脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

五色の激闘回顧録<1>-地域決勝 福島Uvs相模原-

2011年11月24日 | 脚で語る地域リーグ
 18日から20日まで行われた第35回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド。淡路島のアスパ五色では奈良クラブを含めた福島ユナイテッド、S.C.相模原、ノルブリッツ北海道の4チームが激突。既に奈良クラブの戦いぶりに関してはさらりと振り返ったところだが、何回かに分けて、その他のチームの戦いぶりを振り返りたい。

 1日目のノルブリッツ北海道-奈良クラブに続いて行われた第2試合では、東北王者の福島ユナイテッドFC(以下=福島U)とJFA優遇枠でJリーグ準加盟の強豪・S.C.相模原がマッチアップ。試合は2-1で相模原が先行逃げ切りに成功した。

 

 昨季、ひたちなかで見た1次ラウンドでも相模原に関しては3試合全て観戦した。10月の奈良クラブとのテストマッチ、そして全社準決勝の愛媛FCしまなみ戦と今季に関しては彼らの強さがこれでもかと伝わってくる試合ばかり見ているわけだ。対して福島Uは昨季の全社1回戦で三洋洲本に6-0と圧勝した試合しか直接には見ていない。個人的には今季の情報があまりなく、内藤と根本という2人のGKが負傷していることぐらいしか聞いていなかった。基本的には昨季見た福島Uがベースなのだろうと思っていた。今季は震災の影響もあり、東北リーグは5月から開幕したものの、福島県内で活動していたのはこの福島Uぐらいで、また県内での試合開催ができないシーズンを過ごしてこの場に来ているとのこと。実力的にはこの大会に出場して当然のチームだが、正直なところ今季の東北リーグ王者とはいえ、盤石の状況でリーグが行われていない分、その実力は計り難いというのが正直なところ。そういう意味ではこの初戦・相模原戦は絶好の判断材料になっていた。怖いのは彼らの逆境に対する強さがこの大会で発揮されればという点で、北海道も相模原も最も警戒していたであろう。
 相模原は、この大会に合わせて左のスペシャリスト・古賀が戦列復帰。工藤とCBを組むのは八田ではなく奥山。そして水野ではなく右MFにはルーキーの村野が入っていた。GKは山本ではなく、バックアップ要員の佐藤が先発だった。
 対する福島Uも、昨季の全社で巧いなと思わせたキム・コンチョンが中盤に司令塔として健在。そして前線で小林と久野という2人の強力なJ経験者が組む布陣。GKは内藤がケガを押して出場。しかし、その右足にはがっちりとサポーターが装備され痛々しさが伝わってきた。

 
 何とか初戦に出場した福島U・GK内藤。
 しかし、試合中はゴールキックも蹴れず…

 この両者の対戦は、風と小雨がぱらつく中で行われたが、前半開始早々の8分に金澤のロングキックが相手GKの目測ミスも相まって一気にゴールへ。これがポストに跳ね返ったところをエース・齋藤が押し込んだ。幸先よく相模原が先制する。しかし、個人的にはこの後も福島Uが黙っていないとは思っていた。
 ところが、追加点は相模原。22分にCKから森谷を経由してボールを受けた奥山がヘッドで追加点を決める。一気に試合を先行できた相模原。同時に足元でのミスが少なく、緩急をつけた攻撃に隙のなさを感じる。

 
 福島U戦の先制点を奪ったのはやはりマーティンこと齋藤。
 ここぞという時の決定力は抜群だ。

 
 右の快足・金澤の存在も相模原のストロングポイント。
 無尽蔵のスタミナで積極的に攻撃参加する。

 福島Uも黙ってはいない。中盤で相模原のミスを着実に自分たちのボールにする機会が増えてきた。問題はいかにフィニッシュまで持ち込むかというところだったが、37分にキム・グァンミンが相手ボールをインターセプトして小林に送る。小林はエリア右45どの角度から見事なシュートを決めてゴールを射抜いた。相模原・GK佐藤がわずかにボールに触ったが、そのシュートの勢いは止められなかった。福島Uが1点差に詰め寄る。

 
 強烈なシュートで1点をもぎ取った福島U・小林。
 このフィニッシャーの存在は恐ろしいなと感じさせた。

 
 GKは1戦目、佐藤が先発した相模原。
 しかし、並のチームでは彼までたどり着くのが大変。

 福島Uが1点を返したとはいえ、やはり前半45分だけでも相模原の基礎体力、技術の高さを感じさせるには十分だった。昨季の地域決勝1次ラウンドであと一歩のところでの敗退、そして今季の東京23FCとの全社決勝敗戦。結果を出さねばというところでことごとく涙を呑んできたチームでもある相模原。これ以上同じような経験をせんとばかりに意気込み溢れる出だしだった。

 
 齋藤とコンビを組む森谷も相変わらず怖い存在。

 
 坂井が昨季以上に前線に顔を出すようになった印象。
 佐野の加入がもたらした相乗効果か。

 後半に入っても、相模原の慎重な試合運びは健在。追加点を無理に狙わず、しっかりと中盤からブロックをかけようとする。福島Uもさすがに後半巻き返し。1点差のビハインドを甘んじるチームではない。62分にMF片原がミドルシュートで惜しい場面を作るなど、その攻防は見逃せない展開だった。
 しかし、後半の福島Uの反撃を押さえ切った相模原が前半のスコアのまま逃げ切り、2-1で勝利。順調な船出の勝点3ポイント獲得となった。

 
 守備面で立ちはだかる工藤という壁。
 長身を活かして攻撃でも絡むことが多い。

 
 今季の相模原は佐野の加入にとって安定感アップ。
 J2・北九州からのレンタル加入。まさに反則級。

 非常にレベルの高い試合で、北海道-奈良を見ていたはずのギャラリーも固唾を飲んだのは間違いない。やはりこのグループは相模原を中心に回っていくと感じさせてくれた初日となった。無論、10月のテストマッチで0-6と敗戦を喫した奈良クラブとしては、その残影を払拭する試合ぶりを見せなければならない。非常に腹を据えるには十分な試合だったと回顧できる。
 相模原に関しては、佐野の加入が本当に効いているなと実感した。昨季の点を取ってから余裕が垣間見える危うい試合運びが全く感じられず、佐野が中盤でボールを散らして守備面でも献身的、良いブレーキングを施している印象だ。さすがJリーグ準加盟、10月のテストマッチの際にも思ったが、全方位で隙を見せない仕上がりになっているなと実感した。
 対する福島Uもこの試合を見る限り、非常に侮れない技術の高いチームだった。特に10番を背負うキム・コンチョンはその冷静なプレーと視野の広さで改めて印象深い。また全体的に180cm台の選手たちばかりで、平均身長が明らかに最下位の奈良クラブとの体躯的差も目に付いた。問題は負傷を押してピッチに立つGKの不安定さだが、正直なところ、守備陣が体を張っており、相模原相手でも1点差の敗戦ということを考えれば、それほど福島Uにとってはマイナス要素でもないなと感じた。
 この1日目、第2試合を見る限りは改めて「死のグループ」といえる組み合わせに放り込まれたなと頭を掻くしかなかった。第1試合で勝点3ポイントを取っておいて本当に良かったと思う。


最新の画像もっと見る