脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

神戸、ボトム争い脱出へ -神戸vs甲府-

2011年07月31日 | 脚で語るJリーグ
 J1第19節、神戸と甲府の試合を観戦に久々にホームズスタジアム神戸へ。15位・神戸と16位・甲府の熾烈な順位争いを懸けた戦いは、前半から快調にリードを奪っていった神戸が甲府の反撃を2点に抑えて4-2で勝利。この結果、明日の残り日程を残して暫定ながら神戸は15位から12位まで順位を上げた。甲府は降格圏内の16位のまま浮上できなかった。

 

 両チームここまで18試合を終えて、順位は前述の通り芳しくない。しかし、今季ここまでリーグ戦は中位から下位にかけて混戦模様。7月27日現在で、10位・大宮から16位・甲府まで勝点差5ポイントの中で7チームがひしめく状況だ。勝てば両者にとって大きく浮上のきっかけとなる試合。前回対戦時(4/23)は、1-1の引き分けに終わっている。ホーム・神戸のサポーターは気合いの入った応援で試合前から盛り上げた。
 神戸は、5月28日のアウェイ柏戦から7月13日のアウェイG大阪戦まで9戦未勝利という状況で、前回のホームゲーム・C大阪戦を4-1と勝利して復調の兆しを見せ始めていた。前節のアウェイ横浜FM戦、そして同カードの連戦となった水曜のナビスコ杯横浜FM戦に共に敗れたものの、今節もその2試合と不変のスタメン。特に相馬こそ負傷でベンチ入りはならなかったようだが、ベンチには今季ここまで5得点の大久保を置いており、どのタイミングで彼が起用されるのかも含めて注目だった。
 対する甲府は、7月16日のG大阪戦に4-3と勝利して、前節はアウェイ浦和戦にて完封負け(0-2)。水曜にはナビスコ杯でバックアップ組中心で清水と対戦したが0-2で敗戦。しかしながら今季はここまで主砲のハーフナー・マイクが9得点でJ1得点ランキングトップとチームの順位とは裏腹に気を吐いており、この試合では大卒2年目のMF柏が6試合ぶりの先発起用。ベンチには加入したばかりのキム・ジンギュの姿があった。総得点では神戸より多いだけに撃ち合いになれば強さは発揮できるかと思えた。ちなみに甲府はGK萩、DF内山の元神戸組が先発に名を連ねた。

 甲府を率いる三浦監督に神戸ゴール裏から辛辣なブーイングが浴びせられて幕を開けたこの試合。立ち上がりから試合のペースを引っ張ったのは神戸だった。9分にはボッティの落としを受けた吉田がエリア手前からミドルシュートを放つ。11分には田中のヒールパスを受けた石櫃がエリア内で滑り込みながらダイレクトシュート。これが決まって神戸が早い時間から先制に成功する。

 
 神戸は石櫃の豪快なシュートで先制。

 
 甲府の左サイドバック内山は古巣との対戦となった。

 24分には、左サイドからパクのアーリークロスを吉田がエリア内中央でバックヘッド気味に頭で合わせて追加点となるシュートを決めた。これはお見事だった。

 
 吉田はナビスコ杯横浜FM戦に続き2戦連発。
 意外にもこのヘッドがリーグ戦今季初ゴールだったようだ。

 
 奈良育英高から神戸に加入し12年目。
 まさに神戸のバンディエラ・北本は健在。

 この後も終始神戸が甲府相手に押し気味で試合を進める。甲府もハーフナーとパウリーニョの強力な2トップにボールを集めたいところだったが、どうもセントラルMFの伊東、石原あたりが精彩を欠いた。阿部が2列目から積極的に裏を狙うものの、神戸の守備陣の前にゴールは遠かった。

 
 甲府はかつてFC東京や湘南でプレーした阿部が前半から奮闘。

 
 パウリーニョは個人で打開しようと奮闘するが前半は無得点。

 後半、甲府は2枚の選手を入れ替えてくる。前半ピリッとしなかった伊東を下げてキム・ジンギュを投入。また、阿部に代えてダヴィを入れ、パウリーニョを1列下げて臨んだ。しかし、その甲府の思惑と違って神戸の3点目は早かった。パクのパスを受けた田中がシュートを打ち損じると、これを甲府DFダニエルがしっかりクリアできず、走り込んできた吉田がこの日2点目となるシュートを決める。試合は3-0。完全に勝負は決まったかに見えた。

 
 吉田の2点目で3-0とした神戸。
 ホムスタの盛り上がりは頂点に。

 
 甲府は市川が何度かサイドからチャンスを作る。

 しかし、甲府は焦らない。52分に中央でボールを受けたパウリーニョがペナルティアーク付近から左足でシュートを決めて1点を返す。また58分には山本のFKからキムが頭で合わせて2点目を奪った(角度的に最初はゴールラインを割ったのか見えなかったが…)。2枚交代が功を奏したか、押せ押せムードになってくる甲府であった。

 
 
 パウリーニョのこのシュートで1点を返す。
 キムの追加点もあり、あっという間に1点差へ。

 
 新加入の甲府DFキム・ジンギュ。
 かつて1年間磐田でプレー。最近まで大連実徳にいた。

 しかしながら、甲府の押せ押せムードは長くは続かなかった。ここまでの展開で2-2の同点になっていたならまだ展開は分からなかったが、3点のリードを有していた神戸は落ち着いて、甲府の守備の綻びを突いてくる。82分にはボッティが悠々とドリブルで甲府陣内までボールを運ぶと、甲府DFダニエルの甘いアプローチをかわして相手DF2人を十分引きつけてスルーパス。これにエリア内でフリーだった田中がダイレクトでシュートをゴール右隅に決めた。

 
 このボッティの落ち着いた突破から…

 
 
 
 田中が冷静に流し込んでダメ押しの4点目を神戸がゲット。
 1点目のアシストに続き、大活躍の田中。

 この後も甲府の反撃をシャットアウトした神戸が4-2で逃げ切った。程良い撃ち合いでなかなかの盛り上がりを見せたが、少し甲府のムラっ気のようなものが気になった試合でもあった。神戸が強いのか、甲府が弱いのかという議論になれば一概に言えない難しい互いの現在位置だが、それでも甲府は守備面で緊張感に欠けており、失点場面でもミスが目立っていた。また、ダヴィが後半開始から投入されたが、やけに苛立ち気味で肝心のパウリーニョの連携も微妙。それでも後半に5分間で2点を奪ったのだからまずまずなのかもしれないが、まだハーフナーの高さとパウリーニョの個人技頼りな面が多く、3点ビハインドをひっくり返せるほど攻撃を持続できない印象だった。それでも前半はセンターバックで、そしてキムが入った後半は1列前でボランチを務めていた山本は中距離のFKも蹴ることができ、実際にチームの2点目をアシストしたことを考えると、器用な選手だなと印象に残った。

 
 印象に残った甲府の山本。FKも蹴ることができる主将。

 
 ダヴィはまだウエイトオーバー!?
 まだまだ本領発揮はこれからか。

 
 ダニエルは時折攻め上がりを見せるが、守備面ではミスも。

 それ以上に前半から飛ばした神戸がやはりインパクト大。2得点の吉田は昨季の残留を決めた浦和戦の記憶が強すぎるのか、まさか今季初得点だとは思わなかった。77年早生まれ(76年組)のいぶし銀は、小中学校時代は奈良県で過ごしたことも。何よりも彼とパク、そしてやや年は離れるが河本という地元・滝川二高OBがここまで神戸の屋台骨となっていることは何よりも大事だろう。また、田中の存在感も光っており、先制点の石櫃含め、生え抜きや古参の選手たちがしっかり勝利に貢献していた試合だった。点が入れば大爆発、取れなければ無得点沈黙という対照的な試合が見られる神戸。明らかに“旬の選手”という点では甲府に軍配が上がりそうな顔ぶれが揃う試合で、上昇のきっかけを掴む良い試合だったのではないだろうか。

 
 
 吉田、パクの滝二コンビの存在は神戸には大きい。

 
 少しながら、宮本のプレーも久々に見ることができた。

 
 今季から試合後、勝利を神戸讃歌で分かち合う選手たち。

しのぎを削る奈良の2チーム

2011年07月28日 | 脚で語る奈良のサッカー
 もう10日以上も前になるが、17日に久々に奈良県リーグを覗きに行った。場所は奈良県フットボールセンター。19:20キックオフで行われた県リーグきっての強豪同士の試合は、JSTとポルベニルカシハラの一戦。ここまで無敗同士の両者の試合は4-1でJSTが勝利した。

 

 この日の昼間に奈良クラブの試合があったことを考えると、ナイトゲームは非常に涼しい。まるで扇風機の「強」ほどあるかという風を体に感じながらというような絶好のコンディション。キックオフ時間だけは県リーグの方が恵まれているなという気がした。
 残念ながらこの日は到着した際にAtletico-御所FCの試合(5-1でAtleticoが勝利)が終わっており、もう少し早く来ていれば今季の優勝を争う2チームのどちらも観戦できたのだが、JSTもAtleticoに負けじと劣らず順調にリーグを戦っている。ここまで4試合無敗。Atleticoが1試合未消化で試合数に差があるものの、12チームで戦われている奈良県1部リーグでは暫定で首位を走っている。

 JSTは、昨季まで奈良クラブでプレーしていた石原が本職の左サイドバックではなく、センターバックの位置に入っており、最後尾ではこちらも昨季まで奈良クラブの一員だったGK橋垣戸がゴールを守る。米田、尾山敏を中盤の中央に据え、サイドハーフとして宮木、そして新加入の吉田が、前線では小林とこちらも新加入の奥田が組んでいた。
 試合は、アグレッシブにボールを繋いで運ぶJSTのペース。31分に左からの攻撃展開から奥田が先制点を押し込むと、39分には宮木が追加点となるシュートを決めた。ポルベニルはなかなかJSTのエリアまで良い形をボールを運べない。かなり久しぶりに見たチームだったが、昨季までプレーしていたGK古田(元徳島ヴォルティス)の姿はなく、少し若返っていたかなという印象を受けた。
 後半に入ってポルベニルは、昨季奈良クラブで引退したはずのGK松石がピッチへ。天皇杯1回戦佐川印刷戦を最後に現役を退き、奈良クラブの試合時のスタッフとして尽力してくれていたが、まさかプレーしているとは思わなかった。是非この調子で1年でも長く現役を。しかしながら、JSTのペースは後半も覆らず、後半開始5分で宮木が自身2点目となる豪快なシュートで3-0とポルベニルを突き放す。82分には途中出場でリズムを作った尾山公からの折り返しをエリア手前から尾山敏が決めてダメ押しの4点目。その後、試合終了間際にポルベニルが一矢報いたが、試合は4-1でJSTが勝利し、リーグ4戦無敗を守った。

 やはり、2年前まで関西リーグにいたチーム。かつての主力選手も多少入れ替わりながらではあるが、うまく新陳代謝しながら県リーグトップの実力を誇っている。今季は11名も新加入選手が登録されており、選手層も問題なさそうだ。おそらく関西リーグ復帰は虎視眈々と狙っているはず。昨季は府県リーグ決勝大会も1次ラウンドで敗れたが、ぜひFC大阪あたりにはリベンジしたいところだろう。
 ここに立ちはだかるのがAtletico。こちらもJSTより1試合少ない4試合消化ながらJSTを勝点差1ポイントで追いかける。チームの総得点は4試合で23得点を申し分ない強さ。昨季まで奈良クラブでプレーしていた松野正に加え、7月には元奈良クラブの弟・松野智もチームに加入。アイン食品でのプレー経験がある北島、そして昨季まで京都紫光クラブに在籍していた三重野と県リーグでは頭一つ抜け出た戦力で注目度はぴか一。FCTAKADA2001も無敗をキープしてこの両チームを追う現状だが、おそらくJSTとAtleticoの2チームが奈良県代表として府県決勝大会に進むのではないだろうか。今季の奈良県リーグは、上位チームと下位チームの明暗がくっきり分かれそうだ。
 JSTは、24日に全社関西予選も初戦を難なく勝利(神戸FCシニアBに4-2)。次戦は31日に関西リーグDiv1で2位のバンディオンセ加古川との代表決定戦に臨む。是非ともここで金星を掴んで、全国の舞台までチャレンジして欲しい。

重い1敗 -全社予選vsセントラルSC-

2011年07月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 23日、24日に今季の第47回全国社会人サッカー選手権大会関西大会が開幕。1回戦、代表決定戦を勝ち抜けば10月に岐阜で行われる本大会に出場できる。全国レベルを窺い知るには絶好の大会で、優勝及び準優勝チームには全国地域リーグ決勝大会に進出できる権利が与えられる大きな大会だ。奈良クラブは、兵庫県1部リーグのセントラルSCと対戦。相手は2つも下のカテゴリーにも関わらず、奈良クラブは覇気なく1-2と敗戦。2季連続で1回戦で姿を消すことになった。

 

 試合終了後に、1人のサッカー関係者と思われる年配の方がこう言い残して競技場を去って行った。
 「甘く見とったな。」

 今季、公式戦と練習試合を含めて奈良クラブが敗戦を喫したチームは4月に練習試合を行ったJ1のガンバ大阪のみ。リーグ戦では11試合を無敗で突き進み、11節終了時点でリーグ最多得点、最少失点。これほど隙のないシーズンを過ごしていても負ける時は負けるのがサッカーの怖いところ。そんなサッカーという競技特有の不確定要素の落とし穴をこれでもかと実感させてくれた試合だった。「油断」「慢心」「怠慢」・・・冒頭の言葉に凝縮されたいくつものキーワードがその落とし穴への誘いとしては十分なもの。この1敗のなんと重いことか。1週間前の同じ時間にはアインを5-1と完膚なきまでに叩きのめす強者のサッカーを誇示しておきながら、この試合ではなんとも覇気の感じられぬ内容だった。しかしながら、1日置いて冷静に考えれば、今季間違いなく最もワーストゲームであり、かつ価値のあった試合なのかもしれない。その「価値」というのはもちろん奈良クラブにだけ見出したものではない。「敵ながらあっぱれ」と形容するしかないセントラルSCの戦いぶりも見せてもらったことも含めてである。ここから更に一皮剥けるためにも彼らの戦いぶりは多くの指標を示してくれたのではないだろうか。

 奈良クラブは、6月に加入した星野がGKとして入団後初先発。また右サイドにも黒田ではなく浜岡が今季初先発、加えて谷山が久々の先発と、多少のメンバー変更はありながらもほぼ不動の布陣。個人的にはもっとメンバーを変えてくるかとも思ったが、今後を考えても星野の経験値を積ませるためには絶好の機会だっただろう。ある程度ベターな顔ぶれではあったと思う。
 しかし、これが蓋を開けると、なんともミスが多く怠慢な内容。パスミス、球際の粘り弱さ、大事なところでの軽いプレー、枠を捉えぬシュートと、どうにもこうにも入り方としては明らかに悪く、元気もない。ただそれでも今季ここまでの戦いぶりを見ていると「負ける」という予感にまでは到達せず、苦戦は必至という前半を終えての感触だった。
 ただ、今季ここまでリーグで11得点と攻撃を牽引してくれている牧が前半でベンチに退く。ここで蜂須賀が投入されるが、こうしたシチュエーション自体が初めてで多少なりとも違和感はあった。リーグでは基本的にはスコアが動いてから選手交代の一手を投じるのがここまでの公式戦の流れ。牧がコンディションに不調を訴えたのであれば納得がいくが、ここでの交代策は未知数で幾分かの不安はあったと回顧できる。それでも「後半に強い」というチームのスタイルがその不安感を相殺してくれていた。

 

 ところがである。後半、押せども押せどもゴールに辿り着けない。それどころか人数をかけてまずはしっかり守り切り、前線に残った1人に確実にボールを送って一気にラインを上げて攻勢に転じるというセントラルSCの形を時折出されるようになってきた。52分(40分ハーフ)、まさにそんな展開で先制点を献上してしまう。1点のビハインドであればまだしも、63分にも同じような形で2点目をやられてしまった。チームが前がかりになっている際にいとも簡単にDFラインの裏のスペースを突かれるというのは関西リーグ昇格初年度を思い出させてくれる。0-2というビハインドが今季の公式戦では初めてだった。
 その後、途中出場の矢部の捌きで幾分かボールがスペースに出せるようになり、辻村剛の得点で1点を返すが、矢部のFKがポストを叩くなど運をも味方に呼び込むことはできず、試合終了まではセントラルSCの決死の守備の前にいよいよ同点にすることはできなかった。
 非常に印象的な場面があった。試合終了直前にGK星野が相手FWとの1対1をラフプレー(これは1発退場でもおかしくなかった)で止めた際に、両チームの選手がこじれる場面があったが、セントラルSCのGKが「そんなに勝ちたかったら、お前ら最初からやれよ!」と叫んだ。まさにその通りである。試合終了間際になっての1点を追いかけるバタバタぶりは、今季ここまで見せてきたどの試合よりも情けない混乱であり、そう考えると、相手GKの言葉通り、前半を0-0で折り返したことに尽きるのではないだろうか。前半からしっかりいつも通りのサッカーができていれば…

 セントラルSCは現在、兵庫県リーグ10試合(7/24現在)を終えて6勝1分3敗で4位という戦績であるが、かつてから関西府県リーグ決勝大会でも常連の強豪チーム。初見だったが、しっかり一発勝負の戦い方を完遂していたという戦いぶりだった。無理をせず、人数をかけて守り、ほとんど数的不利な場面を作らなかった。それに加えて、おそらく前半40分間はしっかり体力温存に務めていた感がある。おそらくチャンスはそれほど作れないと考えていたか、前線の選手は非常に集中していた。また、GKもコーチングの声を絶やさず、守備陣は人柱の如くシュートを体で弾き続けた。歯を食いしばってボールを追いかけたのは間違いなく彼らセントラルSCだった。スピリットに富み、忘れられないチームになった。是非とも全国の舞台へと勝ち進んで、貴重な経験を得て欲しい。

 この敗戦は謙虚に真っ直ぐ受け止めるべきだ。まるで頭を土突かれたような衝撃こそあったが、昨季と同じ轍を踏んだと比較するよりも、一発勝負と慢心が招くサッカーの怖さを改めて反芻すべきだ。正直、地域リーグ決勝大会出場に王手をかけているだけに、是が非でも全国レベルの舞台を経験しておきたかった。その意味では、今季初のこの敗戦はチームの行方を左右する重い重い1敗だ。次の公式戦は来月14日の天皇杯奈良県予選まで待たなければいけない。昨季は天皇杯こそ奈良県代表として出場できたものの、明らかに夏を境にチームは下降した。今季は練習環境も格段に良くなり、指導を仰ぐ監督の存在もある。ここからはエクスキューズは効かない。前を、上を目指していくしかない。この敗戦に価値を見出すか否か、これからの戦いが全てだ。

異様な戦績 -G大阪vs磐田-

2011年07月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の延期分第6節、G大阪はホーム・万博に磐田を迎えて対戦。前節アウェイで甲府に3-4と撃ち合いに敗れて6試合無敗だったところに水を差された格好となったG大阪だが、何よりもクローズアップされるのはその「失点力」。ホームで初の完封勝利といきたかったところだが、2度のリードを守れず、2-2で引き分けに終わり、これで今季の失点試合は「16」となった。

 

 7試合ぶりの敗戦となった甲府戦、2点を先行しながらの4失点。改めてG大阪の「失点の多さ」を感じさせた。その数は31失点とリーグワースト2位タイ。ここまで失点が多くても相手を撃ち合いの末に振り切るのがG大阪だが、アドリアーノに加えて宇佐美もいよいよバイエルン移籍のため退団。ただでさえ攻撃力は大幅にダウンを強いられるここからの戦い。体調不良と言われながらも2列目で先発を務めた遠藤を軸に、前線は平井とイ・グノがコンビを組む。
 対する磐田は、ここまで2人揃って14得点という前田(8得点)、ルーキー金園(6得点)というリーグ屈指の2トップを揃え、直近5試合で1敗しかしていない好調さが目立つ。G大阪との勝点差は3ポイント。もちろんしっかり勝ってその差を詰めるのは狙いだろう。

 
 少し気になるバックスタンドの空席。

 先制点は7分、G大阪が遠藤のCKから山口がファーで体で押し込む。幸先の良い序盤。しかし、1点のリードでは全く安心できないのがG大阪のゲーム。案の定、磐田に攻め込まれる時には相手DFラインを攪乱する金園の動きにうまく釣られ、山田のドリブルを中心に深い位置ボールを運ばれる。ここまで6得点と大卒ルーキーにしては及第点以上の活躍を見せている金園は、前田に遠慮することなく積極的にゴールを狙っていた。

 
 
 
 
 遠藤-山口のホットラインで先制したG大阪。
 だが、このリードを守ることが肝心。

 33分、磐田が自陣からのFKを一気にG大阪のペナルティエリア手前までフィードすると、前田がこれを競り合いながらも胸で落とし、ボールを受けた山本康のパスを後ろから走り込んだ金園がシュート。ボールはバーを直撃し、あわやという場面だったが、フィードの場面から金園が山口を上手く釣り出しており、その後の彼を全く捕まえられていない場面だった。早くも追いつかれる予兆が見えた場面だった。
 この前半終盤は完全に磐田のペース。すると、37分には磐田陣内での加地と武井のパス交換を奪われて、一気に左サイドでフリーになっていた山田にロングパスを出されると、これを山田が落ち着いて中央へ。GK藤ヶ谷が飛び出すかなと思えた場面だったが、これを金園が易々と走り込んで押し込んだ。G大阪はまたもや無失点ならず。明らかに磐田を調子づかせて前半45分を1-1で終えることになった。

 
 磐田の山田は明大から今季加入のルーキー。
 それにしても伸び伸びとしたプレーで1得点1アシスト。

 
 
 
 金園のこの同点弾。
 10日前には金鳥でのC大阪戦でも得点。
 さすがに大阪には強い!?

 シュートでは磐田を上回っているG大阪だったが、明らかに相手にペースを献上する嫌な展開。それを断ち切るべく早々に平井を諦めて後半開始から川西を投入する。49分に早速左足でミドルシュートの見せ場を作ってくれた。55分、藤ヶ谷のキックに競り合ったところを磐田にボールを取られるが、遠藤の素早いプレッシャーで相手選手が軽率なパスミス。これが一気にイ・グノの下に渡り、相手ラインをそのままでスピードでぶっちぎると、左足でゴール右隅に流し込んだ。古巣との試合ともあって喜びは控えめだったが、アドリアーノ、宇佐美を欠いた今、確実に計算できるFWは彼しかいないことを窺わせた。

 
 
 
 
 イ・グノは相手のミスからきっちり決める。
 彼の活躍が攻撃の拠りどころ。

 ただ、このまま終われない悩ましいG大阪。G大阪が2-1とした後に、磐田は山本康に代えてジウシーニョを入れてくると、完全に流れは磐田に傾く。70分にはそのジウシーニョから右サイドの駒野へとサイドチェンジで揺さぶられると、その駒野から横パスを受けた山田にペナルティアークからミドルシュートを叩き込まれて2-2の同点に追いつかれるのであった。

 
 
 武井のこのプレーに川口が激高する場面も。

 試合はこのまま最後まで磐田のリズムに支配されたまま2-2の引き分けで終了。85分には山田の強烈なシュートがこれまたバーを叩いており、3-2と逆転されていてもおかしくはなかった。後味としては磐田に価値の見出せる試合内容だっただろう。とにかく山田と金園という2人のルーキーを全く捕まえられなかった。2点を返された後に時間は十分あったものの、G大阪はここを絶対的に引き離せるチームではなくなってしまっている。順位こそ5位ながら、38得点33失点という異様な戦績が今季のG大阪の異常ぶりを物語っているだろう。リーグトップの総得点とリーグワースト2位タイの総失点が同居しているのだ。これら絶対的な得点力をフォローしきれない守備面の衰えぶりに加えて、この日はバックスタンドの空席も気になった。この日の入場者数は11,364人。明らかに宇佐美が移籍した影響もあるのか、入場者数は下降気味の予感。それでも今季は万博で未だ無敗と崩れてはいない。夏場には強いG大阪、ここからいかに建て直せるか。もうこの「お決まり」の展開から卒業したい。

雨中で見せる意地の張り合い -TOJITSU滋賀vs加古川-

2011年07月19日 | 脚で語る地域リーグ
 関西リーグの第11節、Div1の残り試合が18日に行われ、滋賀の野洲川歴史公園サッカー場ビッグレイクBコートでは、7位のTOJITSU滋賀FCと2位・バンディオンセ加古川が雨の中対戦。試合は吉田のゴールを守り切った加古川が辛くも逃げ切り、奈良クラブとの勝点差8ポイントをキープ。この加古川の粘りで、今節での奈良クラブの優勝はなくなった。

 

 徐々に迫る台風の影響もあり、滋賀県に入った途端に猛烈な豪雨に襲われたこの日。ビッグレイクはかろうじて小雨の状態だったが、さすがに天気が変わりやすいとされるビッグレイク。傘を差したり閉じたりさせられる不安定な天候となった。

 今季、そのホームゲームのほとんどをこのビッグレイクで催行できているTOJITSU滋賀FC。ここまで2勝3分5敗と2年ぶりのDiv1の戦いに苦しんでいる。このままでは降格圏内。なんとかホームで連敗脱出、4試合ぶりの勝利といきたいところだったろう。ここまで4得点と1人気を吐くエース・岩田を中心に負けられない。
 対する加古川も前節・三洋洲本戦にスコアレスドローで優勝がかなり厳しくなった。その前の試合もアイン相手に2-1と接戦の末に勝利。なんと今季はここまで挙げている6勝のうち5勝が全て1点差という試合で、なかなか豪快に圧勝という試合はない。とにもかくにも前期の最終戦で奈良に0-4というパンチは効いただろう。だが、直接の優勝争いの相手をこのまま決めさせてたまるかという執念が見えた。

 加古川は、MF池田がケガのためか登録外。また、池田に次いでチームの得点源だった寺本も登録外となかなか苦しい布陣。しかしながら、ケガのためか2試合戦列を離れていたFW吉田が先発に復帰して、また後期から加入したMF西口もベンチに控えるなど、層の厚いチーム力は窺える。試合が始まって14分、速いプレッシャーでTOJITSU滋賀を追い込む加古川が試合を動かす。結果的に決勝点となったゴールを挙げたのは戦列に復帰した吉田だった。加古川の右からの攻撃、安原が中央に折り返すと、ペナルティアーク付近で小山が落ち着いて落とす。これを吉田が右足で射抜いた。シュートは綺麗にカーブを描いてゴール右隅へ決まる。

 先制して、やはり地力の差を見せた加古川は追加点を狙って更に攻め込む。しかしそれほど決定機を作ることはできず、逆にTOJITSU滋賀が宇野と岡野のセントラルMF2人を起点にカウンターで良い形を作る場面も見られた。サイドでは、加古川の速い寄せに苛立ちながらも左MF田中と右MFの石倉が果敢に前のスペースを狙っており、前半こそ0-1で折り返したが、後半何かやってくれる雰囲気は感じられた。

 後半に入って、TOJITSU滋賀が案の定ボールを回せるようになってきた。ところがなかなかシュートにまで漕ぎ着けられない。加古川も徐々にミスが多くなり、両チーム合わせて後半は3本しかシュートがなく、消耗戦の様相を呈した試合は結局加古川が1-0で制した。

 これで、数字上はまだ加古川も優勝の可能性を残した。しかし、残り3節を3連勝して、かつ奈良クラブが3連敗というパターンしかそれはあり得ない。得失点差にも大きく差があるため、次節奈良クラブが負けても、加古川が引き分け以下ならば、優勝は決定となる。それもあってか、2ヶ月のインターバルを前にその前に決めさせるかという意地を見せてもらった気がする。このまま優勝が決まってしまうのも最短とはいえ少し違和感があっただけに、こちらも最後まで気を抜かずしっかりと勝って次節で優勝を決めたいところだ。
 対してTOJITSU滋賀は、降格争いという点で残り3試合厳しい試合を強いられそう。今節終わって、5位アインから最下位・阪南大クラブまでの勝点差は4ポイント。同じボトム4での直接対決をラランジャ京都と阪南大クラブと控えるTOJITSU滋賀。次節、阪南大クラブは、アインとの試合で負けると降格濃厚となるため、次節のラランジャ京都戦は必勝でいかなかれば厳しくなる。

 

天運在我 -vsアイン食品-

2011年07月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第11節に突入。ここまで無敗で首位を走る奈良クラブにとっては、いよいよ優勝実現の可能性がある。まず目の前の試合に勝つという最低条件は必要だったが、前期唯一勝てなかった(2-2)5位・アイン食品と対戦。関西リーグ昇格以降、ここまで公式戦で未勝利だったそのアインを相手に5-1で勝利を収め、明日の残り試合の結果に今節での優勝決定を託すことになった。ちなみに明日の7位・TOJITSU滋賀FCと2位・バンディオンセ加古川の試合で加古川が引き分け以下で奈良クラブの関西リーグDiv1初優勝及び、全国地域リーグ決勝大会進出が決まる。

 

 今節の試合会場は、長居第2陸上競技場。このスタジアムといえば、3年前に奈良クラブが奈良県リーグから関西リーグに昇格を決めた場所。もちろん、輝かしい過去ばかり見えてくる場所でもない。昨年は2つもカテゴリーが下のFC大阪(大阪府1部)に全社関西予選で悔しい敗戦を喫した場所でもある。そんな悲喜こもごも詰まったこの場所で、優勝に繋がる1勝を追いかけた。

 奈良クラブは、今季ほぼ不動のメンバーと布陣を貫く。お世辞にも選手層は厚いといえないチーム事情があるものの、この完全に固定した布陣の連携度はリーグを戦うごとにブラッシュアップされている。この日もここまで5試合連続得点中と絶好調の牧を前線の頂点に、コンビを組むのは檜山。中盤ではセントラルMFを李と三本菅が組み、両サイドを小柄な辻村兄弟が隙あらば前線に飛び込まんという形で編成される。

 アインには前期の対戦時も奈良としてはかなりボールを回せた試合だった。数少ないシュート総数で相手を上回ったデータがそれを物語っている。ところが、あの試合では最後の最後に逆転したと思ったら、そのまた最後、本当にラストワンプレーで相手の2点目を献上してしまいやられてしまった。今季は出だしがかなり良かったが、やはり勝負事は甘くないということをサッカーの恐怖と共に教えてくれた試合だった。
 今日の試合は、前半序盤から陣形を崩さず、きっちり守備から落ち着いて入れた。相手FWがボールを持っても決して数的不利に持ち込まれることはなく、マイボールにできる時間が増えた。18分、吉田の左からのクロスに牧がジャンプしながら右足のアウトサイドに「チョン」と当ててループ気味にゴールネットを揺らす。これで今季10得点目。6試合連続得点と本当に止まらない。そこまでハードワークしていないが、何よりポジショニングの良さは抜群。効率的にゴールを陥れることができる選手だ。

 

 28分にはそれに負けじと、檜山がエリア内まで一人で持ち込んで得意の右足でシュートを決める。自分なりのリズムで突破を図る彼の「らしさ」が出た場面だった。

 

 ところが、32分に三本菅のファウルで取られたPKを坂本に決められて2-1とされる(ここはさすがに日野は止められなかった)。前半を1点リードで折り返す。

 PKとはいえ、相手に1点返されたことで、これでアインを乗せてしまうのは嫌だなと感じた。ところが後半が始まると、49分に辻村隆が右サイドを突破してシュートを決める。この大卒ルーキーも今季これで5得点目。本来ならばこのあたりで相手の息の根を止めたといった感じだが、今季の奈良クラブは完全なる「後半型」。前半以上にパスがぐいぐい繋がり、ポゼッションを作っていける。この試合もその例に漏れなかった。
 交代選手も含めて、吉田監督は徹底して同パターンを貫く。だいたい投入のタイミングも同じだったりするが、この日はなんと3-1というスコアで眞野に代えて谷山を投入する。CBとCBの交代。後から聞いた話では、前期のアイン戦で最後の同点弾を許したのは谷山のミスだったこともあり、吉田監督にリベンジのチャンスが託されたのだという。寡黙ながらも人情味にも溢れた采配も見られた試合。この後、矢部が投入されて更に試合は動く。

 81分、その矢部が辻村隆から左サイドのエリア手前でボールを受けると右足を一閃。「ゴラッソ」と呼ぶべき渾身のシュートがネットを大きく揺らして4点目。終了間際には牧の折り返しを相手DFがオウンゴールしてしまい、今季初の5得点快勝劇となった。

 リーグ戦は次節まで約2ヶ月間のインターバル。その前に優勝を決められるかもしれない。やれることは全てやった。11試合負けなかった。天運は明らかに我にあり。そう思わせてくれるここまでの快進撃。果たして明日これが早めの結実に繋がるだろうか。楽しみだ。

分厚い3,000人の壁

2011年07月16日 | 脚で語るJFL
 ここのところなかなか観戦機会に恵まれず、GWに太陽が丘で行われた佐川印刷-松本山雅しか観戦できていないJFL。今季から讃岐と長野を加えての18チームで、震災の影響で前期日程は不参加だったソニー仙台が復帰し、後期日程へと突入している。順位表を見るとこれがまた例年以上に凄まじい戦いの模様だ。

 Jリーグ参入を目指す準加盟チーム、そしてその準加盟を目指すチーム、また、それらとは一線を画す企業クラブなどのアマチュアチームに大別できるアマチュア最高峰の全国リーグ。現在、Jリーグ準加盟の承認を得ているのは町田ゼルビア、松本山雅FC、V・ファーレン長崎、カマタマーレ讃岐の4チーム(厳密にはJFL以外に関東2部リーグのSC相模原もある)。そして準加盟申請をして継続審議となっているのがツエーゲン金沢とFC琉球の2チームだ。

 今季のJFLは7/16(土)時点で後期第3節を消化中(震災の影響でスタートは前期第7節から)。7/15時点で首位に立っているのは、SAGAWA SHIGA FC。そしてそれを追うのは昇格1年目の讃岐という展開。SAGAWA SHIGAはこの4季で2度の王者に輝くアマチュアきっての名門企業チームだけあってこの戦績は納得。また、讃岐も持ち前の堅守を発揮しているようでリーグ3位タイの12失点と、昨季無失点で全社優勝を果たした実力はJFLでも十分通用しているようだ。この2位・讃岐を勝ち点差1で追うのが松本山雅、金沢、琉球の3チーム、そしてその集団を勝ち点差1で追いかける長野、長崎、ホンダロック、Honda、そこからまた勝ち点差1に町田が控えるという「超」混戦状態だ。1試合ごとに急転直下の順位変動が味わえるという点では当事者としたら堪らないものがあるだろう。全く優勝、J参入争いなど予想が付かない状況だ。

 準加盟チームは目に見える結果として、JFL4位以内と平均観客動員数3,000人という具体的な数字をJ参入条件として求められる。これが多いか少ないかという議論は別にして、しかし、この3,000人という数字は現在のアマチュアリーグでは本当に厳しい数字だ。
 今日、Twitterを覗いていると、JFLは町田と金沢が野津田(町田のホーム)で試合をしており、その話題が昼間のTLを席巻していた。しかし、観客数を見ると3,000人に遥かに満たない2,000人台の数字で、3,000人強は入っているイメージだったので、これは少し意外だった。準加盟の承認を得たクラブながらも、その数字がいかに難しい数字かが伝わってくる。
 これらの数字を随時順位表と共にまとめてくれているここJ.netを見てみると、7/15までの平均観客動員のトップは松本山雅の6,876人。これは最早J2レベルの数字で、あのアルウィンの雰囲気をご存知の方なら容易に想像がつくだろう。2位は4,300人ほどの差がついて町田の2,551人。3位がAC長野パルセイロの2,307人という数字。昇格1年目の長野にしては十分健闘している数字だろう。準加盟クラブに限定すれば、長崎が1,317人、金沢が1,495人、讃岐が1,897人といずれも2,000人台に乗らず苦しい戦いを強いられている。これを準加盟以外に目を移せば、関西で将来のJ入りを目指して活動するMIOびわこ草津が582人という数字だ。同じSAGAWA SHIGAが1,550人を集めていることを考えれば少しこの差にも衝撃は感じずにはいられない。決して観客動員が全てではないが、やはり平均3,000人動員というのは至極大きな壁だということを感じざるを得ない。

 大事なのは永続的な活動である。しかし、企業を母体に持たないクラブチームにとっては、有料入場者収入は貴重な資金源でもあり、おざなりにはできない。JFLへ上がることで有料試合が基本となり、観客は基本的に入場料を払うことになる。無料試合が主戦場である現在、奈良クラブがJFLへ昇格したとなると、お金を払って観に来てくれる人は一体どれぐらいいるだろうか。

覇権まであと一歩 -10試合を終えて-

2011年07月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは後期へ折り返して既に10節を消化。奈良クラブは未だ負けることなくDiv1の首位を独走しており、条件次第では、この週末に行われる11節で優勝が決まる可能性が出てきた。関西リーグ昇格からわずか3年目での快挙へあと一歩だ。10試合を終えたチームを数字の面などで簡単に振り返る。

 折り返し1戦目のAS.ラランジャ京都戦は、猛暑とその熱をたっぷり吸収した人工芝のゴムチップの放射熱にかなりチームのパフォーマンスが落ち、苦戦した(これは牧の試合後の話やUstream番組でも語られており、選手にとっては本当にパフォーマンスを左右するようだ。)。しかしながら2-1で何とか相手を振り切ると、続くアミティエ戦(7/2キンチョウスタジアム)では前期苦戦した相手に3-0と快勝。後期序盤戦では最も注意したい相手だっただけに予想外の完勝劇で少々拍子抜けしたが、確実にチームの結束やコンディションは試合数を負うごとに深まってきている。

 5/22以来の県内開催となった10節の阪南大クラブ戦も4-1で快勝。特に後半はほとんど相手を寄せ付けないペースで、あと1点、2点も十分奪えた内容だった。得点パターンもセットプレーから、崩しからと精度を高めてきている。立ち上がりの“受けの姿勢”は未だ健在で早い時間帯での失点もあるが、それを遥かに上回る攻撃で得点を奪っているから結果は万事オーライだ。試合に併せて行われた「奈良クラブ祭り」も店舗が増えて活況ぶりを見せた。何より採算度外視で協力してくれている店舗もあるのは本当にありがたい。
 
 今季はFW牧がここまでリーグ戦5試合連続得点中とまさに絶好調。ここまで9得点で10節終了時点で得点ランクトップを走っており、得点王も狙えるパフォーマンスを見せている。そして、それ以外にもスコアラーとして名を連ねた選手は9選手もおり、そのうち7選手が2得点以上という攻撃の充実ぶり。今季から加入した辻村隆も牧に続く4得点とアシストを量産しており、得点王とアシスト王の両方をチームから輩出できる可能性も低くない。総得点は27得点(1試合平均2.7得点)とリーグトップで、総失点数も未だ10失点を下回る8失点(1試合平均0.8失点)とバランスは良い。チーム別集計を紐解くと、実はシュート数はDiv1の8チーム中でも3番目の106本という数字(1位はアミティエの115本、2位は三洋洲本の113本)。対して被シュート数はワースト3番目の100本も打たれている。つまり、シュートの精度が高くなり、得点に結びついている。これは今季から練習環境が飛躍的に良くなり、フルサイズのゴールをようやく使えるようになった賜物か。また、被シュート数と失点数の相関関係は驚異的でもあり、GK日野の存在の大きさを際立てている。右サイドバックを務める黒田は開幕前にコンバートされており、層も含めて少し守備陣は手薄な感は否めないのは正直なところだ。

 開幕前、監督の就任が少し遅く、退団選手の多さにその穴が埋まるのかと心配したのはいつの話やら。早くこの力が全国の舞台でどれぐらい通用するか見てみたいというところまで来た。週末対峙するアインは今季唯一勝てていない相手だが、チームは遥かその先、全社、地域決勝を見据えている。確実に乗り越えていっていくれるだろう。

宇佐美貴史、Gamba in den letzten Tanz -G大阪vs神戸-

2011年07月14日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の延期分、第4節が水曜に行われ、万博ではG大阪が神戸と対戦。G大阪が「らしい」派手な撃ち合いとなった試合を3-2で制し6試合無敗。引き分けを挟んでの5連勝で3位に順位を上げた。試合は今季よりバイエルン・ミュンヘンへ移籍する宇佐美貴史のG大阪最後のプレーともあって、平日にも関わらず15,000人を超える観衆が熱狂。その中で1得点1アシストと魅せてくれた宇佐美。ささやかなセレモニーを終え、ドイツへ旅立つ。宇佐美、万博での最後のラストダンスを写真中心にどうぞ。

 
 
 G大阪でいよいよ最後のプレーとなる宇佐美。
 試合前からリラックスした雰囲気ながら表情は感慨深い!?

 
 この試合では、腰痛でベンチの遠藤に代わって横谷が出場。
 好守にまずまずの活躍。

 
 神戸はホジェリーニョを中心に序盤からテンポ良く攻め立てる。

 
 遠藤がいない中盤では二川が攻撃のタクトを担う。

 
 神戸が前半はペースを握るものの、0-0のままで時間は過ぎる。

 
 前半終了間際、二川のシュートでG大阪が先制。
 イ・グノのシュートのこぼれ球がクリアミスを誘いごっつぁん。

 
 前半を終えて、ロッカールームへ戻る宇佐美の表情。
 ミスもあってか、全く納得がいかない表情。

 
 後半、宇佐美がボールを持ってリズムを作るG大阪。

 
 最終ラインから山口もボールを持って攻め上がる。

 
 
 
 
 
 
 
 G大阪の追加点は63分。イ・グノが抜け出してシュート・・・
 かと思いきや、逆サイドから走り込んだ宇佐美へ得点をアシスト。

 
 
 
 79分には今度は宇佐美の右サイドの突破から・・・
 折り返してイ・グノのゴールをアシスト。

 
 未だ開幕からの失点試合はストップできず。
 武井は安定した守備で体を張った。

 
 後半、もう1本あった決定的な宇佐美の場面。
 シュートは惜しくもゴールのわずか右へ・・・

 
 前節得点を決めたキム・スンヨンはこの日も交代出場。
 見せ場を作ったのはこの牛歩で向かうCK!?(笑)

 
 79分には遠藤もピッチへ。
 宇佐美の最後の試合に華を添えた。

 
 なんとか3-2と接戦をものにしたG大阪。
 宇佐美を交えてのワニナレナニワ。

 
 この日のヒーローに群がる報道陣の数はいつも以上。
 宇佐美のヒーローインタビューが始まる。

 
 そして、改めて最後の送別セレモニーへ。

 
 自らの口でガンバへの感謝。そしてドイツでの活躍を誓う。

 
 
 入籍したばかりの奥さんと両親が花束を持って登場。

 
 チームメイトによって宇佐美が宙に舞う。
 ガンバでの通算記録は公式戦46試合出場11得点。
 あっという間の2シーズンと少しだった。

 
 「ドイツで輝け!またいつか大阪で・・・」

 
 物思いに耽っているであろう西野監督の表情。
 試合後、J2草津よりラフィーニャの期限付き移籍が発表された。
 この後のチームプランはどうする?

 
 慣れ親しんだスタジアムを1周する彼の目には涙が・・・

 
 ゴール裏からは宇佐美のチャントが延々と歌われる。

 
 突然現れたこの日のために用意されたというハシゴ(笑)

 
 
 ガンバの至宝は最後までサポーターに愛される。

 
 ピッチサイドの特設席に座っていた子供たちにもハイタッチ。

 
 これが終わりじゃない。
 彼の物語は今から始まる。頑張れ、宇佐美貴史。

 

 彼を初めて見たのは4年前の高槻市立スポーツセンターで行われていたプリンスリーグだった。神戸科技高戦だったと記憶している。当時まだ中学3年生だった彼は、飛び級でユースの主力選手として活躍していた。チームの誰よりも若いというのに、CKやプレスキックを任されており、現在と同様の柔らかいタッチでのドリブルをよく覚えている。たった4年前の話だ。そんな彼がG大阪のトップチームでの2シーズンと少しの期間を経て、次に戦いの場を移すのはドイツの世界的名門、バイエルン・ミュンヘン。ブンデスリーガ22回、UEFAチャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ時代含む)を4度制している説明不要のメガクラブだ。未だに信じられないが、若干19歳でこのクラブに身を投じる彼のキャリアはまだこれから。まだ戦いも始まってはいない。完全移籍のオプション付きとはいえ、まずは期限付き移籍。完全移籍を勝ち取るインパクトを残したい。そのふてぶてしさを備えた個性とスーパーなドリブルとシュートでドイツを、そして世界をとことん魅了して欲しい。