脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

球宴という名のコミュニティ

2007年08月05日 | 脚で語るJリーグ


 昨日、年に一度の「球宴」オールスターサッカーの観戦のためエコパへ。筆者10年ぶりとなるオールスターサッカーの観戦。メディアが大いに取り上げたカズ&ゴンの共演も会場に足を運ばせた一つの要因かもしれないが、それよりも貴重な体験がこのオールスターサッカーの醍醐味であると25歳にしてよく分かった。

 日頃は敵として相対する他チームサポとの交流。試合前から会場をその饒舌さで沸かせたゴン中山、果敢に決定機を演出したキングカズも大きな見どころではあったが、何よりも新潟、清水、磐田サポとの交流が非常に心に残るものとなった。
 会場に到着すると、なんてことはないここは静岡。お膝元である清水と磐田のサポが押し掛けるJ-WESTゴール裏であり、その中でもほぼ中心にガンバサポの列は陣取られていた。このベストポジションにおいて両サイドに清水と磐田の多数のサポがその応援の陣頭指揮を図る。何よりも圧巻だったのは清水のサンバ隊によるまさに「演奏」に匹敵する応援のリズム取りだった。
 この2チームのサポ圧倒的なエネルギーに引っ張られたJ-WESTゴール裏に比べ、J-EASTサイドはチーム別の陣列がはっきりせず、まばら。千葉と横浜FM、鹿島のサポがよく見えたが、WESTの一体感には敵わない。そんな中ゲームは充実した余興で盛り上げられ、幕を開けた。

 一言で言えば、完全に「お祭り」だけあって、演出やその費用は相当なものであったが、試合前のチームキャラクターで行われたPK戦やカズVSゴンのFK対決(家長、小野、藤本も参加)は子供たちには大満足の内容だっただろう。笑いの要素が強く、かつテレ朝の絡みも非常に強く窺えたが、トークで笑いを取るゴン中山の独壇場であり、またカズとの掛け合いも絶妙でサッカー以外でもこの二人の存在感を再確認することになった。

 壮大なオープニングセレモニーと共に試合は始まったが、それまでの多くの時間が他チームサポとの交流に時間を費やした。新潟サポは静岡の2チームを除けば圧倒的に多く、今回もバスツアーが組まれていたらしい。あえてそういった他チームサポの山となっている喫煙コーナーを狙って一服に向かえば容易に話は弾む。
 
 新潟サポの方々とはガンバが来週の再開1戦目で当たることもあり、特に話が沸いた。地震の影響もあってか何気にこの人たちがさらにエネルギッシュに見えてくるから不思議なものである。来週の万博にもここに駆けつけたほぼ全員が向かうようである。現在3位につける好調なチームに新潟の皆さんも手応えを感じているようだった。しかしながら矢野貴章のアジア杯での不完全燃焼ぶりには大きな不満も聞かれた。来週対峙することになるガンバ戦に関しては特に万博での強さを警戒しながら、引き分け狙いであわよくば・・・という意見が多数。「エジミウソンを獲らないで」とか「松下はもういいでしょう、うちにください」など冗談ながらもチクリとジョブをお見舞いしてくる。代表組の多いガンバの強さとそのメンバーは明らかに他チームから見ても大きな脅威であることは間違いないのだ。
 
 磐田の方々も静岡のプライドはもちろん、かつての黄金時代復権に向けて若手主体へとスイッチしているアジウソンの支持は多かった。かつて磐田の選手であったのが大きいのだろうか、信頼を寄せている。そして何よりも中山という盛り上げ隊長がチームの象徴として鎮座しているだけにオールスターでは彼らに一際存在感を感じた。

 WEST最多得票を集めた藤本、また監督にも選手と監督との二つの立場で出場を果たした長谷川健太を擁するこの祭典はまさに清水サポのためのお祭りでもあった。日本屈指のサンバのリズムで、応援のリーダーシップを執るその圧倒的な数の彼らにWESTゴール裏は導かれる。チームキャラクターのパルちゃんは中山と並んで、前座の立役者。コミカルな動きで会場を盛り上げた。この清水サポあってこその今回のオールスターサッカーであった。

 WESTは他にも甲府、名古屋、神戸、広島、大分とファンが詰めかけていたが、神戸のサポが少な過ぎたのは少し気になった。結果的に大久保がMVPを獲得したが、推薦選手ながらも出場した彼を観るべくもっと神戸サポも駆けつける気概が欲しかったところだ。

 肝心な試合は、前半はEASTのフランサ、小野、カズのコンビネーションに溜め息の連発。特に要所要所で長短のパスを時にダイレクトも含めて連発するフランサは前半だけの出場ながら、唯一の外国人選手として充分な存在感を見せつけた。そしてWESTも期待したカズのゴール。結果的には観れなかったが、何よりも果敢にゴールを狙うその姿勢は40歳には見えないエネルギーを放っている。
 前座に続き、独壇場となったのが中山。オウンゴールはWESTゴール裏からでは一瞬カズのゴール、もしくは小野のCKが直接決まったかのように見えた。次の瞬間、中山の顔がビジョンに映し出されると一同爆笑。本当に中山隊長は期待を裏切らない。その後きっちりそれを帳消しにする見事なヘディングシュートをお見舞いさせ、マグロは中山の手に渡るかとも思われた。
 後半終了間際の大久保の粘りのヘッドで勝負あり。内容はともかく、劇的な展開に大いに盛り上がったゴール裏であった。

 何よりも日頃経験することのない他サポと生み出す一体感。そしてコミュニケーションの時間。サッカーをJリーグを愛する人たちしかここにはいない。極めて貴重な時間が流れていることを深く実感した。
 そして特筆すべきが、西日本勢にアンチ浦和の多いこと。これはG大阪VS浦和のカードをほとんどの人たちがガンバを応援すると言い、浦和を止められるのはガンバだという一種の共通理解が窺えた。15日のリーグ直接対決を控え、これには勇気を頂いた。現に闘莉王に対するブーイングはえげつないものであった。福西にも同じぐらいのブーイングが集中していたことも忘れず追記しておく。

 再開前の頭の切り替えにはちょうど良く楽しい時間を過ごせた。あとはチェアマンも苦言を呈していた観客の少なさだけが気がかりではあったが。