脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

バレー以外が問題??

2007年09月30日 | 脚で語るJリーグ


 ロスタイムは4分、それを3分ほど過ぎた頃、バレーの劇的なシュートがネットを揺らすとズブ濡れになっていることも忘れ、スタンドは誰もが狂喜乱舞した。0-0でのゲーム終了が濃厚となり、皆の頭の中には首位浦和との勝ち点勘定が自然と湧き出ていたはずだ。もうダメか・・・ここで勝てないことは優勝に大きくのしかかることが万博に集まった全てのサポーターの共通認識であった。

 前半から、ガンバはポゼッションを握りながらも攻撃が単調になり過ぎていた。この日は乗り切れていない左SB安田に代えて橋本を起用。倉田が中盤の底で明神とコンビを組んだ。二川と遠藤が何度もポジションを変えながら攻撃陣を牽引するが、やはり練習中に膝を痛め、この日のスタメンも危ぶまれていたバレーの動きも重く、思うように大分を崩せない。フィニッシュに持ち込むまで時間がかけさせられ、奪われたボールから大分にカウンターを誘発させる展開であった。
 その大分も現在は残留争いの最中にある。深谷、森重、藤田という新生シャムスカ3バックが必死にガンバの2トップを抑えにかかる。ここ万博ではガンバに相性のいいシャムスカ大分は守り切った後の梅崎、鈴木、高橋を中心としたその素早いカウンターで勝機を見出そうとしていた。

 0-0で迎えた後半最初から、決定的なシュートを放つなど攻撃面では貢献しながらも守備面でどうもフィット感に欠けていた倉田に代え、家長というお馴染みのジョーカーがピッチに現れる。それを予測したか、大分は梅崎をあきらめ上本を投入して守りをさらに固める様子であった。大分はガンバをよく研究してきたなという感じであったが、結果的に彼らのシュートは2本だけと守備面で崩される心配は無かった。DF陣はこの日も山口、シジクレイを中心によく集中していた。やられるならその要因はガンバのミスからというのが最も怖かったところだ。
 結果、後半からコンディションの回復が見られたバレーを大分は捕まえ切れずに劇的なゴールは生まれるのだが、正直冷静に振り返れば、この日のゲームは双方ともに目立った活躍をする選手もなく、殊勲の決勝点を挙げたバレー以外で勝利の立役者を探すのは非常に難しい。逆にチームの問題点も新たに浮き彫りになったというのが本音だろう。

 評価点を付けるなら、加地は及第点には程遠い。前半、自陣で相手を背後に背負いながらの局面で軽い対応が目立った。また、前線に顔を出す機会が少なく、加地にボールが出たとしてもアタッキングサードまで積極的に自分で攻め入る姿勢が見られない。おまけにクロスはフリーのバレーにノープレッシャーで合わせられらないなど目を覆うシーンが見られた。
 倉田はできればもう一列前で勝負させたい。ボランチの位置ながら、縦への意識が強く、自分でフィニッシュに持ち込める選手だ。前半も強振したミドルシュートがあわやという場面もあった。明神とのバランスの攻守の切り替え時に苦しむことが多く見られた。中盤をひし形にして、二川のトップ下、明神のワンボランチ、左右のサイドアタッカーで遠藤、倉田の両翼というのも面白いかもしれない。ただ前で二川と遠藤が目まぐるしくポジションチェンジを繰り返す現状では、その布陣の可能性は低いのだが。
 こうなると頭を抱えるべき問題は橋本の左SBだ。良くもなく悪くもなく、ただやはり右利きの選手だけにゴールの背を向けて右足でファーストタッチした時の前への意識は薄い。また、だからといって決定的なクロスも期待できないので、ただのバランサーに終始してしまっているのが気にかかる。
 家長も自分のリズムが明らかに攻撃に停滞感を生んでいるのが大半で、シンプルさをもっと持ち合わせるべきだ。大分戦では後半45分間プレーしながら、ラスト5分ほどで投入された寺田がチャンスボールを積極的に放り込んだのと実に対照的であった。

 とにかくバレーに救ってもらったといって過言ではない。他力本願はまだ続くが、ピッチの中で勝つためのサッカーをするのは選手。もう少しダイナミズムを兼ね備えて残るゲームを勝ち続けるべきだ。

頑張れ!羽中田昌!

2007年09月29日 | 脚で語る地域リーグ


 前日取り上げた犬飼発言がエスカレートし、川淵キャプテンまでもが柏戦の主力温存を厳しく批判。鬼武チェアマンと川崎の武田社長が会談するにまで至ったこの騒動。結局、武田社長の事情説明を受けたJリーグ側が状況を理解する形で終止符が打たれたが、何とも後味の悪い騒動となったのは確かであり、川崎のACLの健闘ぶりが霞んでしまうことが誠に残念でならない。
 川淵キャプテンが吐き捨てたように、主力8人を代えることがファンをバカにしているというのならば、長距離移動と疲労困憊の主力選手を起用して、より不甲斐無い戦いぶりを晒してしまうことはどうだというのか。結局、準々決勝で結果を残した浦和との過剰なまでの比較が、川崎の尊厳を奪っている。クラブの判断は尊重されるべきで、もしファンがバカにされたと思うなら、ファンがそれなりの行動を起こすであろう。"協会とJリーグの余計なお節介"はいささか行き過ぎたようだ。今後こんなことが起こらないように双方の良いコミュニケーションを望みたい。

 そんな曇ったニュースを吹き払うかのような吉報が舞い込んできた。車椅子生活を強いられながら、解説者やコーチ活動を積極的に行っていた羽中田昌氏が四国リーグのカマタマーレ讃岐の監督に就任することが決まったのである。
 羽中田氏がS級ライセンスを取得した時から、個人的にその去就に注目していたが、まさかこんなに早く決定するとは。純粋に指導者としての手腕を買った讃岐の判断はサッカーファンならずとも、全国の身体障害者や車椅子生活をしている多くの方々に勇気を与えることになるだろう。本当に楽しみである。

 個人的に感慨深いのは、羽中田氏の努力とサッカーに対する熱い愛情が今回の監督就任に繋がったということである。
 かつての韮崎高校のエースは全国連覇を経験し、将来を嘱望された最中に下半身不随という悲運を辿った。その後、県庁で仕事をしながらもJリーグ開幕と同時に活躍していくかつての仲間たちに触発され、指導者の道へ飛び込んだ。5年に及ぶバルセロナでの生活を経て、解説者などをしながら日本でその経験を生かし続けた。その結果のS級ライセンス取得は何よりも自分の可能性を信じ、努力を積み重ねた賜物である。自分に感じる大きな自信が羽中田氏には強くあったのだろう。これに積極的な行動力が加われば、何事も成し遂げられるということだ。

 今後、監督業をやっていく中で、これまでとは違った見方や考え方も時に必要となるかもしれない。プロクラブを狙う監督としてチームの責任を重く背負うことも監督の避けられぬ宿命だ。しかし羽中田氏には讃岐のこれからの躍進と共にどんどん監督としての新しいチャレンジにトライしてもらいたいし、これは多くの方に勇気を与える意味でも非常に喜ばしいモデルケースだ。

 いやはや、フットボールの魅力は誰もが夢中になり、自分のスタンスを問わず人間としての更なる高みに導いてくれる最高のスポーツであることを羽中田氏から改めて教えて頂いたような気がするのである。

 頑張れ!羽中田昌!

専務理事の低能発言

2007年09月28日 | 脚で語るJリーグ


 ACL準々決勝第2戦は浦和と川崎にとって明暗分かれる結果となった。

 浦和はアウェイ全州にて全北現代に2-0と完勝。ゲーム後、敵地のサポーターから怒りからかピッチに様々な物を投げ込む光景も見られたものの、勝つサッカーを完遂した浦和に軍配が上がって当然の結果であり、全北現代にその浦和に勝つ術は無かったことを現地のファンもしっかり認識すべきだ。このまま浦和はアジアチャンピオンを目指してどこまで踏ん張れるか。過密日程ながらここからが正念場であり、更なる注目が集まるところだ。

 しかしながら、もう一方の川崎はホーム等々力にてイランのセパハンを迎えたが、PK戦までもつれ込んでんでの惜敗。シュート23本を放ちながらもその全てに決定力を欠いたことが誠に悔やまれる結果となった。
 だが、本当に悔やまれるのはこのゲーム後にある者から語られた非情な言葉である。

 「(1戦目の帰路に)チャーター機は必要なかったんじゃないか。(主力温存の)説明を求める。」

 と怒りに満ちた表情で語られたこの言葉の主は犬飼基昭Jリーグ専務理事のもの。19日のアウェイで行われたセパハン戦の後にJリーグから用意されたチャーター機を使って川崎が帰ってきたことに対する苦言を露骨に言い放ち、先日の柏戦でACLを考慮し、主力を温存したクラブの方針を批判した。その23日の柏戦、先発メンバーを8人入れ替えた川崎は0-4と大敗を喫していた。全てはACLという大舞台で勝てたゲームを落としたことに起因される"うらみ節"なのだが、どうもこれには納得がいかない。ピッチで戦った選手と過密日程を戦い抜いたクラブはもっと称賛されるべきではないのだろうか。

 今回のACLを戦う浦和と川崎に対して、並走してリーグ戦も戦わなければならない過密日程を考慮したJリーグ側のサポートはあまりに少ないように感じてならない。特に準々決勝の第1戦をイランまで飛んでいる川崎に対しては特にだ。15日のJリーグ25節を終え、翌16日に出発した川崎は現地入りまで24時間を費やした。そして19日に敵地で第1戦を終え、今度は20時間かけ帰国し、23日の柏戦である。中東の地域も含まれたアジアの広さをまじまじと感じさせてくれる驚異の過密日程をこなしたのである。その間、Jリーグはイラン~ドバイ間のチャーター機を用意したのみ。全くサポートが無かった訳ではないが、犬飼氏の心無い発言はこの日程を戦い抜いたチームには全くふさわしくない。むしろ暴言といっていいだろう。
 
 川崎とここで対峙したセパハンをはじめ、中東のチームはこのACLの期間は国内リーグの中断という恩恵を受けている。今回来日したセパハンも日本での練習場で照明が無く、真っ暗の中練習をするハプニングはあったが、川崎の過密日程を考えれば連戦の疲れもないため、幾分かマシだろう。
 つまり、Jリーグが選ぶべきファーストチョイスは間違いなくJリーグの日程変更であったはずだ。今季開始前に川崎はこの柏戦の日程を移すことをJリーグに求めた経緯があった。しかしそれは認められなかった。その代案としてのチャーター機の用意であったわけである。それでもその区間はイラン~ドバイ間のみで、復路もトータルで20時間もかかっているのである。これが大いにサポートとして役立っているのかは実に懐疑的なところだ。

 今回、決勝トーナメントに上がってからの組み合わせから韓国勢に囲まれた浦和と中東勢に囲まれた川崎には明暗が分かれていた。ホーム&アウェイのゲームスタンスでいく限り、中東勢に囲まれた日本のチームはどこかで息切れを起こすことは簡単に予想できた。欧州クラブのように移動時間も少なく、かつリーグでターンオーバー制をきっちり導入できるクラブもない。もし、これが浦和であっても結果は同じだったかもしれない。果たして日本の協会が、そしてJリーグがそこまでのリスク管理をできなかったことを直視せず、犬飼氏のような発言をしてしまうのであれば、それは本当に哀しいことである。

 今季からJリーグはACLを戦うこの2チームにサポート態勢をとった。充分だったとは言い難い。だが、現場で戦うクラブに結果が出ないときに限って、その責任を全て棚に上げるのはどうか。もうプロリーグが始まって15年目になるというのに・・・

ラスト10のせめぎ合い

2007年09月27日 | 脚で語るJリーグ


 残すところ10試合。混戦模様のJ2は26日に行われた第42節を終え、本当に分からなくなってきた。

 調子を落としていた福岡は8月19日以来となる7試合ぶりの勝利を水戸との接戦を制してモノにした。暗いトンネルをようやく抜けだしたが、この間に7位まで順位を落とすことになった。一つ上の6位湘南との差は勝ち点1。アレックスに支えられながら東京Vと並ぶJ2最多の67得点を挙げているにも関わらず、ここから借りを返していきたいところである。3位東京Vとの勝ち点差は7だが、まだ10試合ある中では何が起こるかは分からない。

 湘南は前節、首位札幌に完勝した流れそのままにC大阪戦を迎えたが、前半先制されたC大阪のペースに飲み込まれ、後半追い上げるもドローに終わる。警告が6枚乱れ飛び、坂本が退場の影響で次節出場停止というのが痛いところだ。
 その湘南から逃げ切れなかったC大阪はよくここまで追い上げた。今節、仙台が愛媛に負ける波乱にも助けられ、その4位仙台に肉薄する勝ち点1差の5位。ここまでの勢いを持続できれば、まだ十分に2位以内も狙えるはず。古橋、小松の得点源2人がラストまでその好調さをキープできるかが焦点となるだろう。
 
 格下の愛媛に取りこぼした仙台は、痛い星を落としてしまったといえる。得点がここ数試合思うように奪えていない悪循環がついに勝利をも手放すところまで影響してしまった。今節もシュート24本打ちながらも決定力不足に泣く結果となってしまった。
 鬼気迫る勢いで3位にまで浮上した東京Vは、正直このまま3位以内でフィニッシュする可能性が高いと感じている。とにかく点を取り続けるフッキは得点王もほぼ確実。今節は2位京都との直接対決であったが、この怪物フッキのゴールもあり京都に競り勝った。その京都との勝ち点差はわずか1。中盤戦でラモス監督の進退も問われた絶不調ぶりが遠い昔のことに思える好調さである。
 この直接対決を負けたくはなかった京都は、ここから10試合負けることはできない。今後長きに渡って堅守してきた自動昇格枠2位の座から滑り落ちる可能性も大いに考えられる。チアゴとアンドレが復帰した第3クール以降安定していただけに、ここにきてのペースダウンか。これまで幾度となく降格と昇格の悲喜を味わってきている経験をここで最大限発揮していきたい。

 首位札幌も足踏み状態からようやくリリースされたという感じだろうか。山形に完勝し、前節湘南戦の悔しさを払拭した。次節の相手は好調東京V。京都をアシストするのか、東京Vが2位京都に続いて首位札幌も粉砕するのかに要注目である。

 52節という長丁場がもたらす妙。このリーグに予測などは不必要であり、それこそ実に当てにならないものだということを毎年この時期になると感じるのである。

天皇杯3回戦プレビュー ~一番熱いカードはこれだ~

2007年09月26日 | 脚で語る天皇杯


 23日の土曜日はG大阪VS磐田の観戦のため、残念ながら天皇杯の2回戦に足を運ぶことができなかった。残念ながら奈良代表の天理大はバンディオンセ神戸に2-6と完敗。確かに相手は関西リーグの王者であって、1回戦で対峙した図南SC群馬とは遙かにレベルが違ったようだ。

 しかしながら、他のゲームも含めて大学生の健闘ぶりが光っている。それぞれガイナーレ鳥取、ソニー仙台とJFL勢を倒して3回戦へと駒を進めた鹿屋体育大と明治大は特に光っている。鹿屋体育大は初戦で流通経済大を下す快進撃をそのまま継続中だ。また徳島アマチュアを下した筑波大、東邦チタニウムに勝利した順天堂大が3回戦への切符を掴んだ。特に明治大は東京都代表決定戦でもFC町田ゼルビアを下しており、この2回戦からの出場となっているが、次戦はJ2京都。強敵ではあるが、相手の油断をつければもしかしたらという展開もあり得る。現地観戦候補に挙がる興味深い対戦カードとなった。また、同じく2回戦からの出場となった前述の筑波大はJ2鳥栖とマッチアップ。ここもひょっとしたらジャイアントキリングを拝めることになるかもしれない。

 社会人リーグ勢で3回戦へと生き残ったのは石川県代表のツエーゲン金沢と兵庫県代表のバンディオンセ神戸、現在Kyuリーグでは首位に立つ宮崎県代表のホンダロック、それを追う長崎県代表のV・ファーレン長崎、そして沖縄県代表の沖縄かりゆしFCだ。金沢は水戸と3回戦で当たるが、J2でも下位に低迷する相手は決して難敵ではないはず。力試しとして遠慮なしに勝利を狙ってもらいたいものだ。ホンダロックはJ2でも現在乗りに乗るC大阪。強敵ではあるが、C大阪も足下をすくわれないゲームにしたいところ。長崎も湘南と国内でも屈指の充実した面白いサッカーを展開する相手となった。Jを狙うならば、ここで大きな波乱を巻き起こして最終節の迫ったKyuリーグの追い風にしたいところである。沖縄かりゆしは愛媛と対戦。南国のオレンジ軍団はどこまで雑草魂をみせてくれるか楽しみだ。

 しかしながら本当に楽しみなカードはJFLを首位で走る佐川急便に立ち向かうバンディオンセ神戸というこのマッチアップ。現在、全日程を終えて11月の決勝大会に向け、ここでJFLの雄と戦えるのは非常に大きな経験になるはずだ。その関西リーグ王者を相手に迎える佐川もJFL優勝を目前に控え、絶対的な強さを見せつけておきたい。このゲームに勝てば4回戦でJ1チームと対戦する権利を獲得できる。お互い目の前の目標が明確なだけに糧となる経験値をこの天皇杯で積み上げたいところだ。

 次の3回戦、このアマチュア同士の熱い戦いを筆者は佐川守山で見届けることに決めた。何か新鮮なものを自分でも得て帰れそうな期待感が溢れて止まない。

英国版ギャラクティコの終焉近し

2007年09月25日 | 脚で語る欧州・海外


 日本時間24日の未明に行われたプレミアリーグ第7週、チェルシーVSマンチェスター・ユナイテッドのゲームは想像以上にこの2チームがこれから迎える対極的な道のりを示してくれたといえる。

 モウリーニョ監督の退団という大きな事件以降最初のリーグ戦となったアウェイのオールドトラフォードでは、ブルーズの選手に躍動感は見られなかった。アブラム・グラント新体制の初陣となったこの日、依然として前線のドログバ、中盤はランパード、DF陣にはカルバーリョとセンターラインにケガ人を多く抱えたチェルシーは序盤からマンチェスター・ユナイテッドの猛攻に防戦必至となる。DF陣はCBにテリー、ベン・ハイムのコンビ、右にフェレイラ、左にA.コール。中盤は底にマケレレを据え、エッシェン、ミケル、マルダ、J.コール。1トップにしてきた最前線を担うのはシェフチェンコである。
 目を覆いたくなるばかりの圧倒的なマンチェスター・ユナイテッドのポゼッションに中盤でボールを奪い、時折カウンターから前線のシェフチェンコにボールが入るが全く仕事はさせてもらえない。ピッチを駆け回ったのは赤い悪魔たちであり、勇気を持ってその悪魔たちに立ちはだかったのは守護神のチェフだけであった。
 前半、先制点こそは早い段階から奪われることなくよく凌いでいたが、ミケルが32分にエブラに対して強烈なタックルを見舞った際に、スパイクの裏側を見せたとして1発レッドの厳しい判定。これにより更なる劣勢を強いられることとなる。すると前半ロスタイムにCkからの展開をブラウンがよく頭で繋ぎ、ギグスへ。ギグスはテクニックに溢れたアウトサイドの柔らかいクロスをテベスの頭に見事合わせ先制点を得る。前半の両チームの差は数字以上のもので、ファンデルサールは守備機会が全く無かったといっていいほどの展開であった。

 後半、リードを奪ったことによるユナイテッドの気持ちの余裕は明らかなものであった。ゆっくりとしたボール回しから、徐々に前線のロナウド、ルーニーが時折ゴール前で牙を剥く。今季得点力が爆発していないユナイテッドにとっては追加点は時間の問題かとも思われた。
 しかし、決して無理をしない賢明な戦い方をする相手に対し、10人のチェルシーは思うように攻撃の形が作れず、J.コールはイライラを募らせ、シェフチェンコも何もできないままカルーと交代を余儀なくされピッチを後にする。ミケルを欠いた中盤は完全に間延びし、マケレレが一人守備に奔走。マルダのドリブルは局面を打開できず、途中出場のライト=フィリップスのスピードも武器にはならなかった。同点弾を奪う力を全く失ったチェルシーは終了間際にサハにPKを決められ、敵地オールドトラフォードで何もさせてもらえないままゲームは終了する。

 このゲームで明らかな闘志を吐き出していたのはA.コールだけ。チェフの再三の攻守とユナイテッドの緩やかな試合運びに救われたといっていい。何もできなかったゲームの内容自体は最悪といってもいいだろう。テリーとコンビを組んだベン・ハイムの起用は長年イスラエル代表監督を務めたグラントらしいやり方であったが、対応のまずさは多々見られ、アレックスを起用した方が間違いなく得策であった。若干19歳のミケルは一発退場に若さと経験の無さを露呈し、ピッチでチームをコントロールできる者はいなかった。マケレレにだけかかる負担が酷に映る形となった。
 今季も「2強」と呼ばれ、チャンピオンズリーグとプレミアリーグで覇権を争うユナイテッドはごく自然体で勝利を収めることができた。何も苦労はしていない。逆に移籍後初ゴールを決めたテベスの活躍と攻撃面で成果を残したブラウンの活躍は収穫といえる。極めて対極的な結果がはっきりした2強の対決であった。

 今後、2強と呼ばれることがいつまで続くのだろうか。これでリーグは4戦連続勝ち星なし。チェルシーはバラックの1月移籍が現実味を帯びてきたと思いきや、今回のモウリーニョの退団劇でドログバやランパードといった欠かせない主力中の主力の移籍話も取り沙汰されている。もう金満オーナーの帝国は崩壊の一途を辿っているのだ。モウリーニョの求心力にすがりついてきたこの3年間をリセットして、新しいチーム作りに着手する時期が間違いなく訪れている。果たしてそれが現在の体制でうまくいくのかが懐疑的であるが、このユナイテッド戦を見る限りでは、グラントが今季トロフィーを掲げられるとはとても思えないのである。

無情な現実

2007年09月24日 | 脚で語るJリーグ


 またしてもヤマハスタジアムは鬼門と呼ぶべき場所になってしまった。

 前日に浦和が勝利し、勝ち点差は暫定で7ポイント差の状態で乗り込んだヤマハスタジアム。アウェイ席は久々のヤマハでのゲームを見届けるべく関西からも多くのサポーターが詰めかける。さすがにこの日はここで勝利する意味を誰もが分かっていたのだろうか。あまりにもこの地で勝てていないことに対する危惧はサポーターの口からは聞かれなかった。

 ゲームは前節横浜FM戦に比べれば、ガンバはよく選手もボールも動けていた。決定機も11分のバレーのチャンスをはじめ、全く作れないわけではなかった。しかしながらこの日は前半に先制点を取っておくべきだった。
 磐田は中盤でファブリシオと上田がボールをキープすれば前線の前田がよくチャンスメイクに絡んだ。右サイドの太田、左サイドの村井、もしくは2トップを組むカレンにと適応適所にボールを捌く。ガンバが前がかりになればなるほど磐田のショートカウンターはいい形でスイッチが入っていた。39分には前田のパスからカレンが抜けだし、シジクレイとのマッチアップを制してゴールにねじ込み先制点を奪う。ガンバはシジクレイの対応の拙さを問う前にゴール前でその状況を作ってしまったことに既に問題があった。中盤は前がかりになればなるほどスペースが空き、磐田のカウンターに絶好のシチュエーションを提供してしまう。少し組織的な守備とは逸脱した展開が見受けられた。

 後半に入り、ガンバは左サイドの安田に代え、寺田を投入。右サイドに配置し、橋本を左SBに、遠藤を底にシフト。この日は調子を完全に取り戻していた二川を中心にさらに攻撃態勢は加速するものの、1点が奪えない。バレーは前線で孤軍奮闘するものの、磐田DF陣のプレッシャーの前にシュートは枠を捉えきれない。枠さえ捉えて完全にミートすれば驚異的なバレーのシュート力は状況を問わず期待できる。後半は誰もがそれに期待していた。
 第三者のスタンスで見れば白熱の好ゲームであっただろう。しかし全力で浦和にしがみついていくことが現在ガンバに置かれた状況であり、ゴール裏のサポーターも焦燥感は尋常ではなかった。後半、一部のサポーターが暴走してしまい、水を差す形になったが、長いロスタイムのようやくバレーが叩き込み、ギリギリで同点に追い付く。期待していたバレーのシュート力が火を噴いた。
 
 しかし、本当に火を噴いたのは終了直前の判定。PA内で遠藤が倒されたことに対してレフェリー村上氏はプレーオンの判定。その数秒の後にタイムアップとなる。日頃はおとなしく、ラフプレーや執拗な抗議とは無縁のガンバの選手たちが主審に詰め寄る。判定が覆ることはないのだが、本人も語るようにもし磐田のファウルでなく遠藤のシミュレーションであっても、これは警告に値するだろう。クラブ側はビデオで改めて検証し、Jリーグに意見書を提出する意向であるが、このゲーム最大のハイライトはレフェリーの笛が鳴らぬまま闇に葬られることになった。
 この判定にガンバゴール裏は騒然となり、嫌な雰囲気でスタジアムを後にすることになる。これもまたフットボールの見せる無情で恐ろしい一面である。

 ガンバは試合運びに苦心したが、前半のうちからゲームを決めるべくスパートしていくべきだった。中盤でもいまだしょうもないミスが散見され、選手が100%の力を発揮できたかというと疑問符がつく。浦和との勝ち点差は「6」。他力本願は変わらない。

 あと、一部のサポーターの暴挙は磐田サイドに陳謝したい。サポーターはスタジアムの中では声援やブーイングに熱くなれる権利を持っている。しかし、多くの人間がいる中でやっていいことといけないことは明白だ。GK川口に水をかけ、フラッグを使っての妨害は目に余るものがあり、熱くなる権利を遙かに逸脱していた。ピッチに投げ込まれたペットボトルをわざわざスタンドに返しに来た何ともいえない川口の表情が印象的であった。
 今後こういったことがないように祈るばかりである。

 とにかく、真のサポーターは勝つために声を送るのみ。残り8試合、崖っぷちだ。

プロフェッショナリズムの差 ~神戸VS名古屋~

2007年09月23日 | 脚で語るJリーグ


 すこぶる猛暑日が続く今日は神戸へ。J126節の神戸VS名古屋のゲームを観戦。会場は神戸ユニバー記念陸上競技場。
 
 阪神高速は3号神戸線が渋滞が恒例のため、5号湾岸線を使うのが神戸方面へは常套手段であり、山麓バイパスと西神戸有料道を併用すればホムスタとそんなに車のアクセスにおいて利便性は変わらない。未だ個人的に神戸はユニバーが良く似合うと思うのだが、ここを一杯にすることができないのは悲しいかな東高西低際立つ日本サッカーファン事情を物語る。まあ余談はここまでにして、肝心のゲームは予想外の展開を迎えることとなった。

 5連敗で勢いのない神戸は前節千葉に惨敗を喫し、地元で名古屋を迎え撃つことなになったのだが、その名古屋は前節ホームで格上の鹿島に快勝した勢いそのままで好調さをキープしてくるかと思えた。
 しかしながら、キックオフから試合は神戸がよく繋ぎポゼッションを握る。名古屋は藤田がベンチスタート。大森、米山、阿部の3バックに山口を中盤の底に配置する3-1-4-2といえるような布陣。流動性に欠け、チーム全体が重い様子。前線の玉田と杉本はほとんどボールに触れず、縦への意識も希薄で全く攻め込める雰囲気がない。中盤で自在にボールを散らすボッティに手を焼き、無駄なファウルを繰り返す展開。とてもじゃないが同じカテゴリーで戦い、名古屋の方が順位が上とは思えなかった。厳しい言い方をするとプロのサッカーではない。神戸相手に37分までシュートがゼロだったこの不甲斐無い名古屋にとってはその後の展開は当然でもあった。
 神戸はJ2福岡から途中加入の古賀が初先発。開始早々から効果的なクロスを放つなどチームへのフィットは問題ないようだ。出場停止が明けたボッティと田中でコンビを組む中盤は息が合い、また古賀の加入でFWとしてようやく勝負できる大久保が序盤から元気で、レアンドロとの連携も悪くないところを見せていた。
 開始早々の5分に神戸はCKからゴール前の混戦を栗原が決め、立ち上がりからこのゲームの方向を決定づけた。失点後の名古屋は何も変わらず、リズムを変えようという選手が出てこない。バックラインでボールを回すことだけは一流なようだ。
 大久保にはゴールの匂いが序盤からしていた。何しろボッティから彼にチャンスボールが供給され、このゲームの主役は彼になるだろうと早くから予感していた。38分にはその大久保が名古屋DF陣の裏に抜け出し、難なくシュートを決める。名古屋は中盤からのプレスがあまりにイージーで危機管理能力がない。DF陣は崩壊の一途を辿る他なかった。

 後半から名古屋はさすがにゲームメイカー藤田とバランサーとして渡邉を投入。これで幾分か名古屋のサッカーはマシになったかと思えた。藤田がよく動き、その惜しみないコーチングに前半怠惰だった選手の動きは活発になった。しかし、神戸サイドとしてはこれぐらいのことは読めていた。しばらく耐えるだけ。2-0とリードは掴んでいたものの、さらに神戸は攻撃を加速させる積極性をこの日は発揮する。69分にレアンドロに代わり近藤祐が投入されると、早速右サイドから仕掛ける。中にはDFに囲まれながらもドンピシャのタイミングで大久保が近藤祐のクロスを合わせた。これまで溜まりに溜まっていたサポーターの欝憤を晴らす鮮やかなゴールまでの展開。ユニバーのボルテージは最高潮に達する。本職のFWで勝負させればこの男は強い。自らその強さを誇示するには十分な大久保らしいゴールであった。
 もう乗りに乗った神戸を止めることはできない名古屋はその後もオウンゴールを2発献上する不甲斐無さで、後半途中から名古屋サポは応援をボイコット。試合後に拍手を送る者は誰もいなかった。それもそのはず。名古屋にとっては5連敗中の相手に今季最悪の醜態を演じ、5失点もさることながら1点も取れなかっただけでなく90分通してほぼノーチャンス。名古屋から駆けつけたサポーターに合わせる顔は無い。ほぼ来季のフェルフォーセン続投はないだろうと感じさせてくれた。

 まだ暑さの厳しい中、それを忘れさせる神戸のパフォーマンスは間違いなく名古屋の不出来にも助長されたといえる。しかしながら、まだ今季の日程が残る中で残留争いとも優勝争いとも縁のない中位チームのモチベーションの持ち方には本当のプロフェッショナリズムが現れるといえよう。その点では今日の名古屋はプロとして失格である。

 ガンバサポの人間としてゴール裏で対峙するとそんなことはないのだが、今日の試合前にも唄われた恒例の神戸賛歌は非常に統制のとれた雰囲気で良く聞こえていた。
 どうだろうか?名古屋にもこういった賛歌が今必要だと思うのだが。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑤

2007年09月22日 | 脚で語る奈良のサッカー


 さて、今日はスタジアムの話をさせて頂きたい。私自身、よく頭の中で情景を思い描くのであるが、これをお読み頂いている奈良の方には是非お伺いしたいところである。想像を膨らませて頂いて、それを創造に繋げていければ幸いだ。

 もし、奈良にJを目指すプロクラブが出来るならホームスタジアムは鴻ノ池?それとも橿原公苑?という問いである。

 筆者自身よくこんな想像をして止まない。ホームチームのユニフォームを纏い、手には数々のフラッグなどを持ち合わせたサポーターが近鉄奈良駅から大挙をなして、鴻ノ池運動公園陸上競技場に歩いて向かう姿である。近鉄奈良駅からはやすらぎの道がスタジアムまでの徒歩ルートとなる。なんと素敵な情景であろうか。
 奈良県内には第1種公認の陸上競技場が2つ存在する。1つは奈良市にある奈良市立鴻ノ池運動公園陸上競技場。そしてもう1つは橿原市の奈良県立橿原公苑陸上競技場である。

 奈良の中心部でもある近鉄奈良駅からおよそ1.5キロほど北にある鴻ノ池陸上競技場はかつてJリーグのプレーシーズンマッチ(93年にG大阪VS広島)やサテライトリーグ(G大阪のゲームが中心)などが行われていた。かつてカルチョで99年に得点王にも輝いたマルシオ・アモローゾを筆者はこの鴻ノ池で行われたサテライトのG大阪VSV川崎(93年)の試合で見たことがある。現在はJチームも増え、かつてほどサテライトリーグが活発ではないためにその機会は無いが、この鴻ノ池は球場や武道館などを備える県内のスポーツの中心地であることは間違いない。競技場は高校選手権の奈良大会決勝の地としてあまりに有名ではあるが、もちろんその名と存在は全国区には程遠い。
 スタジアムは典型的な国体型の陸上競技場で5,000人収容のメインスタンド以外はすべて芝生席になる。この芝生席に25,000人が収容されるとされ、全体で構造上の上では30,000人の収容が可能であるとされる。夜間の試合開催に欠かせない照明設備は残念ながら持ち合わせていない。しかしながら陸上競技場とはいえ、メインスタンドからの眺望はまだ良い方である。万博をさらに小さくした感じといえようか。何しろプロクラブが本拠地として構えるなら、前述の照明設備をはじめ、スタンドの改修は必須事項であるだろう。特にバックスタンドとゴール裏はもっと傾斜をつけてもらいたいところだ。
 立地は緑に囲まれた丘陵地帯にあるため、周辺の眺めは良い。春日山を仰ぐその風景は、都会のど真ん中に存在する都心部のスタジアムのそれとは対極的だ。それでいてアクセスは悪くない。近鉄奈良駅からは多少起伏はあるが、徒歩圏内であってバスもスタジアム前まで通っている。キャパも申し分ないだけにアストロビジョンが設営され、照明とスタンドが整えば理想的である。

 甲乙つけがたいのは、南部の橿原市にある橿原公苑陸上競技場。ここ数年、天皇杯の1回戦の会場にもなっているここは02年ワールドカップの際にチュニジア代表がキャンプ地としたことで有名になった。その際に1500ルクスというJ基準を満たす照明鉄塔8基が設営され、芝生も緑の映える立派なフィールドへと改修された。当時はC大阪とのプレーシーズンマッチも開催されたほどである。
 しかしスタンドの収容人数は鴻ノ池と比べるとメインスタンド3,000人と芝生席のバックスタンドが2,000人とかなり少ない。正直、メイン以外ではサッカーの試合は観るのが厳しい。ゴール裏は非常に手狭でスペースが無く、フラットであるから特に観にくい場所である。ここの増設及び改修は非常に難しそうである。南側のゴール裏(メインスタンドから見て左側)はスタンド内に樹木が立ち並び、伐採が必要になるだろう。また北側のゴール裏(メインスタンドから見て右側)も隣接する第一体育館との距離が近く、双方ともにビジョンの設置も微妙な感じだ。照明設備とその綺麗なピッチが目立つだけにもったいない。新たにかかる資金を考えれば橿原公苑の方が県立でもあるだけに鴻ノ池より少なく済みそうなのだが・・・
 しかしながらメインスタンドから仰ぐバックの畝傍山は実に壮大で神々しい。初代天皇とされる神武天皇陵もすぐ傍にあり、歴史の国奈良を彷彿とさせるロケーションだ。アクセスも近鉄の橿原神宮前駅、畝傍御陵前駅から徒歩5分~10分ほどと理想的。何よりも奈良北部及び南大阪の方面からのアクセスも問題無い。あえて言うならば東側の169号線との間には住宅地があり、もしJレベルのゲームになれば、騒音問題は考慮すべきだろう。とにかく大晦日には初詣客で賑わう橿原神宮の敷地内でもあるこのスタジアムは実に奈良らしい奥ゆかしさすら併せ持っているといっていい。

 田園地帯が広く広がる北部の奈良盆地には正直申し上げて、サッカー専用スタジアムをすぐに作れる予算さえあれば土地には事欠かない。あくまでそれは夢のまた夢と考えれば、選択肢はこの2つのスタジアムになる。

 奈良にプロクラブができたその日には、皆さんはどちらのスタジアムのクルヴァに集結する?

 鴻ノ池?or橿原公苑?

ジーザス・・・名将がスタンフォードブリッジから去る。

2007年09月21日 | 脚で語る欧州・海外


 ウェストロンドンのみならず、世界のブルーズファンに衝撃的なニュースが駆け巡った。チェルシーの監督で世界的名将と名高いジョゼ・モウリーニョがチームから退団というニュースがクラブより発表されたのである。

 晴天の霹靂、と表現しても過言ではない。なにせチャンピオンズリーグが始まったばかりで、プレミアシップも開幕してまもないこの時期に監督の退団はよほど重症のチーム成績でなければ尋常なエピソードではない。しかしながら、チェルシーのクラブとモウリーニョの関係に関しては、以前から決して良好ではなかっただけに退団自体は不思議ではないという声も一部から囁かれる。アブラモビッチは解任のタイミングを見計らっていたのだろうか。退団と解任ではまた趣が異なるだけに非常に謎も多い今回の退団劇。欧州屈指のチームのニュースとしてはあまりにサプライズが過ぎた。

 問題はこのタイミング。確かに先日のCL初戦ローゼンボリ戦で、チームは決め手を欠きドローを演じることとなった。ここで逆転のゴールが生まれていれば、まだこのタイミングでの退団は回避できたのかもしれない。世界有数の金満オーナー、アブラモビッチとの確執は完全に表面化していただけに、当のオーナーはさすがにこのゲームで痺れを切らしたのであろうか。チェルシーは今季のプレミアシップで6節を終えて3勝2分1敗の5位。9月に入ってまだ勝ち星は無かった。そして勝利したゲームは全て1点差という接戦ばかり。このあたりの結果もアブラモビッチには限界だったのかもしれない。プレミアシップ復権と欧州の座を狙うオーナーとの現実的なビジョンの乖離がそこにはあったのかもしれない。
 
 それを象徴するのはシェバことシェフチェンコの存在だろう。63億円という巨額の移籍金を投じて獲得されたこのウクライナの主砲は名将のベクトルにはそぐわない獲得であった。昨季シーズン前にDF陣の相次ぐケガから、冬の移籍市場で新たな即戦力DFの獲得を熱望したモウリーニョとそれを全く意に介さない経営陣との対立が露になった。昨季はじめから入団したシェフチェンコはプレミアシップの水に慣れることはなく、監督のシェバに対する扱いも辛口で手厳しいものであった。ところがそれがシーズン後半になると、結果の出ないシェフチェンコを起用し続けるモウリーニョの姿とその不発のエースを擁護するコメントも彼の口から聞かれるようになる。ある種、不思議な光景であったのは間違いない。これも経営陣の圧力か。とにかくモウリーニョはいつの間にか自身が理想とするフットボールと似つかわしくない、中盤をコンパクトに収め、カウンター重視の前線頼みのフットボールを演じ続けなければならなくなっていたのである。

 モウリーニョ自身の我慢の限界が訪れた今回の退団劇ならば、まだそれは幸せなことであるかもしれない。もう起こってしまった事態を取り戻すのは不可能である。彼には次のキャリアを精一杯頑張ってもらいたい。スコラーリが先日一悶着起こしたポルトガル代表の監督の座が彼のキャリアの終着目標点だ。今からなら十分に狙えるはずであり、それだけの自身の価値をこのタイミングの退団で自らよく守ったともいえる。
 しかし、これが経営陣主導の解任劇なのであれば、それはかなりの功罪といえるだろう。現にモウリーニョに心酔し、チェルシーでプレーする選手たちも少なくない。彼らのモチベーションは下がるばかりで、チームの成績は保障できない事態だ。ここからクラブが後任監督も含めてどういった方針で今季を戦うのか要注目であるが、23日のマンチェスター・U戦以降、現在フットボールディレクターを務めるアブラム・グラント氏とアシスタント・コーチを務めるスティーブ・クラーク氏の2名でチームを指揮していく模様だ。これが既定路線ならば世界中のブルーズファンは金満オーナーを始めとしたクラブの在り方を強く弾劾していかなければならない。さて、ブルーズはどうなっていくのだろうか・・・

 とにもかくにもブルーズに多くの栄光と最高のフットボールを与えてくれたジョゼよ、ありがとう。貴方は伝説になった。