともに圧勝で今季のリーグ戦を王者らしく締め括って欲しい。

優勝、フロックではないこの力 -vs三洋洲本-

2011年09月12日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグがいよいよ再開。奈良クラブは、後期第12節ということで先週の天皇杯1回戦で敗戦を喫した三洋電機洲本と三木防災陸上競技場にて対戦。7-0という圧倒的なスコアで完勝。Div2を優勝して以来2年ぶりとなるリーグ優勝で、Div1は昇格してから2年目にして初優勝。昨季の王者からリーグ王者のタイトルを奪取することに成功した。

 

 5月にリーグ戦の前期で五色にて戦い、初めて三洋洲本から白星を挙げた奈良クラブ。8月には、この日と同じ三木防災のスタジアムで、「奈良県選抜」と「兵庫県選抜」として対戦。0-2のビハインドからアディショナルタイムに追いつき、PK戦では日野の大活躍もあって勝負には勝った。しかし、この2勝を遥かに忘れさせてくれる強さを取り戻して、昨季の王者は先週奈良クラブの前に立ちはだかった。雨の橿原でのあの敗戦は、1-3というスコア以上に、昨季JFL入替戦まで進んだ三洋洲本の屈強さを見せつけてくれた。それはまるで「お前らの実力なんてフロックだよ」と訴えるかの如きものだった。

 
 この大一番で檜山が大活躍を見せてくれた。

 1週間後の再戦となったが、やはり脳裏にはこの天皇杯での敗戦がすぐに想起され、順位こそ奈良の方が上であるものの、逆に「挑戦者」という形は否めなかった。選手たちのメンタルに三洋洲本に対する変な苦手意識が植わっていないか少し心配にもなったが、こんな考えが全く杞憂だと思わせてくれるのに時間はかからなかった。
 奈良クラブは、先週の天皇杯で矢部が負傷し、この試合では蜂須賀が5試合ぶりの先発で中盤に入った。選手層の薄さもあるが、結果的に大幅なテコ入れなど不要。この日は選手たちの気迫が違った。まず9分に辻村剛が易々と先制点となるシュートを決める。先週は立ち上がりの同じ時間帯に先制点を許し、試合の流れに大きく響いた。序盤から不安定な入り方をする悪癖がここ最近では目立っていたため、この先制点は序盤からチームを上昇気流に乗せてくれた。4分後には、蜂須賀がエリア手前左手から左足で豪快にシュートを決める。これでかなり楽になったが、33分には再び辻村剛がGKとの1対1を制して3点目を決めた。前半を3-0で折り返せるとは良い意味で想定外だった。

 
 前半、チームに勢いをもたらした辻村剛。
 さすが関西Div2の得点王。得点力は非凡。

 とにかく面白いようにパスが繋がる。相手のプレッシャーが緩いわけではないが、先週の三洋洲本に比べると少し元気が無いようにも思えた。しかしながら、先週の天皇杯でもシュート数では15対8と奈良クラブが上回り、決定機はいくらでも作れていた。ポストやバーに3本ほど嫌われた場面があったが、もしかしたら「運」の有無ということで、あの敗戦は片付けられるのかもしれない。それぐらいの勢いでパスワークの精度に圧倒的な差を見せて、後半も奈良クラブは得点を重ねていった。
 後半開始直後に檜山がシュートを決める。牧との完全に息の合ったパスコンビネーションで三洋洲本の守備陣を崩した。この4点目が既に試合を決めたといえるが、ピッチの中で走る選手たちは更にゴールを渇望する。後半に入ってギアが全開になってくるいつものサッカーはこの試合でも健在。ダイレクトパスがこれほど相手エリア前で繋がれば負けることはない。83分には、途中出場で右サイドの高い位置でプレーしていた浜岡が檜山の折り返しを中央で決め5点目を奪う。88分には同じく途中出場の黒田も今季初得点となるシュートを決めた。アディショナルタイムに入ってラストワンプレーというところで檜山がとどめの7点目を決めて試合は終了。初のDiv1優勝を派手な得点劇で締め括った。

 
 今ではすっかり古参選手だが、蜂須賀は今季最高のプレー。
 待ちに待った今季初得点を決めてくれた。

 先週の試合を振り返ると、「気迫」という言葉でしか勝因を分析できないような見事な大勝劇。そして同時に最後までワクワクさせてくれたエンターテイメントとしても最高の試合だった。浅野や成瀬という主力選手が帰還して昨季のメンバーが復活した三洋洲本にこの完璧な試合運びは、一体リーグ戦以外の夏の苦戦の連続は何だったのかと悩ましくさせてくれると共に、これから「地域決勝」というチーム未踏の舞台へと挑戦する強い意志表明にも思えた。ピッチで戦う選手の誰もがJFLを目指してプレーしている。一つ一つのプレーでもう一つ上のレベルを意識してやってくれているようだった。「今年はチームのほとんどが仕事を変えたり、生活水準を落としてまでサッカーに賭けていたので、自分の中では優勝して当然やし、正直なんの驚きもありませんでした。」と辻村剛が公式でコメントを残しているように、皆がここでのサッカーに人生を懸けている。その結果が気持ちとして、プレーとして最大の結果をもたらしたのだろう。本当にサポートする側として敬意を表すると共に、選手たちを労いたい。

 
 奈良クラブの司令塔としてパスワークの中心に君臨する李。
 ノッている時のキープ力は凄まじい。

 さて、2試合を残しての優勝を果たしたが、来月は全社出場を逃したチームにとっては公式戦の激減する期間となる。勝負はここからだ。リーグ戦は「無敗」に拘って残り試合に挑んで欲しいし、これ以上のブラッシュアップを地域決勝までに求められる。正直、リーグで戦っているどのチームよりも強豪が集まるこのカテゴリー最大の舞台。全国の強豪クラブと比較しても、3年前の府県決勝を勝ち上がった際のような突出した強さはここでは期待できないだろう。どれだけ「勝利」に拘れるか、この試合のようなメンタルを発揮して挑んでいかなければならない。

無念の1回戦敗退 -EC1回戦vs三洋洲本-

2011年09月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日から開幕。3年連続で奈良県代表としてこの大会に臨んだ奈良クラブ。4日に橿原で同じ関西リーグの三洋電機洲本との1回戦を迎えたが、1-3で敗戦。2年連続1回戦で姿を消すこととなった。

 

 台風の影響で天候は実に不安定な1日。それでも2年ぶりに奈良の地で迎える天皇杯という特別感と「奈良クラブ祭り」と題されたフードコートの展開で徐々に賑わう橿原公苑陸上競技場。しかし、試合が始まるとその90分間は、奈良クラブが戦った直近の試合において最も辛い現実を受け止めることを強要しているかのような試合だった。
 奈良クラブは、1週間前の県選手権決勝戦と同じメンバー。層が薄いことは承知。陣容の変更点も予想できる範囲といえば、右サイドバックに入った谷山とベンチに控える黒田、そして、この日もボランチで出場した矢部とベンチに控える辻村隆の2組が先発で入れ替わるかどうかという程度だ。しかしながら、リーグ戦の前期の対戦ではこの日戦う三洋洲本には2-0と勝利しており、先日のミニ国体でもPK戦までもつれ込んでの勝利だったが、2点差を追いつくという試合内容。昨季は1勝も挙げられなかった彼らを相手に苦手意識は払拭できたかに思えた。

 
 DF太田を中心とする三洋洲本の厚い壁が立ちはだかる。 

 しかし、それは違った。兵庫県予選の決勝から正守護神の浅野が帰還し、中盤にもリーグ2年連続MVPの成瀬が帰ってきたことで、この日の三洋洲本は5月に五色で対戦したそのチームとは違った。守備でブロックを固めて、素早いプレスでボールを奪いに来る。攻められても決して焦らず、守備から自分たちのペースに持ち込むそのサッカーは昨季の地域決勝で快進撃を見せ、JFL入替戦まで到達した最盛期のチームのそれだった。
 開始8分で先制点を献上する。得点を許したのはミニ国体から右サイドで快活なプレーを見せていた稲垣だった。先制されることで目が覚めた奈良クラブが攻勢に転じるが、檜山が相手GKと1対1の局面を作りながらも決められず、また、三本菅のヘッドがバーを叩くなど、あと一歩でゴールは割れず。前半を0-1で折り返した。
 後半に入ると、奈良クラブが再びまくし立てる。左の吉田、李、矢部の展開、そして檜山、牧のキープから前線でチャンスを作るが、守備面で集中力の高い三洋洲本のゴールを割ることができない。前がかりになり、時間も少なって焦ってきたところで右サイドを崩され、83分に太田に決められる。それでも終盤には三洋洲本に与えてしまったPKをGK日野がストップして見せ、89分には橋垣戸が押し込んで1点差とし、アディショナルタイムの反撃に望みを繋いだが、終了直前に途中出場の三洋洲本・井上に加点を許して万事休す。2回戦進出はならなかった。

 
 最後まで試合をひっくり返すことはできず。

 90分間、三洋洲本の著しい復調をまじまじと見せつけられることになった。強い。本当に強い三洋洲本が戻ってきたという感じだった。こちらポゼッションで優位に立っていても、そのファーストアプローチで守備の陣形をきっちり整える。そして、数的優位を作らせずにきっちり中央をブロックする守備の集中力はさすがだった。その上、相手の隙を逃さず得点に繋げてくる決定力。そういえば、6月下旬に太陽が丘でアミティエに惨敗する彼らを見たが、その印象は吹き飛んだ。浅野と成瀬が帰還したこのチームがこれだけ息を吹き返すとは。  
 その三洋洲本の復調に加え、奈良クラブの経験不足も大きく露呈した試合ではなかったかと思う。今季はリーグ戦こそ11節を終えて未だ無敗という独走ぶりだが、トーナメントのような一発勝負になるとなぜか安定した力が発揮できない。パスは繋がるものの攻守のバランスが乱れることが多く、先取点を与えてしまうと、なかなか建て直すまでに時間を要する。目の前の90分で全てが決まってしまうという焦りが出てしまうのか。全社関西予選のセントラル戦しかり、この三洋洲本戦もそうだ。この点は同じような経験を積み上げていくしかないものかもしれないが、リーグ戦との戦績にギャップを感じざるを得ないリーグ中断期間の戦いぶりだった。しかしながら、昨季の王者の強さを取り戻した三洋洲本に肉薄する実力は垣間見せてくれた。その証拠に15本(スポニチ報道による)という数字がこの試合のシュート数で、相手を凌駕していたはず。3度ほどバーやポストに嫌われる場面があったが、ここを決め切れる力が加われば、G大阪のように撃ち合いに強いチームにはなれると思うのだが。ここを光明として見出したい。加えて、追いかける展開に失点を重ねてしまう面は是非とも克服したいところ。前がかりになった時にカウンターなどで失点を重ねる奈良クラブの悪癖は今に始まった話ではないが、元来守備陣の層が薄く、各ポジションにスペシャリストが少ないというウィークポイントも相まって、この攻守のバランスを試合の中でいかにコントロールできるかは、今後全国の舞台で数ある強豪チームと戦う際に鍵となってくるはずだ。

 
 意地の1点を返した橋垣戸。
 守備だけでなく攻撃面での貢献度も高い。

 いやはや何とも素早く過ぎ去った天皇杯ウィークだった。県選手権決勝からわずか1週間での本番。実感もそこそこに迎えてしまう天皇杯の味気無さと、奈良で2年ぶりに戦えたにも関わらず勝てなかった無念の想いが巡る。奇しくも奈良では台風の被害が著しく、この試合も後半から大雨となった。この悪天候にも関わらず、初めて奈良クラブの試合に足を運んだ方々に彼らの戦いはどう映っただろうか。何より、今週の日曜には再び三洋洲本との試合が待っている。3試合を残した関西リーグの再開初戦。ここで勝てば初の1部優勝を決められる。JFL昇格という最大目標への挑戦もあるが、来年、できれば橿原でもう一度リーグ王者として、奈良県代表として、天皇杯を戦うためのリスタートポイントでもある。二の舞は絶対に“なし”にしたい。