脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

全国高校サッカー選手権大会①

2007年12月31日 | 脚で語る高校サッカー


 前日、「都立の星」こと東京B代表の三鷹がオープニングゲームを制し、今年も幕が開けた全国高校サッカー選手権大会。奈良県代表の奈良育英と筆者の母校である大阪代表近大附属のゲームを見届けるために、今大会は埼玉ブロックが筆者の主戦場となった。

○前橋育英VS奈良育英● 5-4
●星稜VS近大附属○ 1-1(PK2-4)

 今年3度目の来訪となる埼玉スタジアム2002では初めてのメインスタンドでの観戦。普段は赤い悪魔たちが覆うその大きな器は、改めてサッカー専用スタジアムとしての素晴らしさを物語る。
 高校生の彼らに用意されたこの申し分ない舞台にて1回戦の第1試合として前橋育英と対峙した奈良育英。群馬のタイガー軍団はU-18代表のボランチ青木(来季大宮入団内定)、司令塔廣瀬を擁し優勝候補にも挙げられる強豪校である。正直クジ運は最悪だなと組み合わせが発表の時点では思ったことに加え、県予選の決勝のハラハラさせる戦いぶりでは内心この全国を勝ち上がるのは不安というのが本音であった。しかしこの日の奈良育英は相手に臆することなく素晴らしいサッカーを披露した。

 圧倒的にボールを支配され、それでも前半を終えて2点のビハインドで済んだのは良かった。常識的にもそのビハインドを取り返すにはまだ充分な点差であるからだ。しかしそのためには前半のサッカーでは計算は立たない。すると奈良育英はベンチが動く。彼の先発落ちがこの日最大のサプライズであった10番の田仲をこの後半から起用してきた。テクニックに富む中野と吉田将という2年生コンビで臨んだ前半は攻撃の起点を築くことができず、ターゲットマンとしての田仲の存在感は後半のサッカーで何よりも明確に映し出された。中野がサイドに移り、田仲を起点に効果的なボールを配給することで前半よりアグレッシブに奈良育英はゴール前に展開できるようになった。
 前半はオーバーラップしたDF笛田の思い切りの良いシュートも含め、後半9分にも1年生FW西澤がこの日2得点目で3-0とリードを広げた前橋育英。しかし気の緩みだけではなく、後半明らかに火の着いた奈良育英の猛攻に守備は崩れた。
 後半12分にゴール前で落ち着いて中野が1点を返すと、そのわずか1分後には左からのクロスにFW吉田将が反応して決め、これで1点差に迫る。後半20分にはその吉田将のクロスにエース田仲がなんと3-3の同点に追いつくゴールを決めるのであった。

 盛り上がるスタジアム。最高にスペクタクルに富んだ展開。その後、後半29分には途中出場の前橋育英FW木原がオフサイドぎりぎりで喜屋武からのラストパスをゴールに沈め4-3とすると、残り時間2分となった後半38分には奈良育英がCKからFW吉田篤が相手GKに競り勝ち4-4とする起死回生の同点弾。80分間で決着が着かなかった場合は即PK戦となる。このままPK戦まで持ち込めばまだ勝機は充分に残されている。誰もがそう望み、迎えたロスタイムに悪夢は起きた。一瞬の集中力の欠如か、はたまた前橋育英の気迫は勝ったか、MF青木の鬼気迫る突破から放たれたスルーパスはこの日スタメンながらも脇役に回っていたFW喜屋武へ。これで5-4。息をつかせぬ白熱のシーソーゲームはタイムアップを迎えることとなった。

 奈良育英は自分たちの力を出し尽くした。しかし負けたことが全て。この選手権ではそれは次は無いこと意味する。前橋育英は確かに強かった。左右に広くボールへとコンタクトをとるMF廣瀬、中盤の起点となったMF青木、時にアグレッシブにオーバーラップを仕掛けてくるDF陣、1年生ながら2得点とその得点能力の非凡さを発揮したFW西澤など、個々が自分たちの仕事を全うできた。
 しかしながら奈良育英も後半は前半の劣勢を完全に払拭する質の高さを見せてくれた。この全国の舞台で躍動してくれた彼らには惜しみなく賛辞を送りたい。中野、吉田将、染田と主力に2年生も多いこのチームにはまだ来年もこの悔しさを晴らすチャンスはある。来年この選手権でリベンジを果たしてくれることを期待する。

 第1試合終了後、タクシーですかさず駒場スタジアムへ。さすがにこのスケジュールではダブルヘッダー観戦は無理がある。しかし前半20分頃から何とか観戦することはできた。

 駒場では前半30分に星稜のDF福田がCKから頭で合わせ、そのリードを守り、1-0のまま前半が終了。今大会「西の横綱」と称される星稜を相手に近大附属は善戦していた。まだ後半チャンスは生まれる。期待通り後半ペースを握った近大附属はU-18代表で新潟への入団も決まっているDF鈴木を中心とした星稜の厚い壁をその速攻で切り裂きにかかる。後半20分、府大会決勝でも2得点と殊勲の活躍を果たした主将のMF笹田が星稜GK今村の飛び出しにて生まれたルーズボールを拾い、そのままシュート。ここ一番で本当に仕事をする男だ。ゴールに突き刺さる同点弾に大阪から駆けつけた近大附属の応援サイドは喜びを爆発させる。
 その後も星稜がペースを上げてはFW谷川を中心として再三近大附属ゴールを脅かすが、これを無難に乗り切って勝負はPK戦へともつれ込む。
 星稜の1人目鈴木が外したのはドラマの前兆であった。3本目も決められなった星稜に対して近大附属は1人が外しながらも、残り全員が無難に決め4-2で勝利を手中に。優勝候補を倒して、年を越しての2回戦進出を見事に決めたのであった。

 駒場で行われた第1試合で高川学園が岐阜工を下し、次戦の相手はこの高川学園に決まっている。1月2日、場所は埼玉スタジアム2002。新年早々次は是非ともあのスタジアムで勝利の凱歌、いや校歌を歌いたいものだ。
 寒空の下、ブラスバンドの演奏と勝利の歓喜に酔いしれながら歌う何年ぶりかの校歌も悪くはない。

勝て!奈良と大阪のプライドを懸けて

2007年12月30日 | 脚で語る高校サッカー


 さて、明日から東京へのしばしの旅。その目的は全国高校サッカー選手権大会と天皇杯決勝観戦。特に天皇杯は鹿島と広島のマッチアップになり、前売券も完売の様子。1日当日は広島がホーム扱いになるのかな、ということで天皇杯はじっくりG大阪を粉砕した広島のサッカーを堪能したいと思う。

 でも、やはりメインは少しでも向こうで奈良育英と近大附属のゲームが観られることに望みを託したい。両校共に初戦は前橋育英、そして優勝候補にも挙げられる星陵とこれ以上ない強敵だ。心の底から善戦を祈る。

 特に関西勢は毎年この大会は著しい成績を残すことなく敗退してしまう。前々回大会の野洲の優勝はそういう意味でも多大なエネルギーを与えたわけだが、本当に頑張ってもらいたいのは奈良と大阪の代表校だ。
 奈良育英は県予選では19得点4失点と抜群の強さを発揮して、久々に奈良の代表校として復活したが、正直初戦の相手が相手だけに内心「勝てるのか」という気持ちになるのは否めない。また痛烈に奈良と他府県のレベルの壁を実感することになりそうだが、この2007年も「サッカー」が起こす数々の奇跡を見てきた。彼らには是非初戦から勝利を目指すストイックなサッカーを実践してもらいたい。
 そして、筆者の出身校でもある近大附属。いきなり「西の横綱」とも称される星稜との初戦。だてに府予選を8試合こなしていない。彼らも90分間で奇跡を起こすことは充分考えられる。良い意味で世間の期待を裏切って欲しいものだ。

 さて、年末年始をサッカーバカの皆さんはいかがお過ごしでしょうか。筆者も明日ここで両校の勝利レビューを書いて1年を締め括りたいものである。
 そう、今年3度目の埼玉スタジアムにもう12時間後にはいるわけだ。

その終戦は警鐘を鳴らす・・・

2007年12月29日 | 脚で語る天皇杯


 何とも言葉にし難い最悪の終戦を迎えてしまった。今日エコパにて行われた天皇杯準決勝、対峙した広島は今季リーグ最終戦で戦ったそのチームとは違っていた。そう形容するのならばG大阪も同じことだろう。ただ、それが前者はポジティブに、そして後者はネガティブに成長曲線を描がれる結果がスコアに反映されてしまった。非常に対照的な明暗が両者に分かれていたのは言うまでもない。

 まず、あと1勝で天皇杯のタイトルに王手という気概はG大阪からは見られなかった。前半開始早々1分経たないうちに広島の佐藤寿人に裏を取られ失点。おそらく最終ライン及びGK藤ヶ谷までもがオフサイドと認識したのだろうか、プレーが止まった一瞬の隙を突かれた。この不運な“思いこみ”による失点をこの日のチームは何よりも重く受け止めてしまったのだろう。前半はそれ以降全く機能しないサッカーを露呈してしまった。
 試合後のコメントで西野監督は「パスの出所に対してのプレス」そして「人ではなくボールに対するアプローチ」にある程度の手応えを感じていたが、それならばもっと決定機は演出できたはず。それが機能していたとしてもまず、FWがほとんど前を向かせてもらえず、全くといっていいほど仕事をさせてもらえなかったのは致命的だった。これは徹底的にバレーをマークした広島の槙野と播戸に前を向かせなかった盛田、そしてストヤノフを称賛すべきだ。特に相手の執拗なマークに苦しんでは、プレーを繋げられなかった播戸は積極性に欠け、失格に近い出来を披露してしまう。それに加えて前述のボールへのアプローチもできていたとは言えない。セカンドボールの大半を広島のバイタルエリアで拾われ、そこからのアプローチしか実践できなかった。
 こうなれば、ポゼッションを握った段階で不用意なカウンターを受けることは想定すべきなのだが、今日のG大阪にはそれが意識できていなかった。特にアウトサイドのアプローチの緩さを危惧してダイヤモンド型に配置された中盤は、深いエリアで再三に渡ってボールロストを繰り返しては広島にチャンスを提供してしまう。自然と広島に流れが傾くのは必至であった。

 攻守の切り替えにおいても拙い場面は多々見受けられた。スピードのない緩慢なビルドアップ。そして息の合わないアタッキングサードでのパス交換。シュートで終わることができなかったのは自然の成り行きだ。前半のうちに追い付けなかったツケが主導権を握りながらも、柏木までもが全力で守備にその労を惜しまないほど守備的になった広島を崩せない後半に回ってきた。効果的に点を取られては、その度に前がかりになる状況が生まれ、またカウンターで失点を食らう。最悪な負のスパイラルがこの日のG大阪を襲った。

 苦言を呈するべきはG大阪の不出来だけではない。この日レフェリングを務めた家本氏の判定基準も実に曖昧であった。流すのか止めるのか、そして明らかに遅いその判断はゲームをコントロールしていたとは言い難い。しかし、レフェリーが実に的確なレフェリングをこなしたところでこの日のG大阪は完敗を喫していたのかもしれない。

 誰もが信じていた2年連続の元旦決勝進出。シジクレイのお別れモードでその試合後の雰囲気はあやふやになってしまった感があるが、ここ数試合の広島の流れが良いとは言え、この日のG大阪は実に不甲斐なく収獲のない試合をしてしまった。この陣容とこの戦い方の限界が確かに見えたし、選手たちの精神面での持久力の無さも実感できた。ACLを戦う来季のスタートはもうすぐ1ヶ月を挟んで始まる。誰もが危機感を持って、ゼロからのスタートを切らなければ早い段階でタイトルの灯は消えゆくだろう。まだはっきりされていないが、来季から加わる新戦力が命綱となるならば、この試合は今季の最終戦となったと共に最高の警鐘を鳴らしたともいえる一戦であった。

 最後に、實好、シジクレイ本当にお疲れ様!そして数々の歓喜をありがとう!

 

年忘れ。フットボールまみれの2007年を振り返る

2007年12月28日 | 脚で語るJリーグ


 残り少ない2007年、まだ天皇杯を残しているが、明日のエコパの準決勝、そして大晦日に開幕戦を迎える高校サッカー2試合の観戦予定を含めるともうかれこれ今年はJ1、J2、JFL、地域リーグ、県リーグ、高校サッカー含めて75試合ほど観戦したことになる。ガンバの練習試合も含めているので多少あやふやな数字だが、まぁそのぐらいだろう。
 個人的に今年印象に残ったゲームをプレイバックしたいと思う。

 まず、ガンバに限定していくと・・・

①5月26日 VS千葉戦@フクアリ ○2-1
これ以上ない劇的な勝ち方。あれほど遠藤のFKの恐ろしさと頼もしさの両方を感じたゲームはない。前半千葉の新居に先制点を献上するも、明神が「らしさ」を前面に出した素早いチェックで羽生からボールを奪い、巧みなシュートで同点弾を叩き込む。この時ゴール裏は何が起きたか一瞬分からない状態で、少し間を置いて歓喜の輪が巻き起こったのが記憶に残っている。遠藤の逆転弾は決まるんじゃないかという予感がした。いつもよりも慎重に蹴るまでの時間を取った遠藤がもたらした狂気乱舞は、翌日の羽田空港のANAシステムダウンとも重なって実に印象深い。

②7月14日 VS浦和@万博 ○5-2
大雨の中の「祭り」。家長の活躍もあり、昨年再三に渡って後塵を拝した赤い王者を砕いたゲーム。海パンを履きこみ、裸の状態で完全に泳ぎ暴れに行ったような感覚。あの狂ったような雨がテンションをフルスロットルに引き上げたのは間違いないが、ガンバのスコアラーがシジ、山口、播戸、二川、家長と攻撃の懐の深さを見せつけたゲームであった。

③10月27日 VS清水@日本平 ●1-3
優勝の遠のいた文字通りの完敗ゲーム。台風がもたらす強雨と寒さの中、誰もが勝利を疑わなかったが、終始清水にゲームを支配され、またもやフェルナンジーニョにやられる。ここまで相性の良かった清水に対して変な苦手意識をもたらした苦しいゲームであった。ゲーム後、静岡市内のスーパー銭湯「草薙の湯」がガンバサポでぎっしりとなったのも記憶に新しい。選手、サポ共々非常に疲れたゲームであったはずだ。

 サポーターというスタンスでなく、メモとノートを取りながら客観的に冷静な視点で観戦を重ねたゲームもガンバ以外では非常に多かったが、その中での印象的なゲームをチョイスしてみよう。

①12月2日 ニューウェーブ北九州VSバンディオンセ神戸@熊谷 2-0
地域リーグ決勝大会決勝ラウンド最後のゲームとなった一戦は、どちらも負けられないプレッシャーの中、関西リーグを制覇したバンディオンセ神戸がまさかの敗退を喫し、JFL昇格を逃した唯一のチームとなってしまう。つくづくサッカーの無情さと面白さを体感したゲームであり、リスクを冒して勝利を狙った北九州のサッカーは魅力の溢れるものであった。

②11月17日 近大附属高VS大阪学院大高@長居 3-1
7試合と長きに渡って大阪予選を勝ち抜いた両校のファイナルゲームは、両者譲らず延長戦へ。主将の笹田が2得点と活躍し、4度目の選手権出場を手にした近大附属高はその完成された守備重視ながらも確実に点の奪えるサッカーを全国の舞台で試すチャンスを得る。両校の総動員がかかったバックスタンドの盛り上がりも非常に好印象で、ゲームの充実さと共に強烈にインパクトのあるものであった。

③8月18日 奈良県国体選抜VS大阪国体選抜@鴻ノ池 0-4
矢部次郎氏率いる奈良県選抜は高田FCや県リーグの数チームから選出された。練習場所もままならないまま、真夏日のデイゲームの中、本番では屈辱の4失点。実力の差以上に環境面での差など全てが結果に反映された。しかし、この試合が筆者にもたらしたのは悔しさと同時にこの奈良の地でのさらなるサッカーの発展を切に願う気持ち。この試合が何人かのハートに火を付けたという意味でも非常に意義深い試合であった。

 続いて、筆者が選ぶ“エル・ゴラッソ”(スーパーゴール)

①6月16日 G大阪VS名古屋@万博 84分:バレー
最強のパワーシュート。その軌道はゴール裏からは鮮明にゴールに突き刺さる確信をすらもたらしてくれた。自陣で橋本が粘り強いチェックでボールを奪い、山口がフィード、そのボールにタッチライン際で播戸がよく競り勝ち中央のバレーへ。フリーだが射程距離のバレーは右足を振り抜く。コースと強さともにワールドクラス。バレーをガンバの名実共にエースへと導いたゴールといっても過言ではない。

②10月24日 京都VS愛媛FC@西京極 58分:田原豊
フットボリスタなら誰もが興奮を覚えた最高のオーバーヘッド。田原自身、これまで燻っていた数シーズンの悔しさを晴らしたシーズンとなったのではないだろうか。そんな彼の潜在能力を見せ付けるには充分すぎる鮮やかなオーバーヘッドに西京極は興奮の渦に包まれた。

③10月7日 佐川急便SCVSバンディオンセ神戸 61分:御給匠
来季からJ2横浜FCに移籍の決まった今季JFL得点王の1発は恵まれた長身とその身体能力をフルに生かしたヘディングシュート。中央から放たれたアーリークロスに体を捻りながら見事に合わせてゴールに沈めた。JFLで抜きん出たその得点能力をいかんなく発揮した。リベンジとなるJの舞台でもさらなる活躍を期待したいところだ。

 ここでは書ききれない幾多の名試合、名ゴールがあった2007年。来年も一体どれほどの名試合、ゴールが見られるのだろう。
 行く年来る年、そして行くフットボール、来るフットボールというべきか。改めてフットボールの魅力を再確認する1年であった。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑪

2007年12月27日 | 脚で語る奈良のサッカー


 1月にその幕を開ける奈良県社会人サッカー選手権大会の組み合わせが決定した。この大会は毎年10月頃に行われる全国社会人サッカー選手権大会(通称:全社)の奈良県予選も兼ねる大会。そう、この全国社会人選手権で優勝すれば、今年のFC Mi-OびわこKusatsuのように全社枠での地域リーグ決勝大会進出が可能になる。しかし、もちろん地域リーグの全チームも参加するために、そのレベルの格差には勝ち進むと必然的にぶち当たるわけであるが、待っていてもいずれ始まる来季の県リーグの前哨戦としても是非、この奈良大会には各クラブ結果を求めていきたいところだ。

 ところで、この大会は2008年の1月20日から2月24日まで、北葛城新町球技場及び橿原公苑陸上競技場で行われるのだが、矢部次郎氏の復帰する都南クラブは初戦が1月27日。相手は奈良FCとFrontier FCの勝利チームとなる。

 そこで!この都南クラブを応援する奈良のフットボリスタたる有志募集!!
 
奈良のクラブをガンガン応援するサポーターやりたい方募集!!
 
皆でコールを作って、太鼓をガンガン鳴らしながら歌っていきたい方募集!!
 
県リーグからJリーグへと歩み出したこのクラブを皆で応援していこう!
 
しかし、発起人の筆者いきなり初戦の27日は仕事で参戦できず!(泣)
 
ですので、筆者自身は2月10日の橿原からガンガンいきたいと思う所存です。
 
 我こそはと思う方、筆者までメール下さい。一度ミーティングを開きましょう!
 ashitotuno@mail.goo.ne.jpまでご一報ください。

 奈良でもできるぞ!というところをそろそろ全国に見せつけてやろう!
 行くぞ!奈良からもJリーグへ!

オブリガード、シジ!

2007年12月26日 | 脚で語るJリーグ


 97年の来日からもう10年の月日が流れた。日本に来たきっかけはその当時モンテディオ山形の監督を務めていた石崎信弘氏(現柏監督)が、当時彼が所属していたSEマツバラの紅白戦を観戦していたことから直々にオファーを出したことから始まる。当時の山形はNEC山形からその前年にチーム名をモンテディオ山形と改称し、旧JFLを戦うチームだった。公益法人が運営する形を執るこのチームは高額な年俸は捻出できない。魅惑のオファーというわけではなかったにも関わらず、未踏の地に降り立った彼にとって日本は第二の故郷になった。

 その彼の名はシジクレイ・デ・ソウザ。来日当初は「8」番を付け、ボランチが主戦場だった。そのシジクレイという登録名はブラジル人選手と言えども珍しく、当時の筆者にとっては強烈にその名前が印象に残っている。山形に入団当初は、かつて横浜Fや京都にも在籍した日本での生活歴が長いアンジェロが彼をよくサポートしていたという。それもそのはず、山形には通訳もいなかったのだから。
 しかし、当時まだ社会人クラブから脱却し、2年後に始まるJリーグ2部制を見据えていた山形にとってはこの上ない戦力であった。2年間で49試合に出場し、9得点を挙げる活躍を見せた。当然、この活躍ぶりはJクラブからも放っておけない数字であった。
 99年に京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)に移籍加入。加茂監督の率いる初のJクラブで主力として活躍。2ndステージはクラブがJ昇格後初の9位という最高順位を記録する原動力となった。
 その翌年には来日のきっかけとなった石崎監督(当時)のラブコールを受け、J2の大分にレンタル移籍し、35試合出場5得点とセンターバックにコンバートをされながらもその187cmという長身を生かした守備能力は重宝された。悔しながらもこの年に彼は「2位との勝ち点差1での3位」というギリギリのところでJ1昇格を逃している。
 再びレンタル移籍(02年から完全移籍)で加入した神戸では、チームの顔にまで定着。02年には6ゴールを挙げ、決して強豪チームとは言えない神戸でチーム得点王にも輝いた。翌03年にも6得点。そう、何の因果かガンバ戦にはやたら強かった。

 そんな彼が万博にやってきたのが2004年。ロスタイムに失点を繰り返すDF陣のセンターラインを強化するために彼はガンバに加入する。これまでバブンスキー、ダンブリーと歴代の外国人CBがチームには在籍したが、既に日本で長く活躍している実績もあり、フィットするまで時間はかからず、その長身から相手のクロスボールをことごとく跳ね返す高い能力は瞬く間にガンバの壁となった。初のリーグ優勝を遂げた05年には初の外国人チームキャプテンも務めた。日本に来て初めてのタイトルに彼は涙を流した。

 そんなシジクレイがいよいよガンバを去る時が来た。25日に京都への9年ぶりとなる復帰が内定した。2004年からの4年間、チームのために身を呈してくれた。ここ最近ではその体力の衰えが懸念されていたが、決してネガティブなことは言わなかった。タイトルのために時に誰よりも強い闘志と若手に好影響を与えてきたその高いプロ意識をみなぎらせる姿は、永遠にガンバのタイトル獲得の軌跡と共に皆の心に残るはず。
 シジクレイは、この時期に天皇杯を戦わずして母国に帰国する他のブラジル人選手とは違って、最後までフォア・ザ・チームに徹し、タイトルにこだわってくれる。そのシジクレイのためにも必ず元旦の国立で天皇杯を掲げたいという思いは選手、サポーターの共通理解だろう。

 愛車であるBMWのX5を停め、車中ながらもクラブハウス前に集まるファンへのサインを怠らない。そんなシジクレイのフォア・ザ・ファンの姿勢ももう万博で見られないと思うと実に寂しい限りだ。
 最後にタイトルを掲げた君の勇姿に、これ以上ない感謝の意を込めて「オブリガード」と叫びたい。そう、彼ならその瞬間に必ず導いてくれるはずだ。あと2戦俺たちと精一杯戦おう。

JユースサハラカップとJリーグアカデミー

2007年12月25日 | 脚で語るJリーグ


 クリスマスイブで世間は賑わう12月24日ということもあって、長居スタジアムのバックスタンドには多くのサンタ帽を観ることができた。そう、この日Jユースサハラカップの決勝に臨むFC東京U-18のフォロワーやサポーターによるものだ。

 10年前に遡る。1997年12月23日、当時まだFC東京の前身でありJFLを戦っていた東京ガス時代だ。そのシーズンの天皇杯でジャイアントキリングを繰り返し、準々決勝で名古屋と対峙した瑞穂での試合に勝利しベスト4進出を決めた。その際に東京サポーターは皆サンタ帽を被り、愛するチームからのこれ以上ないクリスマスプレゼントにサンタ帽をスタンドから投げ込んだエピソードがある。その所以であろう。この日10年の歳月を経て、再びクリスマスのこの時期にサンタ帽は長居の地で躍動することとなった。

 前半からよくボールを左右に動かし、圧倒的に前がかりになってその豊富な運動量から中盤だけでなく前線からもプレスを実践していくFC東京U-18と、それに対峙する柏U-18はセーフティにボールを繋ぐサッカーを見せる。非常に対照的なサッカーで互いに初優勝を争うこととなったJユースサハラカップ決勝戦は、FC東京U-18が前半7分にチャンスを掴む。前半の攻撃の主役となった右サイドの田中がPA内で倒されPKをゲット。しかしMF大貫がこれをバーに当ててしまい、立ち上がり早々の先制点のチャンスをフイに。しかし、これでリズムを失うこともなく、中盤の宮阪と大貫が寄せの早いプレスでボールを奪うとMF山浦、大竹を中心に積極的にゴールへとボールを動かす。守備にほとんどの時間を奪われた柏U-18は、来季から甲府入団が内定している左SBの輪湖が一人で果敢にその突破能力の片鱗を見せるも、押し込まれるこの日のゲームの中では、ほぼノーチャンスで前半を過ごさざるを得なかった。
 先制点は40分。FC東京U-18が左サイドの展開から、FW岩渕がマイナスに折り返したところを相棒のエース岡田がきっちり押し込む。前半圧倒して攻撃のイニシアチヴを握っていた彼らにこの場面が訪れるのは必然であった。

 前半何もさせてもらえなかった柏U-18は後半ネジを巻いてきた。前半以上にアグレッシブにボールを繋ぎ、積極的に前へ出る。しかし、来季トップ昇格内定のDF椋原を中心にFC東京U-18の守備に焦りはない。柏U-18が攻め込む時間帯が増えるも、FC東京U-18は時折見せる鋭利なカウンター攻撃でチャンスを窺う。すると、61分にそのカウンターの展開から裏へのロングボールに反応したFW岡田がGKとの1対1を難なく決め、勝負をほぼ決定づける追加点を奪うのであった。
 74分にCKからFW工藤が一糸報いるものの、柏U-18は終始リスクを冒しての攻撃を敬遠しすぎた。前半立ち上がりから後半のようなアグレッシブさを見せていれば、まだチャンスはあったはずだ。結局2-1でFC東京U-18は初優勝の瞬間を迎えることとなった。
 彼らは昨年の決勝、広島ユースに神戸の地で完敗した。しかしその苦い経験を味わった当時の2年生たちが見事に躍動し、物怖じしない素晴らしいサッカーで栄冠を掴んだ。バックスタンドには選手たちと歓喜を分かち合い同じように躍動する幾つものサンタ帽が揺れていた。

 この試合後すぐに、長居スタジアム会議室で行われたJリーグアカデミー指導者講習会に出席。プロアマ問わず関西を中心に各クラブの関係者が集まる中、この日は7月に「調子乗り世代」と評されたU-20代表を率い、U-20ワールドカップを戦った吉田靖氏の成果及び課題報告を聴講させてもらった。

 オシム氏が標榜した「人とボールが動くサッカー」は今や日本サッカーにおいて大きな指標となっている。U-17代表を率いた城福氏も然り、そして吉田氏も同じく目指したのはこのサッカーであった。
 予選リーグを1勝1分1敗という目標で切り抜けることを考えていた吉田氏にとっては2勝1分という結果は予想以上の出来だったという。特に3-1で幸先良くスタートを切ったスコットランド戦はチーム結成2年半の中で最高のゲームといえる内容だった。しかし、ある程度の成果を得ることができた予選リーグに対して、チェコと対峙した決勝トーナメントで課題は浮き彫りになった。それは世界の列強国と明確に差が出た基本的な「質」の面である。
 まず予選リーグなどを通して得られた成果としては・・・

①早いプレッシャー下での判断力
②攻守の切り替え時にアグレッシブに人数を揃えることのできた運動量
③ビルドアップ能力
④内田、安田、梅崎に台頭されるアウトサイドをこなせる選手によるクロスの精度
⑤高い位置、ノーマルエリア、それよりも後方(自陣ゴール前)における守備エリアの統一

ということであった。⑤に関してはチェコ戦で完遂できなかったことが結果的にPK戦での敗戦を招いてしまったと吉田氏は振り返る。確かに個人的にも②と④に関しては及第点の出来であったと思う。特に現在ではフル代表にも参戦するようになった安田や内田らの積極的な攻撃への姿勢と、そのクロスの質は将来的にも明るい材料となった。
 しかし、それ以上に世界との戦いで突きつけられた課題として・・・

①運動量に付随するプレーの質
②ゴール前を固める守備組織を崩す質
③フィニッシュの精度
④経験不足に起因する駆け引きでの後手

ということである。「質」という一言に片付けられるが、何よりも③に尽きるだろう。チャンスが少なくてもゴールまでのフィニッシュの精度にブレが無ければ勝利に必要なゴールは奪えるわけだ。
 そしてこの課題に対して吉田氏は「個の育成」の重要性をこれからの日本への示唆として訴えられた。総括すれば、つまりは・・・

①ゴールに向かって「突破」のできる選手
②最後の仕事ができるストライカー
③攻守に秀でたセンターラインの選手(CB及びボランチ)

 ここでは③の問題において、吉田氏の目から見たところ日本に攻守両方にこれを満たす選手が皆無ということである。今回のU-20代表では、ボールを回すことには不器用ながら対人プレーで抜群の能力を見せた槙野と、展開力を備えてボールを動かせることはできるが、1対1での不安が拭えない福元のコンビ、そして同じくボールを動かすことにはさほどながら、広い守備エリアでの貢献でチームのリスクマネージャーとなり得た青山敏と攻撃の全権を託すことのできる柏木というセンターハーフのコンビ、というように互いのウィークポイントを補完しての選手起用が実情であるということからも明らかな課題といえよう。しかしながら、この面において優勝を果たしたアルゼンチンをはじめ、スペイン、メキシコ、ブラジルといった世界の列強国は自ら攻撃の起点となり、ボール奪取能力と対人能力の両面に優れた選手がスタンダードとして存在するのである。吉田氏は是非こういった列強各国とマッチアップを実現させたかったと強い悔いを残していることを本音として話していた。

 印象的だったのは、中村俊輔を擁した97年のワールドユース(当時吉田氏はコーチとして帯同)でベスト8という成果を残し、明らかに世界の背中は視野に入っていたという。しかし、いくらベスト16と言えども今回のU-20W杯でまたその世界の背中は遠くなったという。つまり、日本のサッカーが発展を遂げる以上に遙かに速いスピードで世界各国のサッカーはレベルアップしていることを実感しているということだ。
 明確に見えた課題。そう、これをこなしていくために前に進めばいい。今回のベスト16が彼らヤングジャパンに大きな糧となっているのは所属クラブに戻ってからの活躍ぶりを見ても明らかだ。安田もいよいよフル代表に招集された。「少しでも高いレベルで1戦でも多く試合をさせてやりたかった」と語る吉田氏の言葉にこれから日本サッカー育成の全てが凝縮されていると感じた。
 この報告に耳を傾ける全ての指導者が何かを感じて岐路に着いたならば、それは日本サッカーの未来に繋がる、ささやかながらこれ以上ないクリスマスプレゼントではないだろうか。

 

ジュゼッペ・メアッツァに浮き立った明暗

2007年12月24日 | 脚で語る欧州・海外


 レーガカルチョ第17節、待望のミランダービーの時がクリスマスのこの時期に合わせてやってきた。この戦いに敗れれば、首位インテルとの差はますます広がり、数字上でもスクデット獲得は難しくなるミランとそれを迎え撃つ盤石の戦いぶりを相変わらず今季も見せるインテル。ゲームはマンチーニが試合前にコメントした通りスペクタクルに溢れるものとなった。

 序盤からミランは飛ばした。それもそのはず、未だ今季サンシーロでは未勝利。しかも今節このダービーで負けることがあれば、クラブワールドカップで優勝したとはいえ強敵アーセナルと決勝トーナメントで対峙することもあり、来季のことを考えると正直気が気ではなくなるところだ。アンチェロッティはここ一番の決定力に賭けたのかこの日の1トップにインザーギを起用してきた。
 インテルは目の前の1戦をモノにするのみ。相手はミランといえ、ポイント差はなんと22もの差がある。至っていつも通りの戦いをすれば結果は付いてくるとマンチーニも平常心を保って、このダービーを迎えただろう。この日はヒメネスをトップ下に配置し、ひし型の中盤を構成。これが功を奏し、序盤からポゼッションを掌握する展開を作る。

 前半、右サイドのマイコンを起点に攻撃のリズムを作るインテルだったが、タイトな守備を見せるミランは一向にその赤い壁を崩さない。イブラヒモビッチが右サイドのクロスからスペクタクルなボレーを放つなどするも、なかなかゴールのの枠を捉えることはできない。互いに攻守の切り替えが速いこの試合、ミランも素早いカウンターでインテル陣内へボールを運ぶ。ミランに負けじとCBコルドバを中心とした粘り強い守備でインテルもミランに決定的なチャンスを与えることはなかった。
 こんな時に「精密機械」ピルロの右足は非常に厄介であることを強烈に再確認させられたのが前半18分。インザーギが倒されて得たFKのチャンスにこれ以上ないキックで先制点を突き刺す。これがまさにワールドクラス、完璧なFKだった。GKジュリオ・セーザルも自分の守備範囲かと想定したのか作らせた壁のセンターに大きな穴を開けていたが、意に介さずピルロのFKはこれ以上ないボールスピードと絶妙な回転でゴール左隅に突き刺さる。彼の前にFKの壁は無意味同然であった。インテル守備陣を崩すことができなかったミランとしては実に理想的な先制点の取り方であった。
 これでインテルに火がついたのは確かだ。その後、これまで以上にペースを上げてミラン陣内に攻め込むインテル。その試合運びはミスの少ないゲームメイカー、カンビアッソを中心にサネッティ、左のマクスウェル、キブなども果敢に攻撃参加しては高い位置でボールを回し、あとはいかなる手段でフィニッシュをねじ込むかということだけだった。インテルの同点弾は前半のうちに生まれるだろうというのは明らかだったのである。
 カカのスピードある突破を身を呈して止めにかかったDFサムエルが負傷退場し、マテラッツィがピッチに登場しようかと慌ただしくインテルベンチが対応に追われているその36分、左サイドでDFに囲まれながらもボールを逸しず、カンビアッソに繋いだイブラヒモビッチのプレーから最後はクルスがDF3人をモノともせず、これ以上ないフィニッシュを叩き込む。カラーゼの股の下を抜けたシュートはこれ以上ないタイミングとコースで、その直前にトラップが浮いたことを逆手に取るかの様な巧みな同点弾だった。
 湧き返るサンシーロ。そしてファイターマテラッツィが投入され、コルドバと2人で前半以上にタイトな守備を見せるインテルの前にミランは最早無策であったともいえよう。

 後半、同点にされ劣勢必至のミランはインザーギ、ガットゥーゾに代え、ジラルディーノとエメルソンを投入し、攻守の修正を図る。それだけでなく、セードルフにすら見切りをつけてセルジーニョを投入するなど積極的な選手交代で試合を動かそうとしたミランであったが、後半さらに地力の差は顕著に出た。63分にはマルディーニのクリアミスを中央でかっさらったカンビアッソがこれ以上ない反応で、GKジダをも寄せ付けない左足でのミドルシュート。強烈にゴール中央に突き刺さったこの逆転弾、今季のJでG大阪明神がフクアリの千葉戦で見せたような相手のミスを突く抜け目ない反応はミランはその戦意を徐々に削いでいくには十分だった。
 後半終了間際に怒涛の追い上げをミランは見せるものの、落ち着いてペレを投入し、少しでも中盤のポゼッションを保とうとするなど、試合運びでも余裕の見られたインテルがミランを下し、安定した戦いぶりでしばしのインターバルを迎えることとなった。

 本当に両雄共に攻守の切り替えが速く、釘付けにさせられるゲームであった。そしてインテルは負けなかった。本当に強く、そして何よりもブレない試合運び。見事といっていいだろう。カルチョスキャンダルの助長もあり、昨年までの連覇は真の意味でスクデットとは呼ばない。しかし、今季彼らは他を寄せ付けない強さでそのスクデットを成し遂げそうである。
 対するミランはカンピオナートは苦しくなった。完全にCLに切り替えないといけない。1月にはパトも合流を果たす。来季のCL出場圏内を確保するだけの戦いに国内ではなりそうだ。とてもじゃないが、パトが合流したところでCLの優勝も今季は難しいだろう。ロナウドのフェネルバフチェ移籍の話題もあり、早くも暗雲が立ち込めた。
 あとはマンチーニがビッグイヤーを掲げるにふさわしい人物であると今季のインテルは証明するのみだ。

雨中の清水戦、3度目の正直 ~天皇杯準々決勝~

2007年12月23日 | 脚で語る天皇杯


 フィニッシュの精度に差が出たというか、運を手繰り寄せたかというか、雨中の準々決勝を迎えた天皇杯はいかにも両チームの実力の拮抗ぶりを感じさせるゲームとなった。今季の清水戦は全て雨に祟られたが、その中で1分1敗と相性の良くない清水とのマッチアップに多少の苦手意識みたいなものが働いたかといえば、それは認めざるを得ないだろう。

 正直、フェルナンジーニョとチョ・ジェジンがこの日の清水にいれば展開は間違いなく違っていただろう。それだけ清水はいつもの「らしさ」を見せるタイトなチェックと堅実なパスワークにおいてフィニッシュまでのプロセスは流麗だった。G大阪は2トップが抑え込まれ、頼みのバレーもシュートレンジを確実にブロックされる。無理に打つというか、完全にバレーのタイミングを研究されてきたのが実感できる。
 少ないチャンスをモノにできなかった展開は、後半にG大阪がポゼッションを上げるとアタッキングエリアでの展開も手数は増えた。運動量が落ちた清水に90分でケリを着けるチャンスは幾多もあったが、90分で流れを掌握してゴールを奪えなければ、その流れが相手に移るのはサッカーの鉄則。後半終盤から清水の猛攻を浴びる始末。しかしこの日は徹底的にGK藤ヶ谷がその前に立ちはだかった。試合後に録画を見ると、延長戦も含めて苦虫を噛み潰したようなその顔をNHKに何度もクローズアップされていた西澤の表情が清水の苦しみを物語っていた。

 延長前半2分に左サイドを突破した播戸が中央の寺田に絶妙のパス。これを寺田がダイレクトでゴールに流し込む。“力”のバレーで無理なら“技”の寺田で得点をもぎ取れる構図が先週のフクアリも含め定着したともいえる。ここ最近、その著しい上昇気流を見せる寺田が値千金の1発で勝利を手繰り寄せた。
 しかし、真の殊勲はGK藤ヶ谷ともいえる。何度となく清水のチャンスの前に立ちはだかった守護神は相変わらずそのポーカーフェイスで清水のシュートを弾き続けた。冒頭で述べた通り、おそらくここでチョ・ジェジンあたりがいればどうなったかはご想像通りだろう。
 清水は天皇杯の戦いぶりの難しさに直面しただろう。契約更改の時期に差しかかるこの時期、日程が進めば進むほど主力を揃えるのも、モチベーションを整えるのも至難。特にマインドの高い海外志向の外国人選手を擁すればフルメンバーは揃わない。結果を出せなかった清水は決定的なフィニッシャーを欠いた日本人選手のみで長居で散ることとなった。

 G大阪に限定して総括すれば、特に安田の守備は光っていたし、寺田が確実にフィニッシュの意識を高められているのも実感できる。この日もバレーに代わり、結果を残した。明神が戻ってきた中盤はコンタクトのソリッドさを増した。相変わらずバレーはスランプに陥っているが、次の準決勝で爆発できれば大きく成長過程を歩めるはず。そのパンチ力はいつも期待を寄せてしまうし、何かを起こせる選手でもあるバレーの復調が元旦の国立までの鍵となるだろう。

 休む間のないこの師走。次はエコパ、昨年と同じ場所で元旦への切符を必ず掴む。

チャンピオンズリーグ決勝トーナメントの私的展望

2007年12月22日 | 脚で語る欧州・海外


 カカが文句無しでバロンドールを獲得し、格の違いを見せつけた戦いぶりでクラブワールドカップのタイトルをかっさらったACミラン。FIFAの世界大会で欧州の面目躍如を果たしたそのミランが今季の欧州チャンピオンズリーグ決勝トーナメントで、まず初戦にアーセナルを迎えることになった。

 今季のミランはカルチョではうだつの上がらない戦いぶりをサンシーロのファンたちに晒しているが、欧州一の座を争うこの大会になると目の色を変えてくる。その強さは実証済みだが、やはりいくらカカを擁するとはいえ、今季の欧州覇者となるのはかなりの困難を伴うだろう。
 カルチョの戦績がこのチャンピオンズリーグという大舞台に立つための最低条件だということは言うまでもないが、今季のミランからはいささかその意識の希薄さを感じてならない。老練さを際立たせるインザーギが孤軍奮闘するFW陣は手薄感が否めず、攻撃のタクトを振るうのはその後列でシャドーとしての役割も担うカカとセードルフの2人。コンディションの整わないロナウドの放出も囁かれるここ最近であるが、この今季のチャンピオンズリーグの決勝トーナメントの組み合わせには彼らも目を覚まさなければいけないだろう。

 今季のアーセナルは強すぎる。カルチョで他を寄せ付けないインテルのそれほどではないが、特にチームを担う選手のほとんどが若くエネルギッシュさに満ち溢れている。フラミニ、セスク、フレブ、ロシツキーの4人で繰り出す天下の宝刀、ポゼッションサッカーは前線のアデバヨールやファンペルシらに余すところなく、そのゴールチャンスを供給しているのだが、かつ中盤の心臓となるセスクが今季はアデバヨールと並ぶゴールゲッターとして強烈な存在感を示しているのは大きい。
 どう考えてもその彼らがミランの欧州覇者への大きな壁、いや、もしくは充分にその高い鼻をへし折ってくれる気がしてならない。今季のチャンピオンズリーグ最大の見せ場となる戦いが繰り広げられそうだ。
 23日に行われるミラノダービーでミランのカルチョにおける今後は左右されるだろう。その結果いかんでは、いかに困難な相手と対峙することになったかというチャンピオンズリーグへの危機感も募らせることになるかもしれない。

 そして、インテルと対峙するレッズことリバプールは完全に終わった。尻に火をつけて何とか勝ち抜いた1次リーグの努力と欧州覇者への再挑戦はこのネラッズーリの猛者たちの前に砕かれることであろう。それほど今季のインテルは昨季以上に抜け目のないチームだ。今振り返れば、今季のインテルに土を付けたのはチャンピオンズリーグの1次リーグで戦ったフェネルバフチェのみ。カルチョでも揺るぎないその盤石の戦いぶりは、かつて“ギャラクティコ=銀河系集団”と称されたレアル・マドリードよりも遙かにギャラクティコさを醸し出している。彼らが欧州覇者の筆頭候補であるのは間違いないだろう。

 対抗馬となるのは、同ブロックならやはりレアル・マドリードか。そして欧州を制するにはおそらくマンチェスター・ユナイテッドとの対戦は避けられないだろう。前述した恐るべきヤングパワーで勝ち続けるアーセナルとライカールトの解任もこのタイトルにかかるバルセロナも同ブロックということで、潰し合いの様相を呈しそうだ。

 まぁこんな展望を語ってもあっさり覆されるのがサッカーの面白いところであり、フットボールマニアにその中毒性を半永久的に享受してくれるのである。本気の欧州サッカーを観ることのできる熱い春に向けて、今から気持ちは昂ぶってくるものだ。

 さて、日付が変わって、今日は国内も天皇杯準々決勝を迎える。欧州覇者を虎視眈々と狙うネラッズーリのように日本屈指の攻撃的フットボールの真髄を見せる我がガンバ大阪も元旦のリベンジのために負けるわけにはいかない。そう、国立には2つ忘れ物をしているのだ。そのためにもまずは今季1勝もできなかった清水を打ち砕かなければならない。
 来年もこれから迎える欧州のシーズンのように熱い元旦を我々に与えてくれ。